「それでは失礼致します」新幹線のホームで若宮本部長は最敬礼しました…
たまに見かけますよね(笑)上役をお見送りしているサラリーマンが…見送りを受ける上役は照れ隠しに無表情を装っていますが♪(あれって中々気分の良いものらしいです…)……グリーン車はホームのほぼ中央です。この辺りはさすがに人も疎(まば)らで遥か遠くに行列があるあたりが、若宮本部長の指定席がある車両でしょうか。
顔を上げるともう高辻役員の姿はありません。
「やれやれ…」ひとつ伸びをして足早にホームを歩いていきました。車両の中を歩いてもいいのですが、車両の横を歩いた方が速かったからです。上からこののぞみ号がまもなく発車する旨を放送しています。
「はいはい…」
若宮本部長はそれにいちいち返事をしながら歩き続けました。
寒風に火照った顔が気持ちよく、 足早に歩くのと全てがリズミカルに感じられました。
「ビールは乗ってからでいいか…」ホームの売店を通りすぎるときチラッと考えました。 「そうそう…何でも段取りだよなぁ♪」
一事が万事ソツのない若宮本部長です。 ピピピッピ~♪
駅員のホィッスルがホームに鳴り響きます。
発車前のホームには急ぎ足、駆け足の人達がこれを合図に一斉に車内に乗り込みました。 「やれやれ…」
最後は駆け込みになって苦笑いです。
久々の新幹線でした。 本来埼玉県生まれで大学ももちろん東京です。
「関西は変な奴がいっぱいいるからなぁ…」 同期の東京育ちがぼやいていたのを思い出していました。
確かに… 明日関西の営業所に行くのは久しぶりで、東京から離れるのさえ何ヵ月もなかったことでした。
「いいか、関西に行ったら余計なことは言わなくていいから、円山だけマークしろよ」
「マークと言いますと…」根がお人好しの若宮本部長は鬼塚専務の指示が今一つ理解出来ません。
「何でもいいから夜に一杯やって本音を聞き出すんだよ」
グッと迫って話す鬼塚専務の迫力のあること(笑)
若宮本部長は思わず逃げ腰になりながら「でも円山事業部長は飲まないのじゃあないですか 」
確かに円山事業部長は下戸でした(笑)
「そんな事、関係ない、ねえちゃんのいる店ならいいだろうが…」
「しかし…」
「バカ野郎!しかしも案山子(かかし)もないんだよ!とにかく情報を集めてくるんだぞ…」
「は、はひ~」
最後に怒鳴られて頭を抱えながら逃げたのでしたが…
「おい、待て…」
… とそこで先ほどの東京駅の地下街の一件になったのでした。
「お前が今より上に行きたかったら俺以外の役員も味方につけないとダメだぞ!!」
又々顔がそばまで近寄ってきましたが今度は逃げずに睨み返しました。そして一言一句漏らさず秘策を受けたのです。
「いいか、高辻さんはもうすぐ役停になるけど他の役員に受けがいいんだよ…」
これは何を意味するか聞かずとも若宮本部長もわかりました。
だから…
あのゴツイ手に握手をしました。 協定を結んだのですね。
あのゴツゴツした手触り…力強さはとても老人の手とは思えません(笑)
専務にしろ高辻役員にしても60を過ぎてどうしてああもエネルギッシュなんだろうか…
(俺もあと十年経ったら…)若宮本部長は新幹線の席に着くなり考え込みました。
新幹線は真昼のような明るさの中を発車しました。
「♪次は名古屋です…」アナウンスが終わると窓の外は真っ暗闇に包まれました。
ビールが来れば(ワゴンサービスです…)
…それまで頭を休めなくっちゃあ…
若宮本部長は深く座り直して目をつぶりました。
今日の出来事を頭の中で回想しています。 頭の中を鬼塚専務や高辻役員がグルグル廻り出しています。秘書の笑顔、本社の玄関先、社員が一同に会釈すれ風景…他人には見せない真摯な一面でありました。
たまに見かけますよね(笑)上役をお見送りしているサラリーマンが…見送りを受ける上役は照れ隠しに無表情を装っていますが♪(あれって中々気分の良いものらしいです…)……グリーン車はホームのほぼ中央です。この辺りはさすがに人も疎(まば)らで遥か遠くに行列があるあたりが、若宮本部長の指定席がある車両でしょうか。
顔を上げるともう高辻役員の姿はありません。
「やれやれ…」ひとつ伸びをして足早にホームを歩いていきました。車両の中を歩いてもいいのですが、車両の横を歩いた方が速かったからです。上からこののぞみ号がまもなく発車する旨を放送しています。
「はいはい…」
若宮本部長はそれにいちいち返事をしながら歩き続けました。
寒風に火照った顔が気持ちよく、 足早に歩くのと全てがリズミカルに感じられました。
「ビールは乗ってからでいいか…」ホームの売店を通りすぎるときチラッと考えました。 「そうそう…何でも段取りだよなぁ♪」
一事が万事ソツのない若宮本部長です。 ピピピッピ~♪
駅員のホィッスルがホームに鳴り響きます。
発車前のホームには急ぎ足、駆け足の人達がこれを合図に一斉に車内に乗り込みました。 「やれやれ…」
最後は駆け込みになって苦笑いです。
久々の新幹線でした。 本来埼玉県生まれで大学ももちろん東京です。
「関西は変な奴がいっぱいいるからなぁ…」 同期の東京育ちがぼやいていたのを思い出していました。
確かに… 明日関西の営業所に行くのは久しぶりで、東京から離れるのさえ何ヵ月もなかったことでした。
「いいか、関西に行ったら余計なことは言わなくていいから、円山だけマークしろよ」
「マークと言いますと…」根がお人好しの若宮本部長は鬼塚専務の指示が今一つ理解出来ません。
「何でもいいから夜に一杯やって本音を聞き出すんだよ」
グッと迫って話す鬼塚専務の迫力のあること(笑)
若宮本部長は思わず逃げ腰になりながら「でも円山事業部長は飲まないのじゃあないですか 」
確かに円山事業部長は下戸でした(笑)
「そんな事、関係ない、ねえちゃんのいる店ならいいだろうが…」
「しかし…」
「バカ野郎!しかしも案山子(かかし)もないんだよ!とにかく情報を集めてくるんだぞ…」
「は、はひ~」
最後に怒鳴られて頭を抱えながら逃げたのでしたが…
「おい、待て…」
… とそこで先ほどの東京駅の地下街の一件になったのでした。
「お前が今より上に行きたかったら俺以外の役員も味方につけないとダメだぞ!!」
又々顔がそばまで近寄ってきましたが今度は逃げずに睨み返しました。そして一言一句漏らさず秘策を受けたのです。
「いいか、高辻さんはもうすぐ役停になるけど他の役員に受けがいいんだよ…」
これは何を意味するか聞かずとも若宮本部長もわかりました。
だから…
あのゴツイ手に握手をしました。 協定を結んだのですね。
あのゴツゴツした手触り…力強さはとても老人の手とは思えません(笑)
専務にしろ高辻役員にしても60を過ぎてどうしてああもエネルギッシュなんだろうか…
(俺もあと十年経ったら…)若宮本部長は新幹線の席に着くなり考え込みました。
新幹線は真昼のような明るさの中を発車しました。
「♪次は名古屋です…」アナウンスが終わると窓の外は真っ暗闇に包まれました。
ビールが来れば(ワゴンサービスです…)
…それまで頭を休めなくっちゃあ…
若宮本部長は深く座り直して目をつぶりました。
今日の出来事を頭の中で回想しています。 頭の中を鬼塚専務や高辻役員がグルグル廻り出しています。秘書の笑顔、本社の玄関先、社員が一同に会釈すれ風景…他人には見せない真摯な一面でありました。