技能者不足は若年層で特に深刻です。外国人労働者を活用するだけでは、根本的な解決にはなりません。未就業者が建設業に振り向くような施策こそが大切ではないでしょうか。
建設業の技能者不足に対して、政府が外国人労働者を活用する策を検討し始めました。東日本大震災の復興需要に加えて東京五輪の施設整備が重なり、技能者不足がさらに加速すると危機感を募らせています。
外国人技能実習制度を見直すことで、建設業への外国人の受け入れを拡大する方針です。1月24日に官房長官や国土交通大臣、厚生労働大臣など7閣僚で構成する「建設分野における外国人材の活用にかかわる閣僚会議」を開催しました。3月末までに対策をまとめる予定だそうです。
同制度は、3年以内の期限で主に途上国の労働者を受け入れて教育する制度です。国際貢献が趣旨なので、本来は国内の技能者不足への対策ではありません。建設業界からも「趣旨と違う」との反対意見があります。完全にすり替えだと思います。
建設産業専門団体では、「技能実習で来日する外国人労働者は数年で帰国するので、人を育てる発想ではありません。国内の未就業者に目を向けずに国外に目を向けると、若い人が建設産業に入る芽を摘むことになる」と これまでの公共事業削減で、技能者は激減しました。特に技能者不足を叫ばれているのが、型枠大工です。
2008年のリーマン・ショックによって型枠工事の単価が暴落し、かなりの数の型枠大工が離職しました。高齢化も進んでいます。同協会の13年度の調査では、55歳以上が全体の35%を占めました。65歳で現場を離れると仮定すれば、10年後には3分の1がいなくなります。一方で24歳以下の若年者は6%にすぎません。12年度の7%からさらに減少しました。
若年層が減り、技能者の高齢化が進むのは、型枠大工に限りません。
全国高等学校建築教育連絡協議会の調査では、技能者の送り手として期待される工業高校の建築系学科でも、就職する生徒の4割以上が建設業以外を選んでいるのが現状です。進学者を含めると、卒業生のうち建設業に進むのは3分の1にすぎません。
ここ十数年、建設業界に若年者が入らなくなりました。厚生労働省の雇用動向調査によると、建設業への30歳未満の入職者数は2000年に24万8000人だったのが、10年には7万4000人と激減しています。10年間で7割以上も減少しました。
若年者の離職率も高いのも問題です。同じ期間に、建設業の常用労働者に占める離職者数の割合は、30歳未満で18.6%でした。30歳未満の全産業での平均が14.9%だったことからも、他産業と比べてなかなか定着しない実態がうかがえます。こうした状況に建設業界も手をこまねいているわけではありません。
若年層に建設業の魅力を伝える取り組みが進んでいます。静岡県富士宮市にある富士教育訓練センターは、各県の建設業協会や工業高校と協力して、生徒に技能体験研修を実施しています。入職後のミスマッチ解消にもつながります。
研修事業は、各県の協会が厚労省の助成制度を使って、工業高校の生徒を富士教育訓練センターに派遣する試みです。夏休みを利用した3泊4日~4泊5日のスケジュールで、鉄筋や型枠、測量などの実習を体験させています。
02年度から始めた研修事業は、徐々に拡大しています。当初実施していたのは愛知県建設業協会だけだしたが、12年度には8協会に増えました。参加人数も年々増えて12年度には300人近くが受講しています。12年度までに計1403人の高校生が参加しました。
富士教育訓練センターの小松原学校長は、「以前は、各県の協会が助成制度を安全教育などほかの事業に使うことが多かったが、最近は技能体験研修の実施が増えてきた」と手応えを感じているそうです。
高校生の入職には、本人の希望だけでなく、学校の教師や保護者の意向も強く影響します。富士教育訓練センターを活用する愛知県建設業協会は、09年度から高校生の研修の際に保護者の見学会を実施しています。
見学会後に保護者に実施したアンケートでは、子どもの建設業界への入職に前向きな意見が増えてきたそうです。「就職させたい」との回答が10年度には回答者の約7割で、11年度と12年度には約8割に上りました。
富士教育訓練センターでは教師の技能体験研修も実施しています。型枠や鉄筋を組む手順などの技能に教師が不安を抱えていると、生徒に建設業の魅力がきちんと伝わりません。受講者数は年度によってばらつきがあるが、02年度から12年度までの累計で283人となりました。
国交省も人材育成の重要性を認識しています。「担い手確保・育成検討会」のワーキングチームの一つとして、「富士教育訓練センターの充実強化の具体化に向けた検討委員会」を設置。14年度中に老朽化した施設の建て替え工事に着手する予定です。
建設業の人材育成への取り組みには追い風が吹いています。厚労省が13年度補正予算に計上した「地域人づくり事業」を、各県の建設業協会などが高校生の技能研修にも活用しようと検討しているからです。
同事業は、女性や若者、高齢者の雇用拡大や処遇改善を促進するために創設したものです。都道府県が設置する基金に対して厚労省が交付金を配分。都道府県や市町村は、その基金を使って、未就業者の就職や社員の賃金上昇につながる支援策を企業や業界団体などに委託します。正社員化を見据えた高校生の教育・訓練も事業の対象です。
建設業だけが対象ではないが、厚労省と国交省は主に建設会社による活用を想定しています。全国建設業協会や日本建設業連合会、建設産業専門団体連合会などに対して事業の活用を呼びかけており、各団体とも前向きに検討する姿勢です。東日本大震災からの復旧、東京オリンピックは、大丈夫でしょうか?
建設業の技能者不足に対して、政府が外国人労働者を活用する策を検討し始めました。東日本大震災の復興需要に加えて東京五輪の施設整備が重なり、技能者不足がさらに加速すると危機感を募らせています。
外国人技能実習制度を見直すことで、建設業への外国人の受け入れを拡大する方針です。1月24日に官房長官や国土交通大臣、厚生労働大臣など7閣僚で構成する「建設分野における外国人材の活用にかかわる閣僚会議」を開催しました。3月末までに対策をまとめる予定だそうです。
同制度は、3年以内の期限で主に途上国の労働者を受け入れて教育する制度です。国際貢献が趣旨なので、本来は国内の技能者不足への対策ではありません。建設業界からも「趣旨と違う」との反対意見があります。完全にすり替えだと思います。
建設産業専門団体では、「技能実習で来日する外国人労働者は数年で帰国するので、人を育てる発想ではありません。国内の未就業者に目を向けずに国外に目を向けると、若い人が建設産業に入る芽を摘むことになる」と これまでの公共事業削減で、技能者は激減しました。特に技能者不足を叫ばれているのが、型枠大工です。
2008年のリーマン・ショックによって型枠工事の単価が暴落し、かなりの数の型枠大工が離職しました。高齢化も進んでいます。同協会の13年度の調査では、55歳以上が全体の35%を占めました。65歳で現場を離れると仮定すれば、10年後には3分の1がいなくなります。一方で24歳以下の若年者は6%にすぎません。12年度の7%からさらに減少しました。
若年層が減り、技能者の高齢化が進むのは、型枠大工に限りません。
全国高等学校建築教育連絡協議会の調査では、技能者の送り手として期待される工業高校の建築系学科でも、就職する生徒の4割以上が建設業以外を選んでいるのが現状です。進学者を含めると、卒業生のうち建設業に進むのは3分の1にすぎません。
ここ十数年、建設業界に若年者が入らなくなりました。厚生労働省の雇用動向調査によると、建設業への30歳未満の入職者数は2000年に24万8000人だったのが、10年には7万4000人と激減しています。10年間で7割以上も減少しました。
若年者の離職率も高いのも問題です。同じ期間に、建設業の常用労働者に占める離職者数の割合は、30歳未満で18.6%でした。30歳未満の全産業での平均が14.9%だったことからも、他産業と比べてなかなか定着しない実態がうかがえます。こうした状況に建設業界も手をこまねいているわけではありません。
若年層に建設業の魅力を伝える取り組みが進んでいます。静岡県富士宮市にある富士教育訓練センターは、各県の建設業協会や工業高校と協力して、生徒に技能体験研修を実施しています。入職後のミスマッチ解消にもつながります。
研修事業は、各県の協会が厚労省の助成制度を使って、工業高校の生徒を富士教育訓練センターに派遣する試みです。夏休みを利用した3泊4日~4泊5日のスケジュールで、鉄筋や型枠、測量などの実習を体験させています。
02年度から始めた研修事業は、徐々に拡大しています。当初実施していたのは愛知県建設業協会だけだしたが、12年度には8協会に増えました。参加人数も年々増えて12年度には300人近くが受講しています。12年度までに計1403人の高校生が参加しました。
富士教育訓練センターの小松原学校長は、「以前は、各県の協会が助成制度を安全教育などほかの事業に使うことが多かったが、最近は技能体験研修の実施が増えてきた」と手応えを感じているそうです。
高校生の入職には、本人の希望だけでなく、学校の教師や保護者の意向も強く影響します。富士教育訓練センターを活用する愛知県建設業協会は、09年度から高校生の研修の際に保護者の見学会を実施しています。
見学会後に保護者に実施したアンケートでは、子どもの建設業界への入職に前向きな意見が増えてきたそうです。「就職させたい」との回答が10年度には回答者の約7割で、11年度と12年度には約8割に上りました。
富士教育訓練センターでは教師の技能体験研修も実施しています。型枠や鉄筋を組む手順などの技能に教師が不安を抱えていると、生徒に建設業の魅力がきちんと伝わりません。受講者数は年度によってばらつきがあるが、02年度から12年度までの累計で283人となりました。
国交省も人材育成の重要性を認識しています。「担い手確保・育成検討会」のワーキングチームの一つとして、「富士教育訓練センターの充実強化の具体化に向けた検討委員会」を設置。14年度中に老朽化した施設の建て替え工事に着手する予定です。
建設業の人材育成への取り組みには追い風が吹いています。厚労省が13年度補正予算に計上した「地域人づくり事業」を、各県の建設業協会などが高校生の技能研修にも活用しようと検討しているからです。
同事業は、女性や若者、高齢者の雇用拡大や処遇改善を促進するために創設したものです。都道府県が設置する基金に対して厚労省が交付金を配分。都道府県や市町村は、その基金を使って、未就業者の就職や社員の賃金上昇につながる支援策を企業や業界団体などに委託します。正社員化を見据えた高校生の教育・訓練も事業の対象です。
建設業だけが対象ではないが、厚労省と国交省は主に建設会社による活用を想定しています。全国建設業協会や日本建設業連合会、建設産業専門団体連合会などに対して事業の活用を呼びかけており、各団体とも前向きに検討する姿勢です。東日本大震災からの復旧、東京オリンピックは、大丈夫でしょうか?