すちゃらかな日常 松岡美樹

サッカーとネット、音楽、社会問題をすちゃらかな視点で見ます。

【ラ・リーガ 23/24 第6節】久保が止まらない、開始2分に先制弾 〜レアル・ソシエダ 4-3 ヘタフェ

2023-09-26 05:03:33 | その他の欧州サッカー
今季4ゴール1アシストの実力

 ラ・リーガでは9月24日に第6節が行われ、ホームのレアル・ソシエダとヘタフェが対戦した。試合は二転三転の末、ラ・レアル(ソシエダの愛称)が4点を取り勝利した。

 驚いたのは、この日も4-3-3の右WGで先発した久保建英だ。なんと試合開始2分だった。

 ドリブルする同僚の右IHブライス・メンデスの右側に久保が併走し、右から回り込みスルーパスを受けた。そして瞬時にワンタッチで左足を一閃する。ボールは弾けるように跳び、ゴール左のサイドネットに突き刺さった。敵GKはまったくのノーチャンス。先制ゴールである。

 たった開始2分で、この日ヘタフェのボルダラス監督が仕込んできたシナリオは見事に吹っ飛ばされた。これで久保は今季のラ・リーガ6試合で4ゴール1アシストだ。開幕から6試合連続でスタメン出場しており、チームの信頼も厚い。

 ただし後半に入ると時間の経過とともに、例によってバテて試合から消えるのは大きな課題だ。久保は以前に書いた「4つの欠点」をせっかくクリアしたのだから、スタミナ(運動量の維持)という新たなテーマに取り組んでほしい。

今日も2人がかりのマークがつく

 久保にはこの日も2枚のマークがついた。今日もダブルチームの御一行様がお出迎えだ。

 9月19日(日本時間20日)に行われた第5節のレアル・マドリー戦、そして20日の欧州チャンピオンズリーグ第1節のインテル・ミラノ戦でもそうだった。試合のたびに、屈強なマーカーが2人がかりで久保をつぶしに来る。

 それでも平気で力を発揮するのが彼の凄さだ。マドリー戦では開始5分に先制点に関与した。続くインテル戦でも、久保はチャンスを作り続けた。だがこの日のヘタフェ戦では先制ゴールを獲ったあと、前半に2点を取られて逆転された。

 そこで先発メンバーをローテーションしていたラ・レアルのイマノル・アルグアシル監督は、後半13分に主力を3人出してきた。FWオヤルサバル、左IHメリーノ、そしてアンカーのスビメンディだ。

 すると後半16分にブライス・メンデスが、ミトロビッチに足を引っ掛けられるファウルを受けてPKになる。キッカーはオヤルサバルだ。落ち着いて冷静に右スミへきっちり決めた。2-2。同点だ。

メンデスの逆転弾、オヤルサバルのチーム4G目で止めを差す

 このあと後半21分には逆転弾が生まれる。ボックス内にロングスローを投げ込み、敵GKソリアが中途半端に飛び出して空っぽのゴールにブライス・メンデスがヘディングシュートを見舞った。3-2、逆転弾だ。カラのゴールにボールが吸い込まれるあの光景。痛快だった。

 ヘタフェはあんまりパスが繋がらない。ヘンにボールを浮かしてはヘディングしたりしている。そしてファウルを連発して時間を使う。お得意の、のらりくらり戦法だ。おかげで試合は始終ストップし、ラ・レアルの面々はイライラさせられた。試合を観ているこっちがイラつくのだから無理もない。

 だが後半43分。試合を決める美しいゴールが生まれる。スルーパスに抜け出した途中出場のメリーノがワンタッチでオヤルサバルにパスする。受けたオヤルサバルはこの日のチーム4ゴール目を叩き込む。

 このあと後半47分に、ヘタフェが左からのアーリークロスに途中出場のFWラタサがヘディングシュートを決めて1点取ったが、追い上げもそこまで。ソシエダは4-3で逃げ切った。久保はフル出場した。

 これで彼らは、2勝3分け1敗の勝ち点9で8位に上がった。久保の次節の活躍が待たれる。

課題を残した今節の戦いーーインテル戦で見えた選手層の薄さ

 さて「勝っためでたし」では進歩がない。目についた課題にも触れよう。今節はラ・レアルが抱える重大なアキレス腱が露呈したゲームでもあった。

 アルグアシル監督は、今季戦っている欧州チャンピオンズリーグ(CL)との兼ね合いも考え、この日のスタメンを大幅に入れ替えていた。

 例えば彼らが9月20日に戦ったCL第1節のインテル・ミラノ戦では、インテルのシモーネ・インザーギ監督は大幅なターンオーバーを行なっていた。16日にACミランとのミラノダービーで大勝したメンバーから、スタメンを5人も変えてきたのだ。しかも、そのうちFWマルコ・アルナウトビッチや左WBカルロス・アウグストら4人はなんと初スタメンだった。

 だが一方、そのインテルと戦ったソシエダは、17日に行われたラ・リーガ第5節のレアル・マドリー戦とまったく同じメンバーで臨んだ。つまりラ・レアルの選手層の薄さがアリアリと見えてしまったのだ。

 おそらくアルグアシル監督は「これではマズい」と考えたのだろう。で、ラ・リーガの今節はローテーションした。主力のオヤルサバルやメリーノ、スビメンディらをベンチに置いたのだ。

 だが、結果は散々だった。

主力と控えの力が大きくちがう

 久保のナイスゴールで試合の滑り出しはよかったが、ゲームが進むとともにいつものレギュラー陣に代えて起用された面々の力不足が明らかになった。

 最前線のウマル・サディクは、敵を背負ってポストプレイしようとするのだがハマらない。ボールを弾いてしまい、展開することができない。味方と連係した守備もダメで、「網」に穴を開けてしまう。

 またアンカーのウルコ・ゴンサレスは最終ラインからうまくボールを引き出せず、四苦八苦していた。加えてボールを保持した際、タッチ数が多すぎる。で、敵に寄せられ詰まってしまう。いつも途中から出て来るモハメド・アリ・チョも、トリッキーな動きはいいが確実性に欠ける。

 そんなわけで主力が欠けたソシエダは、いったんは久保の個人技でリードしたもののチーム力で劣った。あのヘタフェに前半で早くも2点を取られて逆転された。それを見たアルグアシル監督は、後半13分に温存していたオヤルサバルやメリーノ、スビメンディらを投入せざるを得なかった。

 するとメリーノによって左サイドが生き返り、スビメンディ、ブライス・メンデスとともに中盤の構成力が完全に蘇った。結局、途中から起用された彼らレギュラー陣の力が大きく、同点、また逆転を可能にしたのだ。今節はこれで勝ったからいいようなものの、ラ・レアルの選手層の薄さという問題は今後もつきまとう。

 さて、この問題をいったいどう解決するのか? 長いシーズンだ。ラ・リーガとチャンピオンズリーグを今後もまったく同じメンツで戦うわけには行かない。いつかは「売り切れ」になる。

 ではローテーションした場合、選手に合わせて戦術を変えるのか? それとも何かほかの方法があるのか? ここはアルグアシル監督の手腕が問われるところだろう。

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【J1 2023 第28節】首位・神戸への挑戦権を得るのは? 〜鹿島 1-2 横浜FM

2023-09-25 07:31:21 | Jリーグ
横浜FMが首位と勝ち点1差に迫る

 スペイン帰りの柴崎岳が、スタメンで出るというので久しぶりにJ1を観た。鹿島アントラーズのホームがすごい雰囲気だ。首位戦線が混迷し、なんでも1位のヴィッセル神戸から5位の浦和レッズまで優勝の可能性があるなどと言われている。これは観なきゃ。

 そんなわけで9月24日の第28節、4位の鹿島と2位の横浜F・マリノスが対戦した。鹿島は前半15分に鈴木優磨のヘッドで先制点をあげるが、続く34分には横浜FMのFWアンデルソン・ロペスが同点にする。

 さて次の1点をどちらが取るか? の争いになった。それは横浜FMだった。後半5分にまたしてもロペスが2点目を取り、彼らが逆転勝ちした。

 これで2位の横浜FMが勝ち点3を得て、首位・神戸への挑戦権を得た。神戸の勝ち点55に対し、横浜FMは54。わずか「1」の違いだ。9月29日の第29節で、ホームの横浜FMと神戸が直接対決する。必見だ。

ロペスが2ゴールを上げ逆転だ

 試合開始から鹿島が前の3〜4枚でプレスをかけ、いかに横浜FMにビルドアップさせないか? の戦いを仕掛けている。で、横浜FMは立ち上がりからギクシャクした。かくて前半15分に狙い通り、鹿島が鈴木優磨のヘッドで先制点を取る。

 その流れの中で22分に横浜FMが敵のプレス網を初めて突破し、フィニッシュ寸前まで行く。やっぱりアンデルソン・ロペスだった。次いで30分頃から徐々に横浜FMが敵を押し込み始めた。34分にヤン・マテウスが右サイドからクロスを入れる。これをロペスが左足で押し込んだ。同点だ。

 後半に入ると早々の5分にパスを受けた横浜FMのFWヤン・マテウスが、ボックス内右でシュートを放った。GK早川友基が弾いたところ、その真ん前にいたロペスが右足で詰めた。本日2ゴール目だ。横浜FMがついに逆転した。

 これで完全に横浜FMが息を吹き返した。おかげで鹿島はブロック守備を続けるハメになる。そのブロックの外周でパスを回されている。岩政監督は流れを変えようと後半12分に仲間と垣田を下げ、MFアルトゥール・カイキとMF土居聖真を投入した。

 だが流れはまったく変わらない。逆にだんだん形勢が不利になって行く。同16分、ヤン・マテウスがボックス右から浮き球のパスをゴール前へ入れる。これにナム・テヒが頭で合わせる。だがGK早川が足1本でわずかに防いだ。

鈴木優磨のラストチャンスは潰える

 そして18分。こぼれ球に反応した鈴木優磨がきれいなシュートを放つが、惜しくもゴール右に逸れる。ボールに対する出足と反応がハッキリ横浜FMの方がいい。鹿島は細かい競り合いで負けている。

 29分。横浜FMの低い位置の右サイドから、ライン裏のスペースにダイアゴナルなロングボールが出る。アンデルソン・ロペスが走り、ゴールラインのギリギリでボールを残した。

 そしてロペスがマイナスのパスを出す。場所はゴールの真ん前。これを宮市がワンタッチで打ったが右に外した。日本人だなぁ、というワンシーンだった。

 48分、最後の攻撃だ。鹿島の土居が右サイドの敵陣中央から、相手GKと最終ラインの間を狙ったクロスを入れる。ファーへ流れた鈴木がこれに左足で合わせるが、左のポストを叩いた。万事休す、だ。

 かくて横浜FMは首位・神戸と勝ち点1差に詰め寄った。

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【国際親善試合】なでしこジャパンが格下相手に8G圧勝 〜日本女子 8-0 アルゼンチン女子

2023-09-24 05:00:23 | なでしこジャパン(ほか女子サッカー)
これでは「守備の練習」にならない

 なでしこジャパンが9月23日、アルゼンチン女子代表と親善試合を戦った。試合は日本が8対0で圧勝した。アルゼンチンはFIFAランキング31位、日本は8位と大きく力が違い、そのため大差の結果になった。

 日本は今年7〜8月に行われた女子W杯を3-4-2-1のフォーメーションで戦いベスト8入りしたが、この試合では新たに4-1-2-3にトライした。彼女たちは今年10月のパリ五輪アジア2次予選を控えている。

 相手のアルゼンチンは守備がゆるく日本のSBは上がり放題。特に左SBの遠藤純はMFのようなポジショニングでプレイしていた。攻撃時には両SBを高く構えて幅を取る、ということだろうが、「ああ、これでは肝心の守備の練習にならないな」と感じた(なでしこのアキレス腱は守備だ)。

 実際、日本は相手を押し込み、ほとんど敵陣でプレイしていた。

 アジアの予選では日本が圧倒するから守備の練習はいらない、ということだろうか? だがそんな近視眼的な考え方には賛同しかねる。常に世界のトップ・オブ・トップを視野に入れて強化すべきだ。ならば日本はすでに攻撃面では十分いいのだから、まず手つかずの守備にもっと手を入れトータルでレベルアップしたいのだが……。

世界基準とアジア仕様のちがい

 もちろんアジア仕様の戦いがあることは承知している。そのための攻撃的な4-1-2-3採用なのだろうな、という想像もつく。特にこの日、アンカーに起用された熊谷紗希のワイドな機能の仕方を考えれば、「なるほどな」とは思う。

 アルゼンチンは4-4-2でキックオフを迎えたが、今日の攻撃的な日本とその新フォーメーションを見て途中で4-3-2-1に変えてきた。いわゆるクリスマスツリーだ。ボランチ3枚で守備が堅い。

 アジアでも日本の対戦相手は守備を固めてくるはずなので、その点ではいいシミュレーションになった。だがこの試合は本当に意味があったといえるのだろうか?

 今日は対戦相手との力関係でいくらでもゴールは取れるだろう。だが相手は関係なく自分に厳しくやる必要がある。自らの課題を見つけ、そこを修正しながら自分たちの細部を詰めて行かなければ始まらない。その意味では疑問の残る試合だった。

 日本のスタメンはGKが平尾知佳。最終ラインは右から清水梨紗、高橋はな、南萌華、遠藤純。中盤では熊谷がアンカーを務め、右IHは長谷川唯、左IHは長野風花。3トップには右から猶本光、田中美南、宮澤ひなたが入った。

強くて速いインサイドキックのボールがほしい

 例えばこの試合を観ただけでも、課題は山とある。

 序盤で右に開いたFW田中美南がサイドチェンジしようとしたが、ボールが逆サイドまで届かない。思わず目をこすった。遠藤はトラップが大きくなりボールロストする。まるで20年前の男子代表を見ているかのようだった。

 その当時、「日本人選手は一発でサイドを換えられない。いったん中央の選手を経由しないとサイドチェンジできない」などと問題になっていたが、久しぶりにそんな昔話をなつかしく思い出した。

 いちばん気になるのはボールスピードだ。

 まず、これは彼女たちのインテンシティ(プレー強度)が高くないこととも関係しているが、全体になでしこジャパンはボールスピードが決定的に足りない。インサイドキックのボールが「てん、てん、てん」とゆるく弾みながら転がるのではダメだ。あれでは密集地帯を通せない。スパン! と瞬時に味方の足元に届く速いボールを出したい。

 例えば女子W杯ではイングランドやスウェーデン、オーストラリアなど上位に入った各国女子代表は、例外なくインサイドキックで目にも止まらぬ強いボールを出していた。まずそこから始める必要がある。

左SB遠藤純はサイドのレジスタだ

 ただ選手個々を見れば非常にいいものを持っている。だからこそチームとしての改善点が気になるのだ。

 例えば選手別では、遠藤は攻撃面は非常にいい。高い技術を持っている。正確無比でゲームを動かすキーパスが出せる。最終ラインのレジスタだ。オーバーラップしてのプレーが特によかった。

 レジスタ的な機能は時代とともにかつてのピルロのようなアンカーに降り、今では最終ラインにまで降りて来ている。それだけサッカーは攻撃的になったのだ。

 また熊谷のアンカーもハマっていた。ボールを左右中央に振り分け、全体のコンダクターの役割をする。彼女がいままでセンターバックでやっていた組み立ての仕事を、一列上がってやっているような感じだ。彼女のアンカー機能により、いっそうチームが攻撃的になった。

 一方、猶本は第二の全盛期を謳歌しているようなプレーぶり。またこの日2ゴールの長谷川はドリブルも織り交ぜ、いつもより攻撃的なプレイを見せた。敵を欺くここぞのボールコントロールなど、ひとクラス違うさすがのプレーを披露した。

 女子W杯で得点王になり、マンチェスター・ユナイテッドWFCへ移籍の宮澤ひなたはどんなプレイをするのかな? と思って観たが、この試合ではいまいち冴えが見られなかった。前半45分の弱いシュート、あれはない。後半3分にもチャンスを迎えたが、なぜあそこでワンタッチで打たなかったのだろうか。

途中出場で2GのFW清家貴子がすごい

 さて得点シーンは書き切れないが、4つのゴールが印象に残った。まず前半2分の1点目だ。田中美南が前線の右サイドで敵DFが犯したボールコントロールのミスを見逃さず、ボールを奪いボックス内からシュートを決めた。抜け目のないゴールハンターという感じだ。

 次は同25分の3点目だ。左の遠藤がクロスを入れ、CB高橋が飛び込んで倒れながらヘッドで押し込んだ。なぜCBの高橋があそこにいるの? という意表を突くゴールだった。彼女の機敏な動きはすばらしい。

 続いて後半16分の5点目である。アンカー熊谷からの縦パスを受けて途中出場のFW植木理子がポストプレイ。複数の守備者に寄せられボールがこぼれるが、途中出場のFW清家貴子がすかさず拾って右足で詰めた。彼女は一部のスキもなく、ピッチを見張っているようだ。

 植木の堂に入ったポストワークと、清家の鋭い動きが目を引いた。清家は同47分にも、ボックス手前で敵GKの頭上を抜く山なりのシュートを放ち8点目を獲った。ナイスアイディアだ。

事情はわかるがマッチメイクに疑問が残る

 なお先日、MF長谷川唯がメディアにコメントを求められた映像を観たが、彼女は「今回の試合は女子W杯で出た課題を修正するというようなゲームではない。徹底的にボールを保持して攻撃する試合だ」という意味のことを発言していた。でもそれって意味あるの? と感じる。まあ彼女は組まれた試合をこなすだけなのだから仕方ないが。

 これを言い始めると、そもそもアルゼンチン女子代表とのマッチメイク自体の問題になってしまうが……4日に行われた記者会見で、佐々木則夫女子委員長は「女子W杯で8強入りしたが、別の国から対戦オファーはなかった」と明かした。

 各大陸で五輪予選が開催されているため試合が組みにくい、という事情もあるのだろうが、何か解せない疑問が残るスッキリしない試合だった。

 なお、なでしこジャパンはパリ五輪・アジア2次予選でグループCに入っている。ベトナム、ウズベキスタン、インドと同組だ。今年10月26日から11月1日にかけ、ウズベキスタンで集中開催される。さらに来年2月には最終予選がある。アジアの出場枠「2」を争う戦いだ。

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【攻撃は最大の防御なり】久保が巻き起こす珍現象 ~マドリー戦とインテル戦で起こったこと

2023-09-23 05:04:17 | CL/EL/EURO(世界規模のサッカーリーグ)
久保という存在が相手の力を奪い取る

 レアル・ソシエダがラ・リーガ第5節で経験したレアル・マドリード戦(1-2の逆転負け)、またチャンピオンズリーグ第1節のインテル・ミラノ戦(追いつかれて1-1の引き分け)においては、とても興味深い現象が見られた。

 試合に先発で出ていた久保建英がバテて試合から消える、もしくは途中交代でいなくなると、たちまち相手チームに勢いが出てソシエダは劣勢になった。

 つまり久保という名の「攻撃こそが最大の防御なり」が実証されたのだ。

久保によって敵は自陣に張り付けにされる

 これら2試合とも、ソシエダの対戦相手は久保に2人のマークを付けてきた。その久保が消えるということは、敵の守備の負担が軽くなることを意味する。そのぶん攻撃に力を割ける。

 それだけじゃない。いままでは久保にさんざん攻められ、自分たちは全軍が自陣に張り付けにされていたのだ。そのイヤな相手がいなくなれば、「これからオレたちは攻撃に出られるぞ」ということになる。

 さらには久保が敵に与えていた心理的脅威からも彼らは解放される。すなわち対戦相手は、心身ともに伸び伸びと攻撃に専念できるようになるわけだ。

 ひるがえって味方はどうか? 久保という頼みの綱がなくなり、実質的にチーム力が激しく落ちる。またメンタル的にも「もう彼はいないぞ」と思うと気持ちが下がる。

 何もいいことがない。

久保への警戒が相手の攻撃力を削ぎ落す

 久保がスタメン出場したマドリー戦とインテル戦はどちらも、ソシエダが先制点をあげてリードしていた。だがマドリー戦では後半に逆転負けを食らい、インテル戦でも後半に巻き返されて引き分けに持ち込まれた。

 すなわち久保が消耗して運動量が落ち試合からいなくなる(前者)、もしくは途中交代で試合から退場すると(後者)、とたんに対戦相手が有利になっている。

 これは決して偶然の一致じゃない。

 いま絶好調の久保が途中で消えるということは、将棋でいえば飛車を落とすようなものだ。将棋の対局中にいきなり飛車落ちになれば、相手が有利になるに決まっている。

 それだけ久保という大きな攻撃の駒が敵を守備に注力させ、相手の攻撃力を削ぎ落しているのだ。久保という存在そのものが、黙っていても相手の力をトータルで弱らせる。

 非常におもしろい現象である。

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【CL 23/24 D組 第1節】久保建英がCLデビューする 〜レアル・ソシエダ 1-1 インテル・ミラノ

2023-09-22 05:00:40 | CL/EL/EURO(世界規模のサッカーリーグ)
完全に試合を殺し切れ

 欧州チャンピオンズリーグ2023/24のグループD、第1節が9月20日に行われた。ホームのレアル・ソシエダは前回準優勝したインテル・ミラノと対戦し、激闘の末、1対1の引き分けに終わった。この試合で右WGの久保建英が先発CLデビューした。

 試合開始4分、ソシエダは相手ボールを奪い、カウンターからMFブライス・メンデスが先制点を上げる。以後しばらくインテルにボールを握られたが、その後は彼らに何もさせずに終盤へもつれ込んだ。

 一方、ゴールがほしいインテルは、FWアレクシス・サンチェスらを途中投入し必死の反撃。どん詰まりの87分にFWラウタロ・マルティネスが同点弾を放ち、辛くも引き分けに持ち込んだ。ソシエダが幾度かあった決定機をモノにして試合を殺し切っていれば、まったく違った結果が出るはずだったが。

 彼らは現地時間17日に行われたラ・リーガ第5節のマドリー戦と同じメンバーで臨んだ。一方のインテルは、16日のACミランとのミラノダービーで大勝したメンバーからスタメンを5人も変えてきた。しかも、うちFWマルコ・アルナウトビッチや左WBカルロス・アウグストら4人は初スタメンだ。対照的である。

 マドリー戦と打って変わって、非常に緊張感のある締まった試合だった。ソシエダはマドリー戦とは一転し、大人のサッカーをした。開けっ広げに撃ち合うのではなく、相手の良さをうまく消しながら自分たちだけがおいしいところを取ろうとしている。まるでイタリアのチームみたいだった。またマドリー戦では久保への依存度が非常に高かったが、この試合における久保は11分の1の機能を果たした。

インテルは久保を消しに来た

 ソシエダはラ・リーガでも好調な左ウイングのバレネチェアが利いている。彼らのフォーメーションは4-3-3だ。一方のインテルは3-5-2で、守備時5-3-2に変化する。

 開始4分。中央でボールを保持するインテルのDFバストーニを、ブライス・メンデスとFWオヤルサバルで挟撃した。そしてボールを奪い取り、メンデスが左足でゴールする。早くも先制弾だ。

 だがその得点後は14分までずっとインテルがボールを握り、スペイン人たちがプレスをかける展開が続く。彼らは献身的にボールに圧をかけている。だがいざソシエダが自陣でボールを持つと、今度はイタリアの軍団がすごい勢いでプレッシャーをかけてくる。

 ソシエダは勝つために非常に辛い試合運びをしている。インテルに何もさせてない。今日の彼らはいままで観たことがないほど強度が高い。プレスがよく利いている。

 一方、インテルは久保に細心の注意を払っている。久保がいる右サイドには豪勢な人垣ができ、彼にボールが入るとMFムヒタリアンとDFカルロス・アウグストがダブルチームで守備対応してくる。

オヤルサバルに絶対的な決定機が

 37分、ソシエダの左SBティアニーが超ファインプレーをする。彼らは前線でボールを奪われ、同時に上がっていた数人の選手が置き去りにされたのだ。自陣には広大な無人のスペースがある。完全なインテルのカウンターになりかけた。

 だが、そのときティアニーが弾けるように前へ飛び出しボールを強奪した。すばらしい守備だ。しかも失点を未然に防いだだけでなく、彼はなんとシュートまで行った。

 インテルはラ・レアルにゴール前まで迫られると、自ゴール前に7〜8人の城砦を築いて守備をする。いかにもイタリアのチームらしく、こういうところは徹底している。

 そんな44分、どフリーだったオヤルサバルのシュートがバーを叩く。あれは絶対に決めなきゃいけない。試合後に判明するわけだが、あれさえ決めていれば…………勝ち越し弾になっていた。

 続く45分、久保が抜け出し、スルーパスを受けてワンタッチで左足を振るがGKゾマーに防がれる。前半が終わった。シュート本数はソシエダ8本、インテル1本。ポゼッション率は双方50%づつ。前半、彼らはインテルにほとんどサッカーをさせなかった。

ミケル・メリーノのヘッドがバーを叩く

 試合は後半に入り46分だった。ブライス・メンデスの中央でのFKは実に惜しかった。インテル・ゴールの左を狙ったが、GKゾマーが横っ飛びで辛くもセーブした。48分のチャンスもそうだ。左コーナーキックを久保が蹴る。ミケル・メリーノが頭で流し、後ろのオヤルサバルがヘッドでジャストミートしたが、GKゾマーが倒れながらセーブした。

 また51分には久保にも際どいチャンスが来る。彼が右サイドでボールをもらい、マーカーと1対1になったのだ。久保は左から巻くシュートを狙ったが、軌道は惜しくもゴール上方に外れた。

 54分、インテルはアルナウトビッチに代えてテュラム、アンカーのクリスチャン・アスラニに代えてダヴィデ・フラッテージ、またバストーニを下げてディマルコを投入してきた。メンバー交代後の彼らは、ムヒタリアンがアンカーを務めて中央でボールの配給役をしている。

 続く69分には、久保の左CKからミケル・メリーノのヘッドがバーを叩いた。これもギリギリだった。一方、インテルはムヒタリアンに代えて攻撃的なアレクシス・サンチェスを中盤に投入してきた。ソシエダも活発に選手交代する。オヤルサバルに代えてウマル・サディク、また72分には久保を下げてアルバロ・オドリオソラを入れた。

「攻撃こそ最大の防御なり」を実現していた久保がいなくなり、これでシモーネ・インザーギは攻撃のことだけ考えて指揮すればよくなった。久保のマーカーだった2人も解放され、最大限、攻撃に専念できる。守備の負担が減った。インテルが後半に巻き返し反撃できたのは、こんなふうに久保が消えたことにも一因がある。

ソシエダは試合を殺し切るべきだった

 インテルの79分の一発は際どかった。アレクシス・サンチェスが裏のスペースにスルーパスを出し、受けたカルロス・アウグストが左サイドをドリブルで独走して折り返しを入れる。テュラムが右足のワンタッチでゴールへ叩き込んだ。だがこれはオフサイドだった。

 幾度かの攻撃的な交代の後、明らかにインテルに流れが来ている。それがはっきりしたのは87分だった。右サイドの遠目からフラッテージが打ったシュートがゴール前を抜けてラッキーなスルーパスになる。これを受けたラウタロ・マルティネスが、逆サイドから倒れながら左足ワンタッチで流し込んだ。同点弾だ。

 このあと6分のアディショナルタイムを経て試合は終わった。前半は完全にソシエダのゲームだったが、後半にインテルが選手交代で盛り返しチャンスを作った。彼らは後半アディショナルタイムにも攻めっ気マンマンで盛り上がっていた。その流れからいえば、逆にソシエダは引き分けで済んで幸運だったのかもしれない。

 だが何度もあった絶対的な決定機を確実にモノにしていれば、彼らが快哉を叫ぶ運命にあったことは確かだ。好機にしっかり決め切り試合を殺してさえいれば、インテルがゾンビのように蘇ることはなかっただろう。その意味ではバスクのチームには、いいクスリになったゲームだといえる。

 さて今大会は、果たして世界が久保建英を「発見する大会」になるのだろうか? マークが厳しいなか、それでも久保には輝く義務が課せられている。

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【セリエA 23/24 第4節】ブラホビッチ&キエーザの2トップが3Gで仕上げる 〜ユベントス 3-1 ラツィオ

2023-09-21 09:43:28 | その他の欧州サッカー
鎌田がセリエA初アシストを決めた

 セリエAは9月16日に第4節を行ない、ユベントスがホームのアリアンツ・スタジアムでラツィオと対戦した。ユーベが先に点を取って常に試合をリードし、守っては鉄壁の城塞をゴール前に築いた。

 ユベントスはブラホビッチとキエーザの強力2トップが豪快に計3点取り、あとは5-3-2で手堅く守って一丁上がり。これがイタリアのサッカーだ、と言わんばかりだ。絵に描いたような試合運びだった。

 ラツィオの鎌田大地はスタメン出場して1アシスト。サッリ監督はこの試合で5人を交代させたが、鎌田をいちばん長く引っ張った。期待の現れだろう。だがチームがサッリの描く精密機械のような戦術を実現するには、まだ時間がかかりそうだ。

 ラツィオのフォーメーションは4-3-3だ。GKはイバン・プロベデル。最終ラインは右からアダム・マルシッチ、ニコロ・カサーレ、アレッシオ・ロマニョーリ、エルセイド・ヒサイが構える。

 中盤は右から鎌田大地、ダニーロ・カタルディ、ルイス・アルベルト。3トップは右からフェリペ・アンデルソン、チーロ・インモービレ、マッティア・ザッカーニだ。

キエーザが今季3ゴール目を叩き込む

 ラツィオのフォーメーションは4-3-3。一方。ユベントスは3-5-2だ。サッリのチームは例えばサイドにある相手ボール時、そのボールに対し横方向を極端に絞る。逆サイドの選手がピッチの中央くらいまでボールサイドに寄せている。

 試合開始からほんの10分だった。ユベントスは右サイドからプラスのクロスが入り、ブラホビッチがワンタッチで決めて見せた。早くも先制だ。また14分のユーベの右方からのデザインされたFKは、受け手が完全にフリーになっていた。

 ラツィオは「可能ならワンタッチ縛り」みたいなサッカーだ。少ないタッチ数でパスを繋ごうとするが、ユーベの守備が堅くなかなかうまく行かない。そして24分。ゴール前で鎌田がワンタッチで左足のボレーシュートを見せるが、わずかにボールはバーの上へ。あれを決めていれば、また称賛の嵐だったが…………。

 そして26分だ。ユーベのキエーザが今季3ゴール目を叩き込む。右サイドから流れてきたボールを、左足アウトサイドでゴール左スミぎりぎりにワンタッチで決めた。ボールは唸りを上げながらスッ飛んで行った。すごいシュートだ。2-0になる。

サッリのチームは思案投首だ

 ラツィオはペナルティアーク辺りで縦にクサビのボールを入れるが、パスは繋がっても2本まで。落としたボールが連鎖して行かない。あの落としたボールを受けるとき「あそこで3人目の動きを入れたいんだろうな」などと、やりたいことはよくわかるが…………という感じだ。

 要はパスの受け手に動きが足りない。複数の選手による連動性がなく、なんだか壊れた時計のようだ。サッリの考えるサッカーを実現するには、かなり高度な技術と運動量が必要になる。時間もかかる。

 一方、ユーベはラツィオがゴール前で超ショートパスをワンタッチでパン、パン、パン、と繋いでくるのを読んでおり、ゴール正面のペナルティアーク辺りに密集した頑強な人垣を作ってはね返す。確かにあのゾーンを固めておけば失点しないだろう。彼らの守備はロジカルだ。何しろ2点の先行は大きい。

 かたやラツィオはサッリに与えられた教科書と局面とを照らし合わせながら、思案投首でボールを繋いでいる感じだ。スムーズさがない。それに横パスやバックパスでなく、縦方向への有効なパスが少ない。なんだか「ポゼッションサッカーの成れの果て」という印象だ。

 ラツィオの前半のポゼッション率は66%ある。だが有効なパスが決定的に足りない。

ルイス・アルベルトのゴールでラツィオが追撃

 後半の立ち上がりからラツィオはダニーロ・カタルディを外し、アンカーをニコロ・ロベラに代えた。一方のユーベは金持ちケンカせず。相変わらず守備時5-3-2で手堅い。

 それにしても鎌田はサッリに本当に認められている。この試合でサッリは5人の選手を代えたが、鎌田をいちばん長く引っ張り残り10分まで使っている。

 確かにゴールへ直結する際どい動きをしているのは彼なのだ。その証拠に51分、鎌田が敵ゴール脇のハーフスペースでドリブルを使ってチームを動かした。見応えのある際どいシーンだった。

 ユベントスは相手ボール時、人への寄せ方に強い圧迫感がある。ギリギリまでボールホルダーとの距離を詰める。で、行けると踏んだら、相手のカラダを突き抜けて敵を通り過ぎるような勢いでデュエルを挑む。こんな強度の高い密着守備をされたら、蛇に睨まれたカエルのようになってしまいそうだ。

 そんな64分だった。ラツィオが1点を奪う。ペナルティアークの手前で、鎌田がカンビアーゾに強く寄せてボールを奪った。そのこぼれ球をひろった10番のルイス・アルベルトが、右足インステップでゴール右上スミへ豪快に決めた。鎌田はセリエA初アシストだ。

ブラホビッチがドッピエッタを達成する

 だが続く67分にユーベがとどめを差す。マッケニーが右サイドのハーフウェイライン辺りからブラホビッチのいるゴール前に向け、「ここしかない」という素晴らしいピンポイントのアーリークロスを入れる。

 かたやブラホビッチはゴール前で3対1と不利だったが、胸トラップから左足でひとつ触って余裕をもって右足で決めた。まるで精密機械のような2人の凄まじいゴールだった。ブラホビッチはドッピエッタ(1人で2ゴール)達成だ。そして試合終了である。

 ユベントスは、ブラホビッチとキエーザの2トップが実に素晴らしかった。また残り15分くらいで、途中から入ってきたティモシー・ウェアの守備も見応えがあった。彼はあのジョージ・ウェアの息子。まだ23才だし、伸びそうだ。

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【CL・インテル戦】明日は世界が久保建英を「発見する日」になるか?

2023-09-20 19:18:23 | CL/EL/EURO(世界規模のサッカーリーグ)
チャルハノールが忘れられないように

 いまいちばん気になることは、あのトルコ代表のハカン・チャルハノールは明日の朝に行われるチャンピオンズリーグ・インテル対ソシエダ戦に出るのかどうか? だ。

 彼は日本対トルコ戦後、「小柄で左利きの選手がいたよね。名前は難しいけど」と言ったらしいが、もし明日試合に出るなら「久保建英」という名前をイヤでも覚えて、一生忘れられないようにしてやれよ久保! と思う。

 死ぬまで忘れられないようにしてやれ、と。

 さて明日は、世界が久保を発見する日になるのだろうか?

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【CL 23/24 E組 第1節】奇跡のゴールで崖から落ちずにすんだ 〜ラツィオ 1-1 アトレチコ・マドリー

2023-09-20 09:25:14 | CL/EL/EURO(世界規模のサッカーリーグ)
後半アディショナルタイムの劇的な幕切れ

 欧州チャンピオンズリーグ2023/24が開幕し、9月19日(日本時間20日)にグループEの第1節が行われた。日本代表MF鎌田大地が所属するホームのラツィオ(イタリア)と、アトレティコ・マドリード(スペイン)が対戦した。

 アトレチコが前半29分に先制し、かたや、無得点のラツィオは崖に追い詰められていた後半アディショナルタイムだった。直前に行われた最後のコーナーキックに上がって参加していたラツィオのGKイバン・プロベデルが、なんとクロスに合わせた点取り屋さながらの豪快なヘッドを叩き込む。ラツィオは劇的な幕切れで引き分けに持ち込んだ。彼らは崖から飛び降りずにすんだ。

 グループEは彼らのほかにフェイエノールト、セルティックが同居する。ラツィオは第1節で負けず、勝ち点1を取れたのは限りなくデカい。なお彼らのポゼッション率は51%だった。

 スタメンは鎌田がいつもの右インサイドMFだ。ほかにマティアス・ベシーノがアンカー、10番のルイス・アルベルトが左インサイドMFを務める。

 3トップはフェリペ・アンデルソン、チーロ・インモービレ、マッティア・ザッカーニが先発。最終ラインは右からアダム・マルシッチ、パトリック・ガバロン、アレッシオ・ロマニョーリ、ルカ・ペレグリーニだ。

前半12分に鎌田が初シュートを放つ

 ゲームの立ち上がり。戦術家・サッリ監督が指揮を執るラツィオはうまくボールを運んでいるが、なかなか前線に槍の切っ先が入らない。彼らのフォーメーションは4-3-3。一方のアトレティコは5-3-2だが、彼らは3-1-4-2でビルドアップする。また2-3-4-1のような形からも組み上げる。

 まずラツィオが攻勢を強める。前半12分、ルイス・アルベルトからのダイアゴナルなパスを鎌田がフリックし、インモービレとのワンツーからミドルシュートを放つ。だがGKオブラクが止める。鎌田の初シュートだ。

 この流れで15分頃、いったんアトレチコは完全に自陣に引いた。28分にはラツィオのマルシッチからのアーリークロスに、ルイス・アルベルトがワンタッチで痛烈なシュートを打つ。これはゴール右に外れた。

 続く29分だった。スペインの軍団に思わぬ幸運が訪れる。アトレチコが敵ボックスの左外からボールを落とす。呼応したパブロ・バリオスが強烈なシュートを放つと、鎌田が出した足にボールが当たってゴールに入ってしまった。シメオネのチームが先陣を切って勝ち名乗りを上げた。

 しかしその後も相変わらずサッリの配下がボールを握り、39分頃にはアトレチコを押し込んだがゴールは取れず。パスミスが多くうまく行かない。かたやアトレチコは攻撃が終わるといったん帰陣し陣形を整える。こまめにその作業を繰り返す。かくて前半が終わった。ラツィオの前半のポゼッション率は60%だった。

サッリの辞書にはプレスがない?

 後半に入ってまず47分だ。ラツィオのボールになると、アトレチコはまた完全に自陣に引いた。そしてボールを奪うと遠路、攻め上がってくる。これはこの日のイタリアチーム対策なのか? それとも彼らのゲームモデルなのだろうか?

 ならばラツィオは逆に敵を引きつけている時の自陣でボールを奪い、すぐ速いカウンターをかけたい。なぜならこのとき敵陣はお留守だからだ。だが、なかなかうまく行かない。というよりおそらく彼らにはそういうカウンターのノウハウがないのだ。ああ、また敵に完全に引かれてしまった。

 サッリが考えるサッカーは基本的にはポゼッションスタイルだが、攻めが個人による単発でなかなか形にならない。連動した二の矢、三の矢のメカニズムがなく、チームがどうも機能してない。セリエAのときと同じだ。敵を崩す劇的で有効な動きがない。集団としての機能がまだ未完成なのだろう。

 52分、セットプレー崩れから、ボックス外で鎌田が左足からミドルシュートを放つが入らず。こぼれ球をボックス右のチーロ・インモービレが保持し、一連の流れでパトリシオ・ガバロンが右足を振った。だが右外側のサイドネットに当たって入らない。

 アトレチコ陣でラツィオの選手が複数人数でボールへプレスに行くと、ポーンと一発でサイドチェンジされた。彼らはプレッシングのいなし方に慣れているようだ。続く55分には敵GKのボールをアンデルソンがカットし、ボックス内からインモービレが至近距離でシュートするもGKにセーブされた。

 ラツィオの選手は、敵ボールホルダーの足元へもっとプレスに行けばいいのに行かない。なぜかプレスがゆるい。そして62分にサッリ監督は鎌田に代えて、同じポジションのマテオ・ゲンドゥージを投入した。

カウンターが身についてない遅攻のラツィオ

 66分には、アトレチコのセットプレーから得点機を作られる。グリーズマンが左足で浮き球のクロスを入れたが、ボールは跳ね返された。だがそのこぼれ球を回収したモラタが至近距離でシュートを放つ。しかしディフレクションしたボールはポストを叩いた。

 ラツィオが一度攻められてからのカウンターの場面だ。ボールを奪った。速く攻めたい。だが前にボールを出すところがあるのに出さない。なぜか敵がすっかり帰陣するのを待ってからパスを出している。これがサッリの教えなのだろうか? というよりその教えがまだ未消化で、迷いながらプレイしているのだろう。

 また彼らはアトレチコがディフェンディングサードに組んだ守備ブロックの外周を、「コ」の字型にボールを回している。いちばんダメな攻撃のパターンだ。攻めが停滞している証拠である。そもそもブロックを作られる前に攻めたいし、もっとゴールに向かってワンツーをかますなどして直線的に崩したいのだが…………。

 ラツィオは攻めが遅いので、常に引いた敵のブロックの外側から攻めることになる。もっと速い攻めが欲しい。前からプレスをかけるなど、工夫したい感じだ(それともサッリの辞書にはないのだろうか?)。

ポジティブトランジションが致命的に鈍い

 アトレチコは1-0で勝つつもりだから帰陣が速い。これに対しラツィオは遅攻オンリーなので、いつも敵が全員引いてから作ったブロックを相手にすることになる。これでは不利だ。ハマっている。

 また彼らは撤退守備しかしない。前から行かない。前からハメられる局面はたくさんあるのに、そのすべを知らないのだろうか。彼らは単純なブロック守備しかしない。

 そして84分頃からオープンな展開になり、ラツィオが攻めた。だが可能性のないボックス外からのシュートで終わった。

 彼らは負けているのだから、ボールを奪ったら爆発的なスプリントをして押し上げないとダメだ。ポジティブトランジションが鈍い。遅攻に偏っている。そのため敵ブロックの外周でボールを回すか、遠目から効力のないシュートを打つだけに終わっている。この点は改善しないとダメだ。

 かくて後半アディショナルタイムだ。ついにサッリのチームがゴールを攻略する。劇的な幕切れだった。最後のコーナーキックははじき返されたが、ルイス・アルベルトがゴール前にダイアゴナルなクロスを入れる。ラストプレイのコーナーキックのために上がっていたラツィオのGKイバン・プロベデルが、前に飛び込みヘッドで豪快にゴールへ突き刺した。

 まるで奇跡のような引き分けだった。おそらく鎌田は「持っている」のだろう。続く第2節は10月4日(日本時間5日)に行われ、ラツィオは古橋亨梧ら5人の日本人選手がいるセルティックと対戦する。

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【ラ・リーガ 23/24 第5節】マドリーが「久保劇場」を止めるにはファウルしかなかった 〜レアル・マドリー 2-1 レアル・ソシエダ

2023-09-19 05:00:00 | その他の欧州サッカー
時空を歪めた久保のチャンスメイク

 ラ・リーガ第5節が9月17日(日本時間18日)に行われ、レアル・マドリードとレアル・ソシエダが対戦した。ソシエダが開始早々の前半5分に先制したが、後半にマドリーが2点を取って辛くも逆転勝ちした。特に前半は、4-3-3の右ウィングでスタメン出場した久保建英の「ワザのデパート」が鋭意開店した。

 もはや久保を止めるには通常の手段ではムリなようだ。マドリーの例に習えば、わざわざマーカーを2人つけるか、あとはファウルくらいしかない。どちらも正々堂々なる日本人的な価値観とは縁遠いが。

 だが白い巨人はそのすべを知っていた。いい見本を、久保に股抜きされて辱めを受けた元ドイツ代表MFトニ・クロースが見せた。抜かれて肘ブロックしたクロースのファウルには黄色いカードが出た。久保とマッチアップしていた彼はさんざんやられてイラ立っていたのだ。

 前半終了間際。このとき久保はたったワンモーションで、左足の裏でボールを一度引き、すぐ前に押し出す必殺ワザを繰り出して簡単に股抜きした。当該シーンが象徴的だが、それだけこの日の久保は危険な香りを漂わせていた。

ソシエダの先制ゴールを演出した

 久保のショーは試合開始5分にすぐ開演した。このときボールはソシエダの最終ラインを右から左へと経由していた。そして左サイドの中盤からアンデル・バレネチェアが横方向に持ち出す。で、右にいたブライス・メンデスにボールを渡す。

 右サイドに開いた久保に彼から斜めのボールが出た。久保はまず右足でトラップし、動きながら1つ、2つ、ボールを小突いて中の状況を観察する。で、ゴールに向けてカットイン。そして力まずほんの軽い感じで、左足を小さく後ろに振り上げ鋭く前へ振った。

 インフロントで瞬時に低いクロスが入る。強くて速いボールがゴール方向へ飛んだ。これにバレネチェアがワンタッチで合わせたが、GKケパ・アリサバラガがストップした。

 だがボールはこぼれ、バレネチェアが2〜3度プッシュしてゴールへ押し込んだ。マドリーの出鼻を挫く先制弾だ。彼は今シーズン3点目。2試合連続である。

取り消された幻のゴラッソ

 続く11分。世界は衝撃的なシーンを目の当たりにする。

 中盤の中央でブライス・メンデスから交差する形でボールを受けたミケル・オヤルサバルが、右サイドへボールを振る。これを敵ボックス右角で受けた久保は右足でトラップし、ドリブルでカットインする。

 いったんわずかにエリア内へ入った。だが敵DFが寄せてきたため、細かい複数のボールタッチでゴールから小さく遠ざかる。で、マーカーをかわす。その一瞬後だ。ゴールから逃げ、まさかシュートするなんて周囲に認知させない絶妙なタイミングだった。ペナルティアーク右手前から強く左足を振り抜いたのだ。

 ダイアゴナルな美しい軌道を描く弾丸シュートが、ゴール左スミのサイドネットに突き刺さった。凄まじいゴールだった。と、だがオフサイドの位置にいたオヤルサバルの背中に、なんとシュートしたボールがわずかにかすっていたというのだ。

 なんてことだろう。さっきのあのゴラッソはオフサイドで取り消されてしまった。幻のミドル弾。ありえない損失だ。これは文化財保護法に違反しているのではないか?

ボックスからボックスへと長駆ドリブル

 29分のプレイも鳥肌モノだった。マドリーの攻撃を弾き返したあと、右サイドの低い位置でSBトラオレが保持したボールを右前にいた久保が受けたシーンだ。

 このとき久保は一度ボールをもらいに下がる動きでマーカーとの距離を空け、一瞬で前方へ急ターン。今度はサイドに開いてトラオレからの角度を作って球出しを誘う。危険を察知したマーカーが久保との距離を詰めようとしたその瞬間だった。

 久保はトラオレから引き出した縦パスに左足でワンタッチして前へと角度をつけ、マーカーが絶対に触れない前方のコースにボールを弾いて転がした。ボールは勢いよく無人の前方スペースへ抜けて行く。そのあとを走る久保は、2人のマーカーを完璧に振り切ってボールを支配下に置いた。

 そして60メートル近くをドリブルしてカットイン。敵ボックス内へ侵入し、左に切り返して左足を強振した。このシュートはGKケパが倒れながら辛うじて弾いたが、もし決まっていたら歴史に残るだろう。

最初のワンタッチでマーカー2人を置き去りに

 それにしてもすごい攻撃だった。このときボールは自陣のボックス近くから、敵陣のボックス内までえんえん動いた。久保ひとりでこのカウンターを実現したのだ。

 しかもSBトラオレからパスを受けたときの久保は、たった一度しかボールに触ってない。なのにそのワンモーションでマーカー2人を完全に置き去りにした。あのワンタッチ・コントロールだけで、ご飯がおいしく3杯食べられる。

 そして直後の31分には敵陣でまたトラオレからパスを受け、彼は右からボックス内へ侵入した。敵DFと正対し、左足で低い浮き球のピンポイントなクロスを入れる。マーカーなんていないも同然だ。

 そこへジャストのタイミングでゴール前に飛び込んできたミケル・メリーノが、倒れながら痛烈なヘディングシュートを見舞った。GKケパが横っ飛びでセーブしたが、これも決定的なシーンだった。

久保の前に立ちはだかる新たな課題とは?

 ただし久保は後半になるとガス欠で運動量が落ち、残念ながら消えてしまった。先日スタメン出場した日本代表のトルコ戦と同じ展開だ。

 守備もするようになった日本のメッシは、そのぶん新たなテーマとしてスタミナ(運動量の維持)が課題になる。挑んでほしい。

 後半は久保の運動量が低下するにつれ、相対的にマドリーのポゼッションする力が増して行った。攻撃こそ最大の防御なり。つまり彼の攻撃力が敵を自陣に張り付けにし、裏を返せばそのままソシエダの防御力にもなっているわけだ。

 かくて後半、アンチェロッティのチームが2点を取って逆転勝ちした。ただし本題はそこではなく、あくまで久保という「文化財保護」の観点から記憶に残るゲームだった。

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【第2次森保ジャパン】久保建英を「偽9番」でスタメン起用せよ

2023-09-18 05:00:11 | サッカー日本代表
彼は4つの大きな欠点を解消した

 まず結論から先にいえば、4つの大きな欠点を克服した久保建英をスタメンで使わないテなんてない。

 もともと久保は高い技術はあっても、オフ・ザ・ボールと守備、トランジション、献身性が大きな駄目ポイントだった(これは自ブログで過去に詳しく書いたのでここでは繰り返さない)。

 だからいくら技術はあっても、その程度の選手で終わるのだろうと考えていた。「子供のお遊戯」で終わるのだろう、と。ゆえに個人的には見切っていた。

 そもそも彼はボールを触るのが大好きな選手であり、逆にいえばボールを握ってこそ初めて輝く選手。典型的な、悪い意味での「ボールプレーヤー」だったからだ。

 もうひとつはフィリップ・トルシエがかつて言及していたが、例えば久保や三笘薫をベタ褒めする記事を作ってスターに祭り上げ、商業的利益を得ようとするメディア等を先兵として企画される「スターシステム」にホトホト嫌気がさした、というのもある。

 で、久保に関してはそんなふうに結論づけ、やがてスペインでの彼のゲームもいつしか観ることはなくなって行った。

9月シリーズの久保は「完全」だった

 だが久しぶりに第2次森保ジャパンの9月シリーズで久保のプレイを見てみると、驚いたことにその4つの大きな欠点がきれいに修正されているではないか。

 これで彼はすべてにおいてパーフェクトな選手になった。ならば、彼を使わないテなんてない。

 あのドイツ戦で2アシストして彼の独壇場になった最後の15分間と、トルコ戦で彼が見せた攻守におけるすべてのプレイ。特にトルコ戦では、かつての彼が決してやらなかった献身的なプレッシングが光っていた。またボールプレイはもちろんのことだ。

(ただしトルコ戦では消えている時間帯があった。だがそれもあのゲーム、彼は守備でかなり走っていたのでバテたのだろうと推察している)

 久保にはもう欠点らしき欠点はない。4つのウィークポイントを克服したために、9月シリーズでは持ち前の超絶的なテクニックをひときわ光らせていた。完全無欠だ。

パズルのピースが合わない代表チーム

 ただし第2次森保ジャパンの攻撃的なポジションを見ると、どこをどういじっても久保は余って漏れ出してしまう。右サイドで伊東純也を出さないのはありえないし、4-2-3-1のトップ下には鎌田大地がいる。

 もし鎌田をボランチに下げて遠藤航と組ませたとしても、今度は守田英正が余ってしまう。どうしても必ずパズルのピースが1つだけ合わないのだ。実にもったいない話である。

 ただし日本代表の攻撃的なポジションで、唯一、既存の戦力を「削ってもOK」な場所がある。それはフォワードだ。

(年齢を度外視した場合の)大迫勇也を除き、日本には真の意味で決定力のあるフォワードが1人もいない。「たった1人も」だ。その点、久保はゴールも取れる。シュートがうまい。ただし彼はフォワードじゃない。ならば久保を「偽9番」で使えばいい。

三笘や伊東も生きる久保の偽9番

 必要なときには、偽9番の久保が中盤に降りてきて組み立てにも絡む。中盤に下がる久保に合わせて敵の守備陣が最終ラインを上げてきたら、そのぶん三笘と伊東が前に飛び込むスペースができる。

 偽9番戦術は、三笘を左であえて孤立させて1対1をさせるアイソレーションとも相性がいい。

 これで攻撃的なポジションはすべてドンピシャ、帳尻が合う。

 おそらく戦術的・知能指数が高い久保なら、パッと偽9番に放り込んでもすぐにできるのではないか?(いやもちろん代表でのトレーニングもあるし)。彼の攻守に渡る特徴を考えれば考えるほど、いまや偽9番に必要な要素をすべて兼ね備えているように見える。

 久保は第二の「メッシ」になれる。しかも守備をするメッシだ。

 いや彼の年齢を考えれば、上回ることも可能かもしれない。森保監督が「日本はW杯で優勝を狙う」と言うのだから、「久保建英はメッシ超えを狙う」と言っても別にいいではないか。

 おまけにプレッシングという、以前はもってなかった要素を新たに備えた彼を使えば、ボールを保持する敵の最終ラインを前からハメて、ボールを前線で絡め取ることも可能になる。

 これでフォワードという日本の大きな「穴」は埋まる。久保という偽9番にぴったりのピースを当てはめれば、完全なパズルが完成するだろう。

 どこからでも点が取れる代表チームの出来上がりだ。

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【プレミアリーグ 23/24 第5節】「壊れたレッズ」が辛くも逆転勝ちで4連勝 ~ウルブズ 1-3 リヴァプール

2023-09-17 12:46:56 | イングランド・プレミアリーグ
5~6点取られてもおかしくなかった

 プレミアリーグは9月16日の第5節で、ウルヴァーハンプトンとリヴァプールが対戦した。リヴァプールが3-1で敵地の試合をなんとかモノにした。中身はともかく、彼らはこれで開幕から4戦全勝だ。遠藤航の出番はなかった。

 それにしてもリヴァプールはひどいデキだった。アンカーのマクアリスターがミスを連発。つられて相方のソボスライまで変調を起こし、マクアリスターの「病気」が11人全員に伝染して行った。5~6点取られていてもおかしくなかった。

 その流れでウルブズに先制され、レッズはメンバー交代を繰り返しやっと後半に逆転した。マクアリスターがあれだけ散々な惨状をさらしているのに、遠藤は交代で出て来ない。ということはクロップによほど信頼されてないか、コンディションの問題かのどちらかだろう。

 リヴァプールのフォーメーションは4-1-2-3だ。最終ラインは右からジョー・ゴメス、 ジョエル・マティプ、ジャレル・クアンサ、アンドリュー・ロバートソンという布陣。

 中盤はアレクシス・マクアリスターがアンカーを務め、右インサイドハーフがドミニク・ソボスライ、左インサイドハーフがカーティス・ジョーンズだ。3トップは右からモハメド・サラー、コーディ・ガクポ、ディオゴ・ジョッタが構える。

ゴメスの偽SBは空振りした

 リヴァプールはビルドアップ時、ときに右SBのゴメスが一列上がって中へ絞り偽SB化する。その代わりに左IHのジョーンズが上がり、3-3-4になる。または3-2-5もある。ゴメスは縦にオーバーラップもする。

 あるいは4バックのままジョーンズが左WGのように上がり、マクアリスターとソボスライがフラットに並び4-2-4。というふうに流動的に組み上げる。ジョーンズは時にはゴール前まで出張する。攻撃好きだ。

 かたや4-5-1から4-3-3に変化するウルブズはきわめて正確にビルドアップし、攻め上がってくる。彼らのフィニッシュはボディブローのようにレッズに効いた。特にサイド攻撃が強烈で、(ウルブズ側の)左サイドからどフリーでクロスをガンガン入れてくる。レッズの右サイドの守備が噛み合ってない。

 特に35分、左サイドからWGネトが入れたクロスは完全に1点モノだった。ゴール前でフィニッシャーになった、CFマテウス・クーニャのミスに助けられた。

 クーニャはヘディングシュートしようとジャンプしたが、飛び上がるタイミングが早すぎて腰にボールが当たってしまった。それにしてもWGネトにはさんざん左サイドを食い破られた。

マクアリスターのミスで流れを失う

 前半20分までにマクアリスターは致命的な縦パスカットを食らい、27分にはなんと単独で最後尾にいる際、ボールを奪われた。このとき自陣はスカスカ。ボールを奪った敵アタッカーはゴールを目ざし、無人のレッズ陣をドリブルするーー。目も当てられない。

 かたやソボスライも21分と28分にやらかした。これだけミスすれば流れは向こうへ行く。前半7分の1失点だけで済んだのは僥倖だった。

 リヴァプールは38分に、右サイドのクロスからやっとフィニッシュの形を作った。続く46分には敵ゴール前へ波状攻撃をかけたが、シュートは2度止められた。ウルブズが2点目、3点目を取らないうちに追いつかなければならないーー。

 そんなメンタリティはわかるのだが、レッズはチームが完全崩壊し押し込まれているのに、大きくクリアしない。押し込まれて敵だらけの自陣で短くパスを繋ごうとする。まるでアルビレックス新潟みたいだ。もうヒヤヒヤして心臓が止まりそうだった。

 これで1失点に抑えているうちにレッズが逆転し、遠藤が交代で出てきて試合をビシッと締めたら痛快だろうな、などと夢想した。だがそれはまったくの身内びいきにすぎないことがすぐにわかった。

マクアリスターを下げ4-2-3-1に

 後半開始と同時に「患部」のマクアリスターをやっと下げ、クロップはFWのルイス・ディアスを入れた。攻撃的な交代である。そしてフォーメーションを4-2-3-1に変えた。ソボスライとジョーンズのダブルボランチだ。

 これで右SBゴメス、左SBのロバートソンが両翼として高く前に張り出し、そのぶんサラーは中に絞ってディアスやジョッタらと相手ゴールの鍵を開ける作業に専念する。ときにソボスライ、またはジョーンズは一列降り、両CBとともに3バックを形成した。

 クロップの修正はテキメンに効いた。ウルブズを押し下げることに成功したのだ。

 リバプールの初ゴールは55分だった。真ん中での細かいパス交換を経て、ジョッタが股抜きの縦パスを繰り出す。受けたサラーは、右ポケットからワンタッチでダイアゴナルなパス。これにガクポが左足で一度だけ触ってゴールした。やっと同点だ。

 56分にはCFガクポに代えてダルウィン・ヌニェス、左WGのジョッタに代えてハーベイ・エリオットを投入する。攻撃力を補強するイケイケの交代策だ。この1-1の時間帯は果てしなく長く感じる。

サラーは全ゴールに関与し3アシストだ

 かくてリバプールは85分に、ロバートソンが待望の2点目を取った。右のボックスちょい外から、サラーが左足アウトサイドでゴール前のロバートソンに斜めのパスを入れる。ロバートソンは左足インサイドのワンタッチで、いともカンタンにゴールへ流し込んで見せた。2-1だ。

 仕上げはレッズの3点目。91分だ。右ポケットからサラーがマイナスのラストパスを入れ、エリオットが決定打になるゴールを上げた(ただし敵DFの足に当たっていたためオウンゴール)。

 サラーは全ゴールに関与し、3アシストだ。彼をサウジアラビアに出すなんて、とうてい考えられない。

 これでリバプールは開幕から無傷の4連勝だ。内容を見ればエンジンがガタピシ鳴いているが、第3節といい今節といい、悪い試合をクロップの采配で見事に形勢逆転した。なるほどドイツ代表チームが「ウチに来ないか?」と熱く誘うのも無理はない。

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【国際親善試合】立ち上がりから彼らは「別人」に変身した ~ドイツ 2-1 フランス

2023-09-16 17:15:00 | その他の欧州サッカー
緊張感みなぎるドイツ

 ある種の「こわいもの見たさ」で、ドイツがフランスと一戦交えたゲームを観てみた。9月12日にドルトムントのジグナル・イドゥナ・パルクで行われた親善試合だ。

 ドイツは解任されたハンジ・フリック監督の後を受け、ルディ・フェラー暫定監督が指揮を執る。彼らは日本戦からスタメンを3人替えてきた。新たに先発したのはヘンリクスとター、ミュラーだ。

 試合開始と同時に、あのドイツが躍動した。「もう失敗は許されないぞ」ということだろう。プレースピードと強度が日本戦とはまったく違って見えた。「ビンビン」だ。

 逆にいえば親善試合で「勝った」「負けた」などといっても、その程度の尺度にしかならないわけだ。

 さて、そのドイツが早くも先制したのが開始4分だった。ニャブリとのパス交換でボックス左に侵入したヘンリクスが、左のポケットからマイナスの折り返しを入れる。これにゴール前のミュラーが、上体を前に倒したうまい胸トラップからボレーを叩き込んだ。

 その後もドイツはハイプレスをかけ、一方的に試合の主導権を握る。彼らのフォーメーションは左が高い4-2-3-1。フランスは4-4-2だ。

フランスの意気は上がらない

 一方のフランスはなんだか意気が上がらない。たまに彼らのボールになると、動きがスローで「鈍いなぁ」という感じだ。

 最終ラインで、かったるそうにボールを回す。明日のデートでどこへ行こうか考えてでもいるのだろうか?

 フランスは中央でポストにボールを当て、再展開する形をよく使っている。そして20分過ぎにギュンドアンが負傷交代したあたりから、徐々にギアを上げてきた。デートの場所が決まったのだろうか?

 この流れは後半に入っても続き、ドイツは押し込まれた。それでなくても彼らは心なしか緩んだ感じだ。もはや前半の「負けたら殺される」みたいな切迫感はない。1-0で進めばよし、というノリなのだろうか。ただし失点しないだけの集中力はある。

 チャンスは作るが、デシャンのチームはなかなか得点できない。

ドイツの追加点が決定打に

 そんなドイツに貯金ができたのは87分だった。敵の縦パスをカットしてショートカウンターに入る。ハヴァーツがライン裏にスルーパスを入れ、サネが走り込んでボックス右からゴール左へ華麗に流し込んだ。2-0だ。

 これに対し、フランスが留飲を下げたのは89分だった。サネがエリア内でカマヴィンガを倒してPKになる。キッカーはグリーズマンだ。彼は冷静にゴール右に決め、フランスは1点差に詰め寄った。

 だが反撃もそこまで。後半アディショナルタイムは3分しかなく、これではデシャンたちは帰り支度もままならない。かくてルディ・フェラ―暫定政権は6試合ぶりの白星をゲットした。

 試合開始から前半中盤にかけての緊張感が持続するなら、ドイツの再建はあり得るだろう。だが次第に沈静化していった様子を見るとどうだろうか。ひょっとしたら次回2026年のワールドカップでは、また「日出ずるところの」日本と当たり煮え湯を飲むハメになるかもしれない。

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【EURO2024予選】スパレッティのイタリアが初白星、2位に浮上 ~イタリア 2-1 ウクライナ

2023-09-16 08:19:20 | CL/EL/EURO(世界規模のサッカーリーグ)
フラッテージのドッピエッタで競り勝つ

 EURO2024予選・グループC第6節が日本時間13日に行われ、前回大会王者のイタリア代表がスタディオ・ジュゼッペ・メアッツァでウクライナ代表と対戦した。

 ルチアーノ・スパレッティ監督がスタメンに抜擢したダヴィデ・フラッテージのドッピエッタ(1試合2得点)でイタリアが2-1と競り勝った。

 先月、イタリア代表監督を電撃辞任したロベルト・マンチーニがサウジ代表監督に就任し、大論争になったイタリア国内である。

 それを受け昨季ナポリでスクデットを獲得したスパレッティが任を継いだが、第5節で北マケドニア相手に1-1のドローを演じてまた騒動が勃発。

 そんな暗雲を吹き飛ばしたスパレッティ新体制での初白星だった。この勝利でイタリアはグループ2位に躍り出た。

ハイプレスを起点にイタリアが先制

 イタリアのフォーメーションは4-1-2-3だ。彼らは右SBを高く上げ、アンカーが適宜、最終ラインに降りてビルドアップする。

 一方、ムドリクが怪我でベンチスタートとなったウクライナは、4-2-3-1だ。ジンチェンコが左のCMFに入っている。彼らは両CBが大きく開き、SBを押し上げる形でビルドアップしている。

 先制点を取ったのはイタリアだった。前半11分、ショートカウンターの形だ。イタリアがハイプレスを仕掛けると、ウクライナがビルドアップ時にボールを保持した右SBがスリップし倒れてしまう。

 このボールをかっさらったマッティア・ザッカーニがボックス内に侵入し、右にパス。受けたダヴィデ・フラッテージがワントラップしてからゴール左スミに叩き込んだ。

 ウクライナはこの1失点をして以降、相手ボールになるとディフェンディングサードまでリトリートしてブロック守備をするようになった。

2点目のラッキーゴールは29分だった

 そしてイタリアが29分に2点目を獲る。

 中盤のニコロ・バレッラがボールを大きく右に開いてニコロ・ザニオーロに届け、彼がカットインからシュートを放つ。

 するとボックス内のフラッテージに当たったボールが敵DFにも当たって跳ね返り、またフラッテージのもとに戻ってくるというラッキーチャンス。これをフラッテージがきっちりゴールに詰めた。

 このあと押し込まれたウクライナは5バック~6バックになりながら必死に守る。そして一度ウクライナが右サイドからのカウンター攻撃になりかけたが、イタリアは右サイドに人数をかけて分厚く守り切る。

 この流れでウクライナのゴールが生まれたのが41分だった。長い縦パスにアタッカーが抜け出し、ボックス左へ。アルテム・ドヴビクがシュートを打つが、GKドンナルンマが弾いた。そしてイタリアが短くクリアしたボールをアンドリー・ヤルモレンコが拾って詰めた。これでウクライナが2-1と追いすがった。

 だが後半は両チームとも攻撃の機会を得ながらモノにできず。これで試合は2-1のままイタリアの勝利に終わった。

 イタリアは立ち上がり、組み立てが雑でパスが繋がらず暗雲が漂ったが、味方がシュートしたボールの跳ね返りがフラッテージに戻ってくるという僥倖で試合をモノにした。次節は10月15日、ホームでのマルタ戦だ。

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【EURO2024予選】ジンチェンコが先制、ウクライナのゲームプランがハマる ~ウクライナ 1-1 イングランド

2023-09-15 08:09:39 | CL/EL/EURO(世界規模のサッカーリーグ)
イングランドの連勝は4でストップした

 EURO2024予選・グループC第5節でイングランド代表はウクライナ代表とアウェイで対戦し、1-1で引き分けた。グループCはイングランドとイタリア、ウクライナが同居する注目の組だ。

 ホーム・ウクライナの国内情勢により、ポーランドのヴロツワフ市立競技場で試合は行われた。ここまでグループCはイングランドが4戦全勝で首位を走っている。

 イングランドはケインやサカ、マディソンを3トップに置いた4-3-3だ。ベリンガムやライスらもスタメン出場した。一方のウクライナはジンチェンコやムドリクらが出場している。

 ウクライナはイングランドをリスペクトし、がっちり守備ブロックを敷いた。相手にボールを持たせ、イングランドが攻める展開だ。だがウクライナも隙を見て抜け目なく反攻を狙っている。

 攻めあぐねるイングランドを尻目に、26分。鋭いカウンターからウクライナのコノプリアが右サイドを疾走し、クロスを入れる。これに走り込んだジンチェンコがきれいに合わせた。先制弾だ。相手に攻めさせ、守備のバランスを崩させて反撃する。ウクライナが作ってきた設計図通りの得点だ。

ケインのロングパスからウォーカーが同点弾

 先制点を取られて焦るイングランドは、ミスが多くなかなかゲームを組み立てられない。いかにもイングランドらしい。彼らはボールは保持するが、エースのケインにここぞのパスが入らない。

 そんな41分だった。ケインが中盤の低い位置まで下りてボールを受け、ボックス右にロングパスを刺し込む。これにオフサイド間際で飛び出したウォーカーがボールをひとつ触ってから、冷静にゴール右に押し込んだ。同点だ。

 かくて試合は後半に入り、59分のことだった。イングランドが攻める。ケインのポストプレイからボックス右でボールを受けたサカが、左足で痛烈なシュートを見舞った。だがGKブスチャンがワンタッチしたボールは、クロスバーを叩いた。あわやのシーンだった。

 どうしても勝っておきたいイングランドは66分にベリンガムとマディソンを交代させてラッシュフォードとフォーデンを入れるが、なかなか勝利へのドアは開かない。ウクライナも勝ち越しゴールを狙ったが果たせず。

 結果、1-1の引き分けで両者は勝ち点1づつを分け合った。ウクライナにすれば格上相手に勝ちに等しい勝ち点1。イングランドは負け同然の引き分けだった。ウクライナはゲームプラン通りにうまく試合を進め、相手にボールを持たせてしっかり試合を終わらせた。

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【第2次森保ジャパン】日本の「穴」は左SBとFWだ

2023-09-14 13:03:24 | サッカー日本代表
人呼んで「デスノートの森保」

 ハンジ・フリック氏が監督解任されたドイツに続き、日本に負けたトルコでも代表監督解任を求める騒動が起きている。

 森保監督は次々に同業者を廃業に追いやり、自らの転職場所を確保することに余念がないようだ。

 おかげで森保監督が試合中にメモを取る行為は、海外では「デスノート」と呼ばれているらしい。

 さて、そんな強豪撃破が続く第2次森保ジャパン。トルコ戦では控え組も爆発し、「2チーム作れる」とも言われている。だが、決定的なアキレス腱がある。それは左サイドバックとフォワードだ。

左SB伊藤洋輝は間接的に失点の原因になった

 まず左SBの伊藤洋輝は今回の9月シリーズあたりではずいぶん健闘するようになったが、それでも見ていると個人的には不安でたまらない。第一に本人がゲーム中に不安そうな様子をしているように見える。

 実際、ドイツ戦では間接的に失点の原因にもなった。

 前半19分。左IHのギュンドアンが右IHヴィルツへ斜めのパスを繋ぎ、ヴィルツはペナルティアーク辺りに侵入した。このとき守備時4-4-2のフォーメーションを取っていた日本は、左SBの伊藤洋輝が中へ絞った。自然な動きだ。

 このため(日本から見て)左サイドにスペースが空き、最後はゴールエリア角から右WGサネにフリーでゴール左にシュートを決められた。

 もちろんこれはシステムの構造上の問題でもある。

 ピッチの左右横幅を4バックでカバーする以上、サイドには必然的にスペースができる。その上この失点時にはドイツの攻めを受けて中央へ絞ったためにサイドのスペースがさらに大きくなり、サネにフリーでやられた。

 ただ伊藤洋輝が間接的に関与していたことは事実だ。

 この現象を見て森保監督は、後半にフォーメーションを5-4-1に変えて横幅を5バックで埋める対策を取った。

伊藤洋輝は本来CBの選手だ

 伊藤洋輝は右SBの菅原由勢のように軽快でもないし速くもない。サイドを駆け上がるプレイを得意としているわけでもない。正確なロングパスはあるが、総じて攻撃性能は低い。

 むしろ伊藤は自分の重さをプレー強度に代え、ガッチリ守備をするタイプだ。やはり彼はセンターバックの選手である。

 傍から見ているとむしろ気の毒に見える。適性はCBなのに不得意なSBで使われ、今回のように意に反して失点に関与してしまう。個人的には、もうSBという呪縛を解いてやり、適性のあるCBとしてポジション争いさせてやりたい。

 ただ、そうなると「じゃあ左SBは誰が適任なのか?」という難題が待ち受けているわけであるが。個人的には、森下龍矢(名古屋グランパス)はまだそのレベルに達してないように思う。インテンシティが足りない。

 中山雄太(ハダースフィールド・タウン)も世評は高いが、個人的には「うーん……」というところ。バングーナガンデ佳史扶(FC東京)は代表で見て「将来性があるな」とは思ったが……結局は旗手怜央(セルティック)ということになるのだろうか。

FW上田綺世は評価が上がったが……

 一方、フォワードに関しては、巷間、ドイツ戦で1ゴールを上げた上田綺世の評価が高まっている。前で起点になる動きやポストプレイ、裏抜けなど、マルチなタイプのFWだとは思う。

 実際、あのドイツ戦を観るまでは、私はFWのなかでは上田をいちばん認めていた。だがドイツ戦を目の当たりにして、世間の評価とはまったく逆に失望した。

 確かに上田は1ゴール上げたが、あの試合、彼はまちがいなく「あと2点」取れる場面があった。もちろんマルチな能力があるのはわかっているが、彼の本業は点を取ることだ。

 ストライカーなら、あのゲームでは確実に3ゴール取っていなければならない。もしこれがアーリング・ハーランドやキリアン・エムバペなら、確実に3点取っていたはずだ。個人的にはガクゼンとし、深い失望感に包まれた。

 ああ、彼もまた「日本人FW」の典型だったのか? いかにも日本人らしく「ああ、惜しかったよなぁ」で終わる選手なのか?

 この絶望感は深い。

典型的な「日本人FW像」に当てはまる

 上田のプレイを初めて見たときの衝撃は大きかった。「こんなFWが日本にいたのか?」。おそらく彼を初めて目の当たりにした人は、みんなそう思うのではないか?

 で、私も彼に期待してきた。

 だがその後、いま現在のプレイを観ても、あのときから成長しているようには見えないのだ。

 もちろん過去も現在もレベルは高い。「あのとき」と今とを並べて見れば、「ここがこう変わった」という要素はあるのだろう。(ただ個人的にはドイツ戦のポストプレイがよかった、とは思わない。大迫勇也とくらべれば月とスッポンだ)

 だが現在だけを観ていると、特に変わったようには感じない。相変わらず決定的なゴールを逃し続けている。

 彼は能力が図抜けているだけに絶対的な場面を作れる。であるがゆえに相変わらずそのチャンスを逃し続け、「ああ、惜しかったなぁ」とくやしがる典型的な「日本人フォワード像」に当てはまってしまっている。

 ことほど左様に、日本には決められるFWがいない。年齢を度外視した場合の大迫を除いては、だ。もし日本が「ワールドカップで優勝するぞ」というなら、いの一番に必要なのは決定力のあるフォワードだろう。

 森保ジャパンの「穴」は、左SBとFWである。

 早急な対策が求められる。

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