すちゃらかな日常 松岡美樹

サッカーとネット、音楽、社会問題をすちゃらかな視点で見ます。

【CL 23/24 E組 第2節】CLデビューの上田綺世がOG誘発弾を放つ ~アトレチコ・マドリード 3-2 フェイエノールト

2023-10-10 09:03:43 | CL/EL/EURO(世界規模のサッカーリーグ)
スペイン強豪の厚みと手堅さ

 チャンピオンズリーグ(CL)のグループE第2節が10月4日に行われ、アトレチコ・マドリードとフェイエノールトが対戦した。フェイエノールトはFW上田綺世がオウンゴールを誘発し先制したが、強豪アトレチコに3-2で逆転負けした。

 フェイエノールトはストライカーのサンティアゴ・ヒメネスが今季のCLで開幕から2試合の出場停止になっており、上田にお鉢が回ってきた。チャンスである。

 その上田が開始7分に早くも得点に絡む。ティンバーのスルーパスで上田が裏抜けしてワンタッチでシュートすると、GKヤン・オブラクに防がれた。だがこぼれ球がマリオ・エルモソに当たりオウンゴールになる。先制点だ。上田はこの日、チーム2点目のきっかけにもなったほか、前からのプレスとさかんに裏抜けを狙う動きで躍動した。

 フェイエノールトのフォーメーションは4-1-2-3。彼らは右肩上がりの3枚回しか、両SBを高く上げ2バックでビルドアップを行う。

 一方、アトレチコのフォーメーションは5-3-2だ。ブロックを非常にコンパクトに維持している。ビルドアップは3-1-3-3、または3-1を基本にフレキシブルに行なう。

グリーズマンとモラタ、サウールが前からプレス

 前半のアトレチコはフェイエノールトに対し、グリーズマン、モラタの2トップと左IHサウールの3枚が前からプレッシングし、フェイエノールトの右SBが前に出られないようにしていた。

 そして12分には裏抜けを狙ったアトレチコのデ・パウルが縦パスを入れ、敵が引っかけたこぼれ球にモラタがワンタッチでシュートを放つ。

 これには直後にサウール・ニゲスのオフサイドが宣されたが、VARでゴールが認められた。アトレチコが1-1と追いつく。

 そして18分にはアトレチコが右サイドからグラウンダーのラストパスを入れたが、これはクリアされる。続く19分には再びアトレチコが右サイドからアーリークロスを入れ、フリックしたボールがポストを叩いた。

モラタが決勝弾を放つ

 続く25分にアトレチコのコケがワンタッチで難しいロングシュートを放つが外れる。

 また34分にはフェイエノールトが攻めた。長いフリーキックからファーで抜け出したダヴィド・ハンツコが右足ワンタッチでシュート。GKが弾いたボールをハンツコが左足で押し込んだ。再びフェイエノールトがリードだ。

 だがアトレチコも粘る。前半アディショナルタイムだ。アトレチコは右CKから流れて来たボールをサムエウ・リーノが左足でシュートしブロックされた。だがゴール前の混戦でグリーズマンがオーバーヘッド気味に、後ろ向きで足を振り上げシュートを決めた。同点に追いつく。

 かくて47分。アトレチコは右サイドからナウエル・モリーナがアーリークロスを入れ、モラタがバウンドにうまく合わせて押し込んだ。これが決勝点になり試合が決まった。

 全体にアトレチコは5-3-2をうまく使った手堅い戦術と厚みでフェイエノールトを追い詰めた印象だ。フェイエノールトは強豪相手によく善戦していた。

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【ゲームモデルとプレー原則】森保監督みたいなサッカー論を見つけた

2023-10-09 05:31:38 | サッカー戦術論
「モダンサッカー3.0」とは何か?

 先日、興味深いサッカー本を読んだ。まるで日本代表の森保一監督のように選手の自主性を重んじるイタリア人監督がいるのだ。書名は『モダンサッカー3.0 「ポジショナルプレー」から「ファンクショナルプレー」へ』(ソルメディア)だ。

 この本は2人の共著で、著者のひとりは「モダンサッカーの教科書」シリーズでおなじみの片野道郎氏。もうひとりはイタリアで注目されている若手理論派、ペルージャU-19監督のアレッサンドロ・ビットリオ・フォルミサーノ氏だ。

 片野氏がフォルミサーノ氏の頭の中にある「サッカーとは?」を聞き出し、会話体で論述してある本である。

 おもしろかったのは、片野氏がフォルミサーノ氏に「ゲームモデルとプレー原則についてどう考えるか?」を問うくだりだ。

 フォルミサーノ氏にとってのゲームモデルとは、監督が一方的に選手に押し付けるものではなく、逆に選手たちが自由にプレイしているのを監督が観察し、それらのプレイの中から「抽出し、発見するもの」だという。

 まるで選手の自主性を尊重する、森保監督そっくりのことを言うのだ。

選手たちは「創発的」にプレイした

 そして白眉なのは、フォルミサーノ氏が初めてU-16を指揮したときのことだ。それはある国際トーナメントだった。監督としてそのチームを見るのは初めてで、選手たちがどんなプレーをするのかもよく知らない。白紙の状態だ。

 ちなみにそのチームは前年、大型CFを前線中央に置いて教科書通りの4-3-3で戦っていたらしい。

 そのチームをフォルミサーノ氏は、システムや配置をまったく決めないまま送り出そうとした。で、選手の面々を前に「どうだ? 行けるか?」と言うと、アタッカーの1人が「去年、自分はウイングでプレーしたが、実は真ん中のほうがやりやすいんだ」と言ってきたという。

 で、ならばと彼をトップ下にし、中盤を菱形にして4バックでやってみた。すると小柄なアタッカーたちが細かくパス交換をし何度も相手の守備を崩して6-0で大勝した。

 フォルミサーノ氏は思わず助監督と顔を見合わせて、「よし、ここからスタートしよう」と宣言した。

「すべては、私のアイディアや戦術ではなく、選手の創発性から始まったのです」

「次の試合からは中央の密度を高めて細かくパスをつないで崩す、というアイディアをチームに伝えて、それを原則として固めて行きました」

 選手たちがイキイキとプレイしている様子が、手に取るように伝わってくる。こういうチームの作り方もあるわけだ。

 なるほどそれもいいかもな、とちょっと思った。

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【アジア大会・男子サッカー決勝】メンタルが勝負のゆくえを決めた ~U-22日本 1-2 U-24韓国

2023-10-08 08:26:20 | サッカー日本代表
若さゆえの揺らぎと変調

 現地10月7日に杭州アジア大会・男子サッカー決勝が行われ、U-22日本代表がU-24韓国代表と戦った。試合は1-2で日本は逆転負けを食らった。

 メンタルが試合を決めた一戦だった。

 立ち上がりの日本は積極的だった。開始2分にボックス左から攻め込んだ彼らは、ボランチの重見柾斗からパスを受けたFW内野航太郎が、インサイドキックでコースを冷静に狙いシュートを叩き込む。先制点だ。

 試合開始からしばらくの韓国はビルドアップがまるでできず、四苦八苦していた。日本のほうがビルドアップははるかにスムーズだった。

 前半の20分頃まで韓国は完全に機能不全だったのに対し、日本は何をやりたいかが明確だった。だが次第にこの構図が変わって行く。

危険なパスの連鎖が示した赤信号

 次第に韓国の重圧を感じたのか、日本は危険なパスを4回も続け、決定的な局面で危なくボールをロストしそうになる。この頃から崩れて行った感じだ。

 続く27分には、韓国が右からクロスを入れ、ドイツ1部シュツットガルトのFWチョン・ウヨンがヘディングで同点弾を決めた。1点取った韓国は、それまでの不安定さがまるでウソのように試合運びがスムーズになった。いまや別人だ。

 それに対し日本は逆に混乱し、ゲーム運びがおかしくなる。自分で作った罠に自分からハマり込んで行き、流れを失い自滅した。そんな印象だった。

 後半11分には、韓国に押し込まれてドリブルで持ち込まれ、ゴール前の混戦からMFチョ・ヨンウクに逆転ゴールを決められた。

 日本は前半で変調をきたした頃から、すっかり横パスとバックパスが多くなり積極性が消えた。これでは流れは変わりようがない。

 おそらくこの若い世代はメンタルに左右されやすいのだろう。

 立ち上がりに1点リードした状態で、押せ押せにして2点目を取り一気呵成に勝勢を決めてしまえばどうだったか? と残念に思うが、たらればでしかない。惜しい一戦だった。

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【EL 23/24 E組 第2節】レッズはやっぱりカウンターのチームだった 〜リバプール 2-0 ユニオン・サン=ジロワーズ

2023-10-07 05:11:08 | CL/EL/EURO(世界規模のサッカーリーグ)
ポゼッションしたがゴールは2点とも裏返しての攻めだ

 ヨーロッパリーグのグループE第2節で現地時間10月5日(日本時間6日)、リバプールはホーム・アンフィールドでユニオン・サン=ジロワーズと対戦した。フラーフェンベルフとジョタの2ゴール、かつクリーンシートでリバプールが勝った。

 サン=ジロワーズはアウェイで敵は格上とあって守備的に戦った。だが攻撃に移っても特に組織立った動きは見られない。散発的な花火に一瞬、火が灯るような感じだ。

 一方のリバプールもプレミアリーグで勝ってはいるが内容がよくない試合が続く。彼らは守備の仕事ができるMFが足りない。試合を締めるタイプの選手だ。遠藤航がまさにピッタリなのだが、まだ彼は新しい環境に慣れる必要がある。それまでレッズのてんやわんやは続きそうだ。

 この日は敵が「ボールはいりません」てなゲーム運びをしているため、たまたまリバプールがポゼッション率を高めている。ゆえにレッズが試合を支配しても圧倒的な感じはない。それ以上に相手が非力だった。内容はともかく勝つことに意味がある試合である。彼らの目的はあくまでEL制覇だ。

 サン=ジロワーズのフォーメーションは3-5-2、守備時5-3-2だ。この日は多くの時間帯5-3-2で戦った。結構高い位置からアムラとニルソンの2トップがプレスをかけてくるが、ほかは組織立ってはいない。ボールが回ってくれば攻撃しようとするが形になってない。

 一方、レッズのフォーメーションは毎度おなじみ4-1-2-3だ。スタメンはGKがアリソン。最終ラインは右からツィミカス、クアンサー、コナテ、アレクサンダー=アーノルドだ。中盤はアンカーが遠藤航、右IHがハーヴェイ・エリオット、左IHはフラーフェンベルフ。前線は右からサラー、ダルウィン・ニュネス、ジョタである。

難しいシュートほど得意な不思議の国のヌニェス

 リバプールのビルドアップは右SBアーノルドが上がっての3枚回しのほか、ツィミカスとアーノルドがともに偽SB化した2-3-5もある。また両SBを高く張り出すストレートな2-3-5も見られた。

 開始10分。グラーフェンベルフがシュートを放ち、こぼれ球をヌニェスが押し込んだがオフサイドになる。続く17分にはサラーにスルーパスが入り、彼はワンタッチで折り返す。

 受けたヌニェスがシュートを打ったが外してしまう。ただ押し込むだけの決定機なのにあり得ない。彼はプレミアリーグの第6節でこんな超絶的なシュートを決めていたというのに。むずかしいゴールは取るがごく簡単なシュートをミスしてしまう。安定感がない。継続して決め続けること。ここが彼の課題だ。

 そもそもこの日の対戦相手とはチーム力が違うので、レッズは容易くボールをキープできる。彼らが保持している時間が圧倒的に長い。だがその間に有効な攻めがあったかといえば、簡単なチャンスを多く逃している。

 また彼らは引いた敵ブロックの外周を単にボール回しする時間帯が長い。典型的な「ダメな攻め」のパターンだ。引かれて前にスペースがないため、裏を取る動きや劇的なスプリントがない。煮詰まった状態だ。彼らはシティのようにポゼッションから何かを生み出すタイプじゃない。

 たとえば擬似カウンターのような形で敵を前に引っ張り出せればいいが、ブライトンと違ってリバプールの辞書にはそのテのウンチクはない。相手がボールを放棄しているので、彼らはひたすらボールを保持して自然なカウンターを待つだけだ。

アーノルドが爆発的なスプリントでチャンスを作る

 右IHエリオットは例によって自由気ままに動いている。逆の左サイドに開いて攻撃したりもしている。アーノルドも右サイドを上がったり、中に入って偽SB化したり奔放だ。

 ️そんなレッズの先制点は43分だった。ロングカウンターからアーノルドが右サイドを長駆ドリブルし、ヌニェスとパス交換しボールを返してもらって左45度からシュートを放つが相手GKモリスが弾く。

 それをフラーフェンベルフがきっちり詰めた。1-0だ。半分以上はアーノルドのゴールだった。やはり彼らはカウンターのチームだ。本ゲームのレッズは、この時のアーノルドのような爆発的なスプリントが今までなかった。ただしカウンターの局面になればそれは発動されるのだ。

 かくて前半が終了。ポゼッション率はレッズ68%、サン=ジロワーズ32%だった。相手が引いているので必然的にレッズのポゼッション率が高いが、あまり意味のあるポゼッションではなかった。彼らは裏返しての攻めにこそ本領がある。

遠藤のプレイは地味ながらハマっていた

 後半はリバプールが頭からメンバーチェンジした。遠藤にかえてマクアリスター、サラーに代えてカーティス・ジョーンズ、ヌニェスに代えてルイス・ディアスを投入した。遠藤は目立ったミスもなくスムーズにこなしていた。これを地道に続けていけば必然的に出番は来るだろう。この交代はデキが悪かったからじゃない。チームの事情だ。

 さて52分、前にパスが入り、ジョタがヘディングシュートをバーの上に外す。これも考えられないミスだ。続く57分頃には、レッズはハーフウェイラインの敵陣側に2CBを置き、試合を完全にハーフコートマッチ化した。だが以後、互いにパスが通らず煮詰まった小競り合いが続く。

 そして61分にはフラーフェンベルフが狙いに狙った素晴らしいコントロールショットを放つが、わずかにバーの上を越える。これは惜しかった。その2分後、今度はアーノルドに代えて右SBジョー・ゴメスを投入する。ミスター偽SBだ。

 66分、右サイドをドリブルで上がる敵に、アンカーのマクアリスターがカンタンに抜かれてシュートまで持ち込まれる。やれやれだ。またやらかした。彼は技術はあるが明らかに守備的な仕事は向いてない。まちがってもアンカーじゃない。そして続く79分には、クロップはフラーフェンベルフに代えてソボスライを投入した。

 トータルで見て、今のレッズにはソボスライ以上に信頼できる選手はいない。それだけ彼は頭抜けている。赤いチームに来るまで彼はずっと生粋の攻撃的MFだった。なのに、クロップに守備の仕事を押し付けられて(笑)、しかし一夜漬けで守備的なMFをやっている。それで立派にこなしているのだからすごい。千両役者の登場だ。

 ゆえに遠藤には十二分にチャンスがある。自分はマクアリスターのような「致命的なやらかし」は絶対にしない、とクロップに見せつけてやればいいのだ。で、今の環境に慣れたら遠藤がアンカーを務め、マクアリスターとソボスライが両インサイドハーフをやるのがベストだ。

 おそらくクロップは遠藤を獲ったとき、その「3人構想」が頭にあったはずだ。だが遠藤が思ったより環境に慣れる必要があったため、その計画は今のところタナ晒しになっている。クロップのそんな構想を具現化させるのは、いまや遠藤のプレイいかんにかかっている。

 そういうことだ。

またロングカウンターからジョタがカマす

 86分、今度はカーティス・ジョーンズがドリブルからシュートするがワクを外す。まただ。こう拙攻凡退が続くとカラダの力が抜けて行く。だが、これがサッカーなのだ。

 そんな諦めと倦怠の90+2分だった。待望の2点目が入る。自ゴール前からの長い超カウンターだ。得意の形である。

 縦パスが出てルイス・ディアスが競って粘り、ボールを残した。そのこぼれ球をジョタが左足で押し込んだ。締めて2-0。今度もやっぱりゴールはカウンターだった。ポゼッションじゃない。

 それが判明しただけでも意味のある試合だった。そして最後の最後はやっぱり自力の違いが出た。

 悪いながらも勝って行く。そうすればいつかは内容も伴ってくるーー。そんな「王者の秘訣」をまざまざと見せつけられた平凡ながらも意義あるゲームだった。

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【CL 23/24 D組 第2節】久保健英がCLで初アシストする 〜ザルツブルク 0-2 レアル・ソシエダ

2023-10-06 05:00:05 | CL/EL/EURO(世界規模のサッカーリーグ)
ハイライン・ハイプレスが冴えた

 チャンピオンズリーグ(CL)のグループD第2節が10月3日に行われ、レアル・ソシエダはアウェーでザルツブルクと対戦した。彼らはオヤルサバルとブライス・メンデスのゴールで2-0と快勝した。インテルと引き分けたグループ初戦に続き、これで合計勝ち点4の首位である。

 ハイライン・ハイプレスのソシエダは、立ち上がりから前線で敵に圧をかけた。そしてボールを奪うと少ないタッチ数でパスを繋ぐ。非常に集中しており、コンパクトな陣形を維持し続けた。久保健英には2枚のマークがついたが、彼は1アシストした。

 特に前半はザルツブルクに何もさせず、完璧に押さえ込んだ。自分たちだけがサッカーをした。ただ後半に崩れるパターンが多い彼らは、このゲームも例によって後半には押し返されて苦戦する。そこをクリーンシートで終えられたのは大きい。

 レギュラーと控えの力の差が大きいラ・レアルは、どうしてもスタメン固定になる。ゆえに後半は運動量が低下し、力の落ちる控え陣が途中出場するためどうしても試合の締め方が課題になる。

 ソシエダのフォーメーションはいつもの4-1-2-3。守備時4-4-2だ。スタメンはGKがレミロ。最終ラインは右からトラオレ、スベルディア、ル・ノルマン、アイエン・ムニョスが構える。

 中盤はアンカーがスビメンディ。右IHはブライス・メンデス、左IHはミケル・メリーノという不動のメンツだ。前線は右から久保、オヤルサバル、バレネチェアである。

オヤルサバルが先制ゴールだ

 ソシエダは立ち上がりから、前線で激しくプレスをかけた。ライン設定も高い。

 ザルツブルクが最終ラインでボール保持の時、久保とオヤルサバルがそれぞれ敵CBに、左のバレネチェアが敵の右SBにプレスした。相手の左SBには右SBトラオレが前に出て当たる。そしてボールを奪うと、素速いポジティブトランジションから攻撃する。その攻めは暴力的だった。

 逆にラ・レアルの攻撃時、久保には敵の左SBテルジッチと左SHキェアゴーが2枚がかりでマークに来た。だが久保はその包囲網を突破し、特に前半輝いた。

 さて試合開始7分。オヤルサバルがブライスメンデスからパスを受け、1〜2タッチしてボックスのすぐ外からゴール左にインサイドで軽くシュートを決める。1-0。さっそく先制点だ。

 ソシエダはテンポよくボールを繋ぐ。一方のザルツブルグはなかなか形にならない。

 そして27分、ラ・レアルは自陣でボールを奪った。久保とワンツーをかまして自陣から飛び出したブライス・メンデスが長駆ドリブルで独走する。彼は左足でゴール右にショットを叩き込み、追加点を奪った。これが久保のCL初アシストになった。2-0だ。

 ザルツブルクは両SBを高く上げ、アンカーが最終ラインに降りて3バックでビルドアップする。だが中盤とその前はあまり組織だった動きはない。中盤で誰を誰が捕まえるのかはっきりしない。前半のポゼッション率はソシエダ56%でシュート9本と圧巻、ザルツブルクは同44%でシュート3本だった。

後半はザルツブルクが追い上げた

 一方、後半の立ち上がりは、逆にザルツブルクがボールを保持する展開になる。彼らは前半とはガラリと変わり、左サイドからアーリークロスを入れたり、SBがロングボールを蹴り前線に当てて再展開した。

 48分には彼らの左サイドから前線にボールが入り、飛び込んだFWシミッチをソシエダGKレミロがPA内で倒したとしてPKが宣された。だがVARの結果、取り消しになる。

 続く53分、ザルツブルクの右サイドから前線に鋭いアーリークロスが入り、ひやっとしたが事もなし。彼らは途中交代のラトコフとシミッチの2トップがかなりアグレッシブな動きをしている。大人しかった前半が嘘のようだ。

 ザルツブルクの2トップは前半と違い、ボールを保持するソシエダの最終ラインにしつこくプレスをかけてくる。彼らは中盤も前半よりかなり機能的になった。久保にはボールが入らなくなったため消え気味になる。こうしてソシエダは後半に点を取られるケースが多い。今日はどうなるだろうか。

 かくて63分、久保に代えてチョを、バレネチェアに代えてカルロス・フェルナンデスを投入する。これでフェルナンデスをCFにし、オヤルサバルは右WGに回った。チョは左WGだ。こうして彼らは後半に控え組を出すたびパワーダウンする。大きな課題だ。

 だが90分になっても、今日はオヤルサバルが守備に走り回っている。まったく頭が下がる。ソシエダはボールをキープして時間を使いたいが、すぐボールロストしてしまう。

 91分、ザルツブルクのシミッチが右足で低いシュートを打つが、ゴール左に外れる。立て続けに95分、ザルツブルクの決定的なチャンスをGKレミロがパンチングする。そしてゲームセット。ソシエダは失点ゼロで逃げ切った。彼らは今季、チャンピオンズリーグ初勝利だ。約20年ぶりにCLで勝った。大きな勝ち点3が手に入った。

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【サッカー代表メンバー発表】過密日程のなかこの「ベストメンバー」でいいのか?

2023-10-05 14:54:33 | サッカー日本代表
チームが出来上がるのが早すぎないか?

 日本サッカー協会(JFA)は10月4日、10月に行われる親善試合2試合へ向けた日本代表メンバー26人を発表した。ゲームは13日のカナダ戦、17日のチュニジア戦だ。

 さて代表メンバーはといえば、みなさんのご想像通りだ。もう当たり前すぎて名前を並べて書く気も起らない。メンバーを知らない方は上記のリンク先をみてほしい。

 で、本当はこの原稿も書く気がなかったのだが、たまたま気が向いたので1日遅れでペンを取った(じゃなくパソコンを立ち上げた)

 問題点は大きく2つある。

 第一に、ベストメンバーでの日本男子代表は、次のワールドカップまでまだ大分間があるというのにすでに出来上がりつつある。もはや完成が近い。

 このままのペースで行けば、いつぞやのワールドカップの時みたいに「チームが完成するのが早すぎた。で、本番で結果が出なかった」みたいにならないか? というのが第一点だ。

 それを防ぐためには、特に今回のタイミングの招集(理由は後述)ではJリーグの選手や若手を大幅動員し、レギュラー陣の疲弊を防ぐと同時に、新風を吹き込みマンネリを防ぐべきではなかったか? と感じる。

 そういう段階的な調整を適宜行ない、やがてワールドカップの本番を迎える、という段取りがベストではないかと考える。

CLとELで選手は大変だ

 第二点は、上で「理由は後述」と書いた問題だ。みなさんご存知の通り、目下、欧州チャンピオンズリーグとヨーロッパリーグの真っ最中だ。参加している各クラブとも、国内リーグと両大会での過密日程が大変で選手のやりくりに四苦八苦している。

 そんな折も折に日本代表を招集し、しかもド直球のベストメンバーを選ぶ必要があるのだろうか? 選手の疲弊に輪をかけるだけだと思うが、どうだろうか?

 私事で恐縮だが、ちなみに私は7月から8月にかけて女子ワールドカップを決勝まで全部観てハマり、レポートを逐次書いてからというもの、プレミアリーグとセリエA、ラ・リーガ、リーグ・アン、EURO2024予選、J1、そしてアジア大会、の合間にお次はチャンピオンズリーグとヨーロッパリーグがやって来た。もう8月~9月の2か月間は毎日ゲームレポートで駄文を書き殴っている。

 いや好きでやってることだから人に文句は言えないが、それでも正直2か月間、毎日欠かさず試合観戦と原稿書きを続けると異常に疲れがたまる。もう体調管理がむずかしくなる。

 それを考えれば過密日程で試合をこなす選手たちはどんなに大変だろうか? と切実に考えてしまうのだ。もちろん私の疲れなど比較にならないだろう。

 そんな過密日程のなか、あのベタなベストメンバーで代表を組む意味がどこにあるのか?

 繰り返しになるが今回はJリーグの選手や若手選手を大幅動員し、新戦力の発掘を兼ねたローテーションを行うべきではなかったか?

 私はそう思う。

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【プレミアリーグ 23/24 第7節】黄色い狼がペップにキツい一発を食らわす ~ウルヴァーハンプトン 2-1 マンチェスター・シティ

2023-10-04 05:00:53 | イングランド・プレミアリーグ
コレクティブ・カウンターが炸裂する

 プレミアリーグ第7節で現地時間9月30日、ウルヴァーハンプトンとマンチェスター・シティが対戦した。ホームのウルブスが2-1で勝利した。シティは開幕からの連勝が6で止まった。

 彼らはシティをリスペクトし、5-2-3の陣形でブロック守備をした。だがそれだけでなく、チャンスになれば両WBを上げて3-4-3に変化し、積極的にビルドアップして攻撃に出た。要所で敵を剥がす個の力がある選手が目立った。

 アタッカーであるペドロ・ネトによる単独ドリブル突破のほか、複数の選手が速いぺースでパスを繋いで前に飛び出すコレクティブ・カウンターが利いていた。

 彼らはただ守るだけでなく攻撃への意欲が強く、好機と見れば少ないタッチ数でパスを繰り出し敵陣へ殺到した。その結果、2点をもぎ取り王者シティを陥落させた。

ネトが右サイドを食い破る

 立ち上がりの13分。中盤でのシティのポゼッションに対し、ウルブスがプレスをかけてボールを奪い取る。そしてネトが右サイドを食い破った。

 彼は単独ドリブルで縦を突破しボックスへ侵入。ゴール右脇で味方にマイナスの折り返しを入れる。するとボールは足を出したシティのDFルベン・ディアスに当たってゴールに飛び込む。オウンゴールでウルブスが先制だ。

 彼らの核弾頭であるネトは第5節のリバプール戦でも大活躍し、すんでのところでレッズを倒す原動力になっていた。レッズ戦でも彼はサイドを蹂躙し、きわどいクロスを何度も入れ続けた。

 さて、その後はシティがボールを保持し、彼らの前半のポゼッション率はなんと69%に上った。だがウルブスもスキを突き効率よくカウンターをかける。

 44分にもネトは右サイドをドリブルで攻め上がり、呼応した味方としばらく敵陣でポゼッションした。かくて前半終了。リードしたホームチームの思惑通りの展開である。

アルバレスがFKを決めシティが同点に

 試合は後半に入り50分だった。ウルブスはラインを上げて中盤~前線でポゼッションした。続く52分にはロングボールを入れ、受けたネトが右サイドでキープ。そこを基点に彼らは敵陣でボールを保持しパスワークを見せた。

 彼らはワン~ツータッチでテンポよくパスを繋ぐ。いつも縦に速いカウンターをかけるというより中盤でのポゼッションも見せ、1点リードしている状況で上手に時間を消費した。

 一方、58分にはシティが反撃に出る。FKのチャンスだ。ボックスのすぐ外から、FWフリアン・アルバレスが右足でゴール左上スミに直接決めた。同点だ。GKジョゼ・サは片手でボールを手に当てたがそのまま入った。

 だが追いつかれてもウルブスのファイティング・スピリットは衰えない。左WBラヤン・アイトヌーリはマイボールになればオーバーラップし、コレクティブ・カウンターの原動力になる。また65分にはシティの攻撃を受けるが、DFクレイグ・ドーソンがシュートを掻き出し必死に守った。

 そして66分だ。ウルブスの右WBネルソン・セメドが攻撃参加する。彼は鋭いクロスを入れ、そのこぼれ球をFWマテウス・クーニャがゴール前で落とす。これに左から迫った韓国代表FWファン・ヒチャンが、ゴール右へしっかり押し込んだ。2-1。再び鼻の差をつけた。

70分頃から狼たちはうまく時間を使った

 シティが左サイドを攻めると、彼らは常に2枚で慎重に守備対応していた。そんなふうに耐えた69分には、またウルブスがカウンターに入りかける。だが途中でスピードを緩めてポゼッションし、うまく時間を使う選択をする。自分たちがリードしているからだ。

 83分にはシティの右SBカイル・ウォーカーの地を這うようなミドルが炸裂。一瞬、ドキリとしたがGKサが捕球した。そしてタイムアップ。黄色い狼たちが攻守に躍動するのに対し、シティの怪物ハーランドはまったく消えていたのが印象的だった。

 シティは出場停止中のスペイン代表MFロドリの不在が大きかったとの声もあるが、というより地力はあるウルブスの踏ん張りが目を引いたゲームだった。

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【第19回アジア競技大会】パスでいなしてベスト4へ ~サッカー男子・準々決勝 U-22日本 2-1 U-24北朝鮮

2023-10-03 05:22:49 | サッカー日本代表
ファウルで威嚇してくる北朝鮮

 アジア大会でサッカー男子・U-22日本代表は10月1日、ベスト4進出をかけて準々決勝でU-24北朝鮮代表と対戦した。試合は2対1で日本が勝った。

 のっけから相手は平然とファウルで来る。ボールを保持した日本選手の足元を、凄い迫力で根こそぎ払うタックルを仕掛けてくる。

 敵は大きなサイドチェンジを織り交ぜた、ヴィッセル神戸みたいなサッカーだ。

 強度がまるで日本と違う。

 日本のインサイドキックは、「てん、てん、てん」とのんびりピッチをゆるく弾みながら転がる。「ズバン!」と来ない。なでしこジャパンと同じだが、例によってダメダメなインサイドキックだ。日本は細かい高度な技術はあるが、基本ができてない。

「これは難しいなぁ」と感じた。

 というのも日本が最終ラインからグラウンダーのボールをていねいに繋ごうとすると敵に引っかけられそうだが、かといって相手に気おされてロングボールの放り込み合いになれば敵の思うツボだ。

 日本はどう戦うのかな? と思って注視した。

 日本のフォーメーションは4-4-2だ。GKは藤田和輝。最終ラインは右から吉田真那斗、馬場晴也、山﨑大地、奥田勇斗が構える。CMFは谷内田哲平と松岡大起。右SHは松村優太、左SHは佐藤恵允が務める。2トップは内野航太郎と西川潤だ。

日本がグラウンダーのパスで攻める

 最初、日本は相手の迫力に飲まれ、接触プレーを怖がっている感じだったが次第に慣れた。そしてグラウンダーのパスを回し始めた。これが結論だ。

 要所、要所で北朝鮮のファウルまがいのプレーが来るが、なんとかそれを交わしながらパスを繋ぐ。

 一方、北朝鮮のシュートは、ことごとくバーの遥か上を超えて行く。彼らはフィジカルがあり、スピードとパワーは凄いが「それまかせ」のサッカーだ。なんだか懐かしい感じがした。

 前半が終わり、後半に入って51分だった。サイドチェンジのボールをボックス左で受けた佐藤が、マイナスの折り返しを入れる。受けた内野が合わせると、相手DFに当たってボールはそのままゴールに入った。日本の先制だ。

 これに対し北朝鮮は74分、ボックス内からの落としのボールを、キム・グクボムがペナルティアークの左からワンタッチで叩いた。豪快なショットがゴール左に決まる。同点だ。

 一方、日本は78分、スルーパスに飛び込んだ西川に北朝鮮GKがファウルしPKに。これを松村がゴール左に決めて2-1とした。そして日本の勝利だ。

 日本は10月4日に行われる準決勝で、イランを1-0で破った香港と対戦する。

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【ラ・リーガ 23/24 第8節】久保が今季5G目で3連勝を飾る 〜レアル・ソシエダ 3-0 アスレティック・ビルバオ

2023-10-02 05:00:13 | その他の欧州サッカー
バスク・ダービーを圧勝で終える

 ラ・リーガは現地時間9月30日に第8節が行われ、レアル・ソシエダがアスレティック・ビルバオを3-0で破った。バスク・ダービーはラ・レアルの完勝に終わった。

 久保建英はいつもの右WGで2試合ぶりに先発し、48分に左足で鮮やかにワンタッチ・ゴールを決めた。今季5点目だ。

 この日も相手チームは、左SBユーリとCMFガルシアがダブルチームを組んで久保対策をしてきた。だが、それでも久保はゴールを獲った。ラ・レアルは後半にも2点を奪い突き放した。

 アンカーのスビメンディは10番のトップ下・ムニアインにマークされた。だが一方、ソシエダの2CBは比較的ボールを持ち上がれた。そこも勝因のひとつだった。

DFノルマンがボレーで先制点を取る

 序盤は浮き球を蹴り合うような落ち着かない展開だ。バタバタとボールを弾き合っている。そして26分頃からゲームは落ち着いてきた。30分にはソシエダが敵陣左サイドでFKを得る。キッカーはブライス・メンデスだ。ボールを入れるとゴール前で混戦になり、最後はDFロビン・ル・ノルマンがボレーシュートを叩き込んだ。1-0。先制点だ。

 CFのサディクは降りてきて、しきりにボールに絡もうとしている。33分にはビルバオが左サイドからクロスを入れるが、ゴール前で合わない。彼らは35分にも左サイドからアーリークロスを入れたが、決まらなかった。

 ここからしばらくビルバオがボールを保持する展開になる。その後、ラ・レアルのボールになり、久保が右CKを蹴った流れで右サイドからクロスを入れたが合わなかった。

 ソシエダのフォーメーションは4-1-2-3だ。スタメンはGKがアレックス・レミロ。最終ラインは右からトラオレ、スベルディア、ル・ノルマン、ティアニーが構える。アンカーはスビメンディ、右IHはブライス・メンデス、左IHはミケル・メリーノ。3トップは右から久保建英、サディク、バレネチェアだ。

久保がファーから走り込みワンタッチでゴールする

 ゲームは後半に入った。ソシエダは48分に左サイドで長い縦パスを入れ、これをブライス・メンデスが中に折り返す。そして中央でサディクがボールに触って半ばスルー。右サイドに抜けたボールにファーからボックス内に走り込んできた久保が、余裕の左足ワンタッチでゴール右に流し込んだ。2-0だ。彼はお尻を振るお茶目なパフォーマンスを見せた。

 一方、54分には2点リードされたビルバオがゴール前に侵入し、シュートまで行くが果たせず。彼らは56分にもカウンターからゴール前まで攻撃したが、やはりシュートまで行かない。さらには丁寧なビルドアップを省略してGKからロングボールも試みたが形にならなかった。

 続く66分、敵陣でボールを持ったスビメンディが左足で前のスペースにスルーパスを出す。これに走り込んだ途中出場のオヤルサバルが右足でゴールに突き刺した。3-0だ。76分には久保が右サイドを長駆ドリブルし、中へ折り返したがシュートまでは行かなかった。

 そしてゲームセット。ラ・レアルはクリーンシートで試合を終え、今季3連勝を飾った。フル出場した久保はこの試合のマン・オブ・ザ・マッチに選ばれた。スタジアムはすごい歓声だ。やはり彼らは中盤でアンカーのスビメンディを頂点に両IHのブライス・メンデス、ミケル・メリーノらと逆三角形を作る形になると安定する。この3人は代えが利かない。

 このあと彼らは10月3日にチャンピオンズリーグGL第2節でザルツブルクと戦う。過密日程が続くが、選手をやりくりしながらソシエダの快進撃は続く。選手層の薄さは相変わらず気になるが、このまま勢いで行くのだろうか。

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【J1 2023 第29節】大迫勇也にこそ「得点王」と「J1優勝」がふさわしい 〜横浜FM 0-2 ヴィッセル神戸

2023-10-01 06:02:48 | Jリーグ
神戸はパーフェクト、完勝だった

 J1リーグ第29節が9月29日に行われ、ホームの横浜F・マリノスとヴィッセル神戸が対戦した。試合はFW大迫勇也のPKの1ゴールと、MF武藤嘉紀の滞空時間が長いヘッドによる1ゴールで、2-0と神戸が完勝した。横綱相撲だった。

 久しぶりに観たJ1は、前線の大迫が相変わらず高度で精巧なポストプレイを繰り返していた。また彼のチームは対角の長いボールを操る、これまた変わらぬ「大きなサッカー」をしていた。一方の横浜FMは、あの嫌らしいくらいの決定力がすっかりなくなってしまった印象だ。まったく試合になってなかった。

 神戸のフィニッシュのひとつは速いアーリークロスだ。ほかにも浮き球のサイドチェンジやSBからの対角のロングボールなど、彼らにはやはりワイドなサッカーが似合っている。また前半43分に右CKから、武藤が決めた対空時間の長いヘディングシュートも見事だった。大迫といいコンビだ。

 神戸はやっぱり大迫を目がけて、ダイナミックに縦へ速くビルドアップするロングボールを出す攻めが利いている。久しぶりに彼らを見たが変わらない。いや変化がないところが「いい」のである。それだけ絶対的な得意形を持っているということだ。

 あんな芸術的なポストプレイをずっと見られるなんて、神戸の市民は本当に幸せだ。それが変わらないことは、「いいこと」に決まっている。あれを変える必要なんてまったくない。

 この試合を観て改めて思いを強くしたが、今季は、あのアーティスト・大迫勇也と献身的に戦い続けるその仲間たちにこそ、J1リーグ優勝がふさわしい。大迫は得点王も取り、2冠で完全優勝してほしい。いやそうすべきだ。彼にこそそれがふさわしい。

 ついでに言えば、そんな大迫が日本代表に選ばれないなんてありえないことだ。ならばせめて彼のすばらしいプレイにその栄誉を称え、それを表彰する意味でJ1リーグ優勝と得点王を勝ち取ってほしい。

 彼にこそ、それがふさわしい。

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【カラバオカップ 分析】遠藤航は環境に適応したか? ~リヴァプール 3-1 レスター・シティ

2023-09-30 05:00:00 | イングランド・プレミアリーグ
「3つのスピード」に慣れる必要がある

 カラバオカップで「レッズの遠藤航が凄かった」と絶賛する声が上がっている。で、試しにその試合を観てみることにした。

 結論から先に言えば、遠藤はまずプレミアリーグのプレースピードとボールスピード、判断のスピードという「3つのスピード」に慣れる必要がある、という印象をもった。それには一定の時間がかかる。しばらく実戦をこなし続ける必要がある。

 この感想は、彼がプレミア・デビューした試合を観たときとまったく同じだ。なにしろプレミアリーグはこれら3つのスピードがとてつもなく速い。

 で、実際にゲームを観てみると、遠藤の周りの空間だけがぽっかりと「異空間」になっている感じがする。つまり周りの選手たちとどこか次元が違う。

 その違いとはいったい何か? を分析すると、おそらく上記した3つのスピードだろうと考えられるわけだ。

オン・ザ・ボールの評価をひっくり返せ

 ただし3つのうち「ボールスピード」というのは彼自身のパスのことではない。彼の縦パスは十分に強くて速い。そうじゃなく、彼の周囲を飛び交う回りのボールスピードに慣れるという意味だ。

 それと同じで、周りの選手はとてつもなく速い判断をし速いプレイをしている。そんな環境に遠藤は適応する必要があるということだ。

 また遠藤という選手はボールタッチ時のフォームがあまりスムーズじゃない。ハッキリ言えばモーションがぎこちない。ゆえにオン・ザ・ボールになると見劣りして損だ。

 いや彼はやることはやっているので、単に見栄えの問題なのだが。ゆえにその分は差し引いて観る必要がある。

 そのオン・ザ・ボール時のギクシャク感ゆえ、おそらく初めて彼を観たヨーロッパの記者や評論家はそのぶん辛く採点するだろう。想像はつく。だが繰り返しになるが、その分は差し引いて観る必要がある。

 現地のジャーナリストにすれば、ところが観ているうちにそんな選手がいいパスを出し、いいアシストを続けて行く。で、「なんだ、彼はいい選手じゃないか」に変わり、評価が180度覆る。そういうものだ。

前半は試合に入れてなかった

 さてカラバオカップの3回戦、リヴァプール対レスター・シティ(2部)戦は現地時間9月27日にレッズのホームであるアンフィールドで行われた。アンカーの遠藤はスタメンで90分間フル出場した。

 彼は前半、あまり試合に入れてなかった。その証拠に開始1分、いきなり遠藤は背後からボールを奪われる。だが5分には右サイドに初めてのパスをつけ、リターンをもらってシュートしている。

 試合は早くも3分にレスターのマカティアーが裏抜けから先制点を取った。ゲームは立ち上がりからオープンな展開だ。ボールが一方のボックスから、もう一方のボックスまで直通で移動している。

 遠藤は2本ほど、浮き球のパスを出した。だが彼のキックモーションを見ると、強度やバネは明らかに周りの選手のほうがありそうに見える。

 そのため彼がボールをもつと今にも奪われそうに感じるーー。これが冒頭に書いた「差し引いて観るべきポイント」だ。実は奪われそうでも何でもないのだが、おそらく彼を見て酷評したという欧州のジャーナリストたちはそう感じたのだろう。

スペースを埋めて時空の支配者になる

 ゲームは後半に入った。遠藤は相変わらず最終ラインの前にあるスペースを埋め、敵のチャンスを封じるポジショニングをしている。真ん中にどっしり構え、空間を殺している。もちろん時にはサイドへも出張するが、基本はセンターである。

 リーグで不安定な試合を繰り返す今のリバプールには、こういう安定的なポジショニングをする生粋の6番の選手がいないのだ。遠藤はどちらかといえば明らかにマクアリスターよりソボスライに近いが、彼とも違う一層の守備へのこだわりがある。

 また一方で遠藤はユルゲン・クロップ監督から、より前に関わるパス出しを求められてもいる。そのため彼はボールをもらうと、この試合では右前のサイドへダイアゴナルな浮き球のパスをよく出していた。さて問題のそんな48分、リバプールの同点弾の場面だ。

 このときレッズの面々はいったん敵ボックス内へ攻め込み、そこから相手ボールに変わった局面だった。で、(敵の)右サイドから出た(クリアのような)長い縦パスを遠藤が胸トラップでカットし、寄せて来たフラーフェンベルフにボールを預ける。

 そのフラーフェンベルフはボックス手前でガクポにラストパス。ガクポは左足でトラップし、右足でゴール右に叩き込んだ。このゴールの起点になったのは、遠藤によるボール奪取からのパス出しだ。つまり彼がカウンター攻撃の指揮者になったのである。

 その後、遠藤は(前半と違い)ゲームに入れたようだった。彼はボールを後ろ向きで受けて急反転し、数回の強い縦パスを出した。ボールスピードは十分だ。またワンタッチでも自在に鋭い縦パスをつけている。

 遠藤といえばデュエルばかりが取り沙汰されるが、彼は攻めの起点になるカナメのパス出しに優れていることがわかる。しかも日本人選手が大好きな横パスやバックパスじゃない。速いカウンターを生み出す強い縦パスを武器にしているわけだ。

遠藤の初アシストはこぼれ球の回収から

 さて本日の大団円、70分の逆転弾だ。

 遠藤はこぼれ球を拾い、右斜め前のボックス手前にいたソボスライに速いパスを出す。受けたソボスライは右足でワントラップするや、瞬時に強烈なゴラッソをゴール左上に突き刺した。ボールは唸るようにスッ飛んで行った。

 これでリバプールは2-1とリードし、89分にもディオゴ・ジョッタがとどめの一発を決める。3-1でレッズの勝利である。

 遠藤は全3ゴールのうち2点に関与した。1回目はボール奪取から、組み立ての出発点になるパス出し。2回目はこぼれ球を回収し、決定打に繋がるボールを入れた。初アシストだ。

 重要なのは、どちらも自分たちの最終ラインからビルドアップされてきた安全なボールを受け渡したわけじゃない点だ。遠藤はイーブンまたは相手ボールを奪い、ゼロから自分の力で中盤に杭を打ち立てた。「ここから攻めるぞ」というスタート地点になった。

 そんな彼は速いカウンター攻撃の申し子だといえる。まさにレッズにぴったりだ。

 だが彼はまだまだこんなもんじゃない。ゴールに関与したのは2回だったが、現にこの試合でも何度も縦パスを通していた。試合に出れば、もっと継続的で決定的な活躍ができるはずだ。

 遠藤がプレミアリーグの「3つのスピード」に慣れ、自分の感覚を完全にリフォームしたとき。おそらくヨーロッパのジャーナリストたちは、とんでもない怪物を目の当たりにすることになるだろう。

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【プレミアリーグ 23/24 第6節】ヌニェスの超絶ボレー弾でレッズが激勝する 〜リバプール 3-1 ウエストハム・ユナイテッド

2023-09-29 05:00:45 | イングランド・プレミアリーグ
ヌニェスをレギュラーへ押し上げる一発

 プレミアリーグ第6節が9月24日に行われ、リバプールがホーム・アンフィールドでウエストハムと対戦した。試合はCFダルウィン・ヌニェスの超絶弾などでリバプールが3対1で勝利した。彼らは前節に引き続き冒頭から不安定だったが、次第にゲームをリードし持ち前の得点力で押し切った。

 試合のハイライトは後半に来た。60分だ。

 レッズのアンカー、マクアリスターが敵陣中央から絶妙な浮き球の長い縦パスを入れた。前線にいるダルウィン・ヌニェスは、頭上を飛ぶボールを見上げながら着地点に回り込む。そして自分の前に落ちてくるボールをうまく右足の甲に乗せ、ワンタッチで豪快なボレーシュートを放つ。ボールは凄まじい勢いでゴール左に飛び込んだ。

 チームを2-1とリードさせる決定的なゴラッソだった。非常にむずかしいシュートだ。しかもヌニェスはひとつ前で惜しいチャンスを逃しており、レギュラーに生き残れるかどうかの分かれ目だったーー。

 試合を決めたこのアクロバチックな美技を見て、クロップはさぞほくそ笑んでいたに違いない。おそらくヌニェスはこれでレギュラーへの切符を取っただろう。

マクアリスターがまたミスをする

 試合の滑り出し、リバプールは前節を思わせる不安定さだった。開始早々の6分にマクアリスターがボールを奪われ、カウンターを食らう。ウエストハムにシュートまで行かれた。GKアリソンが奇跡的なセーブをしたからいいようなものの、完全な1点ものだった。彼はどう考えてももっと前のポジションがいい。

 続けて8分にも(レッズの)左サイドからアーリークロスを入れられ決定機を作られる。それだけじゃない。ボールを保持した右SBのジョー・ゴメスが、自陣で足裏を使ったトリッキーな技で敵を交わそうとしてボールを取られる。DFなのにあまりに軽すぎるプレイだ。次々に起こるピンチの連続。まるで前節の再現ビデオを見ているみたいだった。

 そんな流れを吹き飛ばそうとするかのように、レッズが前4枚でウエストハムの最終ラインにハイプレスをかける。ハイプレスはいまやプレミアリーグの風物詩だ。

 さてピンチのあとにはチャンスあり。前線のヌニェスが自分へのパスをヒールでそらし、右WGのサラーにパスした。そのサラーがボックス内で足をかけられ、PKになる。まだ前半の16分だ。サラーがPKを蹴りゴールやや左に決める。先制点が取れた。立ち上がりのミスで先に失点するのとでは天と地の違いだ。やれやれである。

 リバプールのフォーメーションはいつもの4-1-2-3だ。スタメンはGKがアリソン。最終ラインは右からゴメス、マティプ、ファン・ダイク、ロバートソンが構える。アンカーをマクアリスターが務め、右IHはソボスライ。左IHがカーティス・ジョーンズ。3トップは右からサラー、ヌニェス、ルイス・ディアスである。

 対するウエストハムは4-2-3-1だ。

ハマーズがダイビングヘッドで同点に追いつく

 左IHのカーティス・ジョーンズは、本当にあちこちよく動く。というか「チョロチョロうろつく」。バランスを何も考えず、右サイドにしばらく行ったりしている。チーム全体が不安定なだけに気になってしようがない。せめて試合が落ち着くまで持ち場を守ってはどうなのか。

 またマクアリスターも前節に引き続き、トラップひとつ取っても四苦八苦している感じだ。一方、右SBのゴメスは一列上がって中へ絞り、また偽SBをやっている。

 CBのマティプはドリブルで持ち上がるプレイも見せる。さすがにポゼッションではリバプールが上だ。それに対しハマーズがカウンターをかける流れで試合は進行した。

 そんなこんなで40分だ。ウエストハムに4〜5人で攻められ決定機を作られる。それが終わると今度は彼らの右CKだ。試合はまだどっちに転ぶかわからない。

 続く42分。ハマーズのパケタが長い縦パスを入れて前線でMFボーウェンが落とす。受け手のFWアントニオがワンタッチで右サイドへ展開。オーバーラップしたSBコーファルが右からクロスを入れ、ボーウェンがダイビングヘッドで凄いゴールを決めた。1-1。同点だ。

 だがリバプールもチャンスを作る。

 45分、ソボスライが左ボックス外から山なりのボールを入れ、ジョーンズがゴールするがオフサイドだった。47分にもレッズは好機を作る。サラーから右足でパスを受け、ヌニェスがフィニッシュしたが入らない。きわどかった。

 前半が終わった。ポゼッション率はレッズが65%、ウエストハム35%だ。ハマーズはこれで1-1の同点なのだから効率がいい。

途中出場のジョッタが止めの3点目を取る

 試合は後半に入った。

 レッズの攻撃だ。まずソボスライが縦にボールを入れてサラーに送る。彼が折り返し、ヌニェスがシュートを打つが外れる。彼はこういうところをしっかり決めて行かないとレギュラーは取れない。と、思った次のプレイで、なんと冒頭に紹介したすごいボレーシュートをヌニェスが叩き込んだ。どうやら聞こえたらしい。2-1だ。

 それにしてもソボスライのポジショニングすばらしい。動きはするが、基本どっしり中央に構えて安定感がある。頼もしい。

 73分、ウエストハムのアーリークロスはきわどかった。シュートはできなかったが、局面的にはハマっていた。

 続く77分。1点リードしたリバプールは左IHのジョーンズを下げた。代わりにバイエルンからやってきた期待の新顔、ライアン・グラフェンベルフを投入する。そして81分にはCFヌニェスに代えてコーディ・ガクポを、左WGルイス・ディアスに代えてディオゴ・ジョッタを入れた。

 85分。レッズは左CKをファン・ダイクが頭で落とし、入ったばかりのジョッタが右足でゴールした。3-1のリードだ。その2分後、クロップはマクアリスターに代えて遠藤航を投入。「締め役」というよりプレミアリーグに慣らせるためだろう。

 かくてゲームセット。リバプールはベストではないながらもプレミア5連勝だ。デキはともかく確実に勝って行く。これがでかい。6試合を終えて5勝1分け、勝ち点16の2位である。首位シティとは勝ち点2差だ。このままついて行こう。

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【プレミアリーグ 23/24 第6節】息もつかせぬトランジションの激闘 ~アーセナル 2-2 トッテナム・ホットスパー

2023-09-28 05:08:57 | イングランド・プレミアリーグ
切り替えの速さを競う差し手争い

 プレミアリーグ第6節で現地時間24日、アーセナルとトッテナムが対戦した。アーセナルのホーム、エミレーツ・スタジアムで行われるノースロンドン・ダービーだ。ともに今節まで負けなしで快進撃を続けるチーム同士の好カードになった。

 この日、展開されたのはボールをもつチームがゆったりとビルドアップし、他方、敵は自陣に引いて待ち構える、などというのんびりしたサッカーではない。

 互いにボール保持側の敵陣深くに侵入してハイプレスを掛け合い、奪った、奪われたの殴り合いから、切り替えが速かった方がスピーディーにゴールを陥れるスタイルだ。

 このトランジションの戦いを仕掛けているのはアーセナルだが、スパーズも堂々と受けて立ち、差し手争いをしている。そのため展開が目まぐるしく、息もつけない。

 いわゆるジェットコースタームービーのような壮絶な世界が展開された。

 盛んにプレスをかけたのはアーセナルだったが、彼らの得点はオウンゴールとハンドによるPKの2点だ。これに対しトッテナムは新加入の10番、MFジェームズ・マディソンとFWソン・フンミンが重要な場面で決定的な仕事をした。ソンはこの日2ゴールである。同じ2点でもインパクトと価値がちがう。

 ミケル・アルテタ監督のアーセナルは2度もリードしながら、その優位を生かせなかった。恩師であるペップのチームに逆転優勝された、昨季の惨劇が思い出される。果たしてアルテタは「持ってない」のか。選手交代の当否も含め、疑問が残る一戦だった。

26分に先制し攻勢を強めるアーセナル

 立ち上がりからアーセナルは、相手最終ラインに激しくハイプレスをかける。マンツーマンでハメに行く。敵GKにも脅しをかけた。さすがにスパーズはやりにくそうだ。だが赤いシャツのチームがボールを握ると、今度はトッテナムがハイプレスを食らわす。

 ガナーズは敵陣の高い位置でボールロストすると、リトリートせずにその場でカウンタープレスをかける。キックオフから17分まで、彼らはたっぷりトッテナム陣で過ごした。かと思うと19分には、またハイプレスを敢行する。

 そんな彼らの努力が実ったのは26分だった。右WGのサカがボックス右からファーを狙い、シュートを放つ。反応したDFクリスティアン・ロメロのオウンゴールを誘った。アーセナルが先制だ。この日、サカは非常に攻めに効いていた。

 また29分には、彼らは自陣でボールを奪い返して遠路、フィニッシュまでたどり着いた。さらに32分にはスパーズのGKグリエルモ・ビカリオがビルドアップしかけた所を、ジェズスがボックス内でボールを奪いシュートまで行った。

 37分にもサカがボールを持ちこみ、MFウーデゴールがフィニッシュしたがこれはGKの正面を突く。もうイケイケだ。彼らは自陣でのボール保持時、左SBのジンチェンコが一列上がって中へ絞り偽SB化する。ビルドアップへの参加と、被カウンター時のカバーリングのためだ。

 そして4-3-3のフォーメーションから3-2-5に変化してビルドアップする。守備時4-4-2だ。一方、4-2-3-1のトッテナムは2-3-5でビルドアップする。こちらは守備時4-5-1である。

ソン・フンミンが同点弾を決める

 潮目が変わったのは前半の終盤だった。

 ソンからパスが出て、ブレナン・ジョンソンがシュートを放つ。アーセナルGKダビド・ラヤがすんでのところでセーブした。これが予兆だった。

 かくて42分。スパーズのマディソンがボールを保持しながら鋭くターン。そのまま敵ボックス内へ切り込みマイナスのクロスを入れる。ソンがワンタッチでゴールした。1-1。同点だ。

 一方、ガナーズは前半のアディショナルタイムになってもハイプレスを続けた。立ち上がりだけハイプレス、というのはよく見かけるが、こんなに長いのは初めて見た。

 それに対しトッテナムは意に介さず、あくまでグラウンダーのボールで丁寧にビルドアップしようとする。

 ここまで5試合。今季、スコットランドから転勤してきたアンジェ・ポステコグルー監督が見せるサッカーは、最終ラインからショートパスを素早く繋いで組み上げるスタイルだ。ハイプレスが来ようと自分を曲げない。敵の圧を器用によけて隊列の完成をめざす。

 逆にいえばアルテタのチームがここまでハイプレスにこだわるのは、おそらくスパーズがバックラインから立ち上げるグラウンダーのボールによるビルドアップを根こそぎ寸断するのが狙いなのだろう。

 タヌキと狐の化かし合いである。

ガナーズが再びリードもソンの2G目でまた同点に

 後半の立ち上がりと同時に、アルテタはMFデクラン・ライスに代えてジョルジーニョ、またMFファビオ・ビエイラを下げてカイ・ハフェルツを投入した。

 すると49分にスパーズのゴール前で混戦になり、ボールがロメロの手に当たったとしてVARの結果、PKになる。キッカーのサカが冷静にど真ん中に決めた。GKビカリオは(サカから見て)左に飛んで空振りした。2—1。これでアーセナルがまた1点リードだ。

 だがその数分後にはたちまちトッテナムが追いつく。ジョルジーニョが自陣でマディソンにボールを奪われ、カウンター発動。ラストパスを受けたソンがワンタッチでゴール左へ流し込んだ。2-2だ。

 アーセナルは60分になってもハイプレスを続けている。一方、64分に今度はトッテナムがハイプレスで敵を追いかけ回すーー。いたちごっこは終わらない。

マディソンとソンのコンビがガナーズを追い詰めた

 試合はこの調子で異様なテンションのまま引き分けに終わった。スパーズはアタッキングサードで威力を発揮した2アシストのマディソンとソンのコンビが、ガナーズを苦しめた。バイエルンへ去った元エースのケイン不在を感じさせないチーム・パフォーマンスだった。

 一方、ハイプレスで主導権を握ったアーセナルは、2度リードしながら試合を決めることができなかった。特にジョルジーニョのミスから失点したのが痛かった。このブラジル生まれのイタリア代表には受難の日だった。

 またアルテタ監督は77分早々にジェズスを下げた一方で、コンディションに変調が見られ足を引きずるサカを後半アディショナルタイムまで引っ張った。疑問の残る采配だ。ガナーズはどうも若くてモロい印象がぬぐえない。

 さて、これで両者は奇しくも6試合を終えて4勝2分けの勝ち点14同士だ。得失点差でスパーズが4位、ガナーズが5位に鎮座している。

 負けなしの2チームの上にまだ3チーム(シティ、レッズ、ブライトン)が君臨しているのがいかにもプレミアリーグらしい。この拮抗した上位争いにはまったくゾクゾクさせられる。

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【セリエA 23/24 第5節】ノーガードの壮絶な殴り合い 〜ラツィオ 1-1 モンツァ

2023-09-27 05:16:49 | その他の欧州サッカー
ラツィオが早々に先制するが簡単じゃない

 セリエAでは現地時間9月23日に、スタディオ・オリンピコで第5節が行われた。ホームのラツィオがモンツァと1対1で引き分けた。モンツァは21/22シーズンにセリエAへ初昇格し、昨季は11位で終えている。今季も中位にいるチームだ。

 サッリ大将は鎌田大地の代わりにマテオ・ゲンドゥージをスタメン起用してきた。彼らは試合開始12分にPKをもらい、きっちり決めて1点リード。この時点では楽勝かと思われた。だがハイプレスをかけては陣内になだれ込んでくる敵の攻撃に手を焼き、30分台から早くもノーガードの殴り合いになった。

 36分にモンツァが虎の子の1点を取る。たがいに中盤のプレスが消失し、ボールは一方のボックスから他方のボックスへと速達で往復する。後半も目が離せないそんな展開が続き、かくてタイムアップ。あの試合内容でよく1対1で終わったなぁ、というゲームだった。

 ラツィオのフォーメーションは今日も4-1-2-3だ。守備時4-1-4-1に可変する。立ち上がりから彼らはハイプレスで前への圧をかける。5人でガンガン行く。外切りのプレッシングをしている。対するモンツァは3-4-2-1だ。

 ラツィオのスタメンは、まずGKが先日チャンピオンズリーグで奇跡のヘッドを決めた英雄イバン・プロベデル。最終ラインは右からアダム・マルシッチ、パトリック、アレッシオ・ロマニョーリ、エルセイド・ヒサイが構える。

 中盤はアンカーをダニーロ・カタルディが務め、右IHはマテオ・ゲンドゥージ、左IHにルイス・アルベルトが入った。3トップは右からグスタフ・イサクセン、チーロ・インモービレ、マッティア・ザッカーニが並ぶ。

ガリアルディーニのゴールでモンツァが同点に追いつく

 まず12分。ラツィオはザッカーニがボックス内で倒されてPKをもらう。これをキッカーのチーロ・インモービレが落ち着いて決めた。先制だ。だがこのときローマのチームは今日が「大変な日になる」とは想像もしなかっただろう。

 彼らの先制点に対しモンツァも黙っちゃいない。ハイプレスで攻勢をかける。彼らはきっちりビルドアップして3-2-5で敵陣へ嵐のように飛び込んで行く。前半はむしろラツィオよりボールを保持している。そして攻撃に出ると常に4〜5人が敵ボックス内に侵入する。激しいチームだ。

 ラツィオは高い位置でボールを失うと、局面によってはリトリートせずにカウンタープレスをかけている。それ以外はミドルサードで4-1-4-1の組織守備だ。さらに押し込まれるとディフェンディングサードまで下がり、最後はボックス内まで降りて守備をする。かつてのサッリ・ボールなる優雅なパスワークは見られない。今日も単なるフィジカルなサッカーだ。

 36分、モンツァが7人で敵ボックス内へ殺到した。右サイドからクロスを入れ、CMFロベルト・ガリアルディーニが左でゴールした。同点だ。さあおもしろくなってきた。

 追いつかれたラツィオは自陣に2バックを残し、敵陣へ押し込む。そしてボールを失うと、今度はモンツァがロングカウンターをかける。めまぐるしい展開だ。攻撃時、ゲンドゥージは積極的に敵ボックス内まで入り込んでいる。

 いまや両軍、中盤のプレスが消失し、一方のゴールから片方のゴールへとボールが盛んに行き来する状態だ。すっかり台所に火がついている。忙しいことになってきた。そんな47分、モンツァが一気に押し込みダイビングヘッドも決まらず。

インモービレの一発がポストに当たる

 後半に入っても、両者の中盤のプレスは消えたままだ。モンツァはサイドチェンジも交えてパスを繋いで攻め込んで行く。お次はラツィオが完全に敵陣を占領した。ハーフウェイラインの敵陣側に2人の最終ラインを置き、ハーフコートマッチ化して攻め立てている。

 そして逆にボールを失うと、相変わらずハイプレスをかけまくる。これを嫌ってモンツァがボックス内からロングボールでクリアした。

 55分。サッリ親分はゲンドゥージに代えてマティアス・ベシーノ、グスタフ・イサクセンに代えてフェリペ・アンデルソンを投入する。続く57分には、ピッチにボールを叩きつけたCFインモービレのシュートがポストに当たる。惜しい。

 かたやモンツァは押し込まれると、もはや5〜6人がボックスに入って守備している。かと思うとチャンスになれば最前線に5人、中盤に2人の計7人を敵陣へ送迎する。壮絶なサッカーだ。60分頃から彼らは前線でボールを失うと、ディフェンディングサードまでリトリートして組織的守備をするようになった。

 71分、モンツァは敵陣に7人を送り込み、強烈なシュートを放つがGKプロベデルが辛うじてセーブする。さらにオープンな展開になってきた。

モンツァの攻撃は暴力的だ

 74分。モンツァは自陣に3人の守備者だけを残し、全員が敵陣へ殺到する。フィニッシュしたが得点ならず。その1分後にも、彼らは敵ボックス内になんと7人を送り込んでシュートを放つがオフサイドに終わる。

 モンツァの攻撃が暴力的なパワーを持つのに対し、ラツィオの攻めはお上品だ。迫力がない。パスを繋ごうとするが思うように前進できない。80分、サッリの配下たちは8人を敵陣に送り込んで攻めたが、効果をあげられなかった。むしろモンツァのカウンターを誘発していた。

 82分以降、ラツィオはハーフウェイラインの敵陣側に2バックを置いて全員が敵陣へ詰めかけた。だが相手チームはボックス内に人垣を作って押し戻す。続く第2波も防がれ、今度はモンツァの攻撃になる。息もつかせない。

 後半アディショナルタイムに入った。ラツィオは完全に敵陣を包み込みあとはゴールするだけなのに、なんと敵陣内で2度もバックパスしている。なんだか状況を把握してない。もはやモンツァは「引き分けでよし」な感じで跳ね返す。かくてタイムアップ。息詰まるせめぎ合いは勝者なしに終わった。

 これでラツィオは5試合を終え、1勝1分け3敗の勝ち点4。なんと16位だ。なかなかラツィオは地獄の底から抜け出せない。

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【ラ・リーガ 23/24 第6節】久保が止まらない、開始2分に先制弾 〜レアル・ソシエダ 4-3 ヘタフェ

2023-09-26 05:03:33 | その他の欧州サッカー
今季4ゴール1アシストの実力

 ラ・リーガでは9月24日に第6節が行われ、ホームのレアル・ソシエダとヘタフェが対戦した。試合は二転三転の末、ラ・レアル(ソシエダの愛称)が4点を取り勝利した。

 驚いたのは、この日も4-3-3の右WGで先発した久保建英だ。なんと試合開始2分だった。

 ドリブルする同僚の右IHブライス・メンデスの右側に久保が併走し、右から回り込みスルーパスを受けた。そして瞬時にワンタッチで左足を一閃する。ボールは弾けるように跳び、ゴール左のサイドネットに突き刺さった。敵GKはまったくのノーチャンス。先制ゴールである。

 たった開始2分で、この日ヘタフェのボルダラス監督が仕込んできたシナリオは見事に吹っ飛ばされた。これで久保は今季のラ・リーガ6試合で4ゴール1アシストだ。開幕から6試合連続でスタメン出場しており、チームの信頼も厚い。

 ただし後半に入ると時間の経過とともに、例によってバテて試合から消えるのは大きな課題だ。久保は以前に書いた「4つの欠点」をせっかくクリアしたのだから、スタミナ(運動量の維持)という新たなテーマに取り組んでほしい。

今日も2人がかりのマークがつく

 久保にはこの日も2枚のマークがついた。今日もダブルチームの御一行様がお出迎えだ。

 9月19日(日本時間20日)に行われた第5節のレアル・マドリー戦、そして20日の欧州チャンピオンズリーグ第1節のインテル・ミラノ戦でもそうだった。試合のたびに、屈強なマーカーが2人がかりで久保をつぶしに来る。

 それでも平気で力を発揮するのが彼の凄さだ。マドリー戦では開始5分に先制点に関与した。続くインテル戦でも、久保はチャンスを作り続けた。だがこの日のヘタフェ戦では先制ゴールを獲ったあと、前半に2点を取られて逆転された。

 そこで先発メンバーをローテーションしていたラ・レアルのイマノル・アルグアシル監督は、後半13分に主力を3人出してきた。FWオヤルサバル、左IHメリーノ、そしてアンカーのスビメンディだ。

 すると後半16分にブライス・メンデスが、ミトロビッチに足を引っ掛けられるファウルを受けてPKになる。キッカーはオヤルサバルだ。落ち着いて冷静に右スミへきっちり決めた。2-2。同点だ。

メンデスの逆転弾、オヤルサバルのチーム4G目で止めを差す

 このあと後半21分には逆転弾が生まれる。ボックス内にロングスローを投げ込み、敵GKソリアが中途半端に飛び出して空っぽのゴールにブライス・メンデスがヘディングシュートを見舞った。3-2、逆転弾だ。カラのゴールにボールが吸い込まれるあの光景。痛快だった。

 ヘタフェはあんまりパスが繋がらない。ヘンにボールを浮かしてはヘディングしたりしている。そしてファウルを連発して時間を使う。お得意の、のらりくらり戦法だ。おかげで試合は始終ストップし、ラ・レアルの面々はイライラさせられた。試合を観ているこっちがイラつくのだから無理もない。

 だが後半43分。試合を決める美しいゴールが生まれる。スルーパスに抜け出した途中出場のメリーノがワンタッチでオヤルサバルにパスする。受けたオヤルサバルはこの日のチーム4ゴール目を叩き込む。

 このあと後半47分に、ヘタフェが左からのアーリークロスに途中出場のFWラタサがヘディングシュートを決めて1点取ったが、追い上げもそこまで。ソシエダは4-3で逃げ切った。久保はフル出場した。

 これで彼らは、2勝3分け1敗の勝ち点9で8位に上がった。久保の次節の活躍が待たれる。

課題を残した今節の戦いーーインテル戦で見えた選手層の薄さ

 さて「勝っためでたし」では進歩がない。目についた課題にも触れよう。今節はラ・レアルが抱える重大なアキレス腱が露呈したゲームでもあった。

 アルグアシル監督は、今季戦っている欧州チャンピオンズリーグ(CL)との兼ね合いも考え、この日のスタメンを大幅に入れ替えていた。

 例えば彼らが9月20日に戦ったCL第1節のインテル・ミラノ戦では、インテルのシモーネ・インザーギ監督は大幅なターンオーバーを行なっていた。16日にACミランとのミラノダービーで大勝したメンバーから、スタメンを5人も変えてきたのだ。しかも、そのうちFWマルコ・アルナウトビッチや左WBカルロス・アウグストら4人はなんと初スタメンだった。

 だが一方、そのインテルと戦ったソシエダは、17日に行われたラ・リーガ第5節のレアル・マドリー戦とまったく同じメンバーで臨んだ。つまりラ・レアルの選手層の薄さがアリアリと見えてしまったのだ。

 おそらくアルグアシル監督は「これではマズい」と考えたのだろう。で、ラ・リーガの今節はローテーションした。主力のオヤルサバルやメリーノ、スビメンディらをベンチに置いたのだ。

 だが、結果は散々だった。

主力と控えの力が大きくちがう

 久保のナイスゴールで試合の滑り出しはよかったが、ゲームが進むとともにいつものレギュラー陣に代えて起用された面々の力不足が明らかになった。

 最前線のウマル・サディクは、敵を背負ってポストプレイしようとするのだがハマらない。ボールを弾いてしまい、展開することができない。味方と連係した守備もダメで、「網」に穴を開けてしまう。

 またアンカーのウルコ・ゴンサレスは最終ラインからうまくボールを引き出せず、四苦八苦していた。加えてボールを保持した際、タッチ数が多すぎる。で、敵に寄せられ詰まってしまう。いつも途中から出て来るモハメド・アリ・チョも、トリッキーな動きはいいが確実性に欠ける。

 そんなわけで主力が欠けたソシエダは、いったんは久保の個人技でリードしたもののチーム力で劣った。あのヘタフェに前半で早くも2点を取られて逆転された。それを見たアルグアシル監督は、後半13分に温存していたオヤルサバルやメリーノ、スビメンディらを投入せざるを得なかった。

 するとメリーノによって左サイドが生き返り、スビメンディ、ブライス・メンデスとともに中盤の構成力が完全に蘇った。結局、途中から起用された彼らレギュラー陣の力が大きく、同点、また逆転を可能にしたのだ。今節はこれで勝ったからいいようなものの、ラ・レアルの選手層の薄さという問題は今後もつきまとう。

 さて、この問題をいったいどう解決するのか? 長いシーズンだ。ラ・リーガとチャンピオンズリーグを今後もまったく同じメンツで戦うわけには行かない。いつかは「売り切れ」になる。

 ではローテーションした場合、選手に合わせて戦術を変えるのか? それとも何かほかの方法があるのか? ここはアルグアシル監督の手腕が問われるところだろう。

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