すちゃらかな日常 松岡美樹

サッカーとネット、音楽、社会問題をすちゃらかな視点で見ます。

【女子W杯2023 準決勝】超絶2発でスペイン決勝へ初名乗り ~スペイン 2-1 スウェーデン

2023-08-16 08:25:07 | なでしこジャパン(ほか女子サッカー)
終盤に激しく試合は動いた

 オーストラリアとニュージーランドで共催されている女子ワールドカップ2023は15日、準決勝を行い、スペインとスウェーデンが対戦した。2-1でスペインが決勝に初進出した。

 ゲームは拮抗し両者無得点のまま進んだが、終盤に激しく動いた。後半終了間際にスペインが1点を上げるとすぐスウェーデンが追いつき、結局スペインが劇的な「サヨナラ弾」を放って追いすがるスウェーデンを突き放した。

 ゲームは序盤からパスを繋ぐスペイン、強靭な守備でそれを防ぐスウェーデン、という構図で進行した。

 スペインはまったく変わらずいつものサッカーだ。だがそれに対しスウェーデンは、決勝トーナメント1回戦のアメリカ戦や準々決勝の日本戦とはまったく違う展開を見せた。

 今大会、彼らはよく対戦相手を研究し、敵のよさを消すサッカーをしてきた。

スペインのカルモナが劇的な一発を叩き込む

 さて両者一進一退で0-0のまま迎えた終盤。だれもが「延長戦だ」と思っていた後半36分だった。

 スペインはペナルティエリア手前でエルモソが瞬時にアーリークロスを放つ。狙ったファーには通らなかったが、こぼれたところをサルマ・パラジュエロが押し込んだ。

 だれもが「これで決まった」と思った。

 だがスウェーデンも黙っちゃいない。同43分だ。敵陣左サイドでスローインをもらった。縦へボールを入れるとロルフォが鋭く反応する。

 彼女が絶好のセンタリングを入れると、これにリナ・フルティグが頭で落とす。仕上げはレベチャ・ブロムクビストだ。信じられないぎりぎりのコースにハーフボレーを叩き込み、スウェーデンが地獄の底から蘇る。

 これに対しスペインは44分、左CKを得た。キッカーのテレサ・アベリェイラがグラウンダーのボールを入れると、ボックス手前でフリーのカルモナが左足を一閃。劇的な一発がクロスバーを叩いてゴールに突き刺さった。

 これでスペインがケリをつけた。初の決勝進出だ。

決勝戦は20日19:00から生中継される

 決勝戦は日本時間20日(日)19:00から戦われる。今夜行われるオーストラリアvsイングランドの勝者とスペインは対戦する。

 一方、負けたスウェーデンは、同19日(土)17:00から3位決定戦を戦う。

 いずれもサイトFIFA+で生中継される(過去の試合も観られる)。

 なお、私の決勝戦のカード予想は以下の記事の通りだ。

【女子W杯・分析】決勝はスペイン対イングランドか?

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【リーグ・アン 23/24 第1節】伊東が今季初ゴール、中村敬斗もデビューする 〜マルセイユ 2-1 Sランス

2023-08-16 05:10:08 | その他の欧州サッカー
速いテンポのプレッシングサッカー

 フランス1部リーグ・アンの開幕節が現地時間12日に行われ、スタッド・ランスはオリンピック・マルセイユと対戦した。試合は2-1でマルセイユが勝利した。ランスの日本人コンビ、伊藤純也が前半10分に先制点をあげ、後半15分からは新加入の中村敬斗がリーグデビューした。

 ものすごく速いテンポのプレッシングサッカーだ。たがいに激しくプレスをかけ合う。そのため2タッチ以内でプレーしないとたちまちボールロストしてしまう。当然、パスは強くて速くないと通らない。技術とフィジカルがモノを言うサッカーだ。

 スタッド・ランスのフォーメーションは4-2-3-1。彼らは両SBを高くあげ、2CBでビルドアップする。右SBを上げ、残りの3バックが右にスライドしてのビルドアップもある。またCBがボールを持ち運んで上がるプレイも見せる。

 彼らは前半、60%以上ポゼッションしてよく攻めた。何度かカウンターを食らったのものの、しっかり守り切った。そして前半10分、味方がヘディングした左からの山なりのボールを受け、伊東が右足ワンタッチでゴールに叩き込んだ。先制点だ。

堅守速攻のマルセイユがカウンターを狙う

 一方、マルセイユのフォーメーションは4-4-2だ。堅牢な守備重視で、相手にボールを持たせて抜け目なくカウンターを狙っている。マイボールにすると最終ラインを高くあげて一気に敵陣へ雪崩れ込むが、ボールを失うと素早くディフェンンディングサードまで帰陣する。トランジション(攻守の切り替え)が速い。

 SBからの長い対角のボールや、縦へのロングボールでダイレクトなビルドアップを志向する。あとは相手ボールを奪い、素早いポジティブトランジションからの速攻が売り物だ。

 23分にはそのマルセイユが同点弾を上げる。縦パスを受けた選手がワンタッチで右にボールをはたく。それを受けたフリーのアゼディン・ウナヒが、ワンタッチしてからゴール右スミに決めた。

 続く26分には、マルセイユがボールを奪って速いカウンターをかける。3人の選手が敵陣に入り込みパスを繋いだが、残念ながら結実しなかった。

 そして38分、スタッド・ランスの右SBフォケが長い縦パスを通す。サイドでボールを受けたアミル・リチャードソンは敵DFと正対し、フェイントを入れてからマイナスのパスを出す。伊東がワンタッチでゴールに突き刺した。だがこれはVARの介入で取り消された。リチャードソンに出たパスがタッチラインを割っていたのだ。

マルセイユがカウンタープレスを放つ

 1-1のまま後半に入ると、マルセイユが戦術を変えた。システムを4-3-3に変え、攻守ともに攻撃的に衣替えしたのだ。まずショートパスを繋ぎ、時折バックパスも絡めながらポゼッションするようになった。相手ボールに対しては前からプレスをかけてラインを高く保つ。

 そして敵陣でボールを失っても前半のようにはリトリートせず、その場でプレスをかけて即時奪回をめざすカウンタープレスを仕掛け始めた。奪えなければミドルプレスに転換する。彼らは引き分けでは満足しない。勝ち越し弾を狙っている。

 60分になるとスタッド・ランスの中村が途中出場した。リーグ・デビューだ。中村は左サイドに入り、伊東と両翼を構成した。彼は攻撃的に振る舞い、サイドチェンジして伊東にパス出しした。再三、敵陣に入り込み、78分には敵ゴールエリアに侵入して「あわや」のプレイも見せた。

 その後は攻撃的になったマルセイユがしっかり押し込む。かくて73分。敵陣右サイドからのスローインをペナルティエリア内で受けた途中出場のイスマイラ・サールがマイナスのパスを出し、敵の前に割って入ったヴィティーニャが右足でフィニッシュ。逆転に成功する。

 試合はこのまま2-1でマルセイユが押し切った。伊東が今季初ゴールをあげ、中村がデビューしたものの、スタッド・ランスは痛い黒星スタートになった。

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【女子W杯2023 分析】なでしこジャパン、スウェーデン戦の課題と収穫は?

2023-08-15 05:12:38 | なでしこジャパン(ほか女子サッカー)
前からプレスをかけてラインを上げる

 女子ワールドカップ2023の準々決勝、なでしこジャパンは強豪スウェーデン女子代表と戦い、1-2で敗れた。だが、あの試合は戦い方を変えればもっと勝負になったはずだ。

 まずは総論から行こう。

 前半の日本はスウェーデンの猛攻に押し込まれた。気おされ、低い最終ラインのまま耐えた。そのため攻撃のチャンスがなかなか回ってこない。どこかでラインを上げたかった。それなら前からプレスをかける必要がある。

 そもそもスウェーデンは前半の立ち上がりから、グラウンダーのボールで最終ラインからていねいにビルドアップしてきていた。明らかにそういうゲームプランだ。ならばなおさらプレッシングで彼らのビルドアップを断ち切るべきだった。

5-2-3に可変しフォアチェックをかける

 一例だが、たとえばフォーメーションを5-2-3に可変し、フォアチェックをかける方法がある。前線3枚で中央を規制し、ボールをサイドに追い込む作戦だ。

 これでスウェーデンがたとえば左SBにボールを出せば、ボールサイドのCMFが寄せに行く。もう片方の日本のCMFも、敵CMFへのパスコースを切るため同様に右へスライドする。

 このときなでしこの右シャドーは敵の左CBに付き、ボールを保持した敵の左SBがバックパスできないようにする。また逆になでしこの左シャドーは自軍CMFが空けた左のハーフスペースを埋めに下がり、カバーリングすると同時に敵の右CMFに付く。

 これでスウェーデンはボールを出す場所がなくなる。ボールはクローズされたので、なでしこは最終ラインを上げられる。もちろんあわよくば、ボールに強く寄せて奪い取ってしまうチャンスもうかがう。

 こうしたプレッシングは応用可能だ。同様にボールがどこにあろうと、なでしこのポジショニング次第で絡め取ってしまえる。

 たとえば上記の例で敵SBがボールを保持しているとき、(間に合うなら)同サイドのなでしこのウイングバックがプレスをかけに出て行ってもいい。これで残りの4バックがボールサイドにスライドする方法もある。つまり「偽5バック」だ。

 なでしこジャパンは攻撃はグレードが高いのだから、こんなふうにもっと守備に手を入れてチーム全体をグレードアップしたい。守備面での伸びしろはまだまだ大きい。

ハイクロスは避け低いボールで勝負する

 あとは各論だ。

 日本はしきりにサイドからハイクロスを入れてフィニッシュした。だが高さのあるスウェーデン相手にあれでは勝ち目がうすい。もうひと工夫ほしい。なるべくなでしこの小柄さが不利にならないグラウンダーのボールで攻めたかった。

 たとえば相手GKと最終ラインとの間にできたスペースに、サイドから強くて速いグラウンダーのボールを入れる。で、味方をライン裏に飛び込ませる。

 あるいは中央にいるFWやシャドーの選手に、クサビのボールを当てる。これで敵DFは中へ絞るので、空いたサイドにボールを展開する。またはポストになった選手が落としたボールを、3人目の動きで受けて中央突破を図ってもいい。

 前へ飛び込みFWが落としたボールをシュートするか、落としのボールをワンツーで一度ゆさぶり敵の視点を移動させてからフィニッシュするのもアリだろう。こんなふうに変化球はいくらでもある。

 これで高さ勝負を避け、あくまでグラウンダーのボールでゆさぶり攻めたかった。

ほしかったセットプレー対策

 スウェーデンには得意のセットプレーから2点を取られた。彼らは今大会にあげた11ゴールのうち、8ゴールがセットプレーがらみだ。その意味ではもっとセットプレー対策をしておきたかった。

 また超各論だが……後半29分、植木が倒されPKを取った場面だ。彼女のシュートはクロスバーを叩き、跳ね返ってきたボールを植木はGKの真正面にヘディングしてしまいボールを跳ね上げて外してしまった。

 あそこも例えば真正面でなく、ゴールのスミを狙ってボールを下に叩きつけるような抜け目のなさが欲しかった。

 一方、収穫としては、途中交代で入ったMF林穂之香とMF清家貴子は非常によかった。層が厚い。1次リーグのときから手駒の豊富さは感じさせていたが、このあたりは将来に希望がもてる点だ。伸びしろしかない。

 重ねて前半から積極的に敵と撃ち合っていれば、と残念でならない。先手必勝だった。なでしこジャパンは今大会をよく検証し、来年のパリ五輪をかけた今年10月から始まるアジア2次予選に臨んでほしい。

 彼女たちのおかげで今回は女子W杯のおもしろさに気づけた。なでしこジャパンの次戦が楽しみだ。そんな気持ちにさせられたのが今大会、最大の「収穫」といえるかもしれない。

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【女子W杯2023 準々決勝】PK戦で10人目までが蹴る死闘に ~オーストラリア 0-0(PK7-6)フランス

2023-08-14 07:19:37 | なでしこジャパン(ほか女子サッカー)
「ホーム」のオーストラリアが気迫の粘り勝ち

 オーストラリアとニュージーランドで共催されている女子ワールドカップ2023は12日、準々決勝が行われた。FIFAランキング10位のオーストラリア女子代表と、同5位のフランス女子代表が対戦した。試合は90分で決着がつかず、延長・PK戦の末に7-6でオーストラリアが準決勝進出を決めた。

 オーストラリアのブリスベン・スタジアムで行われたこの試合は、完全にオーストラリア女子代表の「ホーム」と化した。ワンプレイ、ワンプレイに詰めかけた地元サポーターが大歓声を送り、試合は熱狂の渦と化した。

 そんな観衆の声援に押され、オーストラリアが攻め、フランスが受ける展開でゲームは進んだ。技術的にはフランスが一枚上と見えたが、この雰囲気ではもはや関係ない。

 オーストラリアのフォーメーションは4-4-2だ。非常にアグレッシブ&ダイナミックなチームで、大声援を背に躍動した。彼女たちは4-2-4でビルドアップし、ワイドな展開をする。スタイルとしてはスウェーデンに近いダイレクト攻撃のチームだ。

 バーティカル(縦方向)なロングボールやアーリークロスの雨を降らせ、パワフルに前線へ飛び込んで行く。かと思えばFWにクサビのボールを当てるような小技も見せる。この日はとにかくGKアーノルドが当たりまくり、何度もフランスのシュートを弾き返した。

フランスはトランジションが速く個人技がある

 対するフランスのフォーメーションは4-4-1-1だ。声援に押されたオーストラリアの攻撃を受ける形になったが、彼女たちはすばらしく守備が堅い。しかも簡単にクリアに逃げない。例えばオーストラリアに押し込まれ、ディフェンディングサードでボールを奪った時も巧妙にパスを繋いで前線へ送り出す。

 相手ボールに対するプレッシングも強烈だ。プレー強度が高い。この点はなでしこジャパンもぜひ見習ってほしい。彼らはカラダがムチのようにしなり、しなやかで躍動感がある。

 メンタル的にも個が強く、「自分でシュートするんだ」という強い意識がある。ヘタするとパスなんか考えない。そんな個の意志力がゴールを生むのだろう。

 トランジション(攻守の切り替え)はポジティブ、ネガティブともに機敏だ。被カウンター時はおそろしく帰陣が速い。一方、ボールを奪ってカウンターのチャンスともなれば、素早く切り替え敵陣に殺到する。

 攻撃面ではドリブルやフェイントがすばらしく上手く、男子レベルだ。個人技では明らかにオーストラリアを上回っている。戦闘能力が高い。彼女たちは個による突破のほか、強くて速いグラウンダーのボールも使う。フィニッシュはアーリークロスや縦にロングボールを蹴るダイレクト攻撃もある。SBから対角の長いパスを入れるビルドアップも見事だ。

PK戦はサドンデスに突入した

 さて試合は延長戦に入っても両者無得点のまま、ついにPK戦へ突入した。

 先攻のフランスは1人目がいきなり外し、どうなることかと思われたが両者5人目まではタイで進んだ。かくてサドンデスに入り、7-6でオーストラリアが振り切った。

 フランスのほうがプレーに見るべきものがあり、外野としてはフランスに勝って欲しかったがホームのオージーたちは狂喜乱舞だろう。やはりサポーターの後押しは大きい。

 こうしてオーストラリアは初の準決勝進出を果たし、日本時間8月16日(水)の19:00に世界ランク4位の強豪イングランドと対戦する。

 試合はサイトFIFA+で生中継する(過去のゲームも観られる)。

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【女子W杯2023 分析】決勝はスペイン対イングランドか?

2023-08-13 12:43:33 | なでしこジャパン(ほか女子サッカー)
ホームの豪州もあなどれないが……

 オーストラリアとニュージーランドで共催されている女子ワールドカップ2023で、準決勝のカードが決まった。(1)スペイン対スウェーデン[日本時間8/15(火)17:00]、(2)オーストラリア対イングランド[同8/16(水)19:00]だ。(1)と(2)の勝者が決勝[同8/20(日)19:00]で戦う。

 おそらく決勝のカードはスペイン対イングランドだろう(個人的願望込み)。ただし(2)の会場はオーストラリアのホーム、「スタジアム・オーストラリア」での開催なので、観衆の大声援を受けオーストラリアが火事場の馬鹿力を発揮するかもしれないが。

 実際、フランスとの準々決勝では、オーストラリアを応援する観衆の声援がものすごく、異様な雰囲気の中で試合が行われた。内容的にはフランスが一枚上だったが、応援団がプッシュして延長・PK戦にまでもつれ込んだ。

 サッカーは何があるかわからないものだ。

最終ラインからていねいにビルドアップする

 そう考えると(1)のカードも、スペインのティキタカに対し4-2-3-1のスウェーデンが前から激しいハイプレスをかける、あるいは徹底したカウンター戦術に徹したりすれば、勝負はひっくりかえるかもしれない。

 と、考えていたらキリがないので、仮想・決勝「スペイン対イングランド」と仮定し、イングランドについてはすでにレビューを書いたのでここではスペインについて触れておこう。

 スペインは本大会でいちばん美しいサッカーをするチームだ。フォーメーションは4-1-2-3で、ハイライン・ハイプレスのスタイルである。日本と同じく、最終ラインからグラウンダーのパスをていねいに繋いでビルドアップする。

 敵陣に押し込むと両サイドバックを上げ、2バックで攻める。グラウンダーのショートパスを何本も繋ぎ、フィニッシュはサイドからのクロス(アーリーまたはマイナス)や中央からの攻めもある。前線の選手の決定力と個の力は抜群だ。

激しいカウンタープレスが身上だ

 特に敵GKと最終ラインの間を狙った低いクロスは秀逸だ。美しいサイドチェンジや機敏なワンタッチプレー、ワンツーには見惚れてしまう。

 また彼女たちは前線でボールを失ってもリトリートせず、その場で強くプレッシングして即時奪回を狙うカウンタープレスを得意としている。逆に撤退する場合はディフェンディングサードまでリトリートし、4-4-2のブロック守備に移行する。

 特筆ものなのはプレスの厳しさだ。準々決勝の強豪オランダ戦では、後ろを向いた敵ボールホルダーの背後にぴったり付いて前を向かせなかった。そのためオランダは中盤でボールを奪っても、前を向けずバックパスするしかなかった。

 男子のスペイン代表がやってるティキタカは、ボールを繋ぐこと自体が自己目的化した意味のないポゼッションスタイルだ。だが女子はそうじゃない。きっちりゴールまでの絵が描かれている。

 おそらく彼女たちのサッカーは、日本人がいちばん好きなタイプのスタイルじゃないだろうか。興味がある人はサイトFIFA+で試合を生中継しているので観てみたらどうだろうか(過去の試合も観られます)。

 このチームが苦手とするのは、自分たちの精緻なパスワークを破壊してくる強固なスタイルのサッカーだ。おそらく決勝で当たるだろう「剛」のイングランドとは、いい勝負になるだろう。 

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【女子W杯2023 準々決勝】フィジカルに圧倒された日本の課題は? 〜日本 1-2 スウェーデン

2023-08-12 11:35:44 | なでしこジャパン(ほか女子サッカー)
低すぎたライン設定

 オーストラリアとニュージーランドで共催されている女子ワールドカップ2023は11日、準々決勝が行われた。世界ランク11位のなでしこジャパンは同3位のスウェーデンと対戦し、日本が1-2で破れた。なでしこジャパンの旅は8強で終わった。

 試合は立ち上がりから違和感があった。日本の最終ラインが低すぎるのだ。1次リーグで当たったスペイン戦のときのように、5-4-1で深く構えて相手にボールを持たせているのか?

 だが実際にはスウェーデンのハイプレスとフィジカルに圧倒され、「押し込まれた」というほうが正しいだろう。いずれにしろ低いライン設定で受けに回った前半は、日本にとって「ない」のと同じだった。

 もう一点、なでしこには異変があった。選手の動きが重いのだ。キレが悪い。まったく別のチームのようだ。疲れがたまっているのだろうか? 日程や会場の移動は日本の方が有利なのだが……。この点も謎だった。

序盤は丁寧にビルドアップしてきたスウェーデン

 一方、スウェーデンはハイボールの雨を降らせた16強のアメリカ戦とは打って変わって、序盤は最終ラインからグラウンダーのボールで丁寧にビルドアップしてきた。自分たちの高さを生かすロングボールでなく、このやり方で来てくれるなら日本はやりやすい。

 スウェーデンは4-2-3-1だ。彼女たちはインサイドキックの精度がそう高くない。スウェーデンが得意な後ろからロングボールを放り込んでの高さ勝負でなく、ボールを転がしてきてくれるなら大歓迎だ……。ただしスウェーデンは次第に「本性」をあらわし、その楽観は前半の途中で終わった。

 日本のフォーメーションは3-4-2-1だ。スタメンはGKが山下杏也加。最終ラインは右から高橋はな、熊谷紗希、南萌華が構える。

 右ウイングバックは清水梨紗、左ウイングバックは杉田妃和。ダブルボランチは長谷川唯と長野風花。2シャドーには藤野あおばと宮澤ひなた。ワントップは田中美南だ。

スウェーデンが得意のセットプレーで先制する

 前半15分に日本は初めて相手を押し込み、しばらく敵陣でボールをつないだ。このままラインを押し上げられるといいのだが……アテが外れた。

 スウェーデンは同18分に、初めて最終ラインから縦にロングボールを入れてきたが事なきを得た。やはりスウェーデンは長いボールを使ったときの方が攻めに迫力がある。プレー強度が日本よりはるかに高い。ハイボールの競り合いになると完全に不利だ。

 同32分。スウェーデンが得意のセットプレーから先制する。中央左から縦にロングボールを放り込まれ、一度はGK山下が弾いた。だがゴール前の混戦からこぼれ球を決められた。これが彼女たち本来のスタイルだ。長い浮き球を自在に駆使する。日本はクリアするチャンスすらなかった。これでスウェーデンが1点リードした。

 また同42分にも、スウェーデンのシュートがGK山下の手をかすめてポストを叩く。ヒヤリとするシーンだった。こうして前半は完全にスウェーデンのペースで進んだ。日本はシュート0本で前半を折り返す。

日本のプレスは中途半端だ

 かくて後半に入った。立ち上がりから日本は杉田に代えMF遠藤純を投入した。先行された日本は点を取るしかない。最終ラインを上げて全体の重心をより前にかけ、ボールを保持する敵最終ラインに積極的にプレスをかけたい。なぜなら前でのプレスが利いてなければラインを上げられないからだ。

 だが日本の前からのプレッシングは相変わらず中途半端なまま。プレスの「ハメどころ」がはっきりしない。ただワントップの田中が単発でコースを切るだけだ。

 例えばワントップと2シャドーの3枚に加えWBも前に出て、マンツーマンで前からハメに行くような工夫がほしい。もちろんリスクは高いが、この点は日本の大きな改善点だろう。

 後半6分。長野がハンドを取られ、PKになり決められた。あのハンドは故意ではないと見えたが、ボールが手に当たったのはツキがなかった。これで2失点した日本は同7分、田中に代えてFWの植木理子を入れた。植木は球際の競りに意欲を見せている。だがしょせんは単騎のプレスなのだ。集団による「投網」ではない。

 日本はサイドからハイクロスを入れる。だが高さのあるスウェーデン相手にあれでは勝てるイメージがわかない。日本はあくまでグラウンダーのボールで攻めるべきだ。

林が待望のゴールを決める

 後半29分、ドリブルを仕掛けた植木がペナルティエリア内で倒されPKになる。植木が蹴ったが、惜しくもクロスバーに当たって入らない。日本はついてない。続く同35分。長野と宮澤に代えてMF林穂之香とMF清家貴子を投入した。林はボランチ、清家はシャドーに入った。

 そして42分だ。藤野がボックス手前でエリクソンに倒され、日本はFKを得る。キッカーは藤野だ。右足で直接ゴールを狙ったが、なんとボールはクロスバーとGKムショビッチに2度当たって地面に強くはね返る。ゴールか? と思われたが、ゴールラインは割っていないと判定が出た。

 クロスバーに嫌われ、これで日本は「2点」を取り損ねた。

 43分、ボックス内でボールを受けた清家が中へ折り返す。これをゴール前でスウェーデンが弾き返し、そのこぼれ球を林が詰めた。待望のゴールだ。アディショナルタイムは10分ある。まだいける。

 46分。藤野が右コーナーキックを蹴り、ニアで植木が合わせたがGKムショビッチにセーブされた。続く47分には高橋はなに代えてFW浜野まいかを投入。日本は猛攻を続けたが1点は遠く、かくてタイムアップとなってしまった。

課題はフォアプレスと球際だ

 後半20分以降と、アディショナルタイム10分間での日本の攻めは迫力があった。本来、日本はもっと早い時間帯からあれぐらい積極的に攻めたかった。 

 敗因のひとつは、前半から受けに回って最終ラインが低すぎたことだ。このためスウェーデンの攻めがモロに直撃した。相手の圧に押され、持ち前の速いトランジション(攻守の切り替え)やショートカウンターが生かせなかった。

 例えばグラウンダーの緻密なパスワークで来るスペインとの試合では、確かに日本は5-4-1で相手にボールを持たせる戦略が成功した。だが反対にアバウトなロングボールやハイボールを多用するスウェーデン相手には、ボールがリバウンドして思わぬ「事故」が起こりやすい。

 それを防ぐにはもっと前からプレスをかけてディフェンスラインを高く構え、ウイングバックとボランチ(の片方)も積極的にフォアチェックに加わりたかった。プレスで潰し、球出しさせない工夫が必要だった。

 だが前線からプレスをかけて球際で激しくボールを競るには、大柄なスウェーデンに大きく見劣りする日本のフィジカルではいかんともしがたい。結局はフィジカルの問題に帰結する。また、なでしこの選手はそもそもボディコンタクトを怖がる傾向がありむずかしい……。

 しかし現代フットボールにプレッシングと球際の厳しさは不可欠であり、この点でなでしこジャパンは深刻な課題に直面してしまう。ここを解決しない限り、前進はない。また明日からやり直しだ。

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【女子W杯2023 準々決勝】なでしこ、本日11日16時30分からスウェーデン戦(テレビ中継あり)

2023-08-11 07:25:34 | なでしこジャパン(ほか女子サッカー)
 本日11日(祝日)、なでしこジャパンは日本時間16時30分にキックオフされる準々決勝でスウェーデンと対戦する。NHKが16時10分から総合テレビ(地上波)で生中継する。

 優勝までの大きな天王山だ。

 ぜひ観戦し、ひとりでも多くの人が日本から「念」を送ってほしい。

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【女子W杯2023 分析】なでしこ、実は薄氷を踏むノルウェー戦だった

2023-08-10 05:00:03 | なでしこジャパン(ほか女子サッカー)
ノルウェーに決められた「あのゴール」を忘れるな

 明日、なでしこジャパンは準々決勝で強豪スウェーデンと対戦する。そこであえて反省材料として、決勝トーナメント1回戦のノルウェー戦をもう一度振り返っておきたい。

 ノルウェーとスウェーデンは同じ北欧の強豪であり、高さとフィジカルを武器にする点でも共通している。似た者同士だ。つまり明日戦うスウェーデンは、いわばノルウェーの「上位互換」だといえる。

 スタイルは似ているが、ノルウェーよりスウェーデンのほうが上なのだ。その意味でノルウェー戦を振り返り、反省点を明日に生かすことは重要な意味がある。

 実はあのノルウェー戦におけるなでしこジャパンの勝利は、いくつもの「もし」で成り立っている。一見、快勝に見えるが、実はいくつもの幸運にめぐまれていた。

 この試合、ノルウェーは日本が仕掛けてくるポゼッションサッカー対策として、5バックで自陣にできるスペースを消してきた。守備的な方法論としては確かに一理ある。

 だが、もしノルウェーが5-4-1のフォーメーションで守りのサッカーをするのでなく、前半からサイドを使ってハイボールやアーリークロス、縦へのロングボールを雨あられと積極的に放り込んできていたら?

 これにより日本がいちばん苦手とする、高さとフィジカルの激しい競り合いに持ち込む肉弾戦を挑んできていたらどうなっていたか?

 なでしこは、たった8分間で3点食らって1‐0から逆転負けした男子ジーコジャパンの2006年ドイツW杯豪州戦のときのように、ガタガタと崩れていたかもしれない。

 あのノルウェー戦は快勝のように見えるが、実はそうじゃない。こんなふうにたくさんの「もし」で彩られている。

 ひとつ言えることは、ノルウェーは高さという自分たちの武器を前面に出して生かそうとせず、逆に日本との勝負を5-4-1で「受けに回った」から不利に陥ったのだということだ。

前半19分に空中戦に負け同点ゴールを食らう

 もう一度書こう。

 なでしこジャパンのアキレス腱は、高さとフィジカルを駆使したハイボールの競り合いに弱いことだ。

 もしノルウェーにその高さとフィジカルの戦いに持ち込まれていたら、あの試合はどうなっていたかわからない。その証拠に、なでしこが1点リードした状況で前半19分に食らったクロスからの同点ゴールがある。

 あの場面、「厳しくプレスをかけて敵にクロスを蹴らせない」という第一の勝負に、なでしこは負けていた。

 もうひとつ、入ってきたハイボールを競り合い「敵のシュートを未然に防ぐ」という第二の勝負にもなでしこは敗北した。だからゴールされたのだ。しかも今大会、唯一の失点だ。

 正直、あのヘディングシュートで同点にされたとき、「これはわからないぞ」と思ったものだ。実際、ノルウェーの選手たちはあの同点ゴールでみるみる生気が蘇り、試合の緊張感がぐっと増すのが手に取るようにわかった。

 ハイボールによる競り合いに勝つ方法は、この記事にくわしく書いたので繰り返すのはよそう。ただ明日のスウェーデン戦は、絶対にサイドからのクロスを入れさせてはいけない。

 敵の足元にしつこくプレスをかけてクロスを蹴らせない。

 いったんハイボールを中に入れさせたら、日本はたちまちピンチに陥る。

 くれぐれもこれだけは気をつけてほしい。

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【女子W杯2023 決勝T】なでしこが決勝進出すれば「この国」と当たる? ~イングランド 0-0(PK4-2) ナイジェリア

2023-08-09 03:52:34 | なでしこジャパン(ほか女子サッカー)
イングランドのボールスピードに目を見張る

 オーストラリアとニュージーランドが共催している「女子ワールドカップ2023」は8月7日、決勝トーナメント1回戦を行い、去年の欧州女子選手権で優勝したイングランド女子代表とナイジェリア女子代表が対戦した。

 試合はイングランドのFWローレン・ジェームズ(チェルシー)が85分に退場になるハプニングもあったが90分では決着がつかず、延長・PK戦の末にイングランドがベスト8進出を決めた。

 もし、なでしこジャパンが決勝まで行ったら、反対側のヤマに残るのはこのイングランドかもしれない。

 彼らは強くて速いグラウンダーのボールと絶妙なサイドチェンジ、ライン裏へのスルーパスで試合をリードした。支配率が高い。だがカウンター気味にプレイするナイジェリアの守備も堅く、なかなか均衡が破れない。

 ナイジェリアはしなやかで力強くキレのある動きで、プレイにすごい躍動感がある。球際が激しく、フィジカルがハンパない。ボールコントロールはやや雑だが、多少パスがズレても身体能力でなんとかしてしまう。

 どちらも非常にいいチームで、「片方がこれで消えてしまう」と思うともったいなく感じる。明らかに先日観たアメリカvsスウェーデンよりこの試合のほうがレベルが高い。

躍動感にあふれるエネルギッシュなナイジェリア

 技術と戦術では明らかにイングランドが上だが、その差をナイジェリアはフィジカルで補って余りある。

 たとえば世界ランキングで見るとイングランドは4位、ナイジェリアは40位と大きな開きがある。だが技術レベルを除けば、トータル的な「戦闘能力」ではほとんど差がない。むしろナイジェリアのほうが怖さを感じさせるくらいだ。

 ポゼッション率はイングランドのほうが高いが、ナイジェリアの怒涛のカウンターも迫力があり、不思議に試合のバランスが取れている。スリリングでおもしろい。いい勝負だ。

 イングランドは、長い距離でも平気でグラウンダーの縦パスを刺しこむ。それだけパスが強いのだ。ボールが出た瞬間に「ハッ」とさせられる鮮烈さ。どう見ても、なでしこジャパンのボールスピードを上回っている。

 彼らは23分にFWアレッシア・ルッソ(アーセナル)が、また28分にもMFレイチェル・デイリー(アストン・ヴィラ)がシュートを放つが、ナイジェリアGKチアマカ・ナドジエ(パリFC)ががっちりセーブした。

 かたやナイジェリアもカウンターでよく応戦し、超ド級の強烈なシュートを放ってくる。47分には左からのクロスに合わせたFWウチェナ・カヌ(レーシング・ルイビル)がジャンプ一番、ヘッドで叩くが、クロスバーに当たりゴールに嫌われる。

 ナイジェリアはカウンター主体であるため攻撃頻度はイングランドほど高くないが、一度マイボールにするとフィニッシュまで行く確率が高い。彼らのゴムのようにしなるエネルギー感が、ほとばしる汗の匂いとともにひしひしと伝わってくる。

ジェームズが相手を踏みつけ一発退場に

 そんな一進一退を繰り返し、試合は「問題の場面」に来た。

 87分の出来事だ。イングランドのFWローレン・ジェームズと相手DFミシェル・アロジエがもつれて倒れた。するとジェームズが起き上がりざまアロジエの臀部を足で踏みつけ、一発退場になったのだ。衝撃的なシーンだった。

 これで10人になったイングランドは延長戦を耐え抜き、かくてPK戦へ。ナイジェリアは最初の2人が外し、最後はイングランドの5人目が決めて4-2で決着がついた。

 退場になったジェームズは、これで少なくとも準々決勝は欠場が確定した。さらに国際サッカー連盟(FIFA)の懲罰基準によれば、3試合の出場停止の可能性もあるという。そうなればジェームズは実質、今大会を「追放」になる。

 ジェームズはグループD第3節の中国戦では2ゴール3アシストと躍動し、プレイヤー・オブ・ザ・マッチに選出されていた。第2節のデンマーク戦でも決勝点を上げる活躍ぶりだった。イングランドとしては痛い結果になった。

 さて欧州女王のイングランドは、この難局を乗り越えることができるのか?

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【女子W杯2023 準々決勝】なでしこは「この戦術」でスウェーデンを叩け

2023-08-08 05:00:47 | なでしこジャパン(ほか女子サッカー)
スウェーデンは空中戦の覇者だ

 なでしこジャパンにとって大きなヤマ場といえるのが次の準々決勝だ。スウェーデンとのゲームは、どんな展開になるだろうか? 

 スウェーデンは大柄な選手が揃い、フィジカルが強靭だ。そのためハイボールの競り合いを得意としている。ただしなでしこのような細かなテクニックはない。大味なチームだ。

 とすればスウェーデンは個人の技術を争う地上戦は避け、決勝トーナメント1回戦のアメリカ戦のときのように、とにかくボールを高く蹴り上げて空中戦に持ち込んでくるだろう。自分たちの高さを生かすためだ。

 となればサイドからのアーリークロスやハイクロス、最終ラインからの縦へのロングボールなどで、フィジカルと高さを武器に激しい競り合いを仕掛けてくるだろう。

 特に彼らのフィニッシュは、ほぼサイドからのハイクロスなのだ。

 こうした肉弾戦に、小柄ななでしこがマトモに付き合うと絶対的に不利になる。

ポゼッションスタイルで相手にボールを渡さない

 とすればひとつの考え方として、「スウェーデンにはボールを持たせない」という方法がある。徹底したポゼッションスタイルを使った地上戦で、ボールをずっと保持して相手に渡さない。

 なでしこらしい小回りの利くアジリティを生かし、動いてパスコースを作り続ける。そして浮いたボールはなるべく避け、カットされにくい強くて速いグラウンダーのパスを繋ぐのだ。「結果的」に日本のポゼッション率を少しでも長くする、という対策である。なでしこの技術力なら、ある程度は実現できるだろう。

 これにより失点のリスクを下げると同時に、自分たちだけがフィニッシュするチャンスを数多く作る。

 ただしポゼッションするといっても、「ボールを保持すること」が自己目的化してはいけない。悪い意味でのティキタカになってはダメだ。あくまで目的は「ゴールを奪うこと」である。ボール保持のためのポゼッションスタイルに陥っては本末転倒だ。

 また逆にグループリーグ第3節のスペイン戦のときのように、ボールを放棄し引いて戦うカウンター戦術はスウェーデン相手には絶対に避けたほうがいい。

 彼らを相手にそれをやれば、日本の守備ブロックの頭上に遠くからロングボールを放り込まれ、高さとフィジカルのある大柄なスウェーデンの選手とまともにハイボールを競り合うハメになる。

 これでは勝ち目がない。

敵がクロスを入れる前につぶす

 とはいえずっとボールを保持するといっても、当然、限界はある。スウェーデンのボールになるときは必ず来る。そのときは前の記事にも書いたように、クロスを上げようとする相手選手に強くプレスをかけて未然に防ぐ。潰してしまう。これでハイボールを入れさせない。その前に決してマークを外さない。

 これを徹底するしかない。

 ただそれでも何本かは、サイドからハイクロスを入れられることはあるだろう。そのときは基本通り、競り合う相手にカラダを押っ付けラクにボールを処理させないようにしたい。

 空中戦に勝つコツは、まずロングボールの落下地点をいち早く読むこと。そしてボールが落ちる場所にすばやく移動し、敵より先に競り合いに有利な落下地点をひとりで「占有すること」だ。

 これでボールを競り合う敵の選手は、ジャストの落下地点から微妙に外れた位置から中途半端にへっぴり腰でボールを競ることになる。これだけでハイクロスの競り合いが断然、有利になる。実は浮き球の競り合いには、ポジショニングが重要なのだ。フィジカルの問題だけじゃない。

ハシェックに学んだ競り合いのコツ

 昔話になるが90年代半ばのサンフレッチェ広島に、イワン・ハシェックというチェコの名選手がいた(現サッカー指導者)。彼は94年のファーストステージ制覇に大きく貢献したいい選手だった。

 このハシェックは、なぜか空中戦にめっぽう強かった。理由はよくわからないのだが、なぜだかいつもハイクロスの競り合いになると必ず勝っていた。非常に不思議だった。

 なぜ彼は空中戦の競り合いに勝てるのだろう? そんな疑問をもち、彼の競り合いの映像を何度もスロー再生して分析してみた。するとポジショニングの問題なのだとわかってきた。つまりコツは前述した通り、ボールの落下地点の素早い読みと、その落下場所をいち早く占有することなのだとわかった。

 なでしこの選手たちも、この点に気をつけてハイクロス攻撃を防いでみてはどうだろうか。

秘密兵器を使うテは?

 またスウェーデンのサイドからのクロスを防ぐ手として、秘密兵器を使う方法もある。

 たとえば攻撃はいいが守備がやや軽い左ウイングバックの遠藤純に代え、同じポジションの杉田妃和をスタメンで起用するのだ。これによりサイドの守備力を補強する。

 杉田はなでしこジャパンのほかの選手たちと違って、ボディコンタクトをまったく怖がらない。ボールの奪い合いでは、むしろ自分のほうから相手にカラダを強く押っ付けて激しく球際で競る。

 こうした彼女の高い守備能力を考えれば、一案だろう。

 当の遠藤は攻撃面ではまさに「サイドのレジスタ」と言ってもいい活躍をしており使えないのは痛いが、天王山であるスウェーデン戦をしのぐためには、ひとつ杉田に賭けてみてもいいのではないか?

 そんな気がしている。

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【女子W杯2023】なでしこが準々決勝でスウェーデンに勝つには?

2023-08-07 05:00:16 | なでしこジャパン(ほか女子サッカー)
ハイボールに気をつけろ

 女子ワールドカップは6日、決勝トーナメント1回戦のアメリカ(世界ランキング1位)vsスウェーデン(同3位)戦が行われたが90分で決着がつかず、延長・PK戦の末、スウェーデンがアメリカを退けた。

 この結果、なでしこジャパンは8月11日(祝日)の日本時間16時30分にキックオフされる準々決勝でスウェーデンと対戦することになった。NHKが16時10分から総合テレビ(地上波)で生中継する。

 スウェーデンはダイレクト攻撃を志向する大柄な選手ぞろいのチームだ。4バックが左肩上がりになり3バックで丁寧にビルドアップするケースもあるが、高さを生かして最終ラインから縦へのダイレクトなロングボールもある。

 彼女たちのフィニッシュはほぼ、サイドからのハイクロスに合わせる形だ。高さとパワーの勝負である。競り合いに勝つフィジカルも強靭だ。

 この試合ではアメリカのほうがグラウンダーのボールも使い、まだ緻密なサッカーをやっていた。決定機もスウェーデンより多く作ったが決め切れず、0-0の末に延長・PK戦で決着がついた。大味な試合だった。

 日本とすれば、苦手なハイボールを多用してくるパワフルな相手だけにアメリカよりやりにくいかもしれない。ただそのぶん敵は鈍重で小回りが利かない。なでしこ持ち前のアジリティとトランジションのよさで勝負したい。

プレスをかけてクロスを蹴らせない

 スウェーデンとの準々決勝では、日本は相手ボールホルダーにしつこくプレスをかけ、クロスを蹴らせないようにする必要がある(もしくは蹴らせてもコースを狂わせる)。

 日本は決勝トーナメント1回戦のノルウェー戦でこれができず、相手を自由にさせてクロスを蹴らせてしまい、高さを生かされ今大会で初失点した。十分に気をつけることだ。

 いったん敵のクロスが中へ入ってしまえば、高さと競り合いの激しさで絶対的に日本が不利になる。

 くれぐれも敵ボールホルダーへのマークを怠らず、足元にプレスをかけて自由にさせない。クロスボールを蹴らせないーー。また同じ理屈でコーナーキックとフリーキックも要注意だ。

 これが勝利への方程式である。

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【女子W杯2023 決勝T】なでしこ、藤野の超絶スルーパス炸裂で3発8強入り 〜日本 3-1 ノルウェー

2023-08-06 11:13:51 | なでしこジャパン(ほか女子サッカー)
大会5ゴール目の宮澤が澤穂希の「記録」に並ぶ

 女子W杯の決勝トーナメント1回戦が5日に行われ、なでしこジャパンが古豪ノルウェーに3-1で快勝した。これで日本は2大会ぶりの8強入りだ。次は日本時間11日(祝日)16時30分からの準々決勝で、スウェーデンvsアメリカの勝者と対戦する。NHKが16時10分から総合テレビ(地上波)で生中継する。

 日本は相手のオウンゴールとWB清水梨紗のパスカット弾、MF宮澤ひなたの今大会5ゴール目で3点をあげて勝ち切った。なでしこはこれで今大会通算14ゴール。初優勝した2011年大会での「12ゴール」を上回り、1大会での日本代表最多記録を塗り替えた。

 ノルウェーは裏のスペースを警戒し、低く構えて5-4-1の専守防衛で来た。これに対し日本はカウンターに徹した前節スペイン戦とは打って変わって、パスを繋ぐポゼッションスタイルで迎え撃つ。

 日本のフォーメーションは3-4-2-1。スタメンはGKが山下杏也加だ。最終ラインは右から高橋はな、熊谷紗希、南萌華が構える。

 右ウイングバックは清水梨紗、左ウイングバックは遠藤純。セントラルMFはエースの長谷川唯と長野風花だ。2シャドーは新鋭・藤野あおばと宮澤ひなた。ワントップは田中美南だ。

パスサッカー対カウンター狙いの対決だ

 今日の日本はボールを保持するポゼッションサッカーで来た。攻撃時は3バックで最終ラインからていねいにパスを繋いでビルドアップする。

 また中盤では少ないタッチ数ですばやくボールを回し、フィニッシュは女子では珍しいライン裏を狙った高度なスルーパスを射し込む。
 
 一方、ノルウェーは攻撃時、2バックでビルドアップする。守備時のフォーメーションは5-4-1だ。彼女たちはボールを失うとリトリートし、自陣にローブロックを組む。最終ラインを低くして日本にボールを持たせる。

 ポゼッションスタイルでスタートした日本としては、相手が守備的に来てくれたのは望むところだ。理屈の上では、そのままボールを保持し続ければ失点する心配はない。まあその理屈通りに行かないのがサッカーなのだが。

ノルウェーの「高さ」が爆発する

 さて前半15分だ。宮澤が左サイドからアーリークロスを入れると、クリアしようとしたノルウェーDFの足にボールが当たってそのまま敵のゴール左スミに入る。オウンゴールだ。最高の形である。

 敵のクリアがオウンゴールになるということは、それだけ宮澤のアーリークロスが際どいコースを突いていた、ということだ。半分は宮澤の得点だ。

 だがノルウェーも反撃に出る。同19分だ。ノルウェーのリサが右サイドからマイナスのクロスを入れ、ゴール前に走り込んだレイテンが競り合いに勝ってヘディングシュートを決め同点に追いつく。日本は今大会、初失点だ。

 サイドからのハイクロスはノルウェーの得意形である。警戒していた彼らの「高さ」にやられた。やはりカラダを張ったボールの競り合いになると日本は弱い。なでしこ最大の弱点が出た。

 また日本は速攻ができる局面でも、いったんバックパスしてわざわざ遅攻にする。日本の男女によく見られる「バックパス症候群」だ。そうじゃなく相手がバランスを崩して速攻が利く局面では、時間を置かずに早く攻めたい。なでしこはもっと縦に速い攻めができるはずだ。

 球際の競りの弱さと遅攻偏重。この2つはなでしこの大きな課題だ。

 加えて日本は攻めが左サイドに偏っているのも気になる。日本の武器である左ウイングバックの遠藤にボールを集めたのかもしれないが、常に彼女が攻めの起点になり左右が偏っている。

 かくて一進一退のまま前半が終わった。

後半の日本はプレスとカウンターを強化してきた

 後半に入り、日本はボールを保持する相手の最終ラインに前からプレスをかけるようになった。球際の競り合いにも挑んでいる。素早い切り替えからの縦に速いカウンター速攻も意識するようになった。ハーフタイムに池田監督から指示があったのだろう。これで後半、日本は見違えるように修正できた。

 そんな後半5分だ。日本は左サイドの遠藤に展開してから敵ゴール前の中央でいったんボールを失う。だがノルウェーがこともあろうにそのゴール前の密集地帯であわててバックパスに逃げたところを、すばらしい出足で走り込んだ清水が絶妙のパスカットをしてゴール右に鮮烈弾を叩き込んだ。2-1だ。

 日本はボールを失った瞬間に、清水が素早いネガティブ・トランジション(攻→守への切り替え)からボールを奪い返しカウンターを見舞った。奪われてもすぐに奪い返す。1-1から1点リードしたこの追加点が非常に大きかった。以後、ノルウェーは同点に追いつこうと前がかりになり、かえって日本のカウンターを食らうことになる。

 ところがノルウェーはここで切り札を出してきた。同29分に高さのある女子初代バロンドーラ―のアーダ・ヘーゲルベルグを途中投入し、サイドからのアーリークロスや縦へのロングボールを盛んに入れてくるようになったのだ。これが彼女たち本来の自分らの形だ。5-4-1の守備的な戦いから、高さを生かして攻撃的にシフトしてきた。

 フィジカルと高さを生かしたあのパワープレイを前半からガンガンやられていたら、勝負はもっとむずかしくなっていたかもしれない。その意味ではノルウェーが日本対策として5-4-1で引いて守って来たのは、「策士、策に溺れる」の感がある。

裏抜けした宮澤が得点ランキング1位の決定弾

 そして同36分。ノルウェーが前にかかって攻めた後に、日本が速いカウンターを仕掛ける。

 自陣で縦パスを受けてボールを運んだ藤野が、ドリブルで敵陣に持ち込み相手ライン裏へ完璧なグラウンダーのスルーパスを放つ。これで裏抜けし、前のスペースに飛び出した宮澤が左足でゴール右に美しいショットを決めた。3-1だ。

 あの藤野のとんでもない超絶的なスルーパスはどうだろう? 今大会、あんなすごいフィニッシュはなでしこジャパン以外に見たことがない。

 しかもそのパスを受けた宮澤は、2戦連発の今大会5ゴール目。得点ランキング1位である。これで彼女は、あのカリスマ・澤穂希が初優勝した2011年ドイツ大会で達成した日本人最多得点記録に並んだ。

 さあ日本がついにベスト8進出だ。だが、これはほんの序章にすぎない。次の準々決勝の対戦候補はともに優勝を狙っている。3連覇がかかるアメリカか、前回大会3位のスウェーデンか。どちらが来ても強敵だ。

 まだまだ「先」は長いのだ。

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【女子W杯2023 決勝T】なでしこノルウェー戦「高さとフィジカルの戦い」を避けよ

2023-08-05 05:00:33 | なでしこジャパン(ほか女子サッカー)
ノルウェーはハイボールを操る「高い城の女王」だ

 なでしこジャパンは「女子ワールドカップ2023」の決勝トーナメント1回戦で、本日5日(土)17時からノルウェーと対戦する。NHKが総合テレビ(地上波)で16時50分から中継する。

 なでしこジャパンのFIFAランキングは11位だ。対するノルウェーは12位と数字の上では拮抗している。だが日本が歴史の浅い新興勢力なのに対し、ノルウェーはいわば古豪といえる。

 彼らは1995年にスウェーデンで開かれた第2回大会で優勝している。成績はけっこう安定していて女子W杯全9大会に出場を果たしており、過去1次リーグで敗退したのは2011年大会のたった1回だけだ。

 平均身長が軽く170センチ以上あるノルウェーは、早めにサイドからハイボールやアーリークロスを入れてくる。また最終ラインから縦にロングボールを放り込むダイレクトなビルドアップもやる。高さを生かすためだ。

 日本としては、敵ボールホルダーに機敏にプレスをかけ、ロングボールを入れる猶予を与えないことが肝要になる。また彼らは相手ボールに対するプレスが速く厳しいため、日本はボールを奪ったら素早いポジティブ・トランジションから少ないタッチ数でパスを繋ぎたい。

速いパスワークで「高さの戦い」を避ける

 ではノルウェー戦を日本はどんな戦術で戦えばいいのか? 

 たとえば1次リーグ第3節のスペイン戦で日本が採用したカウンター戦術は、あくまでスペインがやってくるティキタカ対策のためだったはずだ。

 なぜならスペインと違い、高さとフィジカルのある北欧勢やアメリカと対戦する試合で引いて守れば、日本の守備ブロックの頭上に遠くからロングボールを放り込まれて競り合いに持ち込む「高さとフィジカルの戦い」に引きずりこまれてしまう。これではノルウェーが有利になる。

 なでしこの智将・池田太監督はそんな愚策は取らないはずだ。

 アメリカや北欧勢のような大柄で鈍重な相手と有利に戦うには、低くて速いパスを少ないタッチ数で繋ぐポゼッションスタイルを取るのがベストだ。これにより日本のよさが最大限に生かせる「アジリティとトランジションの戦い」に持ち込むのがかしこい。

 つまり大柄で高さのある鈍重な相手ほど、なでしこの専売特許である速いパスサッカーが生きるのだ。

 スペイン戦で使ったカウンター戦術は、あくまで「見せ球」。つまり「いったい日本はカウンターでくるのか? それともポゼッションか?」と対戦相手の事前のスカウティングを混乱させるためのエサとしておいたほうがいい。

 さあ、なでしこジャパンがいちばん得意なポゼッションサッカーで準々決勝をめざそう。

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【女子W杯2023】なでしこジャパンの戦術は男子レベルだ

2023-08-04 05:25:25 | なでしこジャパン(ほか女子サッカー)
「女子サッカー離れ」している彼女たち

 オーストラリアとニュージーランドで「FIFA女子ワールドカップ2023」が開催されている。

 目下、なでしこジャパンはなんと11ゴールをあげ無失点で1次リーグを3連勝し、グループCのダントツ1位で決勝トーナメント進出を決めたばかりだ。その快調に勝ち進むなでしこには、明らかに男子レベルの戦術が落しこまれている。

 たとえばポゼッションスタイルでプレーするときの彼女たちが秀でているのは、流れるようにていねいな最終ラインからのビルドアップと歯切れのいいトランジション。

 そしてムダな手数をかけない素早いパスワークと、機敏な2列目からの飛び出し、驚異の決定力、極めつけは男子顔負けのポケットを意識した巧妙なフィニッシュだ。

 今大会、強豪国の試合はひと通り観ているが、女子の世界は中にはいまだにキック・アンド・ラッシュのようなスタイルのチームもある。例えばフィニッシュにしても、よく見かけるのはサイドからの単純なクロスに合わせるようなパターンだ。

 なでしこジャパンのように、敵ライン裏のスペースを狙ってグラウンダーのスルーパスを刺しこむような男子顔負けのフィニッシュをしているチームは見当たらない。

 しかも1次リーグ第3節のスペイン戦を見ればわかる通り、なでしこジャパンはポゼッションスタイルとカウンター戦術を試合によって(あるいは時間帯によって)きっちり使い分けられるのだ。

 あのカタールW杯コスタリカ戦でボールを持たされ、ポゼッションへの切り替えがうまく利かず惨状をさらした男子とはえらい違いである。

高さや強さで勝負する決勝T進出チーム

 もちろんなでしこたちは、単純にボールをただ放り込むようなアバウトなプレイはしない。すべて計算ずくでプレーしている。

 セットプレーも完全にデザインされている。

 他方、決勝トーナメントに進出したチームを見ると、アメリカやノルウェー、スウェーデンなど、プレー強度を生かした高さや強さで勝負するチームが多い。

 そんななか、低くて速いグラウンダーのパスを操るなでしこジャパンのスキルフルなポゼッションサッカーは、彼らに対する有効な対抗手段になると見る。

 他の強豪国の大柄で鈍重な女子選手はアジリティとトランジションで日本に劣り、なでしこが得意な速いパスワークとポジションチェンジについてこられないだろう。

 その意味で今大会は、並み居る強豪国を圧倒して優勝する大きなチャンスである。

デュエルに強いMF杉田は秘密兵器だ

 なかでも個人的に期待している選手は、左ウイングバックのMF杉田妃和だ。

 彼女は明らかに対人プレイの強度が男子レベルに近い。ほかの選手と違ってボディコンタクトをまったく怖がらないし、むしろ自分からカラダを押っ付けて球際で激しく競り合うプレイをする。

 今大会、その彼女はまだ1次リーグのコスタリカ戦にしかスタメン出場していない。

 もちろん同じポジションを争うMF遠藤純も突出してすばらしい選手だが、その意味で杉田は「秘密兵器」といえるかもしれない。

 なお、なでしこジャパンの決勝トーナメント1回戦は、8月5日(土)の日本時間17時00分にキックオフされる強豪ノルウェー戦だ。NHKが総合テレビ(地上波)で16時50分から生中継する。ぜひ日本から「念」を送ってほしい。

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【女子W杯2023】なでしこは準々決勝でスウェーデンと対戦か?

2023-08-03 05:42:00 | なでしこジャパン(ほか女子サッカー)
決勝T1回戦で米国とスウェーデンが激突する

 女子ワールドカップ2023・オーストラリア&ニュージーランド大会は2日、1次リーグのG組第3節が行われ、世界ランク3位のスウェーデンがアルゼンチンに2-0で勝った。

 これでスウェーデンは3連勝して勝ち点9で同組を1位通過。決勝トーナメント1回戦では世界ランク1位のアメリカと当たることになった。優勝候補同士の激突だ。

 この結果は日本にも大いに関係がある。なぜなら日本は決勝トーナメント1回戦のノルウェー戦でもし勝てば、このアメリカvsスウェーデンの勝者と対戦することになるからだ。

1次リーグの戦いぶりならスウェーデンが優位か?

 世界ランク1位のアメリカと世界ランク3位のスウェーデンの対決となれば、「事実上の決勝戦か?」と思ってしまうが実はそうでもない。過去の実績は華やかなアメリカだが、今大会はいまひとつ調子が上がっていないのだ。

 事実、1次リーグではアメリカは1勝2分の2位と、同グループ1位になったオランダの後塵を拝して決勝トーナメントに滑り込んだ格好だ。1次リーグ最終戦になったポルトガル戦でも相手の攻撃に苦しみ、両者無得点の引き分けに持ち込むのがやっとだった。むしろポルトガルの健闘が光っていたくらいだ。

 アメリカはプレー強度や高さとフィジカルで押すサッカーだが、今大会はやや大味で、アジリティやトランジションは日本のように鋭くない。

 まあ彼女たちの「火事場の馬鹿力」というのもあるかもしれないが、1次リーグの様子を見る限りアメリカよりスウェーデンが優勢だと言わざるをえない。

スウェーデンも決して完全無欠じゃない

 さて決勝トーナメント1回戦のノルウェー戦を控えた日本としては、当然まずノルウェー対策を講じて勝つ必要があるが……その先のスウェーデン戦を見通してもそう悲観する必要はない。

 スウェーデンは1次リーグ最終戦でアルゼンチンを2-0で下したが、内容的にはアルゼンチンも健闘しており、決して「王者のワンサイドゲーム」という内容でもなかった。

 むしろ日本の素早いパスワークや機敏なトランジションはスウェーデンのような大柄で鈍重なチームは苦手だろうし、日本の驚異的な決定力をもってすれば十分、付け入るスキはある。

日本はノルウェーのハイボールに気をつけろ

 とはいえ日本はなにより決勝トーナメント1回戦のノルウェー攻略が先である。ノルウェーはグラウンダーのパスも繋いでくるが、得意形は高さを生かしたサイドからのハイボールやアーリークロスだ。これらを防ぐためにはボールホルダーにプレスをかけ、ロングボールを入れさせないようにすることだ。

 また注意したいのは、ノルウェーは相手ボールに対するプレッシングが非常に速く、勤勉にハードワークする点だ。

 なでしこなら大丈夫だとは思うが、ボールをトラップしてのんびりしているとたちまちかっさらわれてしまう。ボールを保持したら少ないタッチ数でプレーしたい。日本の素早いパスワークが武器になるだろう。

 ノルウェーは過去に優勝経験もある強豪国だが、1次リーグの戦いぶりを見るとアメリカやスウェーデンよりは一枚落ちる。だがくれぐれも油断は禁物だ。まずは決勝トーナメント1回戦のノルウェー戦に集中したい。

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