すちゃらかな日常 松岡美樹

サッカーとネット、音楽、社会問題をすちゃらかな視点で見ます。

【ハリルジャパン】本田が画策する「反乱」に反対だ

2016-11-12 09:40:29 | サッカー戦術論
ポゼッション率だけが高い「小さなサッカー」に陥るな

 オマーン戦後、本田はあらかじめ清武と「距離感」について話し合っていたとコメントした。周囲の選手とも話し、共通理解を取ったという。非常に気になる発言だ。ひょっとしたら本田はショートパスにこだわる「自分たちのサッカー」を発動し、ハリルに反乱を起こそうとしているのではないか? だがそのサッカーでは世界に勝てないことはすでにザックジャパンが実証している。私は反対だ。

 ハリルのサッカーはダイアゴナルなサイドチェンジによるワイドな展開や、CBから前線に狙い澄ましたロングパスを入れる「大きなサッカー」だ。だが一方、本田や香川が考えるサッカーは、ショートパスやワンツーで中央突破にこだわる「小さなサッカー」である。つまり監督と志向するスタイルが違う。

 そして本田が考える小さなサッカーに不可欠なのが、彼がコメントしている「距離感」なのだ。

 本田が好むショートパスやワンツーを交わすには、選手同士が近い距離にポジショニングする必要がある。本田が「距離感」と言いだした背景には、どうもこの路線対立があるような気がしてならない。悪い兆候だ。

 一般論で言って、日本人が好むサッカーは短いボールが連続してつながる流れるようなパスサッカーだ。つまり「本田派」である。このサッカーをやるにはいい意味での連動性やアジリティ、距離感が求められる。

 だが反面、このスタイルにこだわりすぎるとどうなるか? タイのサッカーみたいにパスをつなぐこと自体が自己目的化し、ポゼッション率だけは高まるがいつまでたっても肝心のゴールが取れない得点欠乏症に陥る。「やってる自分だけが気持ちいい」サッカーだ。かつてのジーコジャパンや悪い時のザックジャパンはそれが顕著だった。日本が世界で勝つには、そろそろこの「国民病」から一刻も早く解脱する必要がある。

敵を横や縦に広げさせるハリルの「大きなサッカー」

 一方、ハリルのサッカーは反対に選手同士が一定以上の距離を取り、相手チームのゾーンを横に広げさせたり縦に伸ばしたりする大きな展開をする。これでゆさぶりをかけ、敵の守備網にほころびを作るスタイルだ。「本田派」の小さなサッカーとは対照的なスタイルであり、日本人が「国民病」から脱するにはハリルのようなサッカーが特効薬になる。

 とはいえ小さなサッカーに慣れた日本人が、いきなりハリル流の大きなサッカーをやるとどうなるか? ロングパスが精度を欠いて単なる放り込みになるなど、パスがつながらない大味な「ブツ切りサッカー」になってしまう。また選手同士が遠いため援軍がなく、必然的に敵と1対1になる局面が多くなる。すると日本人特有の個の弱さが露呈し、苦手なデュエルで負けてしまう。

 つまり今は産みの苦しみなのだが、この過渡的な「ブツ切りサッカー」現象に日本人がアレルギー反応を起こし、にわかにハリル解任論が起こっているというのが現状だ(私の解任論は全く別の理由だが)。

 しかし時計を巻き戻し、ジーコジャパンのような「自由で楽しい」ゆとり教育みたいなサッカーに変えたとしてもそれは単なる自己満足であり、日本が世界で勝てるサッカーにはならない。本田が繰り返す「距離感」なるものは、そうした時間の逆行を意味するのではないかと私は危惧している。

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【サッカー日本代表】大迫を発見した価値あるテストマッチ 〜日本4-0オマーン

2016-11-12 00:25:12 | サッカー日本代表
期待にたがわず2ゴールを決める

 日本がFW大迫を発見した価値あるゲームだった。サウジ戦に向け代表に呼ばれた初戦でヘディングと切り返しからの冷静なシュートでいきなり2発だ。トップ下でスタメン起用された清武もしっかり軸になり、1ゴール2アシスト。早くも大迫とのホットラインが光り輝いていた。

 ドイツ・ケルンでの好調さを買われ、代表に招集された大迫が躍動した。ポジションは4-2-3-1のワントップだ。まず1点目は清武の左からのダイアゴナルなクロスをヘッドで決めた。2点目は背後からの縦パスをワントラップしてゴールに向き直り、切り返しから正確にゴールへ流し込んだ。

 大迫はシュートの意識が非常に高く、ワンタッチでシュートできる場所へボールを置く技術がある。前線で起点になるポストプレイもよし、スペースへの飛び出しもよし。しかも軸がブレない強さもある。所属チームでは2トップの一角だが、ワントップでも全く遜色ない。サウジ戦でのスタメン候補は確定だろう。

 一方、トップ下で同じくスタメン起用された清武もキレと展開力があり、不調が続く香川との差は歴然としていた。所属チームで試合に出場してない点も全く問題ない。この日対戦したオマーンとは力の差があるため日本代表はポゼッションできてしまっていたが、そうすると日本はたちまち意味のない細かなショートパスに拘泥する。もし清武がいなければ、得点シーンのような大きな展開はできなかったかもしれない。彼はチームのメカニズムを一新する大きな力になる存在だ。

本田のキレの悪さは深刻だ

 またマリノスの個性派、斎藤学は左のFWでスタメン出場した。彼は鋭いドリブルが特徴で日本の「飛び道具」になる怖さがある。サイドを破ってのクロスもあり、スケールの大きさを感じさせた。途中交代したがもう少し見たいと思わせる選手だった。

 かたやボランチで途中出場した小林祐希は、清武と同じくチームの軸になる風格と力強さがあった。彼はゴール中央へ来たこぼれ球を拾い、落ち着いてコースを狙い4点目を決めた。メンタルの強さも魅力で、今後が楽しみな素材といえる。このほか短時間の出番だったが原口は相変わらずイキの良さを見せ、同じく途中出場したFW久保もおもしろい存在だった。久保は下がり気味の衛星的なFWとして2トップで試された(のちに右FWへ移動)。

 一方、不合格組である。まず本田と岡崎(途中出場)はキレがなかった。特に本田の出来の悪さは深刻でレギュラー陣の見直しも必要だろう。FW浅野(同)も判断が悪くシュートできる局面でパスしてしまう。彼は思い切りのよさが身上のはずだったが遠慮してしまっている。修正が必要だ。またハリルの期待を受けスタメン出場したCB丸山はレギュラーを狙うには厳しいレベル。ボランチの永木も個人的には物足りない。彼らの存在が象徴的だったが、Jリーグ組と海外組の間にはインテンシティの違いが明確にあった。

 なおゲーム展開としては前半開始から左FW斎藤と右FW本田が絞り気味にプレイし、サイドに作ったスペースに両SBのW酒井が高いポジショニングをして最終ラインからビルドアップするゲームプランだった。だが両SBの質が低くほとんど起点になれない。アンカーがひとつ降りて3CBを形成し、両SBを上げてビルドアップしたいのだが機能不全だ。SBの深刻な人材不足も露呈した。

 光あれば影もあり。結果を出した成功者と不出来な落伍者との対比が鮮明に映し出されたテストマッチだった。

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