6月の梅雨の日だった。
近くの公園へ行ったのだが、あいにく途中で雨が降ってきた。到着してふと見ると、駐車場の横の木の下で、5歳くらいの女の子が雨に濡れながら一人で泣いている。
どうしたんだろう? と思い近寄ってその子の前へ行き、しゃがんで女の子の顔をのぞき込んだ。
「どうしたの?」
「お母さんがいなくなった」
いっしょに歩いていたのに、ふと気づくといなくなったのだという。小雨の降る中、女の子はびっしょり濡れている。私も傘を持ってこなかったので濡れ始めた。
「じゃあ、いっしょにおかあさんを探そうか?」
そう言うと、女の子はこっくりとうなづいた。
駐車場ではぐれたというので、雨の中、駐車場の車を一台一台、のぞき込みながら歩いた。心細いのだろう、女の子は黙って私の手をそっと握ってきた。
とてもびっくりした。
なにしろ私には子供なんていないし、こんな小さな女の子と手を繋ぐなんてまったく初めての経験だ。
なんというか、自分の中の隠れた父性を刺激されたというか、言葉ではまったく表現できない気分になった。「絶対さがしてやるぞ」。そう強く思った。
濡れながら子供と手をつないだ私は、ずらりと並んだ車の中をのぞきながら歩く。いまや私と女の子は、同じ目的をもち連帯感で結ばれている。運命共同体だ。
靴の中が雨で浸水し始めた。女の子は大丈夫だろうか?
そう思った瞬間、女の子が「いた!」と小さく叫んだ。
指さす方向を見ると、駐車場の係員とお母さんが向こうから並んで小走りにこっちへ来る。その子はお母さんに抱きつき、泣きじゃくり始めた。
「見つかってよかったね」
そう声をかけたが、もうその子はお母さんに抱きついたままで、こちらを見ようともしない。無理もない。こわかったんだろうね。
お母さんに一声かけ、私はその場をそっと離れた。
私の手のひらには、いつまでも女の子の手のぬくもりが残ったままだった。
とても不思議な体験だった。
近くの公園へ行ったのだが、あいにく途中で雨が降ってきた。到着してふと見ると、駐車場の横の木の下で、5歳くらいの女の子が雨に濡れながら一人で泣いている。
どうしたんだろう? と思い近寄ってその子の前へ行き、しゃがんで女の子の顔をのぞき込んだ。
「どうしたの?」
「お母さんがいなくなった」
いっしょに歩いていたのに、ふと気づくといなくなったのだという。小雨の降る中、女の子はびっしょり濡れている。私も傘を持ってこなかったので濡れ始めた。
「じゃあ、いっしょにおかあさんを探そうか?」
そう言うと、女の子はこっくりとうなづいた。
駐車場ではぐれたというので、雨の中、駐車場の車を一台一台、のぞき込みながら歩いた。心細いのだろう、女の子は黙って私の手をそっと握ってきた。
とてもびっくりした。
なにしろ私には子供なんていないし、こんな小さな女の子と手を繋ぐなんてまったく初めての経験だ。
なんというか、自分の中の隠れた父性を刺激されたというか、言葉ではまったく表現できない気分になった。「絶対さがしてやるぞ」。そう強く思った。
濡れながら子供と手をつないだ私は、ずらりと並んだ車の中をのぞきながら歩く。いまや私と女の子は、同じ目的をもち連帯感で結ばれている。運命共同体だ。
靴の中が雨で浸水し始めた。女の子は大丈夫だろうか?
そう思った瞬間、女の子が「いた!」と小さく叫んだ。
指さす方向を見ると、駐車場の係員とお母さんが向こうから並んで小走りにこっちへ来る。その子はお母さんに抱きつき、泣きじゃくり始めた。
「見つかってよかったね」
そう声をかけたが、もうその子はお母さんに抱きついたままで、こちらを見ようともしない。無理もない。こわかったんだろうね。
お母さんに一声かけ、私はその場をそっと離れた。
私の手のひらには、いつまでも女の子の手のぬくもりが残ったままだった。
とても不思議な体験だった。