1-0で勝つイタリアの美学
J1開幕からここまで、名古屋グランパスの全試合を丹念に観戦してきた。彼らは実にすばらしい試合を展開している。
成績は6勝負けなしで堂々の2位。首位の川崎フロンターレとは、1引き分け差で勝ち点1の差だ。
しかもそのほとんどの試合が完勝といえるデキで、ウノゼロ(1-0)のシャットアウト勝ちが4試合。3-0の試合が1試合ある。要は相手に何もやらせてないのだ。いかにもイタリア人監督が率いるチームである。
攻守の切り替えが素早く帰陣が速い
名古屋のフォーメーションは攻撃時4-2-3-1、守備時4-4-2だ。彼らはボールを失うと近くのファーストディフェンダーが素早く敵のボールホルダーにディレイをかけ、パスコースをふさぐ。
で、速いトランジションからリトリートし、ミドルサードに4-4-2のブロックを作る。このボールロストから、ブロック守備に移るまでの切り替えがすばらしく速い。
つまり相手チームから見ると、「ボールを奪った。さあ攻めよう」となった次の瞬間には、必ずこの難攻不落の守備ブロックを相手にしなければならないわけだ。
特に敵のポジティブ・トランジション(守→攻への切り替え)に少しでも時間がかかると、サーッと鮮やかにブロックを完成させてしまう。こうして敵にボールを持たせ、「やらせておく」というゲームマネジメントができるチームだ。
そして名古屋はブロックを作り終えると、2トップが敵のセントラルMFへのパスコースを切りながら、ボールをキープする相手のCBにプレッシャーをかける。
こうして敵のボールをサイドに追い込み、サイドでボールを刈り取るのだ。
決して守備偏重のチームではない
こんなふうに名古屋は組織守備が得意なチームだが、決して自陣に引きっぱなしでアバウトなロングボールを放り込むような守備偏重のチームではない。
彼らはボールを持つと、強くて速いインサイドキックから放たれるグラウンダーのパスでスピーディーにビルドアップし、意図のあるボールを前線に送り込む。
このとき繰り広げられるのは、次の展開を考えたパスワークだ。まるであらかじめ設計図を描いているかのようである。
「とりあえず隣にいる味方にボールを預けよう」というような、あいまいで意図のないプレイがない。その意味では11人が有機的につながっている。
パスの種類は、2タッチ以内の速いパスワークが基本だ。
またなかでも特徴的なのは、ピッチを斜めに横切る長いサイドチェンジを多用する点である。つまり「大きいサッカー」をする。狭いゾーンで必要以上にボールを足元でちまちまコネるようなシーンがない。
特に得意としているのは速攻だが、なかでも素早い切り替えから繰り出す速いショートカウンターには威力がある。
2CMFと最終ラインは鉄壁だ
選手別では、セントラルMFの稲垣祥と米本拓司(長澤和輝)が固めるバイタルエリアは鉄壁だ。
また丸山祐市、中谷進之介という不動のCB、吉田豊と宮原和也の両SBによる最終ラインも固い。(吉田がなぜ日本代表に選ばれないのか、まったく不思議だ)
攻撃陣では運動量が豊富な両SH、相馬勇紀とマテウスが光る。
さらに最前線ではFWの柿谷曜一朗がポストをこなすなど瞬間的な動きをし、これにトップ下のガブリエル・シャビエル(阿部浩之)、前田直輝らがからむ。
彼らは高いインテンシティで泥臭く球際のデュエルに挑み、強く激しくファイトする。
全員が非常に献身的で、特にSHの相馬は相手ボールになれば自陣までこまめにプレスバックして「第2のSB」のような働きをする。
監督の哲学でチームが一体化している
一方、マテウスは昨季あたりはすぐに倒れてなかなか起き上がらなかったり、攻撃から守備への切り替えが遅いなどトランジションに問題があったが、いまでは見違えるように修正された。
本来、マテウスやムラっ気な柿谷あたりは献身性の薄い選手のはずだ。それが熱く献身的なプレイをこなしているのだから、明らかにこれは監督の力だろう。
おそらく、あのイタリア人のおっさん(マッシモ・フィッカデンティ監督)がうるさく言うのだ(笑)
またこのチームはリードして終盤になるとDFの木本恭生を投入し、5バックにしたり、3センターの4-1-4-1にするなど守備を固めるシステム変更を行い試合を終わらせる。
いかにも守備にこだわるイタリア人監督がやりそうな手堅いゲームプランだなぁ、と思わずクスッと笑ってしまう。
名古屋グランパスにはそんな、「この監督を信頼すれば勝てる」という一体感がある。そういう熱い息吹が観ている観客にひしひしと伝わってくる。
なにを隠そう、私なんかは前世がイタリア人なので、ウノゼロで名古屋が辛い勝ち方をするたんびに超絶興奮して全身の血が沸騰してしまう。そんな日は早めに風呂に入って気持ちを静めることにしている。
これでもし名古屋が優勝なんぞしたら、はてさていったいどうなることやら。
いまから先が思いやられる。
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成績は6勝負けなしで堂々の2位。首位の川崎フロンターレとは、1引き分け差で勝ち点1の差だ。
しかもそのほとんどの試合が完勝といえるデキで、ウノゼロ(1-0)のシャットアウト勝ちが4試合。3-0の試合が1試合ある。要は相手に何もやらせてないのだ。いかにもイタリア人監督が率いるチームである。
攻守の切り替えが素早く帰陣が速い
名古屋のフォーメーションは攻撃時4-2-3-1、守備時4-4-2だ。彼らはボールを失うと近くのファーストディフェンダーが素早く敵のボールホルダーにディレイをかけ、パスコースをふさぐ。
で、速いトランジションからリトリートし、ミドルサードに4-4-2のブロックを作る。このボールロストから、ブロック守備に移るまでの切り替えがすばらしく速い。
つまり相手チームから見ると、「ボールを奪った。さあ攻めよう」となった次の瞬間には、必ずこの難攻不落の守備ブロックを相手にしなければならないわけだ。
特に敵のポジティブ・トランジション(守→攻への切り替え)に少しでも時間がかかると、サーッと鮮やかにブロックを完成させてしまう。こうして敵にボールを持たせ、「やらせておく」というゲームマネジメントができるチームだ。
そして名古屋はブロックを作り終えると、2トップが敵のセントラルMFへのパスコースを切りながら、ボールをキープする相手のCBにプレッシャーをかける。
こうして敵のボールをサイドに追い込み、サイドでボールを刈り取るのだ。
決して守備偏重のチームではない
こんなふうに名古屋は組織守備が得意なチームだが、決して自陣に引きっぱなしでアバウトなロングボールを放り込むような守備偏重のチームではない。
彼らはボールを持つと、強くて速いインサイドキックから放たれるグラウンダーのパスでスピーディーにビルドアップし、意図のあるボールを前線に送り込む。
このとき繰り広げられるのは、次の展開を考えたパスワークだ。まるであらかじめ設計図を描いているかのようである。
「とりあえず隣にいる味方にボールを預けよう」というような、あいまいで意図のないプレイがない。その意味では11人が有機的につながっている。
パスの種類は、2タッチ以内の速いパスワークが基本だ。
またなかでも特徴的なのは、ピッチを斜めに横切る長いサイドチェンジを多用する点である。つまり「大きいサッカー」をする。狭いゾーンで必要以上にボールを足元でちまちまコネるようなシーンがない。
特に得意としているのは速攻だが、なかでも素早い切り替えから繰り出す速いショートカウンターには威力がある。
2CMFと最終ラインは鉄壁だ
選手別では、セントラルMFの稲垣祥と米本拓司(長澤和輝)が固めるバイタルエリアは鉄壁だ。
また丸山祐市、中谷進之介という不動のCB、吉田豊と宮原和也の両SBによる最終ラインも固い。(吉田がなぜ日本代表に選ばれないのか、まったく不思議だ)
攻撃陣では運動量が豊富な両SH、相馬勇紀とマテウスが光る。
さらに最前線ではFWの柿谷曜一朗がポストをこなすなど瞬間的な動きをし、これにトップ下のガブリエル・シャビエル(阿部浩之)、前田直輝らがからむ。
彼らは高いインテンシティで泥臭く球際のデュエルに挑み、強く激しくファイトする。
全員が非常に献身的で、特にSHの相馬は相手ボールになれば自陣までこまめにプレスバックして「第2のSB」のような働きをする。
監督の哲学でチームが一体化している
一方、マテウスは昨季あたりはすぐに倒れてなかなか起き上がらなかったり、攻撃から守備への切り替えが遅いなどトランジションに問題があったが、いまでは見違えるように修正された。
本来、マテウスやムラっ気な柿谷あたりは献身性の薄い選手のはずだ。それが熱く献身的なプレイをこなしているのだから、明らかにこれは監督の力だろう。
おそらく、あのイタリア人のおっさん(マッシモ・フィッカデンティ監督)がうるさく言うのだ(笑)
またこのチームはリードして終盤になるとDFの木本恭生を投入し、5バックにしたり、3センターの4-1-4-1にするなど守備を固めるシステム変更を行い試合を終わらせる。
いかにも守備にこだわるイタリア人監督がやりそうな手堅いゲームプランだなぁ、と思わずクスッと笑ってしまう。
名古屋グランパスにはそんな、「この監督を信頼すれば勝てる」という一体感がある。そういう熱い息吹が観ている観客にひしひしと伝わってくる。
なにを隠そう、私なんかは前世がイタリア人なので、ウノゼロで名古屋が辛い勝ち方をするたんびに超絶興奮して全身の血が沸騰してしまう。そんな日は早めに風呂に入って気持ちを静めることにしている。
これでもし名古屋が優勝なんぞしたら、はてさていったいどうなることやら。
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