すちゃらかな日常 松岡美樹

サッカーとネット、音楽、社会問題をすちゃらかな視点で見ます。

【兵庫案件】朝日新聞は独自取材で疑惑を切り開く「正義の味方」か?

2024-12-16 12:44:37 | 政治経済
なぜ朝日新聞の報道だけスタンスが違うのか?

 結論から先にいえば、今回、本ブログの調べで朝日新聞は「反立花・反斎藤知事」陣営に位置する可能性が高い、という興味深い結果が出た。

 また同時にそれは朝日が、現・斎藤知事の前に兵庫で5期20年の異常な長きにわたり知事を務め、それにより利権を培った旧・井戸知事派=利権側にあることを意味してしまう。あくまで推測だが、そんな結果が出た。

 さて本題だ。

 兵庫県の斎藤元彦知事らがパワハラ疑惑などを内部告発された問題で、県の公益通報窓口は11日、調査結果をまとめた。

 これ自体は5日前のニュースだが、その結果を報じるマスコミ各社の伝え方を分析すると「あること」がわかった。

 どうやら朝日新聞だけ、スタンスが明らかに違うのだ。実に興味深い。例えばGoogleで「兵庫 公益通報 調査結果発表 斎藤知事」とキーワード検索すればわかる。

 これが、そのGoogleでの検索結果だ。

 例えば上記の結果で出た各社の記事をひとつひとつ仔細に読むと、どの媒体もタイトルには一様に「調査でパワハラは確認できず」と打っている。

 同時に「兵庫県が改善策を出した」とも報じている。これが今回のスタンダードなパターンだ。つまり「記者クラブ・スタイル」である。

 どういう意味か? 以下、説明しよう。

記者クラブとはどんな構造か?

 彼らいわゆるオールドメディアの仕事は、基本的には官庁などの公的機関や企業・業界別に設置されたマスコミ加盟各社共同の「記者クラブ」に所属し、各社の担当記者がクラブに1日詰めることだ。

 そこで役人さんや企業の各担当者らが、作った資料が発表されるのを待つ。記者はそれを受け取り、先方のレクチャーを受けて機械的に記事にするーー。そんな体制なのだ。

 これはいわゆる「発表物」と呼ばれ、記者クラブを肯定しない独立志向の「ある種の記者」からは、もっぱら蔑まれるパターンである。

 なぜなら書く記事の傾向が、そのときもらった(偏向した)資料や(偏向した)レクチャーに支配されてしまいかねないからだ。例えばわかりやすいのは財務省のレクチャーだろう。

 彼ら財務官僚は「緊縮財政」を絶対的なポリシーに掲げ、「積極財政」など謳わない。それが記者むけのレクにも当然、はっきり反映される。これで記者はすっかり洗脳される。

 余談だが、財務省のレクに強く影響されるのは政治家も同じだ。典型的なのは、財務省の落とし子とも言われる立憲民主党の野田佳彦代表だ。

 そうした財務省による偏向したレクの積み上げが、政治家や記者を動かし、やがては国の政策に変わる。だから日本は30年も不況に見舞われているのだ。財務省だけに都合のいい国家になっている(ああ、また余談になった)

記者クラブに依存した取材体制が報道を歪ませる

 つまりそんな省庁に依存した記者クラブの取材体制では、ニュースソースに都合よく恣意的に誘導されがちになる。

 だから記者が既存の記者クラブ体制に安住してしまえば、確かに「仕事」はラクになるのだ。もらった資料や受けたレクを、ただ機械的に記事にするだけだから。

 いわばマシンと同じで、これなら何も考えることはない。当然、「記者精神」とか「高い職業意識」「社会正義」「問題意識」などという面倒なものは捨ててしまい、安易な環境に順応するだけでいい。それで生活が立派に成り立つ。安易でラクな選択だ。

 これが現代の「記者クラブ体制」なるものが抱える致命的な問題点だ。そしていわゆるオールドメディアはその体制に、ずっぽり浸かっている。

 こんなふうに記者は何も考えず安易に記者クラブに順応してしまいさえすれば、カンタン便利な生活が保障される。そんな自動システムだ。

 だがそのぶん人間としての自らの存在意義も損なわれる。大げさにいえば社会に対する問題意識がなくなり、生きる意味さえ失ってしまう。記者クラブは諸悪の根源にもなるシステムなのだ。

金太郎飴みたいな横並びを生み出す記者クラブ・システム

 だからその結果、上に挙げた検索結果のように、どこの媒体も金太郎飴みたいに横並びで似たようなタイトル・内容になってしまう。独自性を失う。

 一方、それに対抗するのが従来から正統派とされる「独自取材」や「調査報道」と呼ばれるものだ。

 これらは「発表もの」とは対極にある。

 例えばときどきニュースにわざわざ「独自」と打っているものがあるだろう。あれはつまり「記者クラブの発表物ではなく、独自取材ですよ」という意味なのだ。

 さて前置きが長くなったが……。

 そんなわけで今回、唯一、実は朝日新聞だけが同じ発表ものに基づいたニュース(12/11付)を扱っていながら、『公益通報受け兵庫県が「改善策」 識者は「違法な対応を重ねてきた』という、他社とは一風変わったタイトルをつけているのだ。
https://www.asahi.com/articles/ASSDC1SWNSDCPTIL00CM.html

 これはどういう意図か? 興味を引いたので、ちょっとそれを調べてみた。

えっ? 「元県民局長による告発の『公益性』が裏付けられた」って?

 実はおそらく朝日新聞がこの記事でいちばん言いたいことは、タイトルではなく記事の「中段」に初めて出てくる以下の箇所だ。

 朝日はこの記事の中段で、『公益通報窓口の調査で告発内容の一部の真実性が認められ、是正に向けた要請がなされたことで、元県民局長による告発の「公益性」が改めて裏付けられたことになる』としている。

 ひとことでいえば、部分的に元県民局長の公益性が認められたとし、明確に元県民局長側に立っている。

 つまり元記事をわかりやすくひとことで翻訳すると、「今回の調査結果により、元県民局長による告発は『公益性があった』と認められた」になる。他社と結論がまったく違う。

 この記事の「実質的な結論」は、やはり実はタイトルにではなく記事の中段にあるのだ。すなわち朝日がいちばん言いたい(だが公表された調査結果とは微妙に違う)主張とは、繰り返しになるが以下の通りだ。

「今回の調査結果で、元県民局長による告発の『公益性』が改めて裏付けられた」

 記事の中にこの一文があるだけで、記事全体の印象がまるで変わる。実に鮮やかなお手なみである。

 ちなみにこういうのを「印象操作」という。

 例えばこの手法を「正しく」使えば、元になるソースより正確で客観的な内容を読者に印象付け「より真実に近く」知らせることができる。

 だが反対に悪用すれば「ソースとは異なる、自分に都合のいい逆の結論を都合よく導き出す」ことができる。

 まあもっぱら悪い意味で使われる言葉だが、さて、この朝日のケースは果たしてどちらだろうか? 以下、それを検証する。

朝日系は「反立花・反斎藤知事」派・説がある……

 ネット上におもしろい説がある。その論理に沿うと、上で説明した印象操作・2パターンのうち、今回の朝日のケースは「後者」である可能性が高まる。

 まずそのひとつ、「商業施設・テナントビジネス」関連ニュースを手がける齊藤英司氏の投稿内容が以下だ。

「渡瀬元県民局長の妹、渡瀬ひろみはテレビ朝日子会社
株式会社ディー・エル・イー(アニメ映像制作・キャラクター事業)役員でした。

立花氏に圧力をかける一つの理由
https://x.com/EIJISAITO8/status/1851552718223233269

 つまり元県民局長の妹さんは、朝日系だという。

 そこで「株式会社ディー・エル・イー」のホームページで確認してみた。すると確かに同社は「2019年に朝日放送グループホールディングス株式会社の連結子会社化」と書かれている。また同じHPの「会社概要」を見ると、しっかり「取締役 渡瀬ひろみ」とある。

 一方、記事「西播磨県民局長、渡瀬康英氏のお人柄を偲ぶ。妹・渡瀬ひろみ氏のFACEBOOK記事に愛を感じると同時に事件性の可能性疑問」(トレンド早わかり!)でも、「引用:facebookより」とした上で、渡瀬ひろみさんのfacebookにあるプロフィールが掲載されている。そこでも同様に「株式会社ディー・エル・イー 社外取締役 社外取締役」とある。

 またもうひとつ、彼女は「株式会社アーレア(ALEA Co.,Ltd.) 代表取締役」とも書かれている。そこで同社のHPにある会社概要でも確認したが、その「会社概要」の中には「代表取締役 渡瀬ひろみ」とあった。確かな情報だ。

話題の奥山俊宏氏は元朝日だ

 さて一方、X(旧・ツイッター)上に、アカウント「桃」氏が投稿したのが以下の内容だ。

「故・元県民局長の妹渡瀬ひろみ氏は、朝日放送の子会社DLE役員。
百条委員会に公益通報に詳しい参考人として呼ばれた奥山俊宏氏は元朝日新聞社員。
そして朝日系列のこの番組で執拗に斎藤さんに絡んだ泉房穂氏は元テレビ朝日社員。

ぜーんぶ朝日‼️グルじゃなかったら逆に何⁉️」
https://x.com/LRfrappuccino/status/1852569097030300109

 このうち渡瀬ひろみ氏については、上記の通り、すでに調べがついている。

 なので、その他の事項をひとつひとつ丁寧に確認してみよう。こちらは単なるニックネームによるX投稿だから、慎重に調べる必要がある。

 まず2番目に出てくる奥山俊宏氏についてだ。

 だがこれはもう以下のご本人のXを見れば、一目瞭然。「朝日新聞記者33年」と明記されている。
https://x.com/okuyamatoshi

 念のためキーワード「奥山俊宏 朝日新聞」で検索してみると、以下の通りだ。
https://www.google.com/search?client=firefox-b-d&q=%E5%A5%A5%E5%B1%B1%E4%BF%8A%E5%AE%8F%E3%80%80%E6%9C%9D%E6%97%A5%E6%96%B0%E8%81%9E

 こちらもまちがいない。

泉氏は「朝まで生テレビ」のスタッフだった

 最後に泉房穂氏については、巷間、田原総一郎氏の司会で一時代を作ったあの「朝まで生テレビ」のスタッフだったことはよく知られている。

 以下、ご本人のXにも「『朝まで生テレビ』スタッフ」とあり、泉氏のオフィシャルサイト上にあるプロフィールの記述では「NHKから民放に移籍し、『朝まで生テレビ』なども担当」とある。

泉房穂氏のX
https://x.com/izumi_akashi

泉氏のオフィシャルサイト内「プロフィール」
https://www.izumi-fusaho.com/profile.html

 だが一点、気になることはある。上記した「桃」氏のXでは「元テレビ朝日社員」とあるが、泉氏・ご本人の公式系の表示では「朝生スタッフ」とか、「(NHKから)民放に移籍し『朝まで生テレビ』なども担当」と曖昧な表現になっている点だ。「正社員」とは書かれてない。

 また同じく泉氏のXのポストによれば、「35年前の1988年、当時20代前半の私は、『朝まで生テレビ』のフロアディレクターとして、スタジオで“キュー”を出していた」(2023年12月31日・午後10:55)とある。
https://twitter.com/izumi_akashi/status/1741458104032854158

 つまり泉氏ご本人発の情報では、厳密にはテレ朝の「正社員だった」とは明記されていない。

テレビ番組は外部の制作プロダクションに外注して作られる

 というのも一般にテレビ番組は、各テレビ局本体が作るのではなく、外部の「制作プロダクション」に外注・依頼して制作されているものが多い。つまり下請けの構造だ。

 例えば私が昔、実際に現場で目の当たりにしたケースでは、あるテレビ局へ行くとフロアの一角を外部の制作プロダクションが「我が物顔」で相当な面積を占拠していた。

 なんならワンフロア全面を使う勢いだ。そこには彼らが制作している番組名が大書してあった。

 つまり、こういう関係なのだ。

 だから泉氏・ご本人の公式系での表記が元「朝生スタッフ」とか、「(NHKから)民放に移籍し、『朝まで生テレビ』なども担当」となっているのは、実はテレ朝の正社員だったのではなく「朝生」を作る「外部の制作プロダクションに所属していた」ということかもしれないな、とも考えた。

 ただしそこはあんまり突っ込むべきポイントでもない。いずれにしろ泉氏が朝日系に何らか「ご縁がある」ことは確かめられたのだから。

朝日新聞は5期20年に渡り「利権を培った」旧体制側か?

 話をまとめよう。

 今回の兵庫案件では「斎藤知事・悪者」説や、また逆に「元県民局長こそ悪だ」説など、過去に怪しい風聞や権力闘争説がたくさん流れた。主に前者を形成したのがオールドメディアの言説だ。

 反対にN党・立花氏の主張などは後者に当たる。まあどちらも情報操作や印象操作に近いものだが、それらにより世論が大きく左右されたのは事実だ。

 以上、今回調べた結果から、この「兵庫案件」ではどうやら朝日系は元県民局長側=反斎藤側である可能性が濃厚になってきた(現段階では)。

 すなわち斎藤知事の前に5期20年もの間にわたり、知事を務めて地方利権を形成してきた旧・井戸敏三知事と思われる一派だ。
https://ja.wikipedia.org/wiki/%E4%BA%95%E6%88%B8%E6%95%8F%E4%B8%89

 現に、斎藤知事が再選を果たしてもなお、今回、朝日新聞は冒頭で挙げた同社の記事『公益通報受け兵庫県が「改善策」 識者は「違法な対応を重ねてきた』(12/11付)のなかで、以下のように主張する。

「公益通報窓口の調査で告発内容の一部の真実性が認められ、是正に向けた要請がなされたことで、元県民局長による告発の「公益性」が改めて裏付けられたことになる」

 要約すると「元県民局長の告発には『公益性』があった」という。

 これが朝日新聞の主張だ。

 あえて分類すれば、やはり旧体制側になる。

 参考までに、私があれこれ調べて本ブログの過去記事で分析した兵庫利権の歴史的構造は、以下の記事に詳しく書いた。

「【兵庫県知事選】斎藤知事を取り巻く「利権の構造」とは?」(すちゃらかな日常 松岡美樹)

 さてみなさんは、どう思われるだろうか?

朝日新聞は調査結果の「発表物」に頼らず「独自取材」で材料を集めた?

 一方、これらの記事から数日遅れで、一石を投じる注目すべき以下の記事が「集英社オンライン」からリリースされた。それは12月14日付の以下の記事だ。この記事から類推すれば、朝日新聞はにわかに「善玉」に変貌するからおもしろい。

「〈クリスマスにも百条委〉「パワハラは確認できず」“斎藤知事はシロ”は本当か? いまだ疑惑は決着つかず…知事がたじろいた記者の鋭い質問とは?」(集英社オンライン)
https://shueisha.online/articles/-/252507

 同記事は、こう問題提起している。以下に該当部分を引用する。

「パワハラとおねだりに関し、“シロ”を宣言するような調査結果の発表は、斎藤氏が主張する正当性を後押ししそうだ。だが、他の4つの疑惑をどう判断したのかは明らかにされていない。今回の発表で斎藤氏が望む方向に事態が進むかどうかは不透明だ」

 こう書いた上で、集英社オンラインの同記事は「地元記者」のコメントとしながら以下のような証言を伝えている。少し長くなるが、重要なのでそのまま引用する。

「調査主体である県財務部は、県政記者クラブの記者らに、『調査は是正措置を講じるかどうか判断するためのもので、パワハラの有無は今後百条委などで明らかにされると認識している』と話しました。つまり財務部は、パワハラはあったともなかったとも判断していない、と認めたのです」(地元記者)

では「全国紙記者」とは何者か?

 また集英社のこの記事は「斎藤氏の会見では全国紙記者から、以下のような鋭い質問が出た」といい、この「全国紙記者」のコメントを以下のように伝えている。

「財務部に先ほど1つ確認した。通報に公益性があったかどうか。(財務部の答えは)『(Aさんが)公益通報して受理して是正措置に繋がったということで、公益性があった』ということだった。(Aさんの告発は)単なる誹謗中傷ではなく、一定の公益性があるということになる。このことの受け止めを」(全国紙記者)

 あくまで推測になるが、この「全国紙記者」とは朝日新聞ではないか?

 なぜなら私が先にあげた朝日新聞記事の最大の主張「元県民局長の通報には一部、公益性があった」の部分が、この「全国紙記者」の質問とぴったり重なるからだ。

 つまり朝日は他社と違い、記者クラブでの活動とは別に独自で県の財務部に取材し、そこから得たネタをこのとき会見で斎藤知事に再度「当てた」のではないか? こう推測できる。取材の基本だ。

 つまり朝日は上記の独自取材をもとに、記事『公益通報受け兵庫県が「改善策」 識者は「違法な対応を重ねてきた』を書いたーー。こう考えれば合点が行く。

 すなわちこれが今回発表された調査結果をもとに書かれた各新聞社の記事が判で押したように「パワハラ確認できず」になっているのに、朝日だけ記事の中段で「元県民局長の通報には公益性があった」と主張し、ひときわ異彩を放っている理由ではないか?

朝日は善玉か? 悪玉か?

 繰り返しになるが朝日の同記事の中段にある最大の「主張」は、『公益通報窓口の調査で(元県民局長の)告発内容の一部の真実性が認められた』とする点にある。

 そして『これに基づき是正に向けた要請がなされたことで、元県民局長による告発の「公益性」が改めて裏付けられたことになる』が本論だ。

再掲『公益通報受け兵庫県が「改善策」 識者は「違法な対応を重ねてきた」』(朝日新聞)より。
https://www.asahi.com/articles/ASSDC1SWNSDCPTIL00CM.html

 では朝日はいったい善玉なのか? 悪玉なのか? それは読者のみなさんのご判断にお任せしよう。

 さて今後もこうした疑惑を証明する兵庫の新たな情報が出れば、相応の独自分析を交えてその都度、ご紹介するつもりだ。

 この問題は相当根が深いだけに、なかなか終わりがない。

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