すちゃらかな日常 松岡美樹

サッカーとネット、音楽、社会問題をすちゃらかな視点で見ます。

【兵庫に見るメディア論】終わっているのは「オールドメディア」だけじゃない

2024-12-04 13:13:07 | メディア論
「収穫」するメディアが変わっただけだ

 結論から先にいえば、現代のメディア構造は「種まき」「収穫」という広告戦略を、自分の「note」で暴露した兵庫のPR会社(株)merchu・折田楓社長のプレゼン通りだ。

 アレをちょっとアレンジすれば、メディア界の構造をすべて解説できる。

 従来の大衆はテレビや新聞など、いわゆるオールドメディアに「収穫」されてきた。だがインターネットが生まれ、特にブログが誕生した2000年以降を境に、今度はSNSに「収穫」される構造に変わった。

 つまりこの点に限れば、情報戦を仕掛ける側と情報の受け手の側との関係は旧来とあまり変わりない。送り手の側が使うメディアが、テレビや新聞からSNSに変わっただけだ。

 ただしX(旧ツイッター)やYouTubeなどのSNSがぐんぐん浸透し、みんながSNSをやるようになった現代では誰でも情報の発信者になれる。

 すなわちオールドメディアしかなかった昔は、情報の送り手と受け手の関係がハッキリ二分されていた。だが今ではSNSによる両者の相互通信、つまり両者が互いに発信し、情報を相互にやり取りできる時代になった。

 ただしオールドメディアとSNSは、双方とも大きな欠陥を抱えている。

 例えば今回の兵庫県知事選挙では、マスコミの問題点がクローズアップされた。だが一方、SNSの側にも深刻な問題がある。

 SNSは別に万々歳でもなんでもない。ネット上を見ると、そこから生み出されるコンテンツはピンからキリまであるからだ。

特にYouTube界の劣化は凄まじい

 例えば特にここ1年ほどYouTube界では、酷いコンテンツが急増してきた。典型的なのはタイトルだけが「惹き」の強い、だが中身はまるで何もないパターンだ。

 タイトルが良くて巧妙だから、それを見るとついクリックしてしまう。

 だが内容がスカスカで情報量がまったくない。もちろん裏取りもなし。つまり「クリック詐欺」みたいなものだ。単なる視聴数稼ぎにすぎない。

 例えばどこから引用したのか不明で出所が明示されてない記事や、誰ともわからない複数のネット民たちのコメントが単にずらずら画面上に並んでいるだけだったりする。

 典型的なのは、他人が作った動画・画像コンテンツを勝手に「引用」した部分が大半を占めるようなものだ(厳密には自分の制作物が「主体」でなければダメ)。

 もちろんこれらは「失格コンテンツ」のほんの一例に過ぎない。

 ちなみにこうした現象は、2000年頃にブログが生まれた当時にもたくさんあった。ブログで誰もが発信できるようになり、今と同じように「マスコミは終わった。見よ、ネットの勝利だ」と言われた。いつか見た光景だ。

 当時はブログへの新規参入が激増し、そのためルールを無視したコンテンツ作りが横行した。その意味で今は「第二次粗製濫造時代」ともいえる。

 つまり誰でも発信できるために、技術・知識の有無やセオリーを知っている・知らないに関わらず、誰もが発信者側になれるからこそ起こる現象だ。

 時代の転換点にある今だけなら仕方ない。だがこのままでは確実に先行きが怪しい。

 今後は全体的な底上げやレベルアップが大きなテーマになるだろう。

広告に左右されるメディアの末路は?

 オールドメディアと言われ叩かれているマスコミが、実はクライアントからの広告料で経営が成り立っていることは前回の記事ですでに述べた通りだ。

 彼らは「広告主サマ」に都合の悪いことは一切放送できないし、記事に書けない。つまり広告タブーがある。彼ら旧メディアはこれですっかり退化し、終了した。

 特に新聞の購読者数は今や激減し、購読料ではとても食えない。そのため媒体としての広告価値も落ちてクライアントから見放されがちになっている。

 だが一方、例えばYouTubeでは、今やそのマスコミとまったく同じ「広告依存体質」が露呈してきている。

 例えばクライアントから高い料金が支払われる広告タイアップがそのひとつだ。YouTube上では、いわゆるこの「案件」と呼ばれるコンテンツ作りが今や急増している。

 オーバーに言えば「報道」のセオリーを知らないYouTuberさんたちは、嬉々としてこれで稼いで喜んでいる。

 かくて今後YouTuberは「クライアントさま」に都合の悪い発信は一切できない。マスコミが陥った罠とまったく同じだ。

 おそらく今後、このテのYouTubeコンテンツの劣化は、ますます進むだろう。

YouTuberが恐れる「バン」とは?

 また広告に限らずYouTubeには一定のタブー(ガイドライン)がある。それに引っかかるとコンテンツが削除される。さらに厳しい、いわゆる「バン」されるケースもある。チャンネルやアカウントが停止されるのだ。

 典型例をひとつだけ挙げれば、大きな社会問題になっている「レプリコンワクチン」なるワードはYouTubeでは完全に禁止だ。

 そして当然、上記のようにバンされれば収益は停止され、YouTuberの収入もなくなる。

 最近は特にこうした規制が厳しくなり、YouTuberはそれに抵触しない範囲でのコンテンツ作りを余儀なくされている。逆に言えばその範囲でしか、「報ずるべきこと」を発信できない。

 そこで視聴者側に求められることは、こうした玉石混合の中から自分で「優良コンテンツ」を見分ける目を養うことだ。自分の目で観て客観的に判断し、観るものを選別するーー。

 誰もが発信できるSNS時代には、そんな能力が重要になるだろう。

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