何が彼女たちをそうさせるのか?
ゆうべの中国戦を見て驚いた。立ち上がりからなでしこジャパンは、2タッチ以内で小気味よくボールを回すハイテンポなパスサッカーをやっていた。
パススピードも強く速く、全員に「前へ」の積極性がある。すばらしいデキだった。ラインコントロールも申し分なく、プレスの掛け方もよかった。少なくとも先制点を取る前半の20分までは、だ。ところが1点をリードした彼女たちは、それっきりまったく別のチームになってしまった。
もちろんこれらの要素のうち、すべてが崩壊したわけじゃない。最大の変化はバックパスが増えたことだ。点を取るまではみなぎっていた「前へ」の積極性が激減した。(バックパスの功罪についてはこの記事参照。バックパスを多用すれば必然的に遅攻になり、そのぶん相手チームに守備の体勢を立て直す猶予を与える)
もう1点はボールスピードだ。パスが急に弱くなり、だれに出そうとしているのか判然としないような中途半端なボールが増えた。大きく変化したのはこの2点だ。そして点を取って以降の残り70分間は、初戦の韓国戦とまったく同じ消極的な状態になってしまった。本当にもったいない。
まちがいなく立ち上がり20分間の張り詰めたサッカーが、彼女たちの実力なのだ。とすればなでしこジャパンは実力の半分も出せてないことになる。選手にこれだけの変化を起こさせるのは、メンタル要因としか思えない。
メンタルトレーニングの必要性
想像だが、「20代女性」という時期はもともとむずかしい年代なのだろう。ナイーブで多感。ちょっとした環境の変化や対人関係、また試合の状況によって精神状態が千変万化する。そしてメンタルがネガティブな方向に変われば、プレイの質も激変するーー。
「前半20分に待望の先制点が取れた。ここから試合運びはどうするのか? 攻め4割に落とし安全に行くのか? それともまっすぐ積極的にやるか? いずれにしろリードを守りたい」
そんな精神状態の変化が「前」を向いていたそれまでの彼女たちを消極的にさせ、「安全に」の意識がバックパスを激増させたのではないか?
いや、点を取れたのがもし後半30分なら、試合運びを変えるのもわかる。だが前半20分では早すぎる。とすれば彼女たちは自覚的に「そうした」のでなく、無意識のうちに「そうなってしまった」のだとしか思えない。取材してないのでわからないが、女子代表はメンタルトレーニングはやっているのだろうか?
精神的なマイナス要因を「棚に上げて」おく
たとえば試合中にミスをしたとしよう。そのことが気になり、がっくりプレイの質が落ちてしまう。サッカー選手にはよくあることだ。
そんなとき、ゲーム中の失敗は「試合中」には考えない。「棚に上げておく」ようにするメンタルコントロールができれば、その選手は常に実力を発揮できるようになる。
それほどメンタルの影響力は大きい。
なでしこジャパンのあれだけ大きいプレイの質の浮き沈みが、もしメンタル要因だとすればすべてが頷ける。いわば「足枷をつけて」サッカーをやっているようなものだからだ。
彼女たちの名誉のために言っておくが、選手個々の技術や戦術レベルは申し分ない。相変わらずFWの田中美南や岩渕真奈は「個の力」を見せつけていたし、アンカーを務めた隅田凜は展開力がすばらしくプレスをかけられた状態でもしっかりプレイできる。左インサイドハーフで出場した猶本光は守備対応が正確だった。
阪口や鮫島はもっともっと出来ると思うし、なにより韓国戦で「別格の違い」を見せたMF中島はアシストしたきり試合から消えてしまったのは残念だったが。
なでしこジャパンは持てる実力さえそのまま出せれば、今の段階でもアジアに敵はいないだろう。ではどうすれば実力を出し切れるのか?
それを考えてほしい。
ゆうべの中国戦を見て驚いた。立ち上がりからなでしこジャパンは、2タッチ以内で小気味よくボールを回すハイテンポなパスサッカーをやっていた。
パススピードも強く速く、全員に「前へ」の積極性がある。すばらしいデキだった。ラインコントロールも申し分なく、プレスの掛け方もよかった。少なくとも先制点を取る前半の20分までは、だ。ところが1点をリードした彼女たちは、それっきりまったく別のチームになってしまった。
もちろんこれらの要素のうち、すべてが崩壊したわけじゃない。最大の変化はバックパスが増えたことだ。点を取るまではみなぎっていた「前へ」の積極性が激減した。(バックパスの功罪についてはこの記事参照。バックパスを多用すれば必然的に遅攻になり、そのぶん相手チームに守備の体勢を立て直す猶予を与える)
もう1点はボールスピードだ。パスが急に弱くなり、だれに出そうとしているのか判然としないような中途半端なボールが増えた。大きく変化したのはこの2点だ。そして点を取って以降の残り70分間は、初戦の韓国戦とまったく同じ消極的な状態になってしまった。本当にもったいない。
まちがいなく立ち上がり20分間の張り詰めたサッカーが、彼女たちの実力なのだ。とすればなでしこジャパンは実力の半分も出せてないことになる。選手にこれだけの変化を起こさせるのは、メンタル要因としか思えない。
メンタルトレーニングの必要性
想像だが、「20代女性」という時期はもともとむずかしい年代なのだろう。ナイーブで多感。ちょっとした環境の変化や対人関係、また試合の状況によって精神状態が千変万化する。そしてメンタルがネガティブな方向に変われば、プレイの質も激変するーー。
「前半20分に待望の先制点が取れた。ここから試合運びはどうするのか? 攻め4割に落とし安全に行くのか? それともまっすぐ積極的にやるか? いずれにしろリードを守りたい」
そんな精神状態の変化が「前」を向いていたそれまでの彼女たちを消極的にさせ、「安全に」の意識がバックパスを激増させたのではないか?
いや、点を取れたのがもし後半30分なら、試合運びを変えるのもわかる。だが前半20分では早すぎる。とすれば彼女たちは自覚的に「そうした」のでなく、無意識のうちに「そうなってしまった」のだとしか思えない。取材してないのでわからないが、女子代表はメンタルトレーニングはやっているのだろうか?
精神的なマイナス要因を「棚に上げて」おく
たとえば試合中にミスをしたとしよう。そのことが気になり、がっくりプレイの質が落ちてしまう。サッカー選手にはよくあることだ。
そんなとき、ゲーム中の失敗は「試合中」には考えない。「棚に上げておく」ようにするメンタルコントロールができれば、その選手は常に実力を発揮できるようになる。
それほどメンタルの影響力は大きい。
なでしこジャパンのあれだけ大きいプレイの質の浮き沈みが、もしメンタル要因だとすればすべてが頷ける。いわば「足枷をつけて」サッカーをやっているようなものだからだ。
彼女たちの名誉のために言っておくが、選手個々の技術や戦術レベルは申し分ない。相変わらずFWの田中美南や岩渕真奈は「個の力」を見せつけていたし、アンカーを務めた隅田凜は展開力がすばらしくプレスをかけられた状態でもしっかりプレイできる。左インサイドハーフで出場した猶本光は守備対応が正確だった。
阪口や鮫島はもっともっと出来ると思うし、なにより韓国戦で「別格の違い」を見せたMF中島はアシストしたきり試合から消えてしまったのは残念だったが。
なでしこジャパンは持てる実力さえそのまま出せれば、今の段階でもアジアに敵はいないだろう。ではどうすれば実力を出し切れるのか?
それを考えてほしい。