この窓を開けて
もうすぐ風が吹いたら
風の調べを聴いてみたい
いつの間にか
街路樹のような大木に成長した けや木
枝木を広げ幹を伸ばし
葉は見事なまで いっぱい
鮮やかな緑から
黄や茶、赤く色づき 今はもう
風が吹かないのに 落ちていく
パラパラ ひらひら はらはら
落葉は 庭のタイルを隠し
ひと塊になったり 離れたり
雨や風に吹かれるたび
飛ばされて 舞っている
繰返して 過ぎ去り まわって 戻る
同じ景色を 幾度となく繰り返し
喜びも 辛さも
祭りごとも 絆も
家族のすべてを見守り
まっすぐ伸びて 寄り添った
窓越しに 眺めながら
数十年の時をえて やっと
けや木に想いを 語ってみる
風音を聴いたなら 何か
答えてくれないか
窓の外は
落葉の庭が風を呼び
新たな季節を迎える
けや木は何も言わないけど
季節の調べを聴いている