12月19日、クルト・マズアさんが逝去されました。旧東独の指揮者であり、東西ドイツの統一にも活躍。ライプティヒ・ゲヴァントハウス菅、ニューヨークフィル、ロンドンフィル、フランス国立管などの指揮者をされました。私はこの指揮者の演奏はそれほど聴いたことがあるわけでもないのですが、ゲヴァントハウス菅とのベートーヴェンとブルックナーの交響曲全集があるくらいで、アメリカに移った1990年以降のものはほとんど聴いていません。ただ、ゲヴァントハウス菅は、私が音楽を聴き始めた1970年代初めに来日し(調べましたが不明。このときは指揮者はマズアだったのか?もしかして来日してなかったりして…。)、ドイツの伝統あるオケということで関心は深かったのでありました。ただ、マズアはあまり聴かなかったんです。
数年間ですか、マズアのベートーヴェン交響曲全集の国内盤が、なんと3000円前後ということを知りました。加えてこの演奏、HMVのレビューでは、20人中9割の人が5の評価だったんです。これは一度聴いてみよう、ということでいそいそと購入したのでありました(ちなみに現在は購入不可とHMVではなっています。そのかわりSACDでPentatoneから出てます)。買ったときは聴いて、評価が高いのも頷けるなあと思ったのですが、その後はご無沙汰のなっておりました。そして、過日マズアの逝去を知り、これはこれはということで、12月23日天皇誕生日でしたが、出勤(一日中書類の点検に明け暮れていたのです)して、仕事しながらこのマズアのベートーヴェン全集を聴き通したのでありました。そして、これは素晴らしい全集だ、ということを再確認したのでありました。加えて、6枚組にはベートーヴェンの序曲が11曲も収められています。これも嬉しいですね。
このマズアの交響曲の録音は、1972~73年にドレスデンのルカ教会のものです。9曲すべていい演奏なんですが、5・7・9番が私は好きですし、特にいいですねえ。ということで、今回は交響曲第5番ハ短調作品67です。1972年2月の録音。
この演奏、まずゲヴァントハウス菅がいいです。私は、ドイツ系の指揮者やオケによる弦の響きが好きなんですが、このゲヴァントハウス菅、弦がいい。チェロやなどの低弦が実に渋いですよね。そして派手さはないが実に堅実は木管などで、非常に引き締まった音色なのであります。やはりドイツの伝統あるオケがいいです。そして、マズアですが,演奏自体は非常に堅実で、まさに質実剛健。正攻法でぐいぐいと脇目もふらず真っ直ぐなベートーヴェン。それも力一杯と迫力満点の渾身の直球勝負であります。それを支えるのゲヴァントハウス菅の引き締まり揺るぎの管弦楽でありました。しかし、ドイツのオケにしか聴けない音楽がここにはありました。
第一楽章、冒頭から迫力に満ちた運命の動機が、弦のうまくコーティネートされた響きで歌われる。ささくれだったところもあるが、実に心に突き刺さってくる。それに締まった木管とホルン、そしてティンパニが呼応する。ベートーヴェンの苦悩が目の前に展開されるよう。幾度となく聴くこの曲が実に新鮮に聞こえますねえ。第2楽章、ヴィオラとチェロの歌う第一主題は実に美しい。それに続く木管から金管による第二主題は高らかに歌い上げられるが、少々もう運命を克服しちゃいましたか、と思わせなくも無い。しかし、そのあと幾度となく出てくる主題が実に生き生きとした迫力があるので、この第2楽章全体が援徐楽章っぽくないといえなくもない。しかし、これほど気持ちの籠もった演奏もそれほど聴けません。ある意味、この楽章がこの演奏でのききどころかも。各楽器の充実ぶりもすごい。第三楽章スケルツオ。ホルンによる主題が実に堂々として聴き応え満点です。そして、トリオのコントラバスに響きはこれほど美しく鮮やかなものを知らないです。そして第4楽章に繋がる、弦のピチカートと木管の掛け合いも見事な透明感あふれる演奏。第4楽章はこれまでの勢いそのままに突入。とびきりまとまった管弦楽で、高らかに勝利の凱歌が歌い上げられます。そうはいっても、この引き締まったオケは実に鮮やかなベートーヴェンを聴かせてくれました。
昨日は、先日行ったBOOKOFFでたまたま目に止まった村山由佳さんの『放蕩記』を一気に読みました。母と娘の葛藤の物語ですが、ひさびさに小説を読みました。これもお休みのお陰ですかねえ。
(Victor VICC-6067-76 2007年)
数年間ですか、マズアのベートーヴェン交響曲全集の国内盤が、なんと3000円前後ということを知りました。加えてこの演奏、HMVのレビューでは、20人中9割の人が5の評価だったんです。これは一度聴いてみよう、ということでいそいそと購入したのでありました(ちなみに現在は購入不可とHMVではなっています。そのかわりSACDでPentatoneから出てます)。買ったときは聴いて、評価が高いのも頷けるなあと思ったのですが、その後はご無沙汰のなっておりました。そして、過日マズアの逝去を知り、これはこれはということで、12月23日天皇誕生日でしたが、出勤(一日中書類の点検に明け暮れていたのです)して、仕事しながらこのマズアのベートーヴェン全集を聴き通したのでありました。そして、これは素晴らしい全集だ、ということを再確認したのでありました。加えて、6枚組にはベートーヴェンの序曲が11曲も収められています。これも嬉しいですね。
このマズアの交響曲の録音は、1972~73年にドレスデンのルカ教会のものです。9曲すべていい演奏なんですが、5・7・9番が私は好きですし、特にいいですねえ。ということで、今回は交響曲第5番ハ短調作品67です。1972年2月の録音。
この演奏、まずゲヴァントハウス菅がいいです。私は、ドイツ系の指揮者やオケによる弦の響きが好きなんですが、このゲヴァントハウス菅、弦がいい。チェロやなどの低弦が実に渋いですよね。そして派手さはないが実に堅実は木管などで、非常に引き締まった音色なのであります。やはりドイツの伝統あるオケがいいです。そして、マズアですが,演奏自体は非常に堅実で、まさに質実剛健。正攻法でぐいぐいと脇目もふらず真っ直ぐなベートーヴェン。それも力一杯と迫力満点の渾身の直球勝負であります。それを支えるのゲヴァントハウス菅の引き締まり揺るぎの管弦楽でありました。しかし、ドイツのオケにしか聴けない音楽がここにはありました。
第一楽章、冒頭から迫力に満ちた運命の動機が、弦のうまくコーティネートされた響きで歌われる。ささくれだったところもあるが、実に心に突き刺さってくる。それに締まった木管とホルン、そしてティンパニが呼応する。ベートーヴェンの苦悩が目の前に展開されるよう。幾度となく聴くこの曲が実に新鮮に聞こえますねえ。第2楽章、ヴィオラとチェロの歌う第一主題は実に美しい。それに続く木管から金管による第二主題は高らかに歌い上げられるが、少々もう運命を克服しちゃいましたか、と思わせなくも無い。しかし、そのあと幾度となく出てくる主題が実に生き生きとした迫力があるので、この第2楽章全体が援徐楽章っぽくないといえなくもない。しかし、これほど気持ちの籠もった演奏もそれほど聴けません。ある意味、この楽章がこの演奏でのききどころかも。各楽器の充実ぶりもすごい。第三楽章スケルツオ。ホルンによる主題が実に堂々として聴き応え満点です。そして、トリオのコントラバスに響きはこれほど美しく鮮やかなものを知らないです。そして第4楽章に繋がる、弦のピチカートと木管の掛け合いも見事な透明感あふれる演奏。第4楽章はこれまでの勢いそのままに突入。とびきりまとまった管弦楽で、高らかに勝利の凱歌が歌い上げられます。そうはいっても、この引き締まったオケは実に鮮やかなベートーヴェンを聴かせてくれました。
昨日は、先日行ったBOOKOFFでたまたま目に止まった村山由佳さんの『放蕩記』を一気に読みました。母と娘の葛藤の物語ですが、ひさびさに小説を読みました。これもお休みのお陰ですかねえ。
(Victor VICC-6067-76 2007年)
やっぱりお休みはいいですねぇ~。
マズアのベートーヴェンはいい意味で期待を裏切るスッキリ演奏。とても新鮮に感じたものでした。日本では一時、不当な評価(凡庸、面白味がない)がされてしまったのは残念に思います。
マズアは71年か72年に来日して確か、世田谷区民会館で、エロイカと田園を録音しました。
その後、ドイツで再録音したのでお蔵入りになりましたね。
マズアやハイティンクは再生機器が良いと評価が上がるように思います。