先週からの台風10号騒動、なかなか大変でありました。先週の半ばには収まるはずが、まだうろうろしてます。30日は大阪で飲み会のはずだったんですが、やむをえず中止。残念でした。こんなとき、NHKの放送画面には台風情報の帯びがついて放送されますね。これがなんとも邪魔なんですねえ。とはいえ大雨被害も多かったから、必要なんでしょうが…。こんな台風の迷走も、列島が亜熱帯化していることが原因とか。地球温暖化でいろいろなことが起きますねえ。
それはさておき、過日岡山の帰省していたとき、ネットでいくつか映画を見たのですが、その中に濱口恵介監督作品の「ドライブ・マイ・カー」がありました。この映画、2021年公開ですが、カンヌやアカデミーのいろんな賞を受賞した、国際的にもかなり高評価の映画です。そしてこれは、村上春樹さんの『女のいない男たち』所収の短編小説をもとに製作されました。この題名はビートルズの『ラバーソウル』に収められた曲からであることも周知のとおりですね。
この映画、村上さん他のいろんな作品を取り入れたり、原作とはいろいろ異なる点もありますが、失ったものをテーマにしていることでは、本題からは外れていません。村上さんの小説がベースとなっていることから、登場人物のセリフも、村上さんの小説の登場人物が話しているようでした。そんなところもあり、村上さんの小説が原作であることも、それほどの違和感はありませんでした。奥さんの死因が、原作の子宮癌からくも膜下出血となっているのは、突然死であった方が喪失感が高まるからなんですかねえ。
それはとこかく、この映画の中で家福さんのご自宅でレコードをかけているシーンがふたつありました。そのときの曲は、ベートーヴェンの弦楽四重奏曲第3番二長調作品18-3とモーツァルトのロンドニ長調K.485でした。村上さんの小説には、クラシックの曲がけっこう登場します。村上さんは、最近では『古くて素敵なクラシック・レコードたち』なども上梓され、クラシック音楽にも精通されてますね。村上さんはむしろジャズの方がお好きなような発言をされてます。でも私はクラシック音楽に関する言及の方が多いように思いますが…。
原作の小説では、ベートーヴェンの弦楽四重奏曲は、家福さんの車の中で聴く音楽として使われています。「帰り道ではよくベートーヴェンの弦楽四重奏曲を聴いた。彼がベートーヴェンの弦楽四重奏曲を好むのは、それが基本的に聴き飽きしない音楽であり、しかも聴きながら考え事をするのに、あるいはまったく何も考えないことに、適しているからだった」と言われています。これも村上さんらしい曲への評価ですねえ。
映画の中で、これらの曲を聴いたとき、その音色が実にアナログっぽいなあ、と思ったんですね。もちろんレコードで聴かれているので当たり前なんですが。CDで聴かないのも、レコード好きの村上さんの見識でしょうかねえ。特に、ベートーヴェンの方が弦の響きがこもったような音で、たいそう美しい。ああいい曲だなああ、と思いました。もしかしてモノラルかなあ、とも。そんなところから、ウィーン情緒たっぶりの1950年代の録音のものかなあ、と思いました。
そうです。そう思って、家にあるCDを聴いてみました。それはバリリSQが1952年にウィーンで録音した演奏。モノラルでステレオに比べると音は平面的なのですが、聴いていくと弦の美しさに引き込まれていきます。柔らかく暖かい弦の響きがとてもいい。合奏も穏やかな風情。とてもそして表情もテンポも優しいのであります。モーツァルト、ハイドンの衣鉢を継承しながら、それでいて、これから15曲つくられるベートーヴェンのこのジャンルの嚆矢として、妥協のない厳しさも聴くことができるところも、この演奏の素晴らしさだと思います。
とは言え、再度映画の演奏を聴くと、うーん違うなあ、という印象。それでエンドロールで確認すると、演奏者として、伊藤友馬、山本理紗、柳澤崇史、田草川亮太の面々の名が見えました。てっきりレコードの音源を用いていると思ったのですが、実際の演奏だったんですね。そして針飛びして同じところを繰り返すところがありましたが、それはどうやって再現したんですかねえ。レコード聴いてたときに、たまにあったなあ、と懐かしく思ったのでありました。
今日から9月。シャキッと頑張りましょう。
(Westminster Legscy Chamber Music Collection 2012年)
それはさておき、過日岡山の帰省していたとき、ネットでいくつか映画を見たのですが、その中に濱口恵介監督作品の「ドライブ・マイ・カー」がありました。この映画、2021年公開ですが、カンヌやアカデミーのいろんな賞を受賞した、国際的にもかなり高評価の映画です。そしてこれは、村上春樹さんの『女のいない男たち』所収の短編小説をもとに製作されました。この題名はビートルズの『ラバーソウル』に収められた曲からであることも周知のとおりですね。
この映画、村上さん他のいろんな作品を取り入れたり、原作とはいろいろ異なる点もありますが、失ったものをテーマにしていることでは、本題からは外れていません。村上さんの小説がベースとなっていることから、登場人物のセリフも、村上さんの小説の登場人物が話しているようでした。そんなところもあり、村上さんの小説が原作であることも、それほどの違和感はありませんでした。奥さんの死因が、原作の子宮癌からくも膜下出血となっているのは、突然死であった方が喪失感が高まるからなんですかねえ。
それはとこかく、この映画の中で家福さんのご自宅でレコードをかけているシーンがふたつありました。そのときの曲は、ベートーヴェンの弦楽四重奏曲第3番二長調作品18-3とモーツァルトのロンドニ長調K.485でした。村上さんの小説には、クラシックの曲がけっこう登場します。村上さんは、最近では『古くて素敵なクラシック・レコードたち』なども上梓され、クラシック音楽にも精通されてますね。村上さんはむしろジャズの方がお好きなような発言をされてます。でも私はクラシック音楽に関する言及の方が多いように思いますが…。
原作の小説では、ベートーヴェンの弦楽四重奏曲は、家福さんの車の中で聴く音楽として使われています。「帰り道ではよくベートーヴェンの弦楽四重奏曲を聴いた。彼がベートーヴェンの弦楽四重奏曲を好むのは、それが基本的に聴き飽きしない音楽であり、しかも聴きながら考え事をするのに、あるいはまったく何も考えないことに、適しているからだった」と言われています。これも村上さんらしい曲への評価ですねえ。
映画の中で、これらの曲を聴いたとき、その音色が実にアナログっぽいなあ、と思ったんですね。もちろんレコードで聴かれているので当たり前なんですが。CDで聴かないのも、レコード好きの村上さんの見識でしょうかねえ。特に、ベートーヴェンの方が弦の響きがこもったような音で、たいそう美しい。ああいい曲だなああ、と思いました。もしかしてモノラルかなあ、とも。そんなところから、ウィーン情緒たっぶりの1950年代の録音のものかなあ、と思いました。
そうです。そう思って、家にあるCDを聴いてみました。それはバリリSQが1952年にウィーンで録音した演奏。モノラルでステレオに比べると音は平面的なのですが、聴いていくと弦の美しさに引き込まれていきます。柔らかく暖かい弦の響きがとてもいい。合奏も穏やかな風情。とてもそして表情もテンポも優しいのであります。モーツァルト、ハイドンの衣鉢を継承しながら、それでいて、これから15曲つくられるベートーヴェンのこのジャンルの嚆矢として、妥協のない厳しさも聴くことができるところも、この演奏の素晴らしさだと思います。
とは言え、再度映画の演奏を聴くと、うーん違うなあ、という印象。それでエンドロールで確認すると、演奏者として、伊藤友馬、山本理紗、柳澤崇史、田草川亮太の面々の名が見えました。てっきりレコードの音源を用いていると思ったのですが、実際の演奏だったんですね。そして針飛びして同じところを繰り返すところがありましたが、それはどうやって再現したんですかねえ。レコード聴いてたときに、たまにあったなあ、と懐かしく思ったのでありました。
今日から9月。シャキッと頑張りましょう。
(Westminster Legscy Chamber Music Collection 2012年)
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