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最近購入した、または聴いたCDについて語ります。クラシック中心です。

ケンプのバッハはいいなあ。

2015年02月01日 19時34分24秒 | バッハ
この週末は寒かったですね。31日は岡山に行ってましたが、雪も時折降るといった天気でありました。昨年12月にオープンしたイオンモール岡山に行ってみました。目的は、この中のHMVに行ってみることでした。駅前でPが大丈夫かなと思いましたが、すぐに駐めれました。しかし、HMVは実に小さなお店でした…。タワーさんが閉店したので、期待してたのですが…。意気消沈して、表町に行って、閉店するVANに寄って、ラーメン食べて神戸に帰ったのでした。

そんなわけで、久しぶりのバッハであります。私が音楽を聴き始めたころの少し前の1968年に、「スイッチト・オン・バッハ」というレコードが発売されました。ウェンディ・カーロスがモーグ・シンセサイザーを駆使して。バッハの名曲を演奏したものです。もしかすると、私のバッハの原体験はこの演奏だったのかもしれません。このLPの是非はともかく、バッハの音楽は、周知のとおりいろんなジャンルの音楽にアレンジされており、たいそう懐の深い音楽なんですね。バッハなどのバロック音楽は、次の時代の古典派やロマン派の音楽よりも、現代的な側面を持っているのですかね。そして、次のバッハは、グレン・グールドのピアノでありました。このふたつの演奏の影響で、いわば前衛的で革新的なバッハこそが、バッハなんだと思っていたのでした。ですので、後年リヒテルの平均律を聴いた時、これはバッハではないな、と思ったことは以前に述べたとおりです。そして、今回取り上げるウィルヘルム・ケンプの演奏するバッハなんぞは、私の若い頃などは、こんな軟弱な演奏は…、という具合にしか思えなかったのでありました。

今回は、そんな風に思っていたウイルヘルム・ケンプのバッハであります。ケンプのバッハの演奏は、平均律(抜粋)2枚、コールドベルク変奏曲。そしていくつかの曲を集めたCD2枚、それくらいしか私は知りません。どれもグールドのバッハとは対局にあるような演奏なんですが、その中から、「Kempff plays Bach」。ケンプ自身の編曲による、バッハ(10曲)、ヘンデル(1曲)、グルック(2曲)の小品集であります。1975年の録音で、このときケンプは80才を越えていました。

しかし、加齢のせいでしょうか、このケンプのピアノが本当にいいなあ、と思えるのでした。心の琴線に触れるようで、しみじみとこれまでの人生を振り返って、いろんなことに思いをめぐらして、涙するのでありました……(笑)。とにかく、音楽を聴いて心が揺さぶられるのでありました。まず、ピアノの音色が温和でたいそう柔らかく、しっとりとした感触であります。また、表情が豊かであり、曲のもつイメージを大きくふくらませて、心に情感たっぷりに訴えかけるのでありました。 そして、右手と左手で奏でられる音楽が、これほど調和した響きに柔らかく、優しく、昇華しているピアノの演奏はないのではと思うほどなのですね。そんな音楽が心に染み込んできます。

10曲あるバッハの曲、「主よ、人の望みの喜びよ」は、心の中で喜びが次第に増幅されている様子がうまく表現されています。「目を醒ませと呼ぶ声が聞こえ」は、重厚さよりも軽快な足取りでの演奏がスケールの大きな表現に発展していくところがいいですね。「シチリアーノ」では悲しみが切々と語りかけるようなピアノです。「ラルゴ」では悲しみを明るさで紛らわそうとする辛さを感じます。「来たれ、異教徒の救い主よ」では荘厳なイメージの中での強固な意志が貫かれています。「今ぞその時」は、後半になると前半の旋律に別の曲が加えられていますが、それがまた非常にうまくあっております。「わが心の切なる願い」は弱音での美しさが心に染みます。「甘き喜びのうちに」も旋律が実に自然に語られるのです。他にも、ヘンデルのクラーヴィア組曲からのメヌエットがいいです。これがもしかすると一番切実な表情で語られているのかも知れません。

しかし、あっという間に二月になりました。早く暖かくなって欲しいですね。でも、これから三月の終わりまで、一番たいへんな時期になりました。
(DG POCG-90071 名盤1200 1997年)

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2 コメント

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Unknown (クレモナ)
2015-02-02 21:27:07
今晩は、お久しぶりです。今年も、宜しくお願いいたします。
ケンプのバッハのアルバム、私も所有しています。クラシック音楽を聴き始めて50年、私も、このケンプのバッハの良さがやっと解ってきました。バッハの音楽は、どんなに編曲されたり、楽器を替えても、本質的な骨格は変わりません。このピアノ演奏も編曲版ですが、バッハの素晴らしさが胸に迫ってきます。本当に良い演奏です。
シンセサイザー版のバッハもLP、CDを持っています。LPの時はただノイズ的な信号音ばかりと思っていたのです。ワルター・カーロスの時代で、バッハがシンセの前で座っている絵のLPでした。少し前にCDを入手し、聴いてみると、アナログ時代のややくすんだ音が聞こえてきて、嬉しくなりました。このCDは、私のオーディオのリファレンスCDとなり、何処かを替えた時などは、必ず、これをかけてみます。低音はどうか、高音はどうか、ノイズ的に聞こえていないかと、チェックします。ただ一つ残念なのは、廉価盤なのでジャケットが、あのLPと同じではないことです。オークションなどで探しています。
リヒテルの平均律の話も出ましたが、私もこのCDを持っています。残響たっぷりの、柔らかいムード音楽のような趣は、あまり好きになれませんでした。しかし、この演奏もこれから年齢を重ねれば、好きな演奏になっていくのかも知れません。音楽の好みというのも、若い時と今では、違ってきますからね。
バッハはストコフスキーも大好きで色々持っています。つい最近、スピーカーのユニットが断線したため、新しいものに交換したのですが、そのあと最初にかけたのが、EMIの古い録音ですが、「G線上のアリア」でした。ストコフスキーのこの曲を聴くと、普通のG線上のアリアは聴けません。ストコフスキーをただのゲテモノ扱いする人がいますが、バッハを心から尊敬し慈しんだ彼の音楽は、聴いていて良くわかります。派手な曲より、静かに沈み込んでいくような曲が好きです。
バッハについて、つい長くなってしまい申し訳ありません。また時々、コメントさせていただきます。
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コメントありがとうございます。 (mikotomochi58)
2015-02-02 22:45:12
クレモナ 様、お元気でしたか。今年もよろしくご教示ください。ケンプのバッハ、若いときにはほとんど聴かなかったように思います。やはり、若いとこはグールドのような刺激的な演奏のほうがいいのでしょうね。ワルター・カ-ロスのLPのジャケットは今もよく憶えています。あれはバッハだったんですね。ストコフスキーの演奏はまったくもってませんし、聴いたこともないんですね。一度、聴いてみようと思います。また、ご教示ください。
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