NHK大河ドラマの『平清盛』、やっと保元の乱までたどり着きました。低視聴率率だそうですが、たしかにあまりおもしろくない。王家、摂関家、源氏・平氏の家族関係、親子や兄弟、これを主に描いているのでしょうか。あまりに私的なことに終始するために、政治や歴史の公の動きが見えてこないのです。これから平治の乱を経て、いったい清盛が太政大臣になるのは何時でしょう。そして福原が登場するのは、秋口くらいなんでしょうか。お話の終わりは、清盛の死か平家の滅亡なのか、そんなことをいろいろと考えると、なんだか不安な気持ちになってきますねえ。
そんなわけで、今回はシューベルトのピアノ・ソナタです。ピアノ・ソナタ第21番変ロ長調D.960「遺作」。演奏はスヴャトスラフ・リヒテル。録音は、1972年。ザルツブルク近郊アニフ宮殿です。シューベルトは、1828年11月19日に31歳の若さで逝去しますが、この曲は死の2ヶ月ほど前に、ハ短調D.558、イ長調D.559とこの変ロ長調D.960を一気に完成しています。そして、この最後の3つのソナタは、1938年になってやっとディアベリ社から出版されることになりました。そんなわけで、「遺作」となっているのでしょうか。シューベルトの「遺作」とされているのは、けっこうたくさんあるのねえ。
リヒテルのシューベルトのピアノ・ソナタの演奏は、どれくらい残されているのでしょうか。正規のものとしては、9・13・15・18・19番などの存在が確認できます。その他ライブなどでも、いくつか見ることができます。以前に13番については取り上げたことがあります。非常にいい演奏でした。この21番についても、ライブ録音がいくつか残されていますね。
さて、この21番の演奏なんですが、まず驚かされるのが、第1楽章、特にテンポが遅いことです。そして、第2楽章も同様です。しかし、第3・第4楽章はそれほど遅くはないのです。この曲、リヒテルの演奏では全曲で約47分。前半の二楽章で約34分ほどですので、2/3強を占めています。前半はゆっくりとじっくりと聴かせ、後半は速いテンポで駆け抜ける、そんな全体像であります。テンポがゆったりという演奏として、アファナシエフの演奏が思い出されますが、あれほどの病的な雰囲気はありません。リヒテルは、ゆったりとしたテンポから、基本的にはインテンポで、そして大胆な強弱を付けていくことで、とてつもなく雄大な構造物を築きあげています。この曲は、ややもしれば冗長な印象をもつのですが、26分もかかり、単調な連続ともいえる第1楽章を、ほとんどそういったことを思わせない演奏が展開されています。
まず第1楽章、第1主題がゆったりとした歩みで登場。表情は非常に暖かい。シューベルトらしいメロディーを慈しむようなピアノ。そして大音量での繰り返しも小気味よい。そして、細部まで非常に明晰なピアノであることも、この雄大な演奏の構造をわかりやすくしています。そこのところがこの演奏を親しみ安くしている。また、時たま曲が止まるところもありますが、次の音の待ち遠しさを感じます。長い曲ですが、曲の流れに身をしたしてきながらの26分でした。そして、第2楽章。たいそう美しい叙情的な楽章。三部からなるが、一部の重苦しい曲から、暗く重い雲が晴れたような清澄な美しさに満ちた中間部は、低音ながら実に見事な美しさ。涙が出そうな演奏です。そして第一部のテーマを再現するが、ここで第一部は更に大胆になって表情が深くなる。そこでのリヒテルのピアノタッチの立派に驚かされます。そして、後半。テンポは通常のものになって、スケルツォ的な曲が展開。前半にあれほどのゆったりとしたピアノから一転。眼が眩むようなピアノ。瞬く間に終楽章。ここでも快速でありながら、強弱もしっかりと鮮やかなテクニックのピアノが展開されます。颯爽と、それでいて一音一音が非常に重い、そんなピアノが駆け抜けます。前半と後半、根っこはそれほど変わっていませんが、なかなか興味深いものでありました。
このリヒテルの演奏は、かのバッハの平均律を録音したことと同じ時期のもの。そういえば相通じるものがあるようですね。なかなか深いリヒテルのピアノでありました。
(Victor VICC22002 1994年)
そんなわけで、今回はシューベルトのピアノ・ソナタです。ピアノ・ソナタ第21番変ロ長調D.960「遺作」。演奏はスヴャトスラフ・リヒテル。録音は、1972年。ザルツブルク近郊アニフ宮殿です。シューベルトは、1828年11月19日に31歳の若さで逝去しますが、この曲は死の2ヶ月ほど前に、ハ短調D.558、イ長調D.559とこの変ロ長調D.960を一気に完成しています。そして、この最後の3つのソナタは、1938年になってやっとディアベリ社から出版されることになりました。そんなわけで、「遺作」となっているのでしょうか。シューベルトの「遺作」とされているのは、けっこうたくさんあるのねえ。
リヒテルのシューベルトのピアノ・ソナタの演奏は、どれくらい残されているのでしょうか。正規のものとしては、9・13・15・18・19番などの存在が確認できます。その他ライブなどでも、いくつか見ることができます。以前に13番については取り上げたことがあります。非常にいい演奏でした。この21番についても、ライブ録音がいくつか残されていますね。
さて、この21番の演奏なんですが、まず驚かされるのが、第1楽章、特にテンポが遅いことです。そして、第2楽章も同様です。しかし、第3・第4楽章はそれほど遅くはないのです。この曲、リヒテルの演奏では全曲で約47分。前半の二楽章で約34分ほどですので、2/3強を占めています。前半はゆっくりとじっくりと聴かせ、後半は速いテンポで駆け抜ける、そんな全体像であります。テンポがゆったりという演奏として、アファナシエフの演奏が思い出されますが、あれほどの病的な雰囲気はありません。リヒテルは、ゆったりとしたテンポから、基本的にはインテンポで、そして大胆な強弱を付けていくことで、とてつもなく雄大な構造物を築きあげています。この曲は、ややもしれば冗長な印象をもつのですが、26分もかかり、単調な連続ともいえる第1楽章を、ほとんどそういったことを思わせない演奏が展開されています。
まず第1楽章、第1主題がゆったりとした歩みで登場。表情は非常に暖かい。シューベルトらしいメロディーを慈しむようなピアノ。そして大音量での繰り返しも小気味よい。そして、細部まで非常に明晰なピアノであることも、この雄大な演奏の構造をわかりやすくしています。そこのところがこの演奏を親しみ安くしている。また、時たま曲が止まるところもありますが、次の音の待ち遠しさを感じます。長い曲ですが、曲の流れに身をしたしてきながらの26分でした。そして、第2楽章。たいそう美しい叙情的な楽章。三部からなるが、一部の重苦しい曲から、暗く重い雲が晴れたような清澄な美しさに満ちた中間部は、低音ながら実に見事な美しさ。涙が出そうな演奏です。そして第一部のテーマを再現するが、ここで第一部は更に大胆になって表情が深くなる。そこでのリヒテルのピアノタッチの立派に驚かされます。そして、後半。テンポは通常のものになって、スケルツォ的な曲が展開。前半にあれほどのゆったりとしたピアノから一転。眼が眩むようなピアノ。瞬く間に終楽章。ここでも快速でありながら、強弱もしっかりと鮮やかなテクニックのピアノが展開されます。颯爽と、それでいて一音一音が非常に重い、そんなピアノが駆け抜けます。前半と後半、根っこはそれほど変わっていませんが、なかなか興味深いものでありました。
このリヒテルの演奏は、かのバッハの平均律を録音したことと同じ時期のもの。そういえば相通じるものがあるようですね。なかなか深いリヒテルのピアノでありました。
(Victor VICC22002 1994年)
知事が画面が汚いと言ったのも同じ老体として同感です。
最近は録画しておいて、所々早送りして見ております。
クラッシックについてこんなに語れるなんてすばらしい~、私も嫌いじゃないので、初心者向けを
教えてほしいです~(癒し系の曲が好みです)
シューベルトも佳さげですね。21番は、ブレンデルのLPを所有していますが、リヒテルのは所有していません。買いたくなりました。