
2月9日 土曜日 薄曇り/雪
■ふいに思いたって宇都宮にでかけた。銀杏の落葉の季節に訪れた。その時の写真をブログで見ているうちにはや心は駅の東にある公園へととんでいた。
■いま駅東は開発が進んでいる。どんな街になるかたのしみだ。
■すっかり冬景色。どこをみても寂しい公園。蔓だけになったフジ棚。家族づれが遊んでいた。子どもたちの歓声はひびいてこない。植え込みには雪がまだらにのこっていた。公園の前のENEOSからは元気な声がきこえてきた。「オーライ。オーライ」という声が冬空にひびいていた。
■すてられたおおきなプラスチックの袋があった。不定形にゆがんでいた。開け口のあたりが、風にゆれていた。ふと、なにがつまっていたのかしら、と思った。いまは、もう役立たずになり、すてられた袋。風にふかれている。それがいかにも冬の公園らしかった。
■植え込みの縁石のそばに黄色い自転車が乗り捨てられていた。わたしはもうあまり気にしないことにした。寂しい風景だけを見ないことにした。隣にはまだあの事件から立ち直れないでブログの書けない亭主がいるのだ。わたしの悩みをじぶんの悩みとして苦しんでいる亭主がいるのだ。
■「うわあ。氷がはっている」わたしは大声をあげた。手洗いの蛇口から水がたらたらと垂れていた。小さな氷柱もできていた。流しには蝉の羽のような薄い氷がはっていた。亭主は子供みたいにその氷を手にした。透かして公園の風景を見ている。
■「氷のなかに噴水がある」亭主がぼそっといった。
■はるかかなた、公園の隅になるほど噴水がある。水がいきおいよく噴きあがっている。
■「あの噴水とりたい」わたしは小走りになった。亭主はのっそのっそとついてくる。
■白い噴水の向こうを赤いスポーツカーが走りすぎた。
■帰りは雪がふりだした。
公園の猫



銀杏並木




帰りのバスの窓から
