葬儀屋の独り言 (2) 大きな墓石のお墓は庶民にとって古くからの慣習ではないんです

■お寺のお墓も新しい

大きな墓石を使ったお墓が、日本古来から伝わる慣習や慣例だと思われているようですが、一般庶民が大きな墓石のお墓を持つようになったのは長い日本の歴史においては、ほんの最近のことです。

東京近郊に数多くある公園墓地、公営墓地の多くは昭和になって建設された物が多いですし、東京都調布飛行場の近くにも都営多磨霊園がありますが、お墓のツアーガイド誌によると、そこに眠っている著名人の方々も近年に活躍された方が多いのが特長です。余談ですが、思わぬ方のお墓に出会うのが楽しみな「お墓探索マニア」も居るとか居ないとか・・・。

さて、樹木葬墓地を計画した頃、私はお墓参りに行って、「お墓は庶民にとって古くからの慣習ではない」ことを確信しました。

私の母方の菩提寺は福生市にあり、臨済宗のかなり古い(400年以上)お寺です。しかし、そこにある多くの墓石のほとんどがが昭和になってから建てられたものだったからです。私の祖父の建立した墓石は大正中期、明治の時代に亡くなった方の年号が記入されていましたが、数百の墓石が有る中、同じ時代のものはわずか2件だけでした。多くの墓石は戦後のものだったのです。

東京近郊のお寺を何件か探索してみましたが、結果は同様でした。


■お寺の住職のお墓にも面白い傾向があることに気が付きました

その昔は、お寺の住職というのは世襲制ではありませんでした。
その時代の墓石は実に質素で簡単なもので、寺の片隅にひっそりとまつられている言う感じのものが多いのですが、世襲制に変わった頃から墓石が立派になり、ずいぶんと大きくなっている傾向にあります。


■近年のお墓の値段はなぜ高いのでしょうか

多くの人が「墓石の価格が高い」と答えますよね。
墓石の高騰は最近になって始まった事ではなく、昔から記念碑や墓碑など、大きな墓石は庶民にとって高値の華でした。
生活が裕福になるつれて、ステータスのひとつとして大きな墓石が置かれるようになってきました。(それ自体はもちろん悪いことではありません)

それはさておき、墓石が高価なのは、原石が高いからなのでしょうか?
それとも製作人件費が高いからなのでしょうか?

次回はこの辺を簡単に分析してみたいと思います。
お楽しみに。



 秋田林西
 樹木葬専用ガーデン墓地千の風みらい園の責任者。葬儀社も経営する僧侶。
 メールマガジン「墓石を使わない質素な「樹木葬」を知る」もやってます。
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