「天声人語」 辰濃和男 朝日文庫
新自由クラブ解散 8・13
『瘦我慢の説』を書いた福沢諭吉翁だったら、
新自由クラブ解散の報をきいてたぶんこう書いただろう。
新自クごとき小党は大政党に抗してその勢いを維持するよりも、大政党に合併することこそ安楽なるべけれどもなおその独立を張り続けたるは小党の痩我慢にして、
我慢のときにゆらぐことありたりといえども、一応は党の栄誉を保ちたれりというべし。
しかるにここに遺憾なるは自民圧勝の余波をうけし新自クにこと起こりて、
不幸にもこお大切なる痩我慢の大義を害しつつたることなり。
そもそも新自ク結党の趣旨は荒野にありて日本の政治の蘇生を願う一粒の麦たらんとし、腐敗政治の打破を志すにあり、
金権政治を断たんとするには痩我慢の主義によらざるべからず。
されどこの遇直なる初志を貫きえぬまま、時勢を見はからい、
手ぎわよく連立に走り、さてまた今日自ら解散し大樹の下にすり寄らんとするがごときはこれを何とかいわん。
一票投じたる有権者の落胆失望はいうまでもなく、公党の信義を損うたるの不利は決して少々ならず。
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