”国体護持”をつきつめれば、天皇制維持を意味する。
さらにつきつめると、最悪の場合、天皇・皇后の生命を保障する。
昭和天皇は自らの地位や命よりも、日本民族の継続を思った。
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「大日本帝国崩壊」 加藤聖文 中公新書 2009年発行
ソ連参戦によってポツダム宣言の受諾は一刻の猶予も残されていないことを悟ったが、
それでもまだ一週間も要したのである。
8月9日、午後11時50分からの皇居地下壕の御前会議
宣言受諾か本土決戦かは三対三で真っ二つに割れ、残る鈴木の去就が注目されたが、
鈴木は自らの意見を述べないまま立ち上がり、天皇の前に進み出て聖断を仰いだ。
天皇は、
「計画に実行が伴わない」として本土決戦論を退け、ポツダム宣言受諾に賛成すると発言した。
時はすでに8月10日午前2時20分であった。
会議が終わると鈴木は早速、首相官邸に引き返して閣議を再開、
午前4時にポツダム宣言受諾を日本政府として正式に決定した。
スイス、スエーデンに第一電を発し、
国内では絶対秘密、
10日夜、海外に対して放送した。
8月12日
米国ではポツダム宣言受諾をめぐる一連の動きがすでに漏れ始め、
戦争終結を喜ぶ声が日増しに高まっていった。
8月12日午後3時の臨時閣議で、東郷はバーンズ回答の妥当性を述べ宣言受諾を主張した。
阿南が、天皇が連合国最高司令官の権限に従属すること、
日本政府の最終的形態が日本国民の意思に委ねられていることに反対、
回答に不満なので米国へ再照会をし、あわせて武装解除と保障占領についても付け加えるべきと発言した。
この日の午前8時半、海津と豊田が参内し、すでに天皇に反対意見を述べていた。
さらに別の閣僚からも武装解除の強制に反対する意見が出た。
鈴木までも国体護持の確認が曖昧であり、武装解除の強制も忍びがたいから米国へ再照会の上、もし聞きいれられないなら戦争継続やむなしと発言したとされる。
結局、閣議の雰囲気が不利と見た東郷は翌日に継続審議でその場を切り抜けた。
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一刻も猶予がないにもかかわらず、堂々巡りの議論が行われたことに憤懣やるかたない東郷は、木戸内大臣に面会し、木戸から説得するよう尽力を求めた。
木戸は午後9時半、鈴木と面会し、宣言受諾断行を求めた。
鈴木は同感であると語ったため、東郷らの不安はひとまず解決された。
このときの閣議における鈴木の「豹変」は、鈴木の優柔不断ぶりを示すものとして批判する研究もある。
もともと政治基盤のないまま首相になった鈴木は、内閣でも宮中でも孤独であった。
臨時閣議で回答受諾か否かが議論されている最中、
もう一つ別の動きが宮中であった。
8月12日午後3時20分から皇族らが宮中に招かれ、
昭和天皇は、参内した
高松宮・三笠宮・賀陽宮・久邇宮・梨本宮・閑院宮・浅香宮・東久邇宮・竹田宮
に対して、
ポツダム宣言受諾の意思を伝えた。
最年長の梨本宮以下、各皇族からは天皇の決定に従うことを誓った。
皇族会議といわれているが、実際には皇族以外の人物も列席していた。
それがイウンとイゴンという二人の朝鮮王朝の末裔であった。
「王族」と「公族」の地位を与えられていた。
「うけたまわりました」と答えるのみであったとされる。
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「日本海軍の終戦工作」 纐纈厚 中公新書 1996年発行
「聖断」論の登場
近衛は陸軍改革も戦争終結も、結局は天皇の「聖断」によるしか可能性が困難なことを自覚しており、その線で天皇の説得を試みていた。
この「聖断」の要請は、以後近衛ら宮中グループの強く望むところとなり、
しばらくは紆余曲折を経ながらも周知の通り、
最終的には「聖断」により陸軍主戦派の戦争継続論を退け、
「国体護持」の一点のみが戦争終結の条件とされていく。
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「一億玉砕への道」 NHK取材班 角川書店 平成6年発行
「国体護持」とは何か
「国体の護持」を最終目標にきりかえて、日本は敗色の濃い戦争を継続した。
陸軍は、昭和19年秋からひそかに「最悪事態の研究」をし、まとめた。
最悪の事態とし、
米兵の日本本土駐兵。
陸海軍の武装解除。
天皇制廃止。
日本男子の海外への奴隷的移住などが列挙されている。
早期和平派の指導層でも国体護持は共通した目標だった。
高松宮は「戦争終結は簡単である、国体の護持だけである」と述べている。
海軍の高木惣吉少将は昭和20年5月にまとめた「研究対策」の中で、
和戦いずれになっても「皇位の神聖と国体の護持を眼目」とするを第一にあげている。
しかし軍部、なかでも陸軍は、国体護持ができるかどうか、もっとも悲観的だった。
昭和20年3月梅津美治朗参謀総長が参内して、「米国は国体変革を狙っているから、最後まで抗戦する外ない」と上奏した。
これが陸軍の代表的な考えだった。その考えが本土決戦・徹底抗戦論を最後まで強硬に主張することにつながっていったのである。
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つづく・終戦③”ご聖断”
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