「東京新聞」社説 2024年5月14日
地方自治体への国の指示権限を拡大する地方自治法改正案に対し「地域主権」を目指す自治体首長ら地方自治の現場から異議が相次いでいる。中央集権的な日本の統治機構を改め、地方分権を推進してきた流れに逆行するからだ。
異議申し立ては、地域主権主義に根差した政治を目指す首長らでつくる「ローカル・イニシアティブ・ネットワーク(LIN-Net)」などが主体。地域に芽生えた活動を起点に、私たちの社会を変える輪を広げていきたい。
LIN-Netは東京都の保坂展人世田谷区長、岸本聡子杉並区長、多摩市の阿部裕行市長、政治学者の中島岳志氏らが地域主権実現や市民参画の街づくりを掲げて2022年11月に発足した。
これまでに7回の集会のほか、政府提出の地方自治法改正案を巡り、他団体や国会議員とも連携して反対集会を国会内で開くなど、地方自治に関わる問題について意見の交換や表明をしている。
同改正案は、災害対策基本法や感染症法など個別法に規定がある場合に可能とされる国による地方自治体への指示を、大規模災害や感染症まん延などの非常事態時には、規定がなくても人命保護に必要な措置の実施を指示できるようにする内容だ。
保坂氏らは新型コロナを巡る国の対策遅れを例に「国がいつも正しいとは限らない」と問題点や、非常時に自治体が国の指示待ちとなる改正法の弊害を指摘した。
2000年施行の地方分権一括法で国と地方の関係は「上下・主従」から「対等・協力」となり、それまで国の事務を代行するだけの「3割自治」と揶揄(やゆ)された自治体の在り方は大きく変わった。
そうした地方分権改革を推進したのは、後に首相になった熊本県の細川護熙、三重県の北川正恭、岩手県の増田寛也各氏ら改革派知事であり、地域から声を上げれば許認可権を握る国も重い腰を上げざるを得ない証左だろう。
保坂氏は、地域主権主義の成果として、世田谷、渋谷両区が9年前に始めた「同性カップル認証制度」や、事業者のジェンダーバランスなどを考慮する区の入札評価方式などの事例を挙げている。
成功例を積み上げれば地域主権が必要とされる説得材料となり、住民の支持も広がる。私たちが暮らす地域を起点に、少しずつでも社会の在り方を変えていきたい。
天気が良いと帰るのが遅くなる。
まだ朝方の最低気温が10℃に達していないので開けたまま帰るわけにもいかず、ある程度落ち着いてから閉めて帰らなければならない。
朝もゆっくりとしていられない。