小学生はいずこへ行ったやら・・・?
箕面駅前を9時12分発、「粟生間谷」行きのバスに乗るために、私は朝食も
とらずに走ってやっと間に合いました。
これを逃すと次は90分後です。 かなり不便です。
ふ~ふ~と息がやっと静かになったかと思うともう 「外院」のバス停です。
その間10分位ですが、歩くと山麓沿いのアップダウンが結構あって、一度
歩いて試したら80分もかかりました。
今日はここからウツギ谷経由、勝尾寺南山から谷山尾根~ の予定です。
ウツギ谷に入るともうそこは別世界です。
新緑の若葉が太陽に映えて森の中が明るくなったようです。
横を流れる渓流は私の大好きな谷川の一つで、夏はここで必ず顔を洗い汗を
流します。
冷たくて気持ちのいいこと・・・ 最高ですよ。
ヒヨドリやウグイスなど鳥が沢山鳴いています。
森に入ってしばらくして山裾に3台の自転車が置いてあります・・・ 誰の?
人影が無い・・・
すると、下の川のほうから子供の歓声とはしゃぐ声が聞えてきました。
川の中で水の掛け合いをしたりして賑やかなことです。
通り過ぎようとしたとき・・・下の方から急に・・・
* オジさん!・・・ この道まっすぐ行ったらどこいくのん?
と 大きな声。
いろんな所へ行けるが私は・・・
・ 勝尾寺の方だよ・・・
* ありがと! オジさん・・・
と 返ってきたが、まさか自転車で行くはずもなく、適当に応えたのがいけな
かったのだが・・・。
奥の池に着いた時、後ろからあの3人組が自転車を押しながら上がってくる
のが見えた。
ここまでは平坦な上り道で、道幅もある林道なので大丈夫なのだが、この先
からは全くの細い山道になる・・・。
私は彼らを待って注意をしようと思ったが、山道を見たら引き返すだろう・・・
と思い、先を急いだ。
それにしてもよくこんな所まで来て遊んでいるんだな・・・
地元の小学生かな? と 考えていた。
やがて分岐点に出て、右に行けばウツギ池から急な山道となり勝尾寺への
昔の旧参道に続く・・・
左に行くと、くねった細い山道で急坂が続き、尾根に出るまでは結構歩く。
私は左に入りしばらくしてから一山超える前に一休みをしていた時だ・・・
なんと言う事だ !
下の方からあの3人組が自転車を担いだり、後ろから押したり、転びながらも
ふ~ふ~ しながら上ってくるではないか・・・
まさか? しまった!
あの時、いいかげんに応えた事を猛烈に反省です。
それにしても馬力があるな・・・ びっくりだ。
* オジさん・・・ もうすぐ?・・・ お寺・・・ 遠いな、しんどいわ!
と、言いながら汗びっしょりで、とうとう私の休憩場所まで上がってきた。
彼らをどう説得しようか・・・?
私は責任を感じ、リュックの中から自分のお昼のおにぎり、パン、バナナ、
それにチョコレートやお茶の2リットルボトルなど、あるもの全部を出して・・・
よくがんばったな! これ食べなさい・・・ と 前に出した。
3人は喜んで飲んだり、食べたりして一気に全部を平らげた・・・
私にも少し残す事なんてこれっぽっちも考えてないようだ。
仕方ないか・・・ (笑)
それから彼らが落ち着いたところで地図を出して、ここから君達の自転車で
山越えは無理な事や、ここからの道のりを詳しく説明していたら・・・
* ほんなら自転車ここへ置いとくから、オジさん連れてってや!・・・
と、きたもんだ。
私ははっきりと断った。
* しゃあないな・・・ ほんなら引き返すわ・・・
と、やっと分かってくれた。
それにしても元気な子供たちに、私もタジタジだ。
すると一番元気なリーダー格の子が話し始めた・・・
* こいつな!
(後ろにいた上品な顔の坊ちゃんに向かって・・)
5年やねんけどな・・・ うちの近所に引っ越してきよってん
けどな・・・ 学校でごっつい じめられ よってんな・・・
そんでオレな 6年やろ・・・
5年の教室へ行って怒たったんやん・・・
そんでもこいつ可哀想やん・・・ そんでオレ、山すきやん!
今日な、友達誘ってこいつも一緒に連れてきてやってん・・・
との事。
坊ちゃんは汗を服でぬぐいながら、生き生きした顔をしているので、よほど
楽しんだろうな・・・ と、感じた。
それにしてもこの6年生はリーダーシップがあるな・・・
・ いいとこある・・・
と、それなりに誉めてやったら・・・
* オジさんやったら いじめられてたら どうしてやる・・・?
ときた・・・ 負けそう!
昔の武士道なんかを引っ張り出して、まじめに正義の話などをしようと
構えてみたものの・・・ はしゃぎ出すので・・・
・ おじさんも君と同じようにすると思うよ・・・
と。
・ どこの学校?
と 聞いたら・・・
* ○○小学校・・・
・ あの吹田の方の?
* そうやで !
地元とばかり思っていたら ビックリ!
* オジさんな・・・ 千里中央からまっすぐやんか・・・
・ それにしてもよくこの森が分かったね・・・
* そやかて、山に向かってまっすぐ来ただけやで・・・
と・・・ 恐れ入りました。
この年にしてこの男気のよさは、将来大物になるな・・・ と、
見入ってしまいましたよ・・・ (笑)
私は地図を一枚渡し、真っ直ぐの道だから大丈夫と思うが、念のためよく説明
をしたら、3人ともうなずいて・・・
* オジさんありがと・・・
と、言うと、来た道を下っていった。
後ろから見送ったが、帰り道は自転車が楽なのか、賑やかな歓声が森に
こだまして見えなくなってからも 山びこ のように声だけが風に乗って聞えて
きていました・・・
大丈夫だな・・・?
私は再び山道を歩き始めた・・・
しかし、心配性の性分がムクムク・・・ もし、他の細道に入っていったら・・・
あの調子で怪我でもしたら・・・
考える程にやっぱり心配がつのり、森を楽しむどころではなくなってきたので
、引き返す事にしました。
それから彼らの形跡を気にしながら、朝の降りたバス停まで戻って来たの
だが・・・
小学生はいずこに・・・?
もうとっくに帰途についたようだった。
(もっとも翌朝の新聞をくまなく見て・・・ 不明やケガの小学生の記事がなく
ホッとしたものだが・・・)
朝降りたバス停のベンチに腰掛け一休みしながら、再度 山へ登る気にも
ならず・・・
今日の山はなんだったの?
それにしても・・・ お腹がすいたな・・・!
カラのリュックを恨めしく思いながら 朝も昼も抜きで・・・
しかも、次のバスが来るまでは、まだ70分もある・・・
ダイエットでまあいいか・・・! と、無理やり腹を納得させるのでした (笑)
振り回されて もう~ 喉が から から です!
07-4・28 (完)