箕面の森の小さなできごと&四季の風景 *みのおハイキングガイド 

明治の森・箕面国定公園の散策日誌から
みのおの山々を歩き始めて三千余回、季節の小さな風景を綴ってます 頑爺<肇&K>

森で幸せのキャッチボール!

2009-02-22 | *編集・冬/2月

森で幸せのキャッチボール!

 

 

始まりは、二年半ほど前の真夏の事でした・・・

その日、私は東海自然歩道から北摂霊園にでできました・・・

ここを抜け、高山経由で明ケ田尾山へ向う為に、山上の

「霊園モニュメント広場バス停」 前を、歩いている時です・・・

 

     *  すいませんが・・・ おじさん!  この辺で黒い財布が

         落ちてませんでしたでしょうか・・・?

見ると中学生ぐらいの少年が一人、困ったような顔をして、小さな声で

私にたずねてきたのです。

・  さあ~?  私はいま山の方から来たところなののでね・・・ 

   気がつかなかったね・・・   どうしたの?

     *  ずっと探しているんですが・・・どこで落としたのか分から

         なくて・・・

 

聞けば、一人でお墓参りにきて、帰ろうと思ったら財布が無くなって

いた事に気づいた・・・ との事。

     *  でも、千里中央からバスに乗ってきて、ここへ降りた時に

         はあったように思うんですけど・・・ おかしいな?

もう2時間以上も、この炎天下を探し回っているとの事・・・

それに、今まで3人の人に聞いたけど・・・ 

一人の方は知らん! と言われ・・・

後の2人は、聞いた途端に何も言わずに、すぐに車に乗って行って

しまったとか・・・  

どうやら寸借サギのように思われたみたいだ・・・?

 

私もかつて若い頃、そんなサギにあって同情し、路上で、なけなしの

小遣いを差し出した苦い経験があったので、一瞬警戒したのだが・・・

よく見れば真剣な顔をしていて、まだあどけない少年なので、私は彼の

話を聞いていたのです。

バスの時間を見ると次は40分後、バス賃は680円、それに千里中央

まで60分以上もかかるんだな・・・

・  それほど探しても見つからないのなら、バスの中とか?  

   ここで落としたんじゃないのかもしれないね・・・ 

   家に帰るバス代もないわけだね・・・

     *  ハイ・・・ 

少年は どうしよう・・・ と、困惑した顔をしている・・・

どんな事情があって一人で、こんな山奥の霊園のお墓参りに来たの

か、私には知る由もないけれど・・・

・  分かった!  じゃあ おじさんがバス代を出してあげるから、

   それで家に帰りなさい・・・  

   千里に着いたら、念のためバス会社に、落し物がないか聞いて

   みてもいいね。

 

私はポケットにあった500円玉2枚を、少年に差し出した・・・

少年はモゾモゾとして、受け取ろうとしない・・・

・  それならそうだ!  こうしよう・・・ あそこに桜の木がある

   だろう・・・

私は少年を近くの桜の木の下へ連れて行って・・・

・  もし君がまたここへお墓参りに来る時があったら・・・

   お金はこの木の根元に埋めて返しておいてくれたらいいよ・・・  

   おじさんは時々、あの前の山へ登っているから、それでここを

   通るんだよ・・・   一年でも、二年後でもいいからね・・・  (笑)

少年はパッ と、明るい顔をして・・・

     *  ありがとうございます・・・

と、お辞儀をしながら、私から500円玉2枚を、やっと受け取ったの

でした。

・  じゃあ気をつけてね・・・  さよなら!

 

 

私はもうそんなことはすっかりと、忘れてしまっていたのに・・・

ところが今日、あの日と季節はまるで違うのに、山上の同じバス停前を

歩いていて ふっ! と、思い出したのです・・・

そう言えば、あの桜の木だったな・・・

2年半も前のこと、まさかあるとは思えないけれど・・・ 

うっすらと根元は雪に覆われている・・・  

何だか宝捜しのようだな・・・ と思いながら、木の回りを見回してみた

が・・・  

それらしきものはない・・・  やっぱりな・・・ (少しガッカリ!)

この広大な森の中に開けた霊園、山の斜面にもいっぱいに墓碑が

立っているのに、今日は一人も人が見当らないし、車の陰一台も

ない・・・   寒いからな!

 

私が自分の動作に苦笑いしながら、立ち去ろうとした時・・・

ふっ! と、あの時たしか、私はここに埋めておいてくれたらいいよ!

と、言ったような気がした・・・?

そこでもう一度木の根元に戻り、今度は近くにあった小枝で雪を払い、

慎重に根元を探ってみた・・・

 

あった!   あった・・・!

 

それは紙に包んであったようだが、2枚の500円玉がしっかりと出て

きた・・・

あれから少年はすぐにでも届に来たのであろうか・・・?

包まれていた紙は雨露に濡れて文字が剥げ落ち、虫食い状態で

ボロボロになっていた・・・ 全く何が書いてあるのか読めない・・・ 

残念!

でも、私はその宝物のような2枚の硬貨を手にして、感激で涙ぐんで

しまった。

何が書いてあったのか分からないけれど、あの少年の感謝の気持ち

ジ~ン と、伝わってくるようでした。

私は、今にも土に還りそうなその朽ちた紙片を、再び根元に埋め

ながら・・・

 

ありがとうね!  おじさんはしっかり受け取ったよ!

 

私はそれから明ケ田尾山の寒い森の尾根を歩きながら・・・ しばし、

あの少年が再び長いバスに揺られながら、あのお金を返しにきてくれ

姿を思い浮かべていました・・・

たった数分の出会いから・・・ 

人を信じること、 約束を守る事の大切さ、そしてそれにより感謝の

心と、人の心に温かいともしびが灯ること・・・

それにより、出会った二人の心に、お互いが 幸せのキャッチボール

満たされることを、実感する一日となりました・・・

 

寒い冬空に、温かい灯火をありがとう・・・ 

 

 

09-2 (完)


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鉢伏山の猪に・・・

2009-02-21 | *編集・冬/2月

鉢伏山の猪(イノシシ)に・・・

 

 

今日(21日)は Expo90みのお森 まで車できました。

鉢伏山~箕面最高峰の明ケ田尾山、高山方面へ向う予定です・・・

10時に森の駐車場(無料)に着いたものの、広い所に車は私の一台

だけです・・・  それよりも私の愉しみの一つが始まります・・・

箕面FMラジオ(タッキー816局)の 「ブルーグラス タイム」 が始ま

のです・・・

今朝も、6時から110分のノンストップ番組でブルーグラス音楽を

楽しんできたのに、また聞きたくなるのですからこの音楽は不思議で

す。

静かな森の中で、カーラジオから流れる軽快なバンジョーに足を踏み

鳴らしながら、存分に楽しむ事が出来ました。

私の生まれと同じ、1945年にアメリカで誕生したブルーグラス音に、

私が最初に出会ったのが18歳の時、中之島中央公会堂で開かれた

入学記念イベントで学生バンドが演奏していて感激した時でした・・・ 

あれは何の音楽なのか?   最近まで分からなかったのです・・・  

それがまさかこの自分の住む箕面のFM局から、毎日流れているとは

思いもよりませんでした・・・

日本広しと言えども、ブルーグラスが毎日流れている所は箕面しか

ないでしょうね!

 

11時に番組が終わり、車外に出てみると・・・  寒い!  冷たい!

空は快晴で、白い雲が強い風に乗って早くに移動していきます・・・  

太陽がその雲にかかると急に寒くなり、再び顔をだすとホッとするぐら

暖かくなります・・・

リュックを背にやっと出発です。

 

西側のハイキング道を歩くと、今日は私が最初の足跡のようで、残雪

上には小動物の足跡以外に靴跡はありません・・・  

時折木枯らしが吹きすさび、強い北風が通り抜けます・・・  

冷たい・・・!

しかし、私はこの凛とした森の寒い緊張感が好きなので、我ながら

物好きな者です。

そんな冬の森の山道沿いに、古い杉の朽ちた株の中で、少し穴のあい

ような所に、まるで守られているような格好で10cm位に成長した

スギの新しい小さな芽が育っていました・・・  

こういう光景を見ると私はいつも感激してしまいます・・・

朽ちた親株に守られて・・・  この寒い森の中で、命を繋いでいって

いる自然界の姿に感動を覚えます。

 

鉢伏山(604m)へ登る分岐点を南へ行けば長谷山(568.2m)、東へ

下れば四反田谷です。  

私は北へ向います・・・  枯れた笹薮道を上って行くと穏やかな

尾根道です・・・

落葉して枝ばかりのコナラ、ヤマザクラ、リョウブ、ケヤキ・・・ などの

落葉樹木が多く林立し、その樹間からは夏場には見えない景色を見る

ことが出来ます・・・

東方では万博の太陽の塔が肉眼でも見つけることができ、西方では

眼下に箕面の新しい街、広大な箕面森町(しんまち)が見えます・・・  

造成され、分譲も進んでいるようですがまだ新家屋が少なく、少し寂し

様子が垣間見えます。

山道沿いのモチツツジの枝を手にとって見ると、固いながらも早や

小さな蕾をつけています・・・  

こんなに寒い中で健気にもじっと春を待っている感じです。

 

ゆっくりと登って行くと・・・  

突然前方から数人の女性の甲高い声がしました・・・  

今日はここまで一人も会わなかったので、まさか前に人がいるとは

思いもよりませんでした・・・  

どこから上って来られたのかな?

双眼鏡で覗いてみると10数人の団体のようで、なにやら自然観察を

しながらの様子です。

私がドンカメの浸り歩きでゆっくりと更に遅くに進んでいくと、間もなく

山頂に到着です。

先程のみなさんは、すでにお弁当を広げておられました・・・

中高年の男女14-15人の方々です。  

私はそれぞれの方と挨拶を交わした後、早々に山頂から裏道を下り

梅ケ谷へ向いました・・・

 

そこから再び登り、明ケ田尾山へ向うのですが・・・

その時、後からまた別の団体さんが来られました・・・  

今度も同じような方々で10数人です・・・

私は山や森を歩く時はいつも一人です・・・  気をつかわず、心の

おもむくままに、ゆっくり自由に、思いのままに過ごしたい・・・

(要するにワガママだけの事なんですが・・・ 笑)  

それだけに人が多くいる所では、自然と心も、足も、人を避けて別の

道へ自動的に向いてしまいます。

そんなわけで、今日も予定をしばし変更です・・・  

何処へ?  足の向くまま!  (笑)

 

いつの間にか初めての獣道を、止々呂美(とどろみ)の方へ下っていま

した・・・

しばし下ると・・・  小さな古びた木札が木の幹に掛かっていまた。 

読めない?

なに なに・・・? 「・・・ この先は急崖あり危険! 要注意して・・・」

私はこれ以上に下る事は止めて、台地で木漏れ日の差し込むケヤキ

幹の下にビニールシートを敷き、リュックを下ろし、足を伸ばしまし

た・・・

冷えた体の中に温かいコーヒーが流れていくと生き返る感じです・・・

おにぎりを食べた後で仰向けになって寝転び・・・ 目を閉じていると、

一人静かな森の中で自然と一体になって「無我の境地」に浸り 

(大げさですが!)・・・

至福の一時です。

 

そう言えば、こんな調子で眠ってしまい、えらい目にあったことがあり

ました・・・

もう何年も前の初秋の事・・・  この近くの森の中で眠ってしまい、

目がさめたら夕暮れが迫っていて、あわてて歩き出したものの 

ボーっとしてたのか、逆に歩いてしまいました。  

道に迷い・・・  パニックになっていた時に、一匹の猿の道案内で?  

脱出した事がありました・・・

(詳しくは、以前にこのブログでも書きましたが、まるで小説の世界を

体験しました)

 

今日は寒くてそれどころではありませんが、木漏れ日は暖かく気持ち

いい事・・・   ウト ウト ウト・・・  

その時に小鳥がさえずりながら上を飛び交いました・・・

目を開けて何気なく横を向くとなにやら動物の足跡らしきものが見え

ます・・・

立ち上がってよく見てみると、イノシシの足跡のようです・・・  

しかも周りを見ると沢山あります・・・  

この近くにイノシシのネグラでもあるのかな?

いつぞや、この先の長谷山で寝ているシカ群の上を、知らないで歩い

いたら、私の足音に驚いたシカたちが ド ド ド ド・・・ と、土煙を

上げて谷に向って走り下りていった事があり、私の方が腰を抜かした

事がありましたが・・・

 

イノシシも昼間はどこかで寝ているはずですからね・・・  そう思うと急

恐くなり、ノンビリ、ゆっくりと森浸りを楽しんでいたそれまでの気分

吹っ飛んでしまい、あわてて荷物を片付け、元の山道に戻るべく

斜面を駆け上がりました。 (笑)

と言うのも昨日、宮崎の方で農家のおじさんが、山でイノシシのキバで

腰を刺されて亡くなっているのを発見されたと言うTVニュースを見た

ところだったので余計です・・・

クワバラ  クワバラ・・・!  

「触らぬ神にタタリなし・・・」 ですからね・・・

いくら慣れた箕面の森とはいえ、細い獣道など行くものではありませ

ん。

 

すっかり 「無我の境地」 など、偉そうな心境は何処へやら・・・  

全く修行が足りません・・・!

自分の頭をコツン! としたら、強すぎて  痛かった・・・ (笑)

 

 

09-2-21 (完)


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春の嵐痕とアカマツ!

2009-02-20 | *編集・冬/2月

春の嵐痕とアカマツ!

 

 

この一週間は雨ばかりでうっとうしいお天気でした・・・

今日は久しぶりの晴れ間に早速、箕面の森に向かいました。

 

近くの新稲の里から小川口に入り、イノシシ防止用の金網扉を開けて

森の中へ入ります。  

いつもここへ入るときは動物園に入るような感じで少し緊張しますが、

森に一歩入ってしまうと、すぐにそんな事も忘れてしまいます・・・

しかし今朝は、登る山道沿いのあちこちに穴が掘られています・・・  

どうやら雨上がりでぬかるんだ山土を掘り返しては、エサのミミズを

探していたらしくイノシシの痕跡が見受けられます・・・

今頃は近くの森の中で寝ていることでしょうが・・・

 

湿気を帯びた山道を更に登っていくと、急に目の前に大きな枯れ松が

一本、 ド~ン と倒れて、道をふさいでいるではありませんか・・・

見れば横には、途中から折れたばかりのような太い幹が残って

います。  

今朝にでも倒れたかのようです。

 

ここから六箇山、松尾山周辺にはアカマツの木が多くあり、その

三分の一程度が枯れた状態で立っています。

マツクイムシの影響か?  それとも手入れされないで放置されて

枯れてきたのか?

複合的な原因があるのでしょうが、立派な松の木を見上げいると、

すでに枯れている木が多くあり残念です。

そんな枯れ松が年月と共に朽ち果て、立っておれなくなってやがて

倒れていくのですが、なにぶん10数メートルの高さのある木が、

昼間にでも倒れてきたら大変です。

そんな事を思いながら更に登っていくと、また一本同じように倒れて

道をふさいでいます・・・  

またかと思いながら、その木をまたいで通りました。

 

そして更に衝撃を受けたのは・・・

憩いの丘に到着すると、その遊具の横のベンチの上に大きな

アカマツの枯れ木が根元から折れ、ド~ン と上に覆い被さって倒れて

いるではありませんか・・・

子供さん連れを余り見かけないところですが、ハイカーの方が時々

お弁当を広げていますから、その倒れている光景には ゾッ! とする

ものがありました。

このところ春の嵐が時折襲い、その雨風が吹き荒れる事があったの

で、遂に力尽きた枯れ木が倒れたものと推測します。

それにしても人的被害がなくてよかったです・・・

 

12世紀後半の歌人 鴨長明が、1310年の「夫木和歌集」に 

「箕面の山の松」 を歌っている個所がありますね・・・

「 みのおやま 雲かけつくる峰の庵 松のひびきも手枕のした 」 

と。

当時の箕面の山には松が多かったことが伺えます。

今、箕面ビジターセンターから箕面川ダム湖に向かう途中に、

この記念の為と、大きな石にその歌を彫って建てた石碑が建って

いますが、ご存知ですか・・・?

 

遡って戦争前の1900年代前半には、

「箕面山はマツタケ狩りの有名な観光地」 だったとする記録もあり、

昔からアカマツ林が多かったことが分かります。

考えてみれば、アカマツは油分が多く、薪として利用され、杭や建築材

して湿気に強い成分から日本では耐久材として利用されてきました

ね・・・

しかし、戦後は化石燃料化(石炭、石油、天然ガスなど)や鉄材、

コンクリート、プラスチック材などの影響により、木材としてのアカマツ

その利用が薄れてきました。

従ってその手入れもされずに放置されてきて、箕面のアカマツも次々と

枯れ、朽ちて今日の姿を見るようにある日突然に倒れていくのです

ね・・・

 

そんな事を思うと 「みのお里山ふれあいプラットフォーム」 など

市民ボランテイアのみなさん方が、例えば六箇山山頂付近の欝蒼とし

森の下草刈りをし、間伐をして、林床に陽光が届くように森の整備

作業をされ、常に手入れをされている姿にはいつも頭が下がります・・・

しかし、今でも箕面の山の尾根筋などの岩がゴロゴロしている所で、

他の樹木が生育できそうにない悪環境の所でも、しっかりと根を下ろし

生きているアカマツもあり、そんな木を目にすると、ホッ! とする

ものがあります・・・

今日歩いたこの周辺はまったくの手付かずの状態ですから、しばらく

枯れ松の倒木によく注意して歩かねばなりませんね。

 

それにしても季節の移り目の森には緊張します・・・

この春の嵐痕など見ていると、猛威を振るう自然の力の前には、人間

なす術もない無力さを感じますが、それを招いてきたのもまた人間

身勝手である事も忘れられません・・・

 

かつての 「マツタケ狩りの箕面山」 を取り戻す事は容易ではありま

せん。

いつぞや私が教学の森の松林を歩いていると、一瞬 マツタケの香り

かぎ、そのとたん血眼になって(笑)、 その周辺を探し回った事が

ありました・・・

見つからなかったけれど、あの鼻腔をくすぐる香りは忘れられま

せん・・・

 

この秋にもう一度こっそりと探してみようかな・・・ (笑)  

 

 

09-2-28 (完)


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野鳥の水場に !?

2009-02-16 | *編集・冬/2月

野鳥の水場に !?

 

 

今日は二月中旬というのに20℃以上とか・・・  異常ですね!  

いつもの冬支度で出かけてきたので、山を登りだすともう汗だくに

なってしまいました。  

先週の凍えるような寒さを思うと、一気に初夏の感じがします。

(* 最もこの2日後に同じ所で小雪が降っていたので、寒暖の差が

   激しい季節ですが・・・)

 

外院の里に入ると地面から立ち上がる陽炎(かげろう)を感じ、遠方の

あたごの森が少しかすんで見えます。  

農業池では釣り人がノンビリと糸を垂れています・・・

黄色いタンポポの花が、春近しの槌音を聞かせてくれるようです。

勝尾寺へ向う旧参道へ入ると、前夜の雨のせいで落葉の間から山土

泥が浮きだし、狭い山道はまるで解けたチョコレートのようで歩き

にくく・・・  といっても昼頃には乾くのでしょうが、しばし下ばかり見て

歩かねばなりませんでした。

ふっと見上げるとメジロが目にとまりました・・・ 

そして遠くでウグイスの鳴き声も聞えてきました・・・まだ練習中のよう

で、その完全でない初々しさが余計に嬉しく感じられます。

 

第二ベンチのある所で一休みをしていて、ふっと横を見ると最近作ら

れたばかりのような野鳥の水場が目にとまりました・・・  

覗いてみると、切り株の上に半割した竹を逆さに固定し、竹の節を

境にして右に水を、左に餌となるアワやヒエなどが入っています。

しばらく見ているとシジュウガラがやって来てとまり、ノドを潤して

います。

これはいつ、どなたが、ここへ設置されたのかは知りませんが・・・  

この付近はいつも小鳥が多くいて、私はそのバードコンサートを楽しみ

している所です。

 

第三ベンチのある所を経てしばらく登ると尾根道にでてホッとすると、

右手に小高い丘が見えるのでここでまた一休みにします。

久しぶりに登ってみるといつになく小鳥が飛び交っています・・・  

見るとヤマガラが多く飛んでいます。  どうしたのかな?  

周りを見てみると松の木の根元に石と土で組んだ鳥用の小さな水場が

あります・・・

更に新しい巣箱も取り付けられています・・・ 半割丸太のベンチが

あり、その付近に「山頂 鳥の水場用 水・・」と書かれた大きな

ポリタンクと箱、それに水の入ったペットボトルが何本かありました・・・  

これをみんな担いでもってきたのでしょうか?

ひょっとすると先程の竹の水場を作った人と同じ方なのかな?   

と言う事は、鳥の餌も毎日蒔きに来られているのでしょうか?

とすると・・・ 私が登ってきたので、また餌がもらえると学習した鳥たち

、集まってきていたのかもしれませんね?

 

私は山頂に座り、温かい太陽の日差しを浴びながら、小鳥達の戯れを

身近で垣間見る事ができました・・・  しかし街のスズメに似て、余り

にも人に慣れている様子に何か変?   私の変? は、そこに自然

の姿を見るのではなく、自己満足的なもの・・・?  

いつも私が感じる自然からの感動と、少し何かが違う思いがして、

その疑問符を消す事ができませんでした。

この自然の森の中で、鳥に水や餌が果たして必要なのかな・・・?

ご自宅の庭で餌付けをし、趣味として楽しまれるのはいいと思うのです

が・・・?

 

かつて私は旅の合間にシンガポール、バリ、オーストラリア、デンマーク、

USA・・・ などの野鳥園へ行ったことがあります・・・  

しかし、不思議と人間に関与された施設の中で飛び交う鳥たちに、

自然の感動を味わう事はできませんでした・・・ 

動物園とて同じですね。 

人間が自然の中で、どこまでその生き物や生態に手を入れていいもの

なのか・・・?    今日も考えさせられました。

 

しかし逆に人間が鳥に協力してもらう為に、餌を与えながら森の再生を

計るということもしてきたようですよ・・・

江戸前期の陽明学者の熊沢蕃山と言う人が、

「山に鳥を呼べば緑が育つ・・・」 旨、を書いていて・・・  

それによって多くの禿山に森を育てたと言う事です・・・

そのやり方とは・・・  

荒れて禿山となった所に鳥の餌となるアワやヒエなどの雑穀を撒く・・・  

するとすぐに鳥たちがやってくる・・・  荒地の枯れ木や枝、枯れ葉、

倒木、岩場の間などに落ちた小さな餌を探して食べている間に糞を

する・・・  まずそのフンが貴重な肥料となる・・・  

次いで鳥たちはそのフンの中に未消化の木の実も混じっているので、

肥料付きの実を落とすことになり発芽しやすく、すぐに木は成長して

いく・・・  

そんな繰り返しの中でいつしか立派な雑木林が自然と広がっていく・・・  

するとそこには昆虫が住み、木の実がなるので鳥は益々増えて、

やがて動物もくるようになると、更にフンの肥料も増えるし微生物も

増えていく、命の循環が始まりいい森になっていくという・・・ 

こんな具合だそうです。

でも自然豊かな箕面の森の鳥たちに、その役目を頼むのはまだまだ

先のことのように思います。

 

茶園谷に入ると珍しく小さな谷川に水が流れています・・・ 

前夜の雨が相当降った様子です。

私が樹齢100年近い杉木立を見上げていると、初めて聞く鳥の

さえずりが聞かれました・・・  

なんとも優しい表現のしようのない鳴き声です・・・  

しばらく見上げていると急に・・・

   *  何がいるんですの・・・?  との声。 

見ると、二人連れの女性ハイカーの方も同じように見上げています・・・

・  すいません!  ボクにも分からないんです・・・ 

   でもきれいな鳴き声ですね!

   *  そうですね・・・  いいわね! さっきもこの先で今年初めて

       のウグイスの鳴き声を聞いたところなんですのよ・・・ 

       きれいだったわね・・・

(お隣の方がうなずきながら・・・) 

   *  感動だったわね!  本当に箕面っていいのね!

       自然ってすばらしいわ・・・  じゃお先です・・・ 

と、言いながら去っていかれました。

 

そうなんです!

この一瞬の予期せぬ感動が随所にあるので、私は箕面の森を歩くの

やめられないんです! (笑)

 

 

 

09-2-15 (完)


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親子三代の間伐!

2009-02-14 | *編集・冬/2月

親子三代の間伐!

 

 

今日(11日)は建国記念日の休日と言う事もあり、立ち寄った

箕面ビジターセンターの駐車場もいつになく満車でした・・・

自然2号路、3号路が今改修工事中の為に通行が制限されていますが

、山道を歩きやすいように整備してくれている事は、行政の予算難の

時代に、有り難い事です。

 

3号路から山伏の修験道に入り上っていくと、後から次々とハイカーの

方々がこられます・・・  

いずれも中高年の二人連れ、五人連れ、そして十数人のパーテイなどで

、みなさんはお喋りに夢中で賑やかな森です・・・

私は後ろからせっつかれるのが苦手なので、ましてドンカメと呼ぶ位に

鈍なカメ歩きですから、後方にハイカーの人影を見るといつも一休みに

して過ぎ去るのを待つことにしています・・・  

今日はその一休みの多いこと・・・ (笑)

今日のコース選択を間違えたかな? と、少し後悔していたのに、やがて

ピタリと誰も来なくなり、シ~ンとした穏やかな冬の森に戻りました。

 

耳を澄ませば鳥たちが楽しそうに飛び回っています・・・ 

(古くなった自分の頭では、いまだに鳴き声と名前が一致せず、諦めて

とっくに覚えるのを止めてしまいましたが、文章に表現できないのが少し

悔しい思いです) (笑)。

冷たい風が吹くたびに木立が大きく揺れて、私はその都度帽子を深く

かぶり、襟を立てて寒さをしのぎます・・・ 

冷たい風!  

でもこの凛とした冬の森は大好きです。

植物も、動物も、昆虫も、鳥たちも・・・ 森で生きるものたちが、じっと

厳しい寒さに耐えながらも生きている姿には、感動さえ覚えるのです。

 

山の中腹まで上ると、丸太を半割にして作った木のベンチがあり、休憩

できる所があるので、私はここでいつも一休みにします。

この周辺の木に何枚かの表示物がかかっています・・・ 何かな?  

近づいてみると・・・

「無断伐採禁止・・・ ここは国有林です。 

無断で木を伐採すると違法行為で処分されます。 

既に警察に通報してあります。 

無断で木を伐採している所を見かけられた方は、最寄の森林管理署、

森林事務所、警察署に通報を願います・・・」 の旨。

 

確かに周辺を見ると、切り倒されたヒノキやスギの木などが積み上げて

あり・・・ 更に、7~8本のヒノキが私の腰あたりの高さでカットされて

います。

つまりノコギリで幹をグルリと全て切り込んでいて、給水の役目を果たす

樹皮が分断されているので、枯れ果てるのはもう時間の問題です。   

なぜ?  誰が?  個人が勝手にやったのかな?

そんなことを考えながら再度冷静に周りを見てみると、どうやら無造作に

やっているのでなく計画性があり、ここを切り開いて見晴らしのいい

休憩場にしたい為・・・?

それに山道沿いの歩くのに障害となる危ない木や、込み合っている

樹木の間伐をしているような気がしました。

やっておられる方のお気持ちは分からないわけではありませんが、

何しろここは国有林ですから、許可のない伐採はやはり違法と言わねば

なりませんね・・・

 

天上ケ岳周辺の西斜面には、国によって伐採されたスギの間伐材が

切り倒されたままに放置されているのが見えます。  

森が開けて明るくなり、気持ちのいい散策が楽しめますが、一方で立派

に育ったおびただしい数の大きな杉の倒木を見るたびに、何か

活用方法はないものなのか?  

儲からないと言う事で、なんでもかんでも経済性至上主義の世の中に

なってしまうと思うと、つい悲しくなってしまいます。

 

天上ケ岳(499.2m)の役の行者像に参拝の後、堂屋敷跡から北への

尾根筋を通り堂屋敷山(553.4m)へ向かう途中のことです・・・

先のほうで コン コン コン・・・ バサ~ バサ~! の音・・・  

どうやら森の中で誰かが何かをしている様子です・・・  

ゆっくりと近づいていくと、急に上方から バサ っ とスギの小枝が落ち

きました・・・  

ビックリして上を見上げると一人のおじいさんと目が合いました・・・  

みるとナタを片手にスギの枝払いをしている所でした・・・  

樵(きこり)だ!?

(きこりなんて言葉は今どき 死語に近いのに、なぜか瞬間的に頭を巡り

、後で自分の古い頭を笑いましたが・・・)

 

   *  やあ~  いま何時ですか?

・  今ですか?  (私は時計を見ながら・・・)  

   いま12時5分前ですよ・・・

   *  もう昼か・・・ 

(そういいながら木の上から下りてこられました・・・)

   *  あんた!  一人で歩いてまんのんか?

・  ええ!  いつも一人です・・・ 人と歩くと気を使うし、それに山の中

   ぐらい自分の気持ちに沿って自由気ままに歩きたいものですから!

   *  分かる 分かる・・・! そりゃええこっちゃ! 

      それが一番やな・・

・  枝払いですか・・・  しかし大変なお仕事ですね!

   *  いやいや これやっとかんとな、節ばっかりなって売れんように

      なるさかいな・・・  何しろこの木を出荷するまで親子三代

      かかりますさかいな・・・ 大きな声では言えんけどな、細い木で

      50年以下のは安い建売り用やな・・・   本建築物やと、

      100年以上育てんとあきまへんのや・・・

・  それはまた気の長い話ですね・・・

   *  しゃあさかいな、もう今どき誰もやらしまへんがな・・・  

      東南アジアからごっつい安い材木がドンドン入ってきよる

      からな・・・  

      この辺の山持ちももう誰もやらへんから荒れ放題やな・・・  

      下草刈ったり、間伐したり手入れせんと山はすぐに荒れてしま

      うさかいな・・・

・  私の夢の一つに、小さくていいから自分の山が一つ欲しいな~ と、

   思っていたんですが、それを聞くと大変なんですね・・・(笑)  

   私のは、もっぱら自分用に森で静かに浸る為のものなんですがね・・  

   ところでここは民有林ですか・・・

   *  そうや! ここの前から国有林やさかいな、一本たりとも許可

       ないと切れまへんわ・・・  しかし切る時はものすごい機械と

       人出で一気にやりよるな・・・ 採算なんか度外視でな・・・ 

       搬出もヘリコプターやしな・・・  わしら個人ではとうてい

       やれんわな!

   *  わしもな、若い頃はサラリーマンと兼業やった、定年後に

       やっと出来るようなったがな・・・  

       確かに山は税金は安いけど、管理が大変なんや・・・  

       この木見てみ・・・!  

       鹿に表皮を食われてこれはもうダメやな・・・

・  こんな所に鹿ですか!?  

   *  鹿が多いな・・・  もう何本もやられてしもたわ・・・

・  私も昼間に谷川で水飲んでる鹿を見かけますが、そんなに多いん

   ですか・・・?

   *  顔見たら可愛い顔してるんやがな・・・ 

      食いもんがないんやろな・・・

      それに昔はオオカミや鹿を餌とした天敵がいたけどな,今は

      恐いもんなしやから増えるんやな・・・

 

・  この前に止呂々美の山の方で猟師が沢山鉄砲持って狩りをして

   ましたけど・・・  

   *  あれは殆どがイノシシ狩りですわ・・・  許可制で期間も限ら

      れてまんねん・・・イノシシはボタン鍋で高こう売れまんねん・・・ 

      しかし鹿肉はあきまへんわ!

(ここでも採算の問題か・・・)

・  イノシシというと、この前に雪の日にここを通ったらイノシシの大きな

   足跡がくっきりとついていてビックリしましたけど・・・

   *  この辺も多いな・・・  ミミズ探して掘り返すんでな・・・  

      それに葛の根っことか野菜も何でも雑食やからな・・・ 

      しかし猪肉はミミズの塊りみたいなもんやな!

 

・  そうだ!  一つ教えてもらいたんですが・・・  

   スギやヒノキの植林をする時に、なぜあんなに積めて苗を植えるん

   ですか・・・?  さっきもその先の国有林の間伐材を放置してある

   のを見て、そう思っていたんですが、もっと最初から空けて植えて

   おけば、こんなにも間伐作業に追われなくても良さそうなものなの

   にと、単純にそう思ったのですが・・・ 

   *   ハハハハ・・・  そりゃ簡単や・・・  植林は最初1m以下の

       間隔で苗を植える、太陽があまり林床を照らすと草や他の

       植物が育ちすぎてスギやヒノキの苗が育たない・・・  

       その内に苗が育つ順に間引きしてその間隔を広げていくんや

       10m間隔ぐらいまでな・・・  

       そうすると下に他の植物が育たんし、木と木が擦れん程度に

       間隔空けていくからまっすぐに伸びるんや・・・  

       そんで途中の枝を切っていってやると節のないええ木が

       できていくんやな・・・

・  なるほど! すると間伐も枝払いも木の生産には欠かせない労働

   なんですね!

   *  そうや!  三代かけてな・・・  昔から子供が生まれたら

      スギやヒノキを植えたもんや・・・  その子の子供、つまり自分

      の孫が嫁に行く頃になってやっとその木を切って家を建てて

      やるんやな・・・

・  いい話ですね・・・!

(そんな話を聞きながら、私も子供の頃にそんな話を当たり前に聞いて

いた事を思い出していました・・・)

   *  そろそろ昼休みにしまっさ! ほな気いつけてな・・・

       さいなら!

 

 山を持っている人を羨ましく思ってきたけれど、維持管理にそれなりの

苦労を思うと、自分の夢の一つが急にしぼんでいくようで、寂しくも思い

ました (苦笑)。

 

( 気になったので帰宅してデータを見てみると、ちなみに日本の

森林面積は2500万ヘクタールで、国土の66%が森、その40%が

植林された杉やヒノキの人工林とか、国有林が790万H。 日本は毎年

一億立方メートルの木材を使用し、その量は甲子園球場いっぱいに

積み上げたら、富士山の二倍の高さにまでのぼるとか・・・  

うち75%が外国からの輸入材・・・ と、ありました。 )

 

国土の三分の二が森なのに、使用材の四分の三が輸入材とは、

これいかに?    考えさせられる一日でした・・・

 

私はそれからexpo90箕面の森に立ち寄り、四反田谷の冬枯れの

小鳥村(名付けは私です) を楽しみ、箕面林道から四季の森を経て、

箕面川ダム湖を周って帰路につきました・・・

国有林でも民有林でも、こうして箕面の森の散策を楽しませていただけ

のは、私にとってこの上ない至福の時間であり幸せなことです・・・

 

そろそろスギ花粉が飛び始めたようで、私の鼻がムズムズして知らせて

います・・・   当分スギやヒノキ林は歩けそうにありません。  

それにしても念願の山がどこかに持てたとしても、その間伐や枝払い

中に・・・   いや、ゆっくりとそこに浸るにしても、私のように花粉症で

クシャミや鼻水、目に涙でクシャ クシャになれば、全く仕事にはならない

でしょうし、ゆっくりと浸るどころではないようですから、

私の山もち夢はもうここで完全に粉砕もののようです・・・ (笑)

    

 

09-2-11 (完)

 


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高山の村里にて・・・

2009-02-09 | *編集・冬/2月

高山の村里にて・・・

 

 

箕面最高峰と言われる明ケ田尾山(619.9m)山頂から、岩場の谷間を

抜けて高山(大阪府豊能郡豊能町高山)の村に着いたのは、丁度

お昼頃でした・・・

かのキリシタン大名・高山右近(高槻城主)の生誕地と掘られた石碑の

前で一休みです・・・

この村落で、余り人を見かけたことがなく、少し寂れた感じがします

が、田舎の風情が大好きな私にとってはそれも落ち着きます。

 

高山公民館前から府道を少し北へ、すぐに東に折れて田んぼ道を行く

、村の鎮守の森  住吉神社にでます。

私は故郷の信州・安曇野の寺所神社を思い出して、いつも高山に来る

と立ち寄るのです。

欝蒼と聳え立つスギの大木に囲まれるように、小さなお社が建って

います・・・

長い年月を経てきたお社が、静かに村を見守っているようです。

 

その前に広がる棚田は、季節が来ると素晴らしくも懐かしい光景と

化しますが、今は昨秋に刈り取られた稲株が残っているだけです。

しかしよく見ると、所々で野菜畑が作られているようです。

時折冷たい風が吹き抜けていきます・・・ 

神社の溜まり水には薄く氷が張っています。

私は細い畦道を通りながら、棚田の周りを巡るように上方へ向います。

その先は山の中へ続いているものの、入れそうにありません・・・

山裾の木蔭に入ると更に寒くなり、足元には残雪があり、冷たい風に

当っていると顔がこわばり、耳たぶはもう感覚がありません・・・ 

 寒い!

 

棚田の一番上にでて西の下方を見渡すと、実に絵になるいい眺め

です。

ここには遮る物がなく太陽が燦々と降り注いでいます・・・  

田畑の水溜りに氷が張っていてキラキラと輝いています・・・

ゾクゾクとする寒さの中に、ここだけは温かい!   

私も思わず帽子をとって頭皮に太陽の恵みを当ててやります (笑)  

でも一分ももちません・・・ 冷たい!

 

ここまでまだ誰一人として住民を見ていないのが不思議な感覚です。

ぐるりと回って再び神社に下りてきた時でした・・・

田舎のベンツ(軽トラック)が前からやってきました・・・  

どうやら畑を耕しにきた村の老人です。

・  こんにちわ!

   *  ああ~  どこからきなすった・・・? 

(少し疑いのまなざしです)

・  私は箕面市内ですが、いまあの山から下りてきた所です・・・

   *  歩いてきなすったか?

・  エエ~  新稲から登り、六箇山-堂屋敷山-鉢伏山から梅ケ谷に

   下り、また明ケ田尾山へ登って、いま下ってきた所です・・・  

   3時間半ぐらいかかりました・・・

   *  そりゃすごいな・・・  また歩いて帰るのかい?

・  はい!  帰りは別の道を3時間ぐらいで帰れます・・・  

   この高山が私の故郷に似ていて好きなんで、時々歩かせて

   もらってます・・・

   *  そうですかいな・・・(やっと疑いがはれたようです・・・)  

       なんぼでも歩いてくださいな・・・ 

       もうなんにもあらしません・・・  

       すっかり寂れてな・・・

       店も一軒もないし、小学校も何年も前に廃校になってな・・・  

       賑やかな頃は生徒が40人ぐらいおったが、数人になって

       しもうて仕方ないな・・・  今も数人いて、マイクロバスで

       止々呂美の方へ通ってますわ・・・  

       ところがな、最近そんな子に、どこからきたのか?  

       車で送ってやるから・・・ と、誘う若者がいるそうでな・・・

       そんで心配してまんねん。

(お孫さんでもおられるのだろうか?  私はうなずきながらそんな

おじいさんのお話を聞いていました・・・)

 

   *  この神社でな・・・  大きな洗い石が盗られましてな・・・

       こんな所で物騒ですわ・・・ 

       多分重機を持って盗みにきたんやろな・・・  

       ところがな・・・  何ケ月したらあの隅の方へ戻してあった

       んや・・・  多分、何かバチが当たってあわてて返しに

       きたんやな・・・  

       重すぎてそのままにしてまんねんけどな・・・

       バチあたりなこっちゃ!

 

・  この辺はイノシシが多いんですか?

   *  多いな!  しゃあさかいな、こんな電線を畑の周りに張らな

       いけしませんね・・・ そんでも、時々新人? のイノシシが

       な、知らんと突っ込みまんねんで・・・ 

       そんでもビックリして一度痛い目にあると次からはきません

       わ・・・

           (新人の鹿とは面白い!)

       やっかいなんわ、鹿でんな・・・  シカは飛び越えて入って

       きよるさかいな・・・  昼間でも時々近くで見まっせ!  

       年に4回程電池交換せないかんけど、背に腹は変えられま

       へんな・・・

   

   *  ワシも若い頃、一時サラリーマンやってましてな・・・  

       この府道ができるまでは、下の街へ出るのに大変でした

       わ!  

       今やったら箕面の駅前までで30分もかからんで行けます

       やろ・・・   

       便利になったんやが、それでも村の若もんはもうみんな

       街へ出て行ってしまいますわ・・・

       冬は寒いしな、店はないし、バスも一日数本やさかいな・・・ 

       もうワシらの世代でおしまいやな・・・

 

私は村の鎮守の森の前でとつとつと話すおじいさんの話を聞き

ながら、時代の変遷を垣間見ていました。

・  そうですか・・・ でも私はこの村が好きですよ・・・ 

   素朴で温かくて、いつも故郷を思い起こしています・・・  

   また立ち寄ります・・・  

   どうぞお元気で!

   *  おおきにな・・・  また来てくださいな・・・  さいなら!

 

あの山の向こうとこっちでは、そんなにも全てが違うものなのか・・・?

改めて地域格差を実感しました。

帰路、私はあのおじいさんと立場を代わりたいな・・・ と、真剣に考え

ほどです。

こんな自然に囲まれて穏やかに暮らす老後がいいな・・・  

実は静かに夢見ているのですが・・・

 

最も、誰一人として賛成してくれる家族はいそうにありませんがね・・・

ト ホ ホ ! です。   (笑)

 

 

09-2-8  (完)

 

 


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