日々雑感

最近よく寝るが、寝ると言っても熟睡しているわけではない。最近の趣味はその間頭に浮かぶことを文章にまとめることである。

イザナミ景気越えと言って喜ぶのは誰か

2019年02月09日 09時47分02秒 | 日々雑感
 景気の良し悪しを示す指標は景気動向指数だそうだ。景気動向指数は内閣府が調べる統計であり、景気全体の現状を知ったり、将来の動向を予測したりするときに使われる経済指標で、産業、金融、労働など、経済に重要かつ景気に敏感な28項目の景気指標をもとに指数が算出されているとのことだ。幅広い分野での調査結果であるのでさぞかし的確な指標であると思われるが、素人には複雑すぎてよく理解できない。

 内閣府は昨年12月、有識者による景気動向指数研究会を開き、平成24年から続く景気拡大局面が高度成長期のいざなぎ景気(1965年~1970年)を超えて、戦後2番目の長さになったと認定した。景気拡大は現在も続いているとみられ、戦後最長のいざなみ景気(2002年~2008年)と並ぶ見通しだそうだ。

 いざなぎ景気は、自動車,カラーテレビ,クーラーの所謂3Cが急速に普及したのもこの時期であり、一般庶民にも好景気が実感される景気の良さであった。

 いざなみ景気はこのいざなぎ景気と名前は似ているが、景気刺激のために日銀が資金をばら撒いただけの好景気でしかなかったのだそうだ。大企業は大儲けし内部留保を増やしたが、中小企業は不景気で、一般庶民にも好景気の実感は無かった。景気動向指数の示す値と庶民感覚のづれはこの時既に生まれたのだ。

 現在の景気はアベノミクス景気とも言われ、第2次安倍政権発足(2012年)とともにスタートした。リーマン・ショックや東日本大震災で落ち込んだ景気が、安倍政権の大規模な金融緩和や財政政策で急回復し、再三に亘る消費税増税延期やでトランプ米政権発足後の世界経済の好調さにも支えられて好景気が続いているそうだが、庶民に実感されないのはいざなみ景気と同じだ。

 しかし、このアベノミクス景気を端的に表しているのが、企業の内部留保の増加であろう。財務省の2017年度の法人企業統計によると、企業(金融・保険業を除く全産業)の内部留保が446.5兆円と前年度比9.9%増え、この6年で最も高い伸びだそうだ。

 内部留保は企業が事業から得た利益のうち、配当や設備投資に回さずに手元に残している貯蓄のことだそうで、500兆円といえば、日本のGDP(国内総生産)の1年分に匹敵する額となるが、もし日本に大惨事が起こっても、この金を当てにすれば、今後1年間は何事も無かったかのように無事乗り切れるのであろうか。

 現在国会は厚生省の統計手法を巡って揉めている。切っ掛けは毎月勤労統計の調査を全数調査すべきところ1/3しかしなかったから始まり、続々と不正調査の実態が指摘されている。

 労働者の賃金統計では、賃金レベルを雇用保険金等の支払いでは低めに、アベノミクスの成果では高めに算出されていたとのことであり、統計に誰かの人為的な操作があったにではないかとも疑われている。

 景気動向指数は、景気の現状把握及び将来予測に資するために作成される指標であり、政策決定に際し重要な数値である筈であり、この数値の改編を喜ぶのは政策決定者である。

 一時、安倍一強政治の下、森・加計学園問題を典型とする忖度が話題となったが、最近余り聞かれなくなった。しかし、秘かに厚生省の統計にまで忖度の雰囲気が及んだかと思うと慄然とする。2019.02.09(犬賀 大好-519)

東京五輪後も外国人観光客の増加を期待できるか

2019年02月06日 09時48分18秒 | 日々雑感
 日本政府観光局(JNTO)のデータによると、2017年の1年間に日本を訪れた訪日外国人の人数は、統計開始以来の最高記録である約2900万人に達したとのことだ。

 国別に見ると1位が中国(735万人)、2位韓国(714万人)、3位台湾(456万人)、4位香港(223万人)となっており、東アジア4市場だけで訪日外客の3分の2近くを占めたそうだ。

 特に韓国からの観光客は、この1年で115万人も増えているとのことだ。日本と韓国は慰安婦問題、徴用工問題、果てはレーダ照射問題と揉めているが、一般庶民はそんなことに関心なく、身近な国を訪問したいとの潜在的な欲求があるのだ。

 外国人観光客数の多さを国別に比較すると、2016年の時点で日本は世界15位であったそうだ。2017年の統計では、第1位はフランスの8700万人で、その後スペイン8200万人、中国6100万人と続き、日本は12位の2900万人であったが、この先3000万人を超えると、世界でベストテンに入ると予測されるそうで、そうなると日本は立派な観光大国と言えるであろう。

 更に日本政府は2020年に、訪日外国人観光客数を4000万人まで引き上げることを目標に掲げている。2020年には東京五輪も開催されるため、この目標も実現されるであろう。

日本への来日外人観光客はここ数年で劇的に増加しているが、なぜ外国人観光客が増加しているのか。そして、問題は五輪後も増加し続けるのであろうか。

 増加の原因は、色々論評されているが、アジアの国々の経済発展の影響が大きいように思える。

 2018年の中国経済は、中国国家統計局によると、国内総生産(GDP)は前年比6.6%増加し、成長率約6.5%という目標を達成したそうだ。中国は米国との間で関税を巡り貿易戦争をしている筈であるが、成長率は相変わらず高い。

 日本を訪れる中国人は所謂富裕層であろうが、一方日本で働く技能実習生や留学生は中国人が一番多い。この現象は中国の経済格差を象徴しているが、習近平国家主席の政策にこれを低減しようとする意欲は感じられず、当分この構造は維持されるであろう。

 韓国経済は、今年1月23日、ソウル新聞は、昨年の韓国の経済成長率が過去6年で最低となる2.7%を記録したことを伝えた。最低と言っても、日本の成長率はここ数年2%以下だったことを思えば、結構経済発展はしているのだ。

 また、インドは近年7%前後の経済成長を実現しており、ここ5年間、訪日インド人観光客数は順調に増え続け2016年には23万人にまで増加しているが、まだ絶対数は少ない。

 インド人は、サウジアラビア等中東圏に旅行する傾向が強いそうで、日本は、インド人にとって23番目の人気の観光地だそうだ。しかし、スマートフォン等の情報伝達手段の発展により、一端人気が高まれば、訪日インド人観光客は急激に増加すると思われる。

 訪日外国人の増加は、円安の進行、LCCの発展、日本商品の魅力の周知、観光ビザの発給要件緩和や免除等に原因もあることだろうが、元となるのは生活の余裕であり、経済発展である。

 今後、東アジア地域包括的経済連携(RCEP)等の東アジアの国々の広域的な自由貿易協定により、経済的な発展が進むだろう。経済のグローバル化は経済格差をもたらすが、富裕層も増やす。従ってこれらの国からの訪日客は増えるだろう。東京五輪後にもこの経済発展が続けば、観光客の増加を期待できる。2019.02.06(犬賀 大好-518)

核燃料サイクルに夢は残っていない

2019年02月02日 09時53分29秒 | 日々雑感
 世耕経済産業大臣は、1月18日の記者会見で、日立製作所がイギリスでの原発建設計画への参加を凍結したものの、政府としては引き続き原発輸出の政策を進めていく考えを示した。

 大臣は、「世界全体を見れば原発を使いたい国が多数で、今後、いろいろな展開の可能性がある。福島の事故を経験した日本の原発の安全に関する技術が世界に貢献していくことができる」と述べ、これまで政府が成長戦略の柱に掲げてきた原発輸出の政策を引き続き進めていく考えを示した。

 通産大臣としてはそう言わざるを得ないであろう。日本の核燃料サイクルが破綻し、原発輸出の成長戦略も破綻したのは明らかであるが、これまで日本の原発政策を主導してきた通産省として簡単に引き下がる分けにはいかない。

 日本の原発輸出計画が総崩れになる一方、ロシアや中国の原発が多くの国から要望され、建設計画が進んでいるのは確かであろう。世界においては、福島第1原発事故は地震大国日本での特異現象とて忘れ去られようとしている。日本でも原発に関する安全神話が早くも息を吹き返ししつつあるくらいだ。

 日本の原発建設コストが事故後安全性を重視し割高になっているため、具体化しそうだった新設計画が軒並み見送られてしまった。

 世耕大臣の言う色々な展開の可能性とは、ロシアや中国の安価な原発が将来どこかで起こす事故のことだと考えると非常に分かり易い。地震や津波が無くても、慣れに伴う油断は人的な事故を引き起こすこと必須だ。どこかで事故を起こせば、日本の安全に対する技術が見直されること間違いない。これが新たな展開なのだ。他人の不幸を期待する行為であるが、現時点でいくら安全を叫んでも世界には通じない。問題はそれまで技術を維持することだ。

 また、菅官房長官は、「原子力発電所の安全運転、保守や円滑な廃炉、福島第一原発事故の収束を実現するためにも人材や技術、産業基盤の維持・強化は不可欠だ。日本の技術者の育成をどのような方策で実現するかしっかり検討していく」と述べ、技術者育成の方策などの検討に万全を期す考えを示した。これも勘繰れば、どこかで事故が起こるまで人材確保に努めようとの宣言だ。

 ところで日本の原発はこれまでの尻拭いで問題山積みだ。廃炉は勿論、その結果出てくるごみの処分地は今もって決められない。どの問題も長期に亘るため、人材の確保・育成は必須であるが、将来に明るい希望の無い所に優秀な人材は集まらないだろう。

 政府は今もって核燃料サイクルの実現を追い続け、高速増殖炉計画を存続させたいようであるが、再び日の目を見ることは無いだろう。最大の理由は人材不足である。当初開発に携わっていた研究者はみんなリタイアしてしまい、電力会社やメーカーから出向してくるのは未経験者ばかりで、廃炉ですら覚束ないそうだ。世界的に見放された高速増殖炉に関しては若手研究者も尻込み状態であろう。笛吹けど誰も踊らない状態だ。

 原子力関係で夢があるとすれば、核融合技術であろう。これは太陽で起こっている現象を地上で実現する技術であり、炭酸ガスを排出しない、高レベル放射性廃棄物が余り生じない等の利点があるが、実験には膨大な設備と資金が必要であり、研究としてはずいぶん昔からあるが計画通りには進んでいない。

 日本の国として考えた場合、将来の発電の基幹技術を何にすべきか。現在自然エネルギーの利用が最有力であるが、自然の不安定さを補うための蓄電技術がネックになっている。もし画期的な蓄電技術が発明されれば、一気に自然エネルギーへと進むであろう。2019.02.02(犬賀 大好-517)