日々雑感

最近よく寝るが、寝ると言っても熟睡しているわけではない。最近の趣味はその間頭に浮かぶことを文章にまとめることである。

赤字国債は麻薬と同様止められない

2020年01月29日 09時21分33秒 | 日々雑感
 1964年の第1回目の東京オリンピックは戦後の復興を象徴する大会として大成功を収めた。しかし、翌年の日本はオリンピックの反動不況に見舞われた。この年10月ごろから中小企業の倒産が増加し、株価も下落、企業収益も減少し、景気は急速に悪化したのだった。

 政府は、景気回復を図るため補正予算で第二次世界大戦後初の建設国債を発行し、次いで1966年当初予算から本格的に国債を導入し始めた。

 これを契機に、歳入を全額、税収などの収入で賄う均衡予算主義は崩れ去り、この年以降財政に国債を組み入れることが常態化することになった。これが功を奏したのか疑問であるが、景気が回復し始め、いざなぎ景気が始まったのだった。

 いざなぎ景気を象徴するものは、所謂3Cと呼ばれる自動車、カラーテレビ、クーラーである。国民の所得水準が上昇し、家電製品や自動車など耐久消費財を中心に国内市場が拡大したことが背景にある。

 そもそも、国債の発行は1947年に制定された財政法の第4条により原則的に禁止されている。この規定は、わが国の無謀な戦争が膨大な戦時国債の発行により可能となり、敗戦後のハイパーインフレの原因となったという反省に基づいて設けられた制度である。

 いざなぎ景気が赤字国債発行のお蔭で始まったと言うより、当時の社会に景気回復の下地があったと見る方が妥当であろうが、少なくとも戦後初めてでありカンフル剤としては役立ったろう。しかし、その後麻薬のように習慣化し、遂には世界にも稀にみる1000兆円越えというGDPの2倍に匹敵する債務を作り出してしまったのである。

 政府は昨年7月末、2020年度の名目成長率を2.0%とする楽観的な政府経済見通しを公表しているが、この甘い成長率を踏まえた試算でも、プライマリーバランス(PB)は黒字化目標2025年度に2.3兆円の赤字が残るとしている。しかも、今年1月の試算では2025年度に更に甘い成長率3%が実現できても3.6兆円の赤字と状況は更に悪化し、黒字化は更に2年遅い2027年度になる見込みとなるのだそうだ。

 1月の通常国会、安倍首相は所信表明演説で2025年度PB黒字化を目指すと堂々と宣言したが、いつもながらいこの役者ぶりには感心させられる。

 PBをゼロとしてもこれまでの借金が減る訳では無いが、第1歩としてゼロにすることは極めて重要である。しかし、それすら達成出来無いが、達成時期が延期されたことは過去に何回もあり、延期に対する罪悪感は感じられない。

 西村経済再生担当大臣は着実な歳出改革を進めることによって、2025年度のPB黒字化目標の実現が視野に入っている、と首相に追随したが具体的な歳出改革目標を示しておらず、子供騙しもいい所だ。

 歳入に関して安倍首相は昨年10月消費税を10%に上げ、今後10年間は上げる必要が無いと大見得を切ったが、財政健全化は遠のくばかりだ。さて、2020東京五輪後の日本経済は、米中貿易戦争、日韓不仲問題等で見通しは暗く、日本の借金は益々増えるだろう。麻薬の副作用は増しているが、誰も気付かぬ振りをしている。2020.01.29(犬賀 大好-570)

忖度政治の源泉である人事権は絶対に手放さない

2020年01月25日 09時43分45秒 | 日々雑感
 安倍長期政権の弊害の一つとして忖度問題があり、官僚の過度の忖度もその一つである。かって各省の人事は各省に任されていたため政治は専門家である官僚の言いなりとなり、政治主導の行政運営が行えず縦割り行政となる弊害が問題視されていた。そこで、各省の幹部人事については、内閣総理大臣を中心とする内閣が一括して行うこととなり、内閣人事局が2014年に創設された。

 ところが内閣人事局に人事権を握られた官僚は政治家の思いを必要以上に忖度し、森友学園や加計学園問題等で資料の改竄や隠蔽を行い、ご機嫌取りに徹するようになってしまった。

 忖度とは元々は人の気持ちを秘かに推し量る美徳の筈であり、例えば、試験に失敗した友達の気持ちを忖度して大騒ぎしないようにした、等と使った。しかし、最近では上司や目上の人の気持ちを推察し便宜を図る、といった意味合いで使われ、忖度は出世の道具と化してしまった。

 しかも、昨年4月には、凍結されていた下関北九州道路に4000万円の国直轄調査予算が計上されたことに関し、自民党の塚田議員が安倍総理、麻生副総理に忖度して決めた、と堂々と忖度したことを公に披露するまでになってしまった。

 今回の氏の臆面もない演説は、行政の意思決定を必要性の優先順位ではなく、有力者への忖度で決定するという考え方が、自民党内で議員全般に広がっていることを物語っている。

 忖度する理由は自らの出世のためであり、党内での役職も首相の意向で決まるから、ゴマスリしたことを大声で言わなくてはならないのだろう。安倍一強政治が成り立つ理由は、自民党と公明党の与党が国会で多数を占めていることも理由であろうが、首相のすべてにおける人事権の独占が一番大きいだろう。

 さて、安倍長期政権の下で説明責任と言う言葉が頻繁に使用され、実際にほとんどの場合説明責任が果たされず免罪符の役割となっているが、与党内から批判がさっぱり出て来ない。

 議員が何か不都合を起こすと、首相や官房長官から自ら説明責任を果たせとの言葉が発せられるが、一般議員は触らぬ神に祟りなしと他人事だ。本来の説明責任の重要さを強く指摘すれば首相の政治姿勢を批判することになり、その後の出世に差し障るとの認識が広がっているのだろう。

 ようやく、岸田政調会長も今月18日自民党の河井案里参議院議員と夫の河井前法務大臣の事務所が広島地検の捜索を受けたことについて、二人が十分に説明責任を果たすべきだという考えを明らかにした。しかし、20日、記者団の取材に応じて二人は捜査に支障を来してはならないので説明を控えたいとの趣旨の発言をしたが、これで責任が全うされたとでも思っているのか、岸田氏からはそれ以上の追及の弁は聞かれない。

 岸田氏はポスト安倍の有力候補であるが、総選挙になった場合岸田氏では選挙の看板にならないとの見方もあるようで、人気取りの為、安倍政権との違いを訴えたいとの思惑もあるようだ。そもそも、説明責任の乱用は安倍首相が本家であり、森友・加計学園問題で説明責任を果たして居ないのを前面に押し出すべきだが、政権の禅譲も頭の片隅にあるようで、歯切れは極めて悪い。

 安倍首相は人事権の独占で長期政権を保っており、その弊害も目立つが、これほど有力な武器は他になく、誰が首相になっても鬼に金棒として人事権を絶対に手放さないだろう。2020.01.25(犬賀 大好-569)

カジノはやっぱり利権の巣窟

2020年01月22日 09時09分34秒 | 日々雑感
 2019年12月25日、東京地検特捜部はカジノ誘致を巡る収賄容疑で自民党の秋元議員を逮捕した。政府は統合型リゾート(IR)事業は国内経済を活性化させるとしており強力に推進している。カジノはIRの中の一つの施設に過ぎないが、金を生み出す唯一の施設として無くてはならない存在である。

 秋元容疑者はカジノを推し進めていた超党派によるカジノ議連に所属しており、2016年議連が議員立法で提出したカジノ解禁法の採決を強行した衆院内閣委員会で委員長を務めていた。

 その翌年には、内閣官房にIR推進室ができ、秋元氏はIR担当の内閣府副大臣になる等、氏は一貫してIR推進を担ってきたが、その熱意の根源は日本経済の活性化より個人の利権漁りが目的だったようだ。 

 カジノで大儲けしようとIR参入を目指す企業は世界に無数にあり、その中の一つが中国企業の500ドットコムである。そこの顧問の紺野氏は、秋元氏とともに自民党の白須賀議員ら国会議員との親密な関係を自らのSNSでアピールしていたそうだ。また中国企業側は秋元議員以外の5人の国会議員にも100万円前後の現金を配ったと供述している。5人の内の一人である日本維新の会の下地議員は現金受領を認めたが、他の議員は認めていないようだ。

 このような不正な行為が明らかになっても政府の方針はIR設置を着々と進める方針だそうだ。昨年末、筆者は ”カジノ建設候補地は政治力で決まるであろう(2019.10.05)”のプログの中でカジノは利権の巣窟だと記した。今回の事件はそれを裏打ちするが、思いを込めて再度記す。

 自治体が申請するIR施設の建設を認可するのは観光庁を傘下に置く国交省だが、カジノ運営事業者を審査・監督するカジノ管理委員会は内閣府に置かれて官房長官が握る。エンターテインメント業界は経産省、賭博関連は警察の所管で、ギャンブルの上がりの3割は国庫に納付されるから財務省、ギャンブル依存症対策は厚労省の担当になるそうだ。関係する各省は利権を求めて大騒ぎするだろう。官にとって利権の代表は天下り先の確保であり、民にとっては金儲けだ。

 カジノ建設候補地を目指して、全国各地の自治体が争っているが、その裏には世界のカジノ関連企業が蜜を求めて蠢いているだろう。先の中国企業は宝くじのオンライン販売事業が主のようでカジノに関しては新参者のようだ。新参者であるが故、必死に日本の国会議員に売り込んだと思われるが、売り込み先の議員も新参者で慣れていなかったのであろう。

 この点、世界の大手カジノ事業者は売り込み方のノウハウも熟知しているのだろう。簡単に足が出るようなことはしない。官民一体となって裏で秘かに蜜を吸っているに違いない。

 IR建設の有力候補の長崎には麻生副総理、大坂には菅官房長官、和歌山には二階幹事長が背後に控えていると見られ、普通の国会議員の出番は余りないようだ。逮捕された秋元容疑者は手薄な隙間を狙って沖縄や北海道を目指したが、大物の前では子供扱いだった。

 利権を求めて候補地争いはし烈なようだが、一般市民にとって負の側面であるギャンブル依存症の多発しか思い浮かばない。しかも最近その対策の声も余り聞こえてこない。2020.01.22(犬賀 大好-568)

ポスト安倍は誰がなっても後始末は容易でない

2020年01月18日 09時33分10秒 | 日々雑感
 安倍首相は今年1月4日、年頭記者会見で憲法のあるべき姿をしっかりと提示し憲法改正に向けた国民的な議論をいっそう深めていくため自民党総裁として頑張りたいと、来年9月までの総裁任期を全うする決意を示したそうだ。しかし、党内では、東京五輪が終了した後のよきタイミングで辞任すると噂されていただけに驚きの声が広がったとのことだ。

 辞任の声は党内ばかりでなく世間でも同様である。安倍長期政権下での弊害の一つは実体が伴わない説明責任の乱用である。先日も自民党の河井案里参院議員の公職選挙法違反の問題で、菅幹事長は個人に説明責任があると発言しているが、このまま静かにしておればその内世間は忘れるとの励ましの言葉とも聞こえる。

 なんせ、森友・加計学園問題で首相は丁寧に説明すると言いながら嵐が去るのをじっと待っているお手本を示しているのだから。このような弊害も目立ち始め、世論的にもそろそろ交代すべきとの声も広がっているのだ。

 ポスト安倍が禅譲で決まるとすれば岸田政調会長であり、対抗馬は石破元幹事長と言われてきたが、マスコミ評では菅官房長官が担ぐ河野防衛相、小泉環境相と、安倍首相が引き立てようとしている茂木外相、加藤厚労相が、新たな総裁候補として脚光を浴びているとの話だ。しかし、あくまでも話題作りのためと思われ、実質的な争いは先の二人であろう。

 しかし、岸田氏はカリスマ性が無く、石破氏は賞味期限が切れている感であり、一時期菅幹事長の名が取りざたされた。菅幹事長は令和の元号発表で有名となり、また安倍首相の尻拭いを何度かして窮地を救ってきた功績がある。

 例えば桜を見る会の招待者を巡っては、招待者名簿を破棄し野党からの厳しい追及を受けたが、相変わらずの知らぬ顔の半兵衛で乗り切ってきた。恐らく菅氏は野党からの名簿開示の要求に対して急遽破棄等を指示した張本人と思われるが、破棄したのは職員であり何の法律違反もしていないととぼけた。

 こうした経緯から春以降、菅氏はポスト安倍の有力候補の一人にも数えられるようになったが、菅氏の側近である菅原一秀経産相の辞任や、昨年の萩生田文科相と河野防衛相の失言等が続き、安倍政権は末期的な状態になりつつあると共に菅氏の総裁候補の声も小さくなった。

 安倍政権を誰が引き継いでも後始末は大変だ。特に異次元緩和の後始末と財政健全化問題が大きい。政権発足当時安倍首相は黒田日銀総裁と異次元金融緩和を敢行しデフレ脱却を目指した。しかし、物価上昇率2%の目標は今だ達成されておらず、異次元緩和の声も聞かれなくなった。アベノミックスでは市中にお金をばらまいたが、当初懸念されたインフレも現時点では起こっていないのは幸いであった。

 このまま異次元緩和が出口に向かい本来の金融政策に戻れば一見問題なさそうであるが、日銀が買い上げた国債処理、日銀のみならず年金積立金管理運用独立行政法人(GPIF)が運用する株式のリスク等、爆弾を抱え込んでいるのは間違いないだろう。

 この他、財政健全化の問題や北朝鮮問題等やり残している問題も多々あるが、誰が引き継いでも解決は容易でない。2020.01.18(犬賀 大好-567)

自国第1主義はグローバル化の産物

2020年01月15日 09時36分48秒 | 日々雑感
 グローバル化社会とは、国や地域といった垣根を超えて世界的にお金、物などの資本や人材、情報と言ったものが政治的な制限無しにやり取りされる社会のことを指すのだろう。一般国民にとって、グローバル化の最大の恩恵は、世界中の商品が安い価格で世に出回るため、食料を始めとしてほとんどのものが容易に手に入れられることである。但しそれだけのお金があればの話ではあるが。

 品質の良い安い商品を生み出すためには、世界中から安い材料を仕入れ、労働賃金の安い地域や国で質の高い商品を生産する必要がある。これはコストパーフォーマンスの追及であり、経済の効率化である。経済の効率化には従来のやり方の変革が伴い、変革に乗り遅れる人々が発生する。

 さて、よく売れる商品は質が良くて安い物だ。このため、競争は世界的な規模となり、競争の激化が労働賃金の低下や競争に負けて倒産する会社も増え、国内の産業が衰退、空洞化することにも繋がる。また、少しでも安く生産するため、低賃金労働者の雇用が必要となり、発展途上国からの労働者を招き入れることになる。

 外国人労働者の増加は、自国の労働者の仕事を奪い失業者を増加させ、また概して外国人労働者は貧しくかつ低賃金ゆえの治安の悪化を招く。これらの欠点が反グローバル志向すなわち自国第1主義者へと駆り立てる。自国第1主義はグローバル化の産物なのだ。

 経済効率の追求は富む者をますます富ませ、貧しき者は競争の土俵にも上がれない。必然的に経済格差を拡大する。自国第1主義は格差の拡大の結果と言えるかも知れない。国内における格差拡大は勿論、国家間の格差も拡大する。

 国内における格差は、イギリスでのEUからの離脱を巡り国論を2分していることが象徴している。EU内での自由貿易から利益を受ける人々と移民の流入により不利益を受ける人々の衝突だ。また、国家間の格差拡大に関してはEU内で予てより問題となっている。

 また、グローバル化による技術の拡散が従来の特権を脅かすものとして、自国第1主義となる者もいる。トランプ大統領が典型だ。米国はIT産業で世界に君臨するが中国が猛追を受け、その立場が危うくなりそうになると大統領はアメリカファーストを掲げ、中国の台頭を阻止しようと貿易戦争を始めた。

 国内の格差解消は税金等の処方が考えられるが、国家間の格差の解消法は戦争ぐらいしか思い浮かばない厄介な問題だ。戦争も貿易戦争で留まればまだしも、武力衝突になると大事だ。

 先日ゴーン元日産会長が違法出国したとのことでマスコミは大賑わいである。この逃亡経費に22億円要し、また保釈金15億円は没収とのことであるが、彼の年収は10億円以上であり、総資産は2300億円とも言われており、金があれば何でも出来ることを実証してしまった。

 いつの時代でも国民の最大の関心事は経済である。グローバル化は経済発展に役立ってきたが一方その害も顕在化してきた。グローバル化の制限は経済の効率化を制限するため、経済の停滞に繋がる。経済発展することが幸福とは限らないが往々にして経済的な貧しさは人の心を卑しくし、理想を忘れさせる。

 英国の混乱は離脱後も続くであろう。グローバル化と自国第1主義のせめぎ合いは、日本でもTPP等で顕在化しており将来大問題化するであろう。2020.01.15(犬賀 大好-566)