中国がゼロコロナ政策の終了に踏み切った。若者たちの抗議デモが全国に広がったことを受け、3期目をスタートさせたばかりの習近平体制が突如方向転換したのだ。PCR検査場が一夜にして消える、スマホアプリによる行動規制がなくなるなど急激な変化に国民の間には動揺と混乱、そしてコロナ感染が急速に広がっているそうだ。
現在流行中のオミクロン株での重症化リスクは従来株より低くなっているそうだが、感染者の数が多くなれば当然死亡者数も増える筈だ。中国当局の発表によると、今月19日に2人、20日に5人が新型コロナウイルスで死亡し、それ以前の2週間は1人も死亡していないとのことだ。中国当局の発表は常に政治的な意図が付きまとう。中国の集計方法では、死者数には肺炎などの呼吸器系疾患により死亡した人のみを集計しており、意図的に少なく見せているようだ。
米ワシントン大学医学部保健指標評価研究所(IHME)は、死者は今後100万人を超える恐れがある達すると予想しており、英国の医療関連調査会社エアフィニティーも、感染者数増加のピークは来年4月1日ごろで、中国全土での死者数は4月末までに170万人に達すると予測している。
このような状況に拘わらず、中国政府は26日夜、新型コロナウイルスの水際対策として入国者に義務づけてきた隔離を撤来年1月8日から廃すると発表した。国内の断続的な規制緩和に加えて出入国時の制約もほぼなくなる形で、国民に厳しい移動制限を強いてきたゼロコロナ政策は事実上完全終了となる。
中国人の海外旅行が2023年初めに再開される見通しとなり、待望の解禁を前に旅行先のネット検索が増え、航空券の予約などに利用者が殺到しているそうだ。日本でもかっての中国人観光客の賑わいを待ち望んでいる人はさぞかし多いだろう。
ただ、中国国内では規制緩和で感染が急拡大しており、日本や米国、台湾などで中国からの来訪者に対する水際対策を強化する動きが広がっているようだが、かってのように大挙して押し寄せる中国人観光客を安全に手際よく受け入れることが出来るであろうか。
中国での感染者数や死亡者数の公式発表は今後とも無いだろうが、習近平氏の無策に民衆が騒ぎ出すのを恐れてか、外国に目を逸らすための対外強硬姿勢が目に付く。すなわち今月21日、南シナ海の上空で米軍の偵察機に中国軍の戦闘機が6mまで接近して飛行を妨害し、今月25日には、尖閣諸島沖で中国海警局の2隻が72時間45分にわたり日本の領海に侵入し連続で滞在した時間は国有化以降で最長となり、また、今月26日午前6時までの24時間に台湾周辺で、中国軍の航空機延べ71機と艦艇延べ7隻の活動を確認した等、次第にエスカレートしている感である。2022.12.31(犬賀 大好ー876)