昨年8月28日、安倍首相の首相辞任の決意表明があった。安倍首相の長期政権は有力な次期首相候補が見当たらないことにも繋がると嘆いていた。その後菅首相が誕生したが、コロナ騒動等があり、次期首相に再選されるか怪しい雰囲気になっている。しかし、相変わらず他に有力候補がおらず、やっぱり菅首相となるのであろうか。2021.08.30(犬賀 大好)
横浜市長選挙が8月22日に投開票され、新人で元横浜市立大学教授の山中竹春氏が、元閣僚の小此木八郎氏や現職の林文子氏等を破って、初当選を果たした。小此木氏は元自民党議員でありながらIR誘致反対の立場から立候補したが、獲得投票数は2位ながらも大差で敗れた。
これまでIRを推進してきた菅首相もIR反対に豹変し小此木氏を応援した。横浜市は菅首相のおひざ元であり、本来はIR推進の立場から、現職の林文子市長を支持するのが自然であったろうが、林氏では当選できないと判断したためと言われている。当面の不利益を我慢して、将来の利を得るための高度な政治的な判断かも知れない。
林氏は、少子高齢化社会の中で横浜市の長期財政健全化を目的にIRの誘致を促進していた。IRは利権の巣窟であり負の側面も大きいが、それでもIRを誘致するとは余程儲かる商売であろう。
山中氏の当選で横浜市へのIR誘致は当面無くなったが、未来永劫かと思うとそうでもないだろう。ここで思い出すのは1995年東京都知事選挙である。それまでの都知事であった鈴木俊一氏は、東京臨海副都心の再開発を目的に世界都市博覧会を招致することを公約にして立候補した。
当時、都市機能が東京都区部へ過度に集中したため、通勤混雑や住宅の取得難、災害に対する脆弱性といった大都市問題が深刻化しており、東京臨海副都心での博覧会開催は一層深刻化させるとして、博覧会を中止し開発見直しを掲げた青島幸男氏が選挙戦に勝利した。
青島氏は世界都市博覧会中止を決め、東京臨海副都心開発は見送られた。しかし、青島氏の活躍はそこまでで、大都市問題に対する実績には見るべきものが無い。次の石原慎太郎都知事は臨海副都心開発を目的にオリンピック誘致を掲げた。その結果が、2021年の東京五輪である。臨海部の再開発を目指し、当初コンパクトな開催をコンセプトにしたが、有耶無耶になってしまった。新たに臨海部に建設されたスポーツ施設は今後維持費が懸念され明るい未来が待ち受けているわけではない。
また、選手村跡地は晴海フラッグを称する大型居住区に生まれ変わる予定であるが、現時点では若者の居住希望者が圧倒的に多いと言う話であるが、人間は歳を取り高齢化が待ちうける、いつまで持つであろうかの不安は残る。
山中氏の横浜市長就任でIR建設は当面無くなったが、建設予定地の山下埠頭の再開発問題、横浜市の財政健全化問題は残る。これらの問題に適切な解決の処方を示さなければ、いずれこの問題は再発すると予想される。2021.08.28(犬賀 大好ー741)
日本の新型コロナウイルスの新規感染者は連日2.5万人を超え未だ留まる所を知らない。一方、24日にはパラリンピックが始まり開会式ではブルーインパルスを飛ばしたりして雰囲気を盛り上げようと一生懸命努力している。菅首相を初め大会関係者は、東京五輪の開催と感染拡大は関係ないと主張しているが、どう考えても首相の主張には無理がある。
さて、英国や米国ではコロナワクチン接種者が国民の半数を超えたとのことで、集団免疫効果を期待して、各種規制は徐々に解除し経済活動を復帰させつつあるようだ。日本でもワクチン接種が急速に進み、政府は8月中に国民の4割接種完了の見通しを示している。
2回のワクチン接種でも感染する可能性や新種ウイルスの出現等の不安材料も聞かされるが、遅くとも今年12月中には接種が大幅に進み、来春にはコロナ感染は収束すると個人的には楽観している。
ほぼ2年に亘るコロナ感染拡大は人々の生活に大きな影響を与えている。感染が収束した場合すぐに元の生活に戻れるか、しばらくは戻れないか様々であろう。経済的にもV字回復説やL字回復説等があるが職種によって随分異なるようだ。
政府も新型コロナウイルス禍からの出口戦略の検討を始めたようだが、経済的に少しでも早く元の状態に戻すための検討のようである。例えば、2回の接種を済ませた人が、飲食店での飲酒やイベントへの参加などができるようにする仕組みや実施時期を示すことだ。東京は緊急事態宣言を繰り返し、その都度飲食店等に時短要請や酒類提供の中止を求めて来たが、政府は少しでも明るい材料を提供したいのであろう。趣旨はよく理解できるが簡単ではない。
エコノミストは、景気の底から急成長する「V字回復」は製造業、一方、落ち込んでからの回復が極めて遅い「L字回復」は非製造業が当てはまると言及している。その両方が混在するのが「K字型」だそうだ。
最近、自動車企業の半導体不足で自動車減産の話を良く聞く。東南アジアのコロナ感染拡大で半導体製造に支障が出ているとの説明だ。しかし、半導体の逼迫そのものは、これまで何度も経験してきた恒例行事のようなものだそうだ。
PCやスマートフォンなどの需要が高まると、そこに利用されている半導体の需要が高まり、半導体製造工程の変更となる。半導体の製造は各種の製造工程からなり、半導体の用途に応じて各製造工程を見直さなくてはならず、そこに多大なマンパワーを要す。しかし、いったん製造工程が確立すると大量生産が可能になる。半導体メーカーが増産を始めると、今度は供給過多になり、供給価格の下落を招き、減産を始める。そうしたスパイラルを繰り返してきたのが過去数十年の半導体産業の歴史だそうで、コロナ感染拡大が現象を複雑化している。
経済の出口戦略は複雑で一筋縄ではいかない。経済のコロナ以前の状態に回復するには数年を要するかもしれないし、全く姿を変えた状態でしか回復できないかもしれない。2021.08.25(犬賀 大好ー740)
東京五輪で活用した晴海の選手村はパラリンピック後、晴海フラッグと呼ばれる一大タウンに生まれ変わる予定だ。住居の形態は様々で、一般住宅をはじめ、高齢者向けの住宅やシェアハウス、外国人向けのアパートなども建設され、そして大規模な商業施設や保育所、医療モールの建設なども予定されており、街を出なくても買い物等、日常生活にはまったく不自由しないそうだ。水素を燃料とするバス高速輸送システム(BRT)の車両を使用し、BRT専用道路を使用することで、大量輸送ができるとのこと。近未来都市を想像させ、入居希望者も多いとのことだ。
選手村の跡地には14階建て〜17階建ての高層マンションが22棟、さらに50階建ての超高層マンションが2棟建設されるようだ。晴海フラッグの宣伝に一躍買ったのが、五輪開催期間中にそこで暮らした各国の代表選手達だそうだ。欧米の女子選手たちがSNSインスタグラムでベランダからの眺望のよさを絶賛したのだそうだ。
さて、1964年の第1回目の東京五輪の選手村は現在の代々木公園にあり、広さは66万平方mであったが、今回の選手村は13.4万平方mとのことであり、ほぼ1/5である。大会関係者は今回各段に増えている筈であるが、収容面積の狭さを高層建築で補っているのだ。
ここを人間の居住区として生まれ変わらせたい目論見であろうが、これほど高層建築物が林立する居住街が他に例があるだろうか。街を出なくても生活できるのが謳い文句の一つだが、食料品はすべて街の外からであろう。四方が海に囲まれており、物流が完璧に働いて初めて機能する街である。東京直下型地震も懸念されるが、その場合陸の孤島化が心配される。
子育てには非常に便利だが、子供が成長すると学校も必要なくなる。多摩ニュータウンのさびれも他人事でない。多摩ニュータウンは、 計画当初、賃貸団地では、住み替えによる転出とファミリー層の新たな転入が生じるものと考えられていたが、子世代の転出が進む一方で、親世代では、団地に住み続ける入居者が多く、ファミリー層の転入が少ない初期入居地区では急速に高齢化が進みつつある。
そんな中、ディベロッパー各社は2021年6月25日、延期していた見学会を8月から再開し、2021年11月中旬から販売を開始すると発表した。ディベロッパー各社は晴海フラッグの建設に当たり、多摩ニュータウン等の歴史を考察し、長期にわたり住み易い街つくりを考えて対策していると信じたい。
現在、新型コロナウイルスが蔓延し、サラリーマンの生活様式が在宅勤務主体になる等、大きく変化しつつあるようだ。生活様式の変化も、住居の姿に大きく影響を与えるだろう。30年~50年後どのように変貌しているか楽しみでもある。2021.08.21(犬賀 大好ー739)
政府は、17日新型コロナウイルス対策で緊急事態宣言の対象地域に7府県を追加し、期間は8月20日から9月12日まで延長するとした。
東京都は16日(月)、新型コロナウイルスの感染者が新たに2962人と発表したが、過去最高値の5773人と比べ、感染者が激減したように見えるが、この数はPCRの検査数に大いに依存しており、前日の日曜日は検査数が少なかったためでしかない。逆に言えば、これだけ感染者が増えていても相変わらず検査数を増やしていないようで、政府、行政の対応の鈍さに驚く。
東京五輪では、菅首相は安心安全な開催を実行し、結果大成功だったと自負しているようだが、大会関係者にとっての安心安全が目的だったようで、国民はどうでも良かったようだ。大会開催前国民の大半が開催に否定的であったが、開催後はやってよかったとの評価が大半となり、予想が的中したと得意顔かもしれないが、内閣支持率には反映されなかったのは想定外でがっかりしていることだろう。
さて東京2020パラリンピックは、8月24日~9月5日だ。政府は五輪と同様にやる気でいる。菅首相や小池都知事は、東京五輪と日本の感染爆発は関係がないと主張しているが、そう言わざるを得ないだろう。直接的な関係はないとしても、間接的な影響はあるだろう。過去最高のメダル獲得と気持ちを煽りながら、一方では自粛を要請するのは、矛盾であると気がつかない筈は無い。
政府は8月中に国民の4割接種完了の見通しを示している。しかし、集団免疫獲得にはパラリンピックの期間中でも間に合わない。菅首相は、東京五輪開催で”米国バイデン大統領から素晴らしい成功を収めたと祝意を頂戴した”、とご満悦だったようで、大成功と勇気つけられ、この勢いでパラリンピックも乗り切ろうとしている。
緊急事態宣言が出ている6都府県で感染者数が増え続けていることから、政府の有識者会議は8月12日、お盆休み前後の2週間に限定した対策強化を提言した。東京都内の人流を抑制する強化策だ。具体的には、百貨店の地下の食料品売り場やショッピングモールへの人数制限等であるが、若者の路上飲み等に対しどこまで効果があるか疑問である。
浮ついた人々の気持ちを静めるのはパラリンピック中止のショック療法が効果的だと思っていたが、17日原則無観客開催を決めた。パラリンピックは障害のある、無いに関係なく共に生き生きと活動できる社会を目指すという理念に基づくものであり、障害者の活躍は健常者以上に感動を呼ぶ。パラリンピックの中止はこの共生の理念に反するとの主張もあるが、それ以前の問題として、皆が健康で安心して生活できる社会の実現の方が先決と思っていたが。
一方、西村経済再生相はコロナ収束後の出口戦略を練り始めたようだ。自粛疲れやコロナ慣れが広がり、時短営業や外出自粛といった要請に協力が得られにくくなっている現状に少しでも明るい材料を提供したいとの思いからであろうが、ワクチンを接種済みか検査で陰性だった証明などがあれば、飲食店でお酒を飲めるようにする等、を考えているようだ。しかし、緊急事態宣言状態が9月12日終了の保障は無い。2021.08.18(犬賀 大好ー738)