11月19日、米上院は”香港人権・民主主義法案”を全会一致で可決し、そして翌日の20日、米下院は賛成471票・反対1票の圧倒的賛成多数で可決した。この勢いに押され、トランプ大統領が27日この法案に署名し成立した。
トランプ氏は現在中国との間で貿易問題を抱えておりこれ以上中国を刺激出来ないと、署名に消極的とされていたが、先の法案では共和党も大賛成しており、仕方なく署名したのであろう。ウクライナ問題では民主党の批判を受け弾劾手続きが始まろうとしているが、共和党の賛成が得られず弾劾は成立しないだろうと見られており、ここで共和党のご機嫌を損ねる分けにはいかないのだ。
トランプ氏は、”中国の習国家主席、中国、香港の人々に敬意を表して法案に署名した。中国と香港の指導者と代表者たちが友好的に意見の相違を解決できるように”、との主旨の声明を発表したそうで中国に対する配慮が伺われるが、中国は内政干渉と猛反発しているようだ。
さて、11月24日投票が行われた香港の区議会議員選挙は、過去最高となる投票率となるなど高い関心を集め、香港メディアは、民主派が全452議席のうち90%に近い390議席を獲得し、圧勝したと伝えた。
民主派が大勢を占めた区議会は、予算の承認や条例の制定といった議会に必要な権限を持っておらず、従来は諮問機関として位置づけられ、実質的な権限がないため、行政に対する影響力は小さいそうで、民主派の不満の出口がどこに向かうであろうか。
香港政府トップの林行政長官は、今回の選挙結果は市民の不満を反映したもので、真剣に反省したい、とする声明を出したが、今後の対応については言及しておらず、中国本土との板挟みに苦しんでいることだろう。
世界中に華僑、華人と称せられる中国系の人々が居住し、全世界の華僑・華人人口は、約6,000万人程度だとされているが、彼らはそれぞれの国の政治体制に馴染み、それぞれの地で活躍していると思われ、故郷の現中国の共産党一党支配の成り行きに注目しているであろう。
台湾総統府は、選挙結果に”大いなる称賛と支持”を表明したが、習近平体制との軋轢は一層大きくなるだろう。
鄧小平氏の改革開放政策を切っ掛けに、グローバリゼーションの恩恵を受けて中国は飛躍的な成長を遂げたが、米国との貿易摩擦でその土台が揺らぎ始めている。中国がこれからも経済発展を続けていくためには、世界の流れに従わなくてはならないだろうが、政治体制も影響を受け無いわけにはいかない。
今回の香港騒動が中国の政治体制崩壊の切っ掛けになると主張する人もいるが、これまでもたびたびそのような話があったが、何事も無かったかのように無事乗り切っている。
しかし、これまでは天安門事件のように中国内部からの変革の動きであったが、今回は周辺からの変革要請である。世界の経済大国2位にまで上り詰めた現在、中国独自の動きは許されない。今までと同じように国内の締め付けだけで済むことにはなら無いだろう。2019.11.30(犬賀 大好-553)