菅総理大臣は、18日召集された第204通常国会の施政方針演説で、自身が一貫して追い求めてきたものは、一人ひとりが力を最大限発揮し、互いに支え、助け合える、「安心」と「希望」に満ちた社会を実現すること、と強調した。そしてこうした社会を実現するためには、国民の信託を受け、国政を預かる立場にある政治家にとって、何よりも国民の皆様の信頼が不可欠であると、言った。
全くその通りと思うが、菅首相自身心底からそのように思っているのか、極めて疑わしい。すなわち最近の国会議員の不祥事に対し、説明責任は当人にある等で、他人事としてしか語っておらず、自分が政治家の総責任者であることを忘れている。
1月15日、自民党衆院議員の吉川元農林水産相が、大臣在任中に大手鶏卵生産会社の元代表から現金500万円の賄賂を受け取ったとして、東京地検特捜部に収賄の罪で在宅起訴された。また自民党の西川元農林水産相もまた同じ企業から現金を貰ったとして既に東京地検の事情聴取を受けているとのことだ。
1月21日には、河井案里参議院議員は一昨年前の選挙をめぐり公職選挙法違反の買収の罪で有罪判決が言い渡された。河井議員は現金を渡したのは買収ではなく、当選お祝い金とか陣中見舞金とか言っているようだが、そうであるならば国民に納得してもらえると思っているのか。
また、夫である河井克行元法務大臣も同様な犯罪で現在裁判中であるが、状況的には買収は明確であり、証拠もそろっているのに、こうも長引くのはどうしたことであろうか。河井氏は法務大臣を経験しているだけに法律には詳しいと見えて公選法違反の裁判で、6人の弁護人を解任したり、その内4人を再任したり等の手段で逃げ回り、ほとぼりの覚めるのを待っているかのようだ。
河井夫妻側には参院選前、自民党本部から選挙資金計1.5億円が提供されていた。野党は買収の原資になったのではないか、と追及しているが、資金の流れは不明のままだ。菅首相は自民党の総裁として、国民の信頼を得るために真実を解明すると一言あって然るべきであるが、菅首相自身もこれに関わっているのか、二階幹事長が怖いのかだんまりを決め込んでいる。
このような国民の不信を買う出来事の多発は今回が初めてでは無いが、安倍前首相が拍車をかけたことは間違いない。森友学園・加計学園問題から始まり、桜を見る会まで、その都度安倍氏は国民に丁寧に説明すると言いながら、国民の大半は今もって納得できないでいるが、菅首相は過去の話として頬被りでいる。
安倍前首相が強気でいられたのは官僚の人事権を握り、悪用したからだ。おまけに黒川前東京高検検事長を、検事総長に就任させようと画策までしていたのだ。黒川氏の賭けマージャンが発覚し、この話は無くなったが、もし黒川検事総長が実現していたならば、先述の国会議員の不祥事も闇に葬られていたかも知れないと勘繰ると、菅首相もこの件に一枚噛んでいたと推測したくなる。2021.01.30(犬賀 大好-674)