北朝鮮は新型コロナウイルスの国内での感染拡大を恐れ、外国人観光客の受け入れを先月22日から禁止、また28日には中国との貿易を全面的に停止する措置を取ったそうだ。コロナウイルス騒動以前から北朝鮮は各国の経済制裁によりかなり困窮していた筈であるが、自ら貿易を全面的に禁止するとは金正恩委員長も随分思い切った対策をせざるを得なかったのか、追い詰められている感である。
このウイルスの北朝鮮国内での現時点での発症状況は不明だが、農業の不振で飢餓に苦しむ人民は新型肺炎に対する抵抗・免疫力が弱く、誰かが発症すれば感染は急激に広がると思われる。そしてその犠牲者は1994年から96年の餓死者(300万人)を上回り、それは金王朝の存続を揺るがす事態になることを金正恩委員長も予想した苦渋の決断だったと伺われる。
世界中に新型コロナウイルスの感染拡大が続く中、北朝鮮は中国との往来を遮断する措置をとったためか、2月15日付けの党機関紙「労働新聞」は、北朝鮮では患者は全く発生していないと宣言したとのことだが、逆に単なる強がりだと勘繰りたくなる。
このコロナウイルスは、元々家畜や野生動物に寄生するウイルスが突然変異し人間に感染するようになったと推測されている。北朝鮮では食糧事情は悪く、野生動物を日常的に食していると推測され、発症者が全くいないとは到底信じられない。
この報道が本当であれば、鎖国は金委員長の大英断であるが、貿易の9割以上を中国に依存する北朝鮮経済にとっては経済的には大打撃であり、このままでは経済的に破綻するのではないかと他人事ながら心配になる。
また金正恩委員長も自ら新型コロナウイルスへの感染対策を指揮していると国営メディアが報じていることからして、国内感染者ゼロはまやかしで既に国内で蔓延していることを伺わせる。
そんな最中、朝鮮労働党国際部の金成男第1副部長が、今月初めに北京を訪問したそうだ。北朝鮮政権の内部情報筋によれば、金氏の使命は中国を説得し、国家間の密貿易を再開することだったという。
国家間の密貿易とは不思議な言葉だが、要は国連安全保障理事会の制裁決議で輸出入の禁じられた品目も含め、両国家が承知の上で取り引きしようということのようで、経済的な苦しさを推測させる。石炭の密貿易等北朝鮮が制裁破りを行っているのは周知の事実だが、この要求に対し中国側が色よい返事をしなかったと言われているが本当のところは不明だ。
一方アメリカ国務省は先日13日、新型コロナウイルスの発生に対する北朝鮮の脆弱性を深く懸念している旨の声明を発表した。アメリカ国務省がコロナウイルスの北朝鮮での感染状況をどう把握しているか不明であるが、北朝鮮が独自に国内での感染拡大を抑えることができるのか疑問を呈し、封じ込めのための国際的な援助や保健機関の活動にアメリカは強く協力する準備が出来ていると強調している。
WHOの発表では、北朝鮮に限らず、アフリカ諸国や中南米諸国でも発症が見られ始め、今後先進各国はこれらの国での対策に追われることと懸念する。東京五輪も風前の灯の感がする。2020.02.29(犬賀 大好-578)