安倍元首相が一人の男に銃殺された事件は、その後、警備や政治家と宗教の関係等に波紋を広げている。いづれも平穏な日本を象徴した事件であるが、宗教の恐ろしさを感じさせる事件でもある。
この事件を受け、二之湯国家公安委員長は12日の閣議後の記者会見で、当時の警察による警備・警護に問題があったとして、警察庁に検証するよう指示したようだ。事件当時、演説中の安倍元首相のそばでは、警視庁のSP1人を含む4人の警察官が警備にあたっていたが事件の発生を防げなかった。
現在の日本における発砲事件は暴力団の抗争に関わるくらいで、警備の警官ですらまさか演説会場で起こるとは思っていなかったであろう。想定していたとすれば刃物による殺傷であり、そうだとすれば殺傷までに時間がかかり、その間制止出来ると思っていたに違いない。銃まで含めた万全の対策となると、防弾ガラスの箱の中で演説してもらうしかない。
いくら警備を厳しくしたところで人間には気持ちの緩みがあり、今回の事件も平和な日本を象徴する事件であろう。抜本的な解決法は何故殺すに至ったかの背景を探るべきである。被告は母親が世界平和統一家庭連合(以後統一教会と記す)に入信し多額の寄付をしたため、家庭が崩壊し、恨みがあった、等と供述しているという。
安倍元首相が2021年9月、統一教会の友好団体のイベントに送ったビデオメッセージを見たことがきっかけだと供述している。当初元首相と旧統一教会との関係は全く無いとの報道が強かったが、統一教会と何らかの関係を認められる議員の多くが、安倍政権下で、大臣や副大臣、政務官などに起用されてきたことが明らかになってきた。
統一教会は神の理想とする世界をこの地上に具体的に創ることを目的としており、そのために一見宗教とは関係ない多数の関連企業、関連団体を有し、これらの機関を介し過去に様々なトラブルを引き起こしている。事件直後の統一教会の日本の責任者が1980年代の霊感商法等のトラブルは一切なくなったと発表したが、その後皆無ではないと修正し現在でも続いていることを認めた。
統一教会は宗教と政治の一体化を図る宗教団体であり、この為に政治家に諸々の手段で接近しようと日々努力している。政治家は関連団体の本当の目的が何かを調べることなく、寄付があれば喜んで受け取り、講演を頼まれれば簡単に引き受ける。その後統一教会の宣伝に利用されるにも拘わらず、政治家はどこ吹く風である。
先述の二之湯国家公安委員長は7月26日の閣議後会見で、2018年に統一教会の関連団体が開催した京都府のイベントで実行委員長を務めていたことを認めた。これも単に世間知らずの出来事であれば未だしも、統一教会と安倍元首相のとの関係を知った上での出来事であれば、国の根幹を揺るがす由々しき問題だ。
ついに統一教会は公安委員会にまで食い込んでいたのだ。個人の信仰の自由は憲法で保障されているが、公職となると別である。日本の政治にどこまで浸透しているか、調査すべきであろう。2022.70.30(犬賀 大好ー835)