日々雑感

最近よく寝るが、寝ると言っても熟睡しているわけではない。最近の趣味はその間頭に浮かぶことを文章にまとめることである。

科学技術立国を目指す日本は若手研究者を育てているか

2020年10月31日 09時54分44秒 | 日々雑感
 ノーベル賞は一昨年本庶佑さんが医学・生理学賞を、去年は吉野彰さんが化学賞を受賞し、3年連続で今年も日本人の受賞となるのか注目されていたが、日本からの今年の受賞者は残念ながら出なかった。

 資源の乏しい日本は昔から科学技術立国を目指している。ノーベル賞を輩出することだけがが科学技術のレベルの証では無いが、日本のレベルは様々な場面でその衰えが指摘されている。

 例えば大学院の博士課程の学生の数は、修士課程から進学する人の数がピーク時の2003年度から減り続け、昨年度はほぼ半分となっているそうだ。また、人口100万人当たりの博士号取得者の数も、欧米が増加傾向にあるのに対し、日本は2008年度から減少し、アメリカ、ドイツ、韓国の半分以下の水準にまで落ち込んでいるそうだ。

 更に、引用数が多い注目論文数で、日本の順位は2000年代初めから下がりだし、2016年は11位と後退しているそうだ。

 博士の数が多ければノーベル賞の取得者が増えると言う訳では無いが、物の本質を見極める人材の減少は科学技術のレベル低下に結びつくことはことは間違いないだろう。

 博士号取得者の数の減少に関して、博士号を取得しても将来の生活の糧に結びつかないことが問題だと指摘されている。

 ポストドクター(ポスドク)とは、大学院の博士課程を修了したあと、大学や研究機関で正規の職に就けず、任期付きの職に就いている研究員のことだが、任期制という雇用形態上、次に進む道を探しつつ研究を続けていかなければならない中途半端な状況に陥っている。

 ポスドクの主な就職先となる大学や研究機関のポストは増えず、民間企業も採用には消極的であり、このような状況で博士課程に進みたい人間はおいそれと現れないだろう。

 ポスドクの悪習を裏で支えているのが大学の独立法人化である。法人化の目的は大学に自主性が生まれるといった効果が期待されていたが、大学自ら収入を得ることも期待され、政府は運営費交付金を毎年減額している。大学の職員等の人件費に充当される運営費交付金の削減が大学運営を困難にし、任期付きのポスドクの増加を招き、若手研究者の意欲を削ぐ結果となった。

 一方企業側もポスドクの採用を渋る傾向がある。欧米諸国などでは博士号を取得すると企業などでの就職が優位になる側面があるのに、日本では例え採用しても処遇がほぼ変わらない傾向があるのだ。これは、企業の欲しがる技術を有する博士を大学側が生み出していないのが根本原因であろう。

 一般に、大学等で生み出される革新的な技術とそれを商品にするための企業の実用化技術が車の両輪のように必須であるが、大学と企業のミスマッチがあるのだ。

 日本学術会議は、推薦者の任用拒絶問題で揺れているが、日本の科学技術立国を支える若手研究者が育たない原因も是非取り上げて議論してもらいたいものだ。2020.10.31(犬賀 大好-648)

来年の東京五輪の標語は ”経済回復無くして世界平和無し”

2020年10月28日 09時03分33秒 | 日々雑感
 来年の東京五輪は人数制限された観客の下で挙行される模様だ。政府は10月23日、東京五輪・パラリンピック競技大会推進本部の会合を首相官邸で開いた。本部長を務める菅首相は東京大会について「人類が新型コロナウイルスに打ち勝った証しとして開催し、東日本大震災の被災地が復興を成し遂げた姿を世界に向けて発信する場にしたい」と表明したのだ。

 オリンピックは世界の人が集う平和の祭典の筈であるが、それはそれとして何としてでも実行することが肝心と言う訳だ。

 信念実行の人と言われる菅首相が言い出したからには、予定通り来年7~9月の実施に向けて関係大臣、関係官僚は一斉に走り出すだろう。ここで抵抗していたら、たちまち職を追われるのは目に見えているからだ。

 さて、人類が新型コロナウイルスに打ち勝った証しと言うからには、来年7月までにはコロナウイルスが世界的に終息しているとの期待であるが、ワクチンが世界的に使用可能となるのは2,3年先との専門家の意見である。しかも現時点で安全が保証されたワクチンは存在せず、年内にも完成すれば御の字だそうだ。

 コロナウイルス感染防止と経済の活性化の対策は相反しているが、菅首相が開催すべきだとする理由は経済問題である。エコノミストの間では、中止の場合日本経済が被る損失は数兆円に及ぶという見方が主流であり、日本経済は背に腹は代えられない状態なのだ。オリンピックは世界の平和が目的であるが、経済の再生無くして世界平和無しがキャッチフレーズとなろう。

 国内外で各種スポーツ競技の大会が各種の規制しながら再開しつつあるものの、五輪は206の国・地域から1万人を超す選手が参加する巨大イベントである。国際オリンピック委員会(IOC)と五輪に長年関わってきたローザンヌ大のシャプレ名誉教授は開催決定権を握るIOCの腹の内は、いずれにせよやると彼らは既に決めたと思う、と語ったそうだ。

 シャプレ氏は「東京大会は観客を減らして開催されると思う。半分か、もしくは3分の1か」と自身の見解を語った。受け入れる日本でコロナ感染が比較的落ち着いているため、IOCは選手団の出入国時、選手村など、競技会場でのPCR検査を徹底すればリスクを避けられると考えているのではないかと言う。

 大勢は東京五輪の開催の方向であるが残された問題は観客の扱いだ。どうやら従来通りの観客を満杯とする完全な形での開催は諦めているようで、最悪の場合無観客でも実施する覚悟のようだ。五輪に関わる政府関係者は、競技ごとにどこまで観客を減らすか、11月には議論することになると説明する。

 また、テレビ放映できることが重要で、観客はゼロでも問題ないと思う、と語っているようだが、オリンピックを商売と考えていることが如実に表現されている。日本でコロナの感染が再び拡大し、五輪に対する国内の関心は大きく低下している。東京五輪の販売済みチケットについて、大会組織委員会が希望者への払い戻しの受け付けをいよいよ開始するようだ。無観客の場合、経済損失は大きいだろうが、実施しないよりは少なくて済むとのことだろう。2020.10.28(犬賀 大好-647)

新型コロナウイルスに対するスウェーデンの”集団免疫”政策は大成功か

2020年10月24日 09時41分11秒 | 日々雑感
 欧州で新型コロナウイルスの感染が再び急拡大しているそうだ。世界保健機関(WHO)によると、10月17日にはフランス、ドイツ、イタリアなどで1日あたりの新規感染者数が過去最多を更新し、今年始めの第1波の3倍近くに達したようだ。フランスでは、新型コロナウイルスの感染が特に深刻なパリとその周辺都市9つの地域で、17日から少なくとも4週間、午後9時から午前6時までの外出が禁止されたとのことだ。 

 フランスに限らず、欧州各国では新型ウイルスの再感染が広がっている。感染の第1波を厳しい規制で乗り切ったかに見えたが、その後経済の落ち込みを懸念して各種の規制を緩めたことにより、再拡大していると言われている。

 一方、スウェーデン当局は”集団免疫”を達成しつつあるという見方を10月18日発表した。最近、若者を中心に陽性者数は増加傾向にあるものの、重症者数や死者数が低いレベルで落ち着いたままであることがその状況証拠になっているとの話だ。 

 スウェーデンの感染者は、10月13日、累積感染者数は10万654人に増えた。スウェーデンの人口は1035万人だからまだ全国民の10%程度の感染率だ。集団免疫の効果が現れるためには70%以上の感染者が必要になると言われていることからすると未だ不十分であるが、死亡者の減少が顕著とのことだ。

 スウェーデンの死者数は累計5899人(10月15日現在)で、ピークの4月には1日当り100人を超えた日も4回あったものの、8月はひと月で78人、9月は54人とかなり落ち着いており、9月下旬以降はゼロという日が目立っているのだそうだ。

 スウェーデンの死者数が最近減少していると言っても、これまでの6千人近い死者数は人口比で0.057%となり、アメリカの0.068%、イギリスの0.063%、フランスの0.048%、スペインの0.068%、と比べ似たような値だから、威張れたものでは無い。

 しかし、最近の死者数の激減を考えるとスェーデンの比率は今後他国に比べて下がって来るとの予測である。世界的なコロナ大流行に各国がロックダウン等の規制、すなわち強制的な封鎖や移動制限、飲食店への休業命令などを導入したのに対し、スウェーデンでは国民にできるだけ外出を控えるよう要請するという緩やかな対策を実施しただけであった。

 この対策のお蔭で経済の落ち込みが他国に比べ少なかったとなれば、スェーデンの集団感染の政策は大成功となろうが、まだコロナウイルスの流行が終息したわけではない。結論を出すのは終息後であろう。

 緩やかな規制の点では日本も同様であったが、大きく違ったのは学校を休校させなかった点である。スウェーデンでは子どもが教育を受ける権利が重視され、家庭環境に恵まれない子どもが登校できなくなることで起きる弊害が考慮され、高校や大学は遠隔授業になっても、保育園や小中学校は閉鎖されなかったそうだ。日本では一斉休校となったが、この効果はどうであったであろうか。

 さて日本のコロナウイルスによる死者数は1680人(10月20日)で、人口比率では0.001%と欧米諸国と比べ一桁低い。しかし東南アジアの国々との比較では決して低いとは言えず、日本のコロナ対策が大成功であったとの評価は時期尚早で、低い理由は謎として残っている。2020.10.24(犬賀 大好-646)

トランプ大統領のコロナウイルス感染と奇跡の回復

2020年10月21日 09時12分57秒 | 日々雑感
 米国トランプ大統領は10月2日に新型コロナウイルスに感染して首都ワシントン近郊の軍の病院に入院した。その二日後、トランプ大統領の容体について主治医は、熱は下がり、せきやけん怠感などの症状も改善していると発表した。

 他方で、大統領の容体に詳しい関係者は、過去24時間の健康に関する数値がとても懸念されるレベルだったとし、今後、48時間が重要だという認識を示した。これらの情報からすると、一時症状は随分悪くなっていたようだが、二日後には持ち直したようだ。

 厚労省の資料によると、感染後、80%程度の人が1週間位で軽症のまま治癒するが、20%程度の人は1週間~10日位で肺炎症状が悪化するようだが、トランプ大統領は肺炎症状が出ており20%の方に含まれると推測される。

 しかし、入院4日後の6日には軍の病院を退院しホワイトハウスにお戻り、治療を続けながら隔離された部屋で執務を行っていたとのことだ。退院と言っても、単に病院をホワイトハウスに移したに過ぎず、退院も名ばかりである。この時点で陰性になっていたかは不明であるが、11月の大統領選を控え、トランプ大統領の焦りは異常なほどで、何としてでも元気な姿を国民に見せたかったのだ。

 医師団によると、トランプ氏は様々な治療薬を服用していた。ステロイド系抗炎症剤「デキサメタゾン」、エボラ出血熱治療薬として開発された抗ウイルス薬「レムデシビル」、米製薬大手レジェネロンが開発中の抗体治療薬等が投与されたと言われている。

 このうち抗体治療薬はまだ実験段階にあるため未承認薬だそうだが、大統領がこの治療を受けたそうで一か八かの掛に出たのだ。優秀な医師団が常に付き添っていた安心感もあったのであろう。一般人には、ワクチンや治療薬は徹底した安全が確認され、承認されて初めて使用される。カリフォルニア大学医学部長の教授は、「トランプ氏はアメリカの大統領だ。全国民に行き渡らせられるという証拠がそろっていない段階であれ、大統領が最も強力な治療を受けるのはそう驚くことではない」と語ったそうだ。

 強力な治療とは恐らく先述の治療薬だけではなく、最新の診断装置や治療装置も含まれていたのだろう。それにしても、これまでの常識からでは考えられない、奇跡の回復と言っても良いだろう。

 退院後、大統領選に向けて追い込みの演説を繰り返しているが、どう見ても2週間前にコロナ感染した姿ではない。この元気な姿を国民に見せつけ、己の強靭な肉体と精神力を誇り、コロナ感染も驚くに値しないと胸を張っているが、強力な治療を誰でも受けられる訳ではない。トランプ大統領の特異な体質が影響したかも知れないが、金さえあれば無事回復出来ると言う可能性は金の力をまざまざと見せつけた。

 コロナウイルスは発症前からウイルスを周辺にばらまくとの話であり、ホワイトハウスの関係者に感染が広がっており、この行動には様々な批判が出ているようだが、相変わらずトランプ氏の支持率は40%以上だ。転んでもただでは起きず、演説ではワクチンを速やかに供給されるなどと強調し、再選を訴えている。この強気な姿勢が高い支持を保っているのだろうが、日本人としては信じられない。2020.10.21(犬賀 大好-645)

開発途上国でのコロナウイルス感染拡大を防止する為には

2020年10月17日 10時10分08秒 | 日々雑感
 米国ホプキンス大学の発表によれば新型コロナウイルスに感染が確認された人は、10月1日時点で、世界全体で約3400万人となったそうだが、まだその比率は0.44%程度だ。米国が第1位の744万人で、第2位はインドの623万人だそうだが、先進国の米国と開発途上国のインドがなぜ共に多いのか不思議だ。

 ニューデリーのインド医学研究評議会は9月29日、国内で新型コロナウイルスの抗体検査を実施した結果、これまでに感染した人は6300万人以上に及ぶ可能性があると発表した。もし本当だとすればインドの実際の感染者はホプキンス大学発表の約10倍になる。米国とインドは同じように感染者数が多いが、実は単に検査数の違いにあるようでインドの感染者数は途方もなく多いのだ。

 インドの抗体検査は全国700以上の村落や行政区に住む約3万人を対象に、8月中旬から9月中旬にかけて実施され、インド政府の最新の国勢調査を基に統計計算すると、感染者の累計は6400万人に達することになるようだ。

 発展途上国では医療体制が不備なためPCR検査が幅広く行われず、隠れ感染者が多いことは予想されるが想像以上だ。所で、ホプキンス大学の調査によると、アフリカ大陸全体の累積感染者数(9月26日時点)は145万人とのことだ。アフリカ諸国の多くはインド以上に医療設備が整っていないと思われるので10倍以上のすなわち1450万人以上の隠れ感染者がいるのではないかと推測する。

 10月6日、世界保健機関(WHO)の健康危機管理プログラム責任者は、WHO本部で開かれた執行理事会で、世界人口の10%が新型ウイルスに感染したとの推計を明らかにした。計算方法は分からないが世界の人口を約77億人とすると、7億人程度の人が感染したと思われ、ホプキンス大学の集計の約20倍となる。集団免疫を獲得するためには60~70%の感染者が必要と言われているので、感染拡大はまだまだ続くと思われる。

 WHOは過去24時間の新型コロナウイルスの新規感染者が9月13日、30.8万人に、10月9日には33.8万にとなり、過去最高になったと発表したが、感染が拡大していることを示している。

 さて、中国の累積感染者数は10月13日現在9.8万人である。3月の始めには約8万人であったことを考えると、不思議なことに僅かしか増えていない。中国の発表には細工が施されて居ると思われるが、10倍としても100万人程度で、それにしても少ない。この点で中国の感染症対策には学ぶべき点も多いと思われるが、その第1は徹底した検査である。

 中国の青島で新たに感染者が確認されたことを受けて、青島の地元当局は、10月12日、900万人余りの全市民を対象に5日以内にPCR検査を行うと発表しており、13日朝8時の時点で、すでに300万人余りの検査を済ませたとし発表している。中国では、7月に遼寧省大連や新疆ウイグル自治区のウルムチで感染者が見つかった際などにも大規模なPCR検査を行って、感染拡大を抑えたそうだ。

 これほど大規模な一斉検査をするためには、莫大な資金とマンパワー及び厳しい規制が必要と思われるが、開発途上国ではいずれも期待できない。このような状況の中、オリンピック開催と浮かれている場合で無いと思うが。2020.10.17(犬賀 大好-644)