日々雑感

最近よく寝るが、寝ると言っても熟睡しているわけではない。最近の趣味はその間頭に浮かぶことを文章にまとめることである。

現在の株高は日本企業の好調さを表しているのか

2024年02月28日 09時45分05秒 | 日々雑感
  2月22日、株価が史上最高値を更新したとマスコミは大騒ぎである。これで”失われた30年”の言いぐさは無くなったと喜ぶ経済専門家もいるが、これで儲かるのは証券会社関係者と眼端が利く投資家であろう。新NISAに踊ろされている人間にとっては、最高値を付けた株を買っても意味は余り無く、更に上がらなければ儲けはない。

 株の値段は企業の価値を裏付けるものであり、株価が下がった時に買って、上がった時に売るを繰り返し、その差額で儲けるのが投資家であろう。従って高値安定であれば、配当金を当てにするしかないが、それでも一般に銀行利子より高いのでお得感はある。

 しかし一般庶民は株を買う余裕もなく諸物価値上がりで、この騒ぎを指を咥えて冷ややかに見ているだけだ。岸田首相が就任当初言っていた公平な分配の考えは何処に行ったか。

 さて、22日時点の企業の値段を示す時価総額をみると、日本国内ではトヨタ自動車が57.4兆円で圧倒的首位に立ち、ソニーグループ、NTTやソフトバンクのIT企業、半導体製造装置や半導体基板の材料を扱う企業等、上位10社には製造業から通信まで幅広い業種が入っている。

 バブル期の1989年当時は全く様相が異なっていた。22.9兆円を付けたNTTをはじめ大手銀行が世界の上位5社を占め、しかも海外勢トップの米IBM等を上回っていた。現在の世界上位は、マイクロソフト等のIT企業やアマゾン等の米国企業が大半を占め、日本トップのトヨタ自動車は辛うじて35位である。このように世界の経済の牽引役はすっかり変わり、日本は取り残されている。

 さて現在の株価上昇は、・円安の影響で輸出産業を中心に企業の業績が好調だったこと、・中国経済の不況で海外の投資家が日本市場に集中したこと、・新NISAが今年1月からはじまり貯蓄から投資に回っていること、等が主な理由のようだ。日本の輸出産業は何と言っても自動車で、その筆頭はトヨタ自動車だが、その主力はガソリン自動車だ。世界は地球温暖化対策で電気自動車(EV)が世界の潮流になりつつあり、その力は永遠に続く訳ではない。

 日本の現在の株高は円安と自動車が支えていると言ってもよいだろうが、円安は日本の異次元金融緩和政策のお陰だ。日本銀行の内田副総裁が講演で「マイナス金利の解除後もどんどん利上げをしていくようなパス(経路)は考えにくく、緩和的な金融環境を維持していくことになると思う」との見解を示したことも株高の支えになったとのことだが、政府の意向である株高を支える為には金融緩和を持続せざるを得ないのだ。物価上昇の原因である金融緩和を止めたくても止められないのだ。

 また、自動車産業の未来も決して明るいものではない。株価の回復を契機に、日本企業が本格的に稼ぐ力を高めていくことが必要だ、と識者は主張するが、失われた30年の間に何もしなかった訳ではない。問題は何をなすべきかだ。2024.02.28(犬賀 大好ー987)

外国人が日本で働く魅力は何処にあるか

2024年02月24日 09時47分25秒 | 日々雑感
  現在日本は少子高齢化社会の真っただ中にあり、人手不足がいよいよ深刻な状況になってきたようだ。しかし、ハローワークの昨年11月の統計をみると、有効求人倍率は1.28倍であり、前月を0.02ポイント下回り、特に人手不足の兆しが見られない。ハローワークを介さない求人に関してはこの統計に含まれておらず、人手不足は、建設業、医療福祉、飲食業界、運送流通業界、IT業界で顕著となっているとの話だ。特に、流通業におけるドライバー不足は2024問題として予てより取り上げられているし、また、建設業における人手不足は能登被災地や大阪万博建設においても取り上げられている。

 日本の国内だけでは人手不足を補えない為、外国人労働者に頼らざるを得なくなっている現状のようだ。政府は、これまで単純労働の人手不足を技能実習制度で対応してきたが、その弊害も目立つようになってきたため、いくつかの改善を試みている。

 その一つは単純労働者を対象とした技能実習制度の育成就労制度への移行である。育成就労制度の法律化は今国会でなされる筈であったが、今国会は裏金問題で大騒ぎでありそれどころではなく、成立はもっと遅くなりそうだ。この制度においては、基本的に3年で一定の専門性や技能を持つまでに育成し、専門の知識が求められる特定技能制度へと移行させる。また、これまで原則できなかった「転籍」は、1年以上働いたうえで、一定の技能と日本語の能力があれば同じ分野に限り認めることにする予定とのことだ。

 技能実習制度と一体であった特定技能制度は引き続き存続し、日本への永住につながる「2号」の対象は現在、建設業の他、農業、漁業、飲食料品製造、外食等、11分野に広げる予定のようだ。いよいよ日本の人手不足が本格化し、外国人労働者に頼らざるを得なくなり、外国人にとって魅力ある職場作りに変質させる必要に迫られてきているのだ。

 特定技能制度1号では家族同伴は許されなかったが、2号では許される為、近年異常な円安で日本で働く価値が低下したとは言え、安心・安全な生活が送れる日本への希望が増加することに期待が込められている。

 日本で働くための資格制度は「出入国管理及び難民認定法」に定められており、在留資格の種類は29種類もあり、それぞれ人材獲得の為の工夫をしている。しかしかって程の日本の魅力は無くなり、日本への永住権の魅力も低下しているようだ。日本の魅力は安心・安全な生活が送れることだと思うが、最近金銭的な面がその魅力を半減させているようだ。

 アメリカの転職情報サイト「levels fyi」の報酬レポート「Pay Report 2022」では、ソフトウエアエンジニアの年間報酬の中央値が、世界の主要都市別に示されている。それによると、サンフランシスコは23.4万ドル。1ドル=140円換算で約3200万円。これが東京だと6.9万ドルに過ぎない。シンガポールでも9.0万ドル、香港でも8.5万ドル、上海でも8.6万ドルと東京より高い。日本の報酬は、中国・上海より低いのだ。

 これは一例に過ぎないが、海外に出稼ぎに行く若者が増えているとの話を聴くと、日本の金銭的な魅力はどんどん減っていると実感する。
2024.02.24(犬賀 大好ー986)


異常は気象だけで経済の世界ではあって欲しくはないが

2024年02月21日 17時54分29秒 | 日々雑感
  バブル崩壊後の失われた30年とは、日本が先進諸国に比べて、経済発展が乏しかったことを指す。例えば、アメリカの株価がこの30年で9倍になり、ドイツの株価もざっと7.4倍になっているが、日本では今年2月下旬に株価がバブル期の最高額を越えそうと騒がれておるのを見れば、辛うじて2倍位となっているのであろう。

 日本も海外の経済の発展を指を加えて見ていた訳ではない。安倍首相と黒田日銀総裁は、景気回復のためアベノミクスと称する異次元金融緩和を実施した。日銀が市中の国債を買い集め、資金を市中にばらまき、その金で投資を促し、景気を回復させる筈であった。

 2012年からスタートしたアベノミクスでは、日銀が政府発行の国債を直接買い上げる財政ファイナンスと呼ばれる政策を展開してきた。財政ファイナンスは戦後のハイパーインフレの原因となったことから、法律上禁止されているが、時の政府の承認があれば許される。幸いなことに、現時点ではハイパーインフレは生じていないが、諸物価の上昇が生じており、これでデフレ脱却と喜ぶエコノミストもいる。アベノミクスを主導した黒田日銀総裁に代わった新しい総裁も賃金上昇を伴わない物価上昇はデフレ脱却ではないと金融緩和の続行を主張している。

 さて、異次元金融緩和で現金を手にした企業は新しい投資先を見つける努力より、自分の企業の守りに徹した。ここ10年ほど、日本の資本金10億円以上の企業は売上額がほとんど変わっていないそうだ。内訳を見ると売上原価が下がって利益が増えているのだ。つまりコストカット型になっているのだ。本来なら、経済回復に向けて新しいことに挑戦していかなければいけなかった時期に、日本全体が、特に国内においてコストカットの方向に進んでしまったのだ。国債の売却で得た金は内部留保となり、企業は体質改善しないまま低金利政策の恩恵にどっぷり浸かった。

 世界の企業は新しいことに挑戦しどんどん変革していったが、日本企業は守りに徹し、結果として、「失われた20年、30年」となっているのであろう。日銀新総裁の下、緩和政策が続行されるとのことで、企業は一安心と言ったところで、低金利政策にすっかり馴染んで、変革などの冒険を敢えてしそうにない。これでは失われた40年、50年となる恐れがある。

 企業は充分な資金を蓄え、自民党の政治資金パーティ等に注ぎ込む余裕がある。自民党も業界から資金を簡単に調達出来るため異次元金融緩和を止めようとしない。現在の異常な円安状態、実経済とはかけ離れた異常株高、賃上げに伴わない異常物価上昇等、アベノミクスの異常な低金利政策の結果であろう。
2月20日、日本は2月と言うのに、20度以上の高温が全国各地に見られた。異常な状態は経済の世界ばかりでなく、天気の世界にも押し寄せている。現在の異常な株高はバブルの再来と騒がれているが、天気の世界のように急落とならなければ良いが。2024.02.21(犬賀 大好ー985)

株価の異常高騰と失われた30年の関係は

2024年02月17日 10時25分22秒 | 日々雑感
 日経平均株価が先日、3.8万円台をつけ史上最高値(3.8915万円)に迫り、バブルの再来とマスコミを賑わしている。かってバブルと称され日本中が株価と地価の高騰に沸いたのは、1986年のことだった。日経平均株価は85年から89年末までに約3.3倍、東京、大阪、名古屋など6大都市の商業地の地価は、ほぼ同期間に4倍に急騰した。不動産会社は金にまかせて欧米の有名ビルまで買いあさった。メーカーさえも本業を忘れ、資金を借りてまでして財テクに血道を上げた。しかし、その狂乱も長続きせず、1991年から1993年頃、バブルは崩壊し、失われた30年が始まり、今日に至っている。

 今回のバブルでは、今現在土地価格の高騰は路線価格を見る限り見られない。土地価格の高騰と言えば、北海道では世界的なスノーリゾートである倶知安町やニセコ町といったニセコ地域の2023年の基準地価が、バブル期の1990年の価格を大きく上回っていることぐらいだ。背景には外資系企業による開発があるが、日本人は余り踊っていないようだ。

 今回のバブルで特徴的なのは、株価の高騰である。今年、2月中にはバブル期の最高値を更新するのでないかと経済素人でも感ずる。株高の背景には、好調な企業業績、賃上げ、新NISA(少額投資非課税制度)が上げられているが、ピンと来ない。また、日銀の内田副総裁が「マイナス金利の解除後もどんどん利上げをしていくようなパスは考えにくく、緩和的な金融環境を維持していくことになると思う」との見解を示したことの方が、影響が大きいと感ずる。現在の企業が好調な原因は日銀の金融緩和策が影響していると思うからである。

 また、株式相場の活況を見越した海外投資家が日本株を大きく買い越しからだとの報道もある。一方、日本の個人投資家は海外株を買う傾向が強いそうだが、これも日本人は日本企業の将来に余り期待していないからではないだろうか。

 諸物価値上げで庶民感覚では既にインフレ状態だと感じているが、今年の春闘で去年を上回る大幅な賃上げが実現して、賃金と物価の好循環が生まれ、日本が長く続いたデフレから脱却出来るとの識者の声もあるが、どこか庶民感覚とずれている。

 一方、中国市場は不動産不況で株安が続いているようだ。景気の先行き不安を背景に、上海市場や深セン市場は今年に入り急落しているようで、特にこれに反応しているのが海外の投資家で、積極的に日本株を買っていることも、日本の株価の急騰の一因であろう。

 現在のバブル状態は1980年代のバブルとは原因が異なるが、実体経済とかけ離れていり点では同じである。先のバブルの崩壊は日銀の金融政策の失敗が原因だったとの指摘もあるが、先の内田副総裁の金融緩和策の続行はこの反省を踏まえているのだろうか。また失われた30年の反省を踏まえているのだろうか。2024.02.17(犬賀 大好ー984)


日本人若者の海外出稼ぎの理由は高賃金だけではない

2024年02月14日 15時40分20秒 | 日々雑感
 現在日本は労働者不足が問題となっているが、世界の先進国でも同様な問題が起こっているようだ。ドイツの多くの分野の企業は必要な労働者の確保が困難であり、状況は益々悪化しているそうだ。国の輸出市場の大きな推進力の一つであるドイツの機械産業を見てみても人手不足は同じ状況で、ドイツ機械工業連盟もこの分野の企業の70%以上が深刻な人手不足に苦しんでいるとのことだ。

 そうした状況に直面して、ドイツ政府は移民が解決策の一つであると考え、2022年7月、移民制度を改革して熟練労働者にとってより魅力的な国づくりを目指す方針を明らかにした。同国は労働者不足などによるインフレ高進に直面しているが、熟練労働者は他の富裕国に流れる傾向が見られ、米国やカナダ、オーストラリアのような国と争奪戦を演じているのだそうだ。

 しかし、昨年3月、経済協力開発機構(OECD)の調査によると、ドイツは海外からの熟練労働者誘致で加盟国中15位に後退したとのことだ。2019年に実施された前回調査ではドイツは12位だった。OECDは、ドイツの経済状況は悪化していないものの、他国は熟練労働者の状況改善に向け対策を講じていることで差がついたと分析している。好条件の国として上位を占めたのはニュージーランド、スウェーデン、スイス、オーストラリアだそうだ。

 これらの国における海外労働者の獲得条件の違いは定かでないが、ニュージーランドにおける外国人の在留には、目的や滞在期間により、就労ビザ、学生ビザ、訪問者ビザ、居住ビザなどの様々な形態があり、入国やビザ申請の条件は頻繁に変更されているそうで、各国の競争の激しさを一端を表しているのだろう。

 日本は移民を認めていないが、技能実習制度等の様々な改革を試み、在留期間が無期限になる事実上の永住権制度も設け、移住者を呼び込もうとしているが、海外の高度人材からは見向きもされていないようだ。

 それどころか、最近日本の若者に海外出稼ぎの傾向があるのだそうだ。記録的な円安や長年上昇しない賃金の問題を背景に、日本を出て海外で働いてお金を稼ぐ若者が増えているそうだ。世界各国が経済成長にともなって賃金が上がっていく中、日本は過去30年間で実質賃金の伸び率が0.1%とほとんど増えていないのが大きな原因であろう。しかし、彼らの声を聞いてみると、その理由はお金だけで無いのだそうだ。年功序列や、性別による格差、長時間労働など、日本の労働環境そのものに対するあきらめや不満も背景にあるようだ。

 日本は様々な改革により海外労働者を呼び込もうとしているが、移民制度がある国との競争は極めて困難であり、それどころか逆に日本の若者が海外に出ていく有様だ。現在国会は裏金問題でコップの中の嵐を演じているが、この議員の先見性の無さも若者が日本を見放す一因であろう。
2024.02.14(犬賀 大好ー983)