日々雑感

最近よく寝るが、寝ると言っても熟睡しているわけではない。最近の趣味はその間頭に浮かぶことを文章にまとめることである。

突然の衆院解散宣言は国民を馬鹿にしている

2017年09月30日 09時29分31秒 | 日々雑感
 安倍首相の突然の衆議院解散宣言には驚いたが、秋の臨時国会で森友、加計学園問題の追及で窮地に陥ると判断したのであろうが、直感であった。

 2012年9月に総裁に返り咲いた安倍晋三首相は、来年9月に2期目が満了する。来年の総裁選に勝利すれば、21年9月までの長期政権となり、念願の憲法改正に腰を据えて取り組みやすくなる。そこで、来春にでも消費増税10%化の再三延長を掲げ、内閣総辞職し、総選挙を実施し、圧倒的多数の勝利を経て、三期目の総裁に無事就任できるとの安倍首相の腹積もりを予想していたが、全くの的外れであった。

 突然解散の背景には、森友・加計学園問題隠しの他、最近の内閣支持率の上昇と最大野党民主党混乱に乗ずる好環境、小池都知事の新党設立の動き封じ、を判断したとのことであるが、そこには解散の大義名分は見当たらず、保身解散であることは明らかであり、余りにも国民を馬鹿にした解散である。

 安倍首相の良いところははっきりと物を言うこと位であるが、その代わり、約束を簡単に反故にすることや日本語の使い方のいい加減さがより目に付く。例えば、政権が民主党から自民党に交代する際の三党合意は簡単に反故にされたことがある。

 また、先日の解散宣言でも、森友・加計学園問題では国会閉会中に拘わらず審議を行い、丁寧に説明してきたと臆面もなく言い切った。より疑惑がはっきりしただけなのに、丁寧な説明は終了とのことだ。責任追及などどこ吹く風で、日本語で表現される丁寧の使い方が根本から間違っているのに反省は微塵にもない。

 国連の場でも、”北朝鮮に全ての核、弾道ミサイル計画を、完全な、検証可能な、かつ、不可逆的な方法で、放棄させなくてはなりません。そのため必要なのは、対話ではない、圧力なのです”、と言い切った。完全にトランプ大統領の尻馬に乗てしまい、北朝鮮から見れば、同じ穴の貉になってしまった。

 金正恩とトランプ氏の子供じみたののしり合いは、今にでも戦争が起きそうな雰囲気であり、安倍首相も、いつ日本にとばっちりが来るか分からないと、不安を煽っている。今回の総選挙も国難突破解散と理由づけ、今進める北朝鮮政策の是非を問うとのことであるが、これまでも公明党と連合を組み圧倒的多数の力を背景に国会を強硬運営してきた。今更是非を問うとは片腹痛い。

 不安を煽る背景には憲法改正の思惑がある。憲法改正案、9条1、2項はそのまま残し3項に自衛隊を明記する、また緊急事態条項を追加する等が当面の目標であるが、更にその先には戦争放棄を明記した1、2項の修正や自衛隊の海外派兵等、があると予想される。

 また、自民党の選挙公約には2019年10月に予定される消費税10%化の目的変更や、アベノミクス総仕上げがあるとのことである。実際の増税にはまだ2年と余裕があるが、使途変更を言い出した前原民進党代表に先を越され、慌てて言い出したきらいがある。更に、小池都知事が党首となる希望の党が消費増税凍結を言い出したのには、とっておきの切り札を先に出され、してやられた思いであろう。

 国難突破解散と自ら命名したが、国難は北朝鮮よりもっと身近にいくらでもある。一兆円を超す国の借金を抱え、2020年財政健全化目標は延期、原発ごみの処分地も決まらないのに再稼働、核燃料サイクルの破綻と蓄積されたプルトニウムの処分等の問題を抱える原子力行政、先送りされる東電福島第1原発事故の後始末、選挙区の抜本的見直し、森友、加計学園の責任追及、安倍のミクスの負の遺産、特に出口の見えない異次元緩和、等こそ将来に問題を残す国難だ。2017.09.30(犬賀 大好-377)

中国にとっての北朝鮮?

2017年09月27日 09時02分43秒 | 日々雑感
 米国は、これまで北朝鮮に対し”非核化を目指し核保有国として容認しない” の基本方針で、経済的、軍事的圧力強化を進めてきた。しかし、金正恩委員長は一向に堪える様子は無く、北朝鮮の軍事技術は着実に進歩しているようだ。

 金正恩は、軍備増強を背景に米国と対等の立場で交渉を迫る腹づもりのようだ。まず核保有国としての認知、経済制裁の解除、次には在韓米軍の縮小、撤退、更に朝鮮半島の統一が大きな目的とのことだ。また、歴史的に有史以来兄貴面してきた中国からの独立も夢であろう。

 北朝鮮が核保有したとしても、米国との軍事力の差は歴然としており、米国と同じ土俵で交渉可能か極めて疑問であるが、金正恩は核の力を過大に信じているのであろう。

 さて、北朝鮮の夢である核保有国としての国際的認知がなされた場合、北朝鮮は最初にどう出るであろうか。米国を始めとする世界各国の経済制裁は続くであろうが、まず中国や韓国に対し経済協力の要求を強めるだろう。

 現在閉鎖されている開城工業団地は、北朝鮮南部、韓国との軍事境界線付近にある経済特別区であり、北朝鮮が土地・労働力、韓国が資金・技術力を提供していた。繊維・機械・金属・電子部品など百数十社が操業し、北朝鮮の主要な収入源となっていたそうだ。まずこの工業団地の再開を要求するであろう。韓国も自国に利するところがある為、容易に応ずるに違いない。

 また、中国と北朝鮮の国境付近の中国領では、北朝鮮労働者が多く働いており、こちらも北朝鮮の収入源のようだ。安保理の制裁では新規雇用は禁止とされており、実際に効いているのかどうか分からないが、解除の要求は当然なされるであろう。中国にとっても朝鮮族の多い地域での安定のためには容認するであろう。

 だが、核保有の認知問題以前に、北朝鮮の核の脅威に直面している韓国で、核武装論が頭をもたげているそうだ。

 保守系最大野党の自由韓国党の洪準杓代表も9日の集会で、「戦術核兵器を再配備してくれるよう米国を説得する。それでも再配備をしないというなら、生き残るために独自で核開発を行わなければならない」と述べたそうだ。

 韓国の世論調査会社が13日、実施した調査によると、「核兵器の独自開発、または(在韓米軍の)戦術核兵器導入」について、賛成するとの回答が過半数(53.5%)を占めたそうだ。また、明確な反対は35.1%にとどまり、容認する空気が強くなっているようだ。

 これに対し、北朝鮮との対話を重視する文在寅大統領は戦術核の再配備と独自核開発のいずれにも反対しており、当面、これらが韓国で政策化されることは無いとのことだ。しかし、文氏の当初の北朝鮮との対話路線は金正恩からも無視されており、リーダシップがどこまで発揮されるか分からない。

 仮に韓国世論の100%が賛成したとしても、独自核開発を実現するのは経費的に不可能に近いほどに難しい、と識者は主張するが、貧乏国の北朝鮮でも実現したようだし、北朝鮮による朝鮮半島統一とでもなれば、話は違ってくるだろう。

 これまで、北朝鮮は中国にとって資本主義社会との緩衝地帯として役立ってきたとのことであるが、今や中国と米国の経済的な依存関係は大きくなり、当然北朝鮮との関係も変化していくだろう。中国にとって北朝鮮はこれまで血の同盟と固い絆で結ばれていたと言われているが、実態は中国の属国扱いで、言うがままに従う便利な国であったであろう。

 北朝鮮が核保有国となれば、これまで通り右向け右では済ませられないだろう。また、韓国も強いては日本も核保有に進むかもしれない。その場合、中国の戦略も大きく変わらざるを得ないであろうが、当面の脅威は、核保有国としての存在より、崩壊時の難民問題であろう。2017.09.27(犬賀 大好-376)

異次元金融緩和は止めるに止められない

2017年09月23日 11時24分50秒 | 日々雑感
 安倍首相の突然の解散宣言には驚いた。自民党の選挙公約の素案に上げられた項目の一つにアベノミクスの総仕上げがあるようだ。アベノミクスの一番の目玉は異次元緩和であろう。

 政府と日銀の異次元緩和の目的は景気好循環の実現であった。銀行の保有する国債を日銀が買い取り、市場に現金を大量に流通させ、企業活動を活発化させ、従業員の所得を増やし、消費を増やし、更に企業活動を活発化させる、との筋書きであった。

 その好循環を表す指標が物価上昇率であるとして、物価上昇率2%を目標に進めてきた。消費が増えれば、供給より需要が増し、諸物価が値上がりする筈であるとの読みである。また、同時に国の借金1000兆円越を懸念し、財政健全化を約束した政府と日銀の共同声明は4年半たっても実現できていない。物価上昇率2%の達成時期は何度か先延ばしにされ、2020年目標の財政健全化も先延ばしされた。

 また、ちょうど1年前、物価2%の実現のためには大胆な変更が必要だと判断し、緩和の枠組みをこれまでの量重視から金利重視へと大きくかじを切った。日銀は利回りを指定して国債を買い入れる新たな国債買い入れに乗りだし、10年物国債利回りを0%程度に誘導する政策を採用したのだ。

 また、株価指数連動型上場投資信託(ETF)の年間買い入れペースを、6兆円とほぼ倍増させることを決めた。2017年3月末時点で、日銀のETF保有額は1年前と比べて1.8倍の約16兆円に達した。現在、「量」、「質」、「金利」の3次元で金融緩和を驀進させている。

 この異次元緩和のお蔭で、失業率や有効求人倍率はバブル期以来の水準になり、企業は潤い、税収が増えたと評価する経済学者やエコニミストは結構いる。しかし、問題は負の遺産、すなわち緩和政策の副作用だ。これらの問題が何事も無く解消されれば、異次元緩和は成功であったと始めて評価されるべきである。

 さて、一方では日銀の異次元緩和等の副作用の懸念が次第に大きくなってきているようだ。日銀が銀行から買い取った国債などの資産が巨額になり、将来の金利上昇局面で日銀の財務が悪化する可能性や、ETFを買うことによる株式市場のゆがみである。

 日銀が国債を買えなくなる限界に達すると流動性が極度に下がり、少しの売り買いで金利が乱高下する局面になるのだそうだ。そうなると為替や株に打撃を与え、金融市場の大混乱を引き起こす恐れがあるそうだ。このあたりの経済の因果関係はよく理解できないが、今でも民間銀行の国際保有率が低下し、国債市場は閑古鳥が鳴いていると聞けば、恐ろしいことが待ち受けている感もする。

 しかし、今金融緩和を止めると、それはそれで恐ろしいことになりそうである。某エコノミストは物価上昇率が未達だからと言って緩和を弱めると金利上昇となり、経済は悪化すると予想する。日銀が民間銀行に払う利息が増え赤字となる心配、更に国の財政が悪化するとのことである。

 そこで、緩和策を更に続ければ、賃金上昇が加速し、物価上昇は必ず起こる、と主張する。名目GDPを2020年までに600兆円とすることを政府と日銀の共同目標にすべきと主張する。これほどの金融緩和をしており、2000年~2016年度の名目GDPは、500兆円~540兆円の間、これを600兆円するとまだ夢を見ているのだ。

 市場に必要以上のお金を流通させるのは物の価値を相対的に下げることであり、当然インフレ基調となる。これまで物価上昇率2%が達成できなかったのは、高齢化と人口減による消費の減少、流通革命による経済の効率化、企業の内部留保の増大等、様々な要因があったが、それらはいずれ限界が訪れ、物価上昇率2%は達成されるであろうが、膨大な負の遺産は残る。

 異次元緩和は麻薬と同じだ。麻薬に酔いしれている人は大勢いる。麻薬の効き目が悪くなるとより一層効果の高い麻薬に手を出し、ますます麻薬から抜け出せなくなる。麻薬から抜け出すのは容易でない。2017.09.23(犬賀 大好-375)

北朝鮮の核保懸念に便乗する安倍政権

2017年09月20日 09時10分55秒 | 日々雑感
 北朝鮮は、8月29日と9月15日には日本を飛び越えるミサイル実験、9月 3日には核実験を行った。この核実験は水爆実験と思われ、ついにレッドラインを超えたと懸念されたが、米軍は軍事行動を起こさなかった。

 米軍の考えるレッドラインは核実験か、大陸間弾道弾(ICBM)の発射実験のどちらかであると思っていたが、どちらでもなかった。それでは北朝鮮が米国かその同盟国のいづれかへ攻撃を仕掛けた場合がレッドラインとなろうか。

 金正恩委員長もレッドラインは何処にあるかを探るため、各種実験を小出しにして米国の反応を見ているのではないかと識者は解説する。恐らくトランプ大統領の考えるレッドラインも確定されたものではなく、各国の反応を見ながら日々変化しているのであろう。軍事行動を起こすためには各国の協力が必要であり、米国単独ではイラクの二の舞になるからである。

 金正恩の暴走に対して国連の安全保障理事会は緊急会議を開き、先日11日に制裁を決めた。米国原案の制裁案には原油輸出全面禁止等の厳しい項目があったが、全面禁止に関しては中国とロシアの反対で現状維持と軟化した。素人目にはこれまでと何ら変わらず、何のための安保理かとがっかりしたが、どうもそうでもないらしい。

 北朝鮮からの繊維製品輸出の禁止、国外への新たな労働者派遣の禁止が加わり、外貨収入源のほとんどが断たれ、これから絶大な効果を発揮する、との評価もある。またそれにも増して、異例の速さで、全会一致で制裁を決めたことに価値があるのだそうだ。特に中国の意思決定は通常時間がかかるが、今回は異例の早さだったそうで、中国の本気度が分かったとのことである。

 しかし、この制裁の直後15日に、北朝鮮は2回目の日本を飛び越えるミサイル発射実験を行った。安保理制裁に抗議する発射実験であるとの解説もあるが、制裁のある無しに拘わらず当初からの予定行動だと感ずる。なにしろ金正恩は核・ミサイル技術の確立し、核保有国としての国際的認知を急いでいるのだ。

 さて、15日の2回目の発射実験を受けて、安保理は「強く非難する」との報道声明を発表したが、それは負け犬の遠吠えの感もする。北朝鮮の戦略は一貫しており、例え米国の主張する原油全面輸出禁止をするにしても、中国の心配する北朝鮮崩壊へとつながらないのではなかろうか。

 日本でも、随分前から拉致問題関係で北朝鮮に数々の制裁を科している。政府は問題が起こるたびに新たな制裁を加えると表明しているが、まだ制裁の余地が残っていたかといつも感ずる。しかし、日本の制裁は形式的であり、国内法の整備が不十分で実効性のある制裁措置が取れないのだそうだ。

 同様に、中国中央政府が例え全面禁止と宣言しても、中国の税関は実務に不慣れ、制裁に穴だらけとのことだ。また、北朝鮮と北で接する中国地区には朝鮮族が多く住み、違法な取引が日常的に行われているとのことである。

 我々は、中国では共産党独裁体制で中央政府の威光が隅々まで行き渡っていると感ずるが、逆に行き渡っていないからこそ共産党独裁に固執しているということかも知れない。兎も角、中国13億の民はまとまっているようであり、まとまっていないのが現実だ。

 米国では、軍事的圧力の行き詰まりから、核保有を容認せざるを得ないとの意見も出始めているようだ。しかし北朝鮮の核保有国認知は、韓国への米軍の核兵器配置へと進み、更に韓国、日本の核保有とつながる恐れがあり大問題だが、解決の糸口は見いだせない。

 安倍首相は、28日召集予定の臨時国会の冒頭にも衆院を解散する意向を固めたとの報道があった。北朝鮮情勢などを踏まえて、現在の安全保障体制の是非を選挙の焦点にする予定とのことであるが、憲法改正の必要性を前面に出すのであろうか。

 最大野党の民進党は、大量離党の大混乱に加えて、憲法改正まで含めた安全保障体制の党内統一まで出来る筈はなく、右往左往していることだろう。もし選挙が行なわれたならば、北朝鮮より先に崩壊へと進むと思われる。

 安倍首相は最近の内閣支持率の上昇に意を強くしているとのことであるが、今回の冒頭解散は加計学園問題隠しであり、敵の弱みに乗ずる保身解散であることは明らかであり、余りにも国民を馬鹿にした解散で、内閣支持率は急降下すると予想する。2017.09.20(犬賀 大好-374)

消費増税10%化は再三延期か

2017年09月16日 09時30分28秒 | 日々雑感
 昨年6月、安倍首相は消費税率10%化を2019年10月にまで延期すると表明した。これは2度目の延期であるため、2019年には確実に実行されると思っていた。しかし、一方では2度あることは3度あると冗談話をしていたら、冗談が本当になりそうだ。

 2017年4~6月期国内総生産(GDP)速報値の公表を受け、主要シンクタンク8社は18年度の実質GDP成長率予測を公表したが、このうち野村総合研究所と明治安田生命保険の2社は消費税増税を織り込まなかったのだそうだ。安倍晋三首相が悲願の憲法改正を実現するために、内閣支持率を落とす不人気な政策を打ちたくなく、三度見送るのではないかとの見方が市場で出始めたとのことである。

 ”消費税率を上げられない経済的な理由は、今何もないのだが…”と、ある政府関係者は語っているそうだ。素人目にもその通りだ。世間一般には認知されていないが、今現在アベノミクス景気と称される好景気であるそうだ。(筆者ブログ、アベノミクス景気は格差社会の現れ、本年6/28)。今上げないで、いつ上げる機会があるのだろうかと思う。あくまでも物価上昇率2%の達成を待つというのであろうか。

 2012年9月に総裁に返り咲いた安倍晋三首相は、15年9月に再選され、18年9月に2期目が満了する。党則改正を経て次期総裁選に勝利すれば、21年9月までの長期政権が視野に入る。憲法改正や外交課題に腰を据えて取り組みやすくなる。

 折りしも、北朝鮮の金正恩の暴走が止まらない。国内政治では不評の安倍政権も外交問題では好評なのか内閣支持率は持ち直しているようである。民進党の混乱に乗じて、今秋に総選挙実施の可能性が高まっているようで、そうなると消費税10%化の3度目の延期も言い出すに決まっている。

 2018年9月の総裁選に安倍首相が再選されるか分からないが、次期総裁の有力候補である岸田文雄政調会長と石破茂元幹事長はいづれも10%化に賛成だ。

 岸田氏は、社会保障の持続可能性や財政健全化は待ったなしの課題と指摘している。こうした観点に加え、2020年度の基礎的財政収支(PB)黒字化目標も見据え、消費税率の引き上げは確実に行うべきと語った。また、石破氏も今度も先送りするなら社会保障の具体像を示さなくてはならないと、延期には反対だ。最大野党の民進党前原代表も、来年10月に予定されている消費税率の引き上げに積極的だそうだ。次期自民党総裁に岸田氏、あるいは石破氏が就任した場合、これまでの主張を貫けるであろうか。

 消費税の10%化には紆余曲折があった。2010年6月に民主党の菅直人氏は総理大臣に就任し、同年7月に突然消費税増税を掲げ参議院選に臨み、見事敗退した。当時、ギリシャの財政危機が世間を騒がしており、危機の要因に税金の低さが指摘されていたため、菅氏はギリシャ危機のようなことにならないように消費税を増税するという判断したのであろう。

 2012年6月には、民主、自民、公明3党は、社会保障と税の一体改革関連法案をめぐり、当時5%の消費税率を2014年4月に8%、15年10月に10%に引き上げる法案は三党合意となった。

 2012年12月、自民党が政権復帰し、安倍晋三首相が誕生し、2014年12月、安倍総理は消費税率の10%への引き上げを2015年10月から2017年4月に予定変更した。

 2015年の党首討論で、2017年4月の消費増税について、引き上げを先送りせざるを得ない状況だ、と民主党の岡田克也代表まで言い出した。増税延期を検討する安倍晋三首相より先に主張することで、夏の参院選に向けた論戦の主導権を握りたい考えであったが、安倍首相もこれ幸いと再延期を正式決定していたため、結果は民主党の惨敗であった。

 消費税10%化の1度目の延期、2度目の再延期、そして予想される3度目の再三延期もすべて選挙絡みである。消費税に限らず、所得税、相続税等、何でも増税は評判が悪く、強く主張すれば選挙では負ける覚悟がいる。増税を言い出さなければ選挙では勝つと、国民はすっかり馬鹿にされている。増税は無いに越したことはないが、問題先送りでは困る。2017.09.16(犬賀 大好-373)