英国ジョンソン首相は12月19日、感染力が従来のものより最大で1.7倍強いとみられる変異種の新型コロナウイルスが広がっているとして、首都ロンドン等にロックダウンを再導入することを発表した。しかも、この変異種よりも更に感染力が強い新型コロナウイルスの変異種が新たに見つかったと、英保健相が12月23日に発表した。
これに先立ち12月8日、英国で製薬企業ファイザー・バイオンテックが開発した新型コロナウイルスに対するワクチンが接種され始めた。臨床試験終了後のワクチンとしての接種は世界で初めてである。英国は既に40万人分のワクチンを手元に用意しており、まずは80歳以上の人々、介護機関従事者、高リスクに晒されている医療機関の従事者から接種をはじめ、今月末までに400万人に接種することを目標にしているようだ。
ジョンソン首相は12月19日の会見でワクチンが新たな変異種に対して効果が低いことを示唆する証拠はないとの認識を示したが、認識が正しいことを期待する。米国で開発されワクチンを英国ではいち早く承認し、既に何万人の人が接種したようであるが、変異種には効果が無いと分かると大騒動になるであろうから、政治的な配慮が働いていると疑いたくなるが、そうでないことを信じたい。
世界に先駆けて英国で変異種が見つかるのは、英国がウイルスの遺伝情報の解析を大規模に実施しているからだそうで、変異種の発生は英国のみならず他の国でも同様でないかと思われる。
新型コロナは当初、中国・武漢市で流行したが、この変異ウイルスが欧州を起点に世界へ拡散したとのことだ。コロナウイルスの変異種に関しては既に東大の児玉名誉教授も、7月16日に、第一波は「武漢型」、第二波は「イタリア型」に続いて、第三波は「東京・埼玉型」になっていると推測すると報告している。「東京・埼玉型」の特性が他に比べてどのようか知らないが、時々刻々と変化しているようだ。
新型コロナウイルスではこれまでに数千種類の変異種が確認されているらしいが、人間に影響を与えるのはこの中の一部であろう。コロナウイルスの遺伝子はRNA型で、人間の細胞に入り込み増殖するが、その際遺伝子をコピーして増殖するがコピーミスが簡単に起こるのだそうだ。ヒトのRNAは間違ってコピーされた場合は分解される仕組みが備わっているそうだが、コロナウイルスにはその仕組みが無いそうだ。それでコロナウイルスは変異し易く、ころころ変わるのだそうだ。
さて、日本においても、12月26日:東京都内に住んでいてコロナ感染が明らかになった30代の男性ら2人について、検体を国立感染症研究所で遺伝子解析したところ、イギリスで広がる変異した新型コロナウイルスと判明したということだ。この変異種の感染者が国内で確認されたのは、初めてだそうだが、英国の変異種の形が分かっているため比較的簡単に判明できたのであろう。
変異した新型コロナウイルスが国内の空港の検疫でも確認され、政府は水際対策をさらに強化するとのことだ。しかし、変異したウイルスは海外から入って来るばかりでなく、「東京・埼玉型」と同様に国内でも既に発生している恐れがある。変異種の中でも人間との相性が良いものが、生き残るのであろうから、日本の最近の大流行は日本型の変異種のせいであるのかも知れない。遺伝子解析は必要であろうが、それより徹底したPCR検査が必要であろう。
2020.12.30(犬賀 大好-665)