トランプ大統領の任期は2021年1月20日までで、来年の11月3日には再選を問う選挙が実施される予定だ。トランプ大統領は、大統領就任時にすでに2020年への出馬を連邦選挙委員会に届け出て公式に選挙運動を始め、昨年2月には選挙参謀を指名し、既に多額の資金集めたとされる。
トランプ氏は再選に意欲満々であるが、大統領のこれまでの言動の評判は芳しくなく、これを挽回すべく成果を焦っており、マスコミもすべての大統領の行動を大統領選に絡めて報道している点ではお気の毒の感もする。
例えば、先日、元々出席予定が無かった国連気候行動サミットに短時間ではあるが出席した。大統領は地球温暖化対策には冷淡であるとされており、大統領選に向けて少しでも有利となるような宣伝の為の出席あったとのマスコミ評である。
また、日米貿易交渉が異例の早期決着を迎えたのも大統領選に向けてのトランプ大統領の思惑があったからこそのようだ。農産物では日本にTPP並みに輸入拡大を約束させて中西部の農業州の票を獲得し、自動車の関税に関しては継続審議とすること米国自動車産業の支持を獲得した分けだ。この2点に関しては間違いなく大統領の成果となるだろう。
しかし、8月末の日米首脳会談後の記者会見で、中国が輸入しなくて余ったトウモロコシを日本がすべて買ってくれる、と記者団を前に商談の成果をアピールしたそうだが、よくもまあここまでホラが吹けると開いた口が塞がらない。
米国の年間生産量3億6600万トンに対し、日本の追加輸入量は275万トンで割合から見れば微々たるもので、しかも前から決まっていたようだ。また、中国の米国からの輸入量は年間数十万トンで中国が買わなくなったから余っていると言うのは大ウソのようだ。また米国ではエタノール生産のため約4割が使用されるそうだが、トランプ政権は石油燃料にエタノールを混ぜなくてはならない規制の緩和を8月に決めたため、トウモロコシが大幅に余るようになったとのことだ。
トランプ大統領は外交でも成果が出せないどころか八方塞だ。中国との貿易問題、北朝鮮非核化交渉、イランとの核合意破棄問題、アフガニスタンの反政府勢力タリバーンとの和平交渉、等将来展望が全く見えない。
このような報道を耳にするとトランプ大統領の支持率は極めて低いと思われるが、政権発足以降ずっと平均40%代前半で推移しており、支持基盤は盤石のようだ。
支持層は農業地帯、そしてかって製造業が栄えたラストベルトとのことだが、一番の岩盤支持層は福音派であると想像する。信心深いキリスト教徒の福音派は、今でも毎日曜日には教会に行く等、敬虔な信者ではあるが、進化論も信じない根っからの保守的な人々で、例えトランプ大統領の悪評を耳にしても俄かには信じないだろう。
大統領選挙までまだ1年以上あるが、成果を焦るあまり、最近では、ウクライナ政府に対して政敵バイデン前副大統領と家族に関わる捜査を行うよう促していたことが判明し、民主党から激しい批判を浴びている。
日米貿易交渉は無事纏まったかに見えるが、大統領選が不利となれば、成果を上げ易い日本にいつ何時理不尽な要求をするかも知れない。
2019.09.28(犬賀 大好-535)