自民党の世耕参院幹事長は10月25日の参院本会議での代表質問で、岸田首相の指導力について苦言を呈した。あるべきリーダー像を、決断し、分かりやすい言葉で伝え、人を動かす、等と説明したうえで、世の中に対しても、何をやろうとしているのか全く伝わっていないと、と厳しい見方を示した。世耕氏は首相の続投を支持しているとのことだが、最近の首相の態度に危機感を抱いたための苦言であろう。これに対し、首相は強い意志を持って政策を実現する姿勢を示すことが重要だ、等と応じたが、何時ものように質問にはまともに答えていない。この態度こそ国民に人気の出ない証だ。
さて、10月中旬に実施した世論調査では、岸田内閣の支持率は政権発足後最低の35.6%、不支持率は最高の59.6%となったそうだ。調査では、9割超が物価高による家計負担に不安を感じると回答し、特に女性の支持離れが目立ったようだ。首相は支持率下落について官邸で記者団に問われると、物価高対策に取り組む姿勢を重ねて強調した。
消費者物価指数の上昇率は、ことし8月まで17か月連続で日銀が目標とする2%を上回っているが、日銀の植田総裁は、賃金上昇を伴う形での2%の物価安定目標の達成を見通せる状況には至っていないとして、今の金融緩和策を粘り強く続ける考えを示している。岸田首相のいつもの言である、分り易く丁寧な説明を、この日銀の国民感情との食い違いに言及したならば支持率の上昇に多少は効果あると思うが。
岸田首相はやりたいことの一つに少子化対策を上げていたが、最近は経済一辺倒で少子化対策はどこかに消えた感である。税収の増加に気を良くして減税を口にしているが、今こそ増税分を財政健全化に向けて活用すべきであるが、選挙に向けてのご機嫌取りで、岸田氏の長期展望を伺えず、何をやりたいのかさっぱり分からない。
ただ、次期総裁もやりたいことは、はっきりしているようだ。先日の内閣改造人事で次期総裁候補を封じ込めた成果が表れているのか、現在有力なポスト岸田が現時点では見当たらない。総裁になることに意欲を示している茂木幹事長は、秋の党総裁選を巡り岸田首相が再選を目指して出馬した場合、「幹事長である私が出るとなれば、『令和の明智光秀』になってしまう」として、立候補に消極的な姿勢を示しており、幹事長を続投させた岸田氏の思惑通りになっている。
10月23日に行われた長崎と四国における国政選挙は、与党と野党の一騎打ちであったが一勝一敗に終わり、この秋の総選挙は遠のいたとの論調が目立つが、首相は二敗しなかったことに安堵していることだろう。今の状態で総選挙が行われたならば、自民党敗れるだろうだろうが、岸田氏の責任を問うて次期総裁候補に誰が立候補するであろうか。
8月に実施された世論調査で、ポスト岸田にふさわしい自民党議員について聞き取りしたところ、1位・石破茂元幹事長、2位・河野太郎デジタル相、3位小泉進次郎元環境相……といった順番で岸田首相は5位でだったそうだ。この3人は国民的な人気があっても、自民党ではあまり人気がなく、候補になれそうにない。2023.10.28(犬賀 大好ー958)