2022年5月16日、大手証券会社の幹部が東京地検特捜部に逮捕・起訴された。 特定の10銘柄について不正な株取引を行ったとして相場操縦の罪に問われたのだ。金融商品取引法は、証券市場に参加する投資家の公正な取引を目的に市場の価格を意図的に操作する相場操縦を禁じているが、素人目には公正な取引とは何のことかよく分からない。
よく聞く言葉にインサイダー取引があるが、こちらの方がまだ分かる。上場会社の関係者等が、その職務や地位により知り得た、投資者の投資判断に重大な影響を与える未公表の会社情報を利用して、株を売買することで自己の利益を図ろうとするものだ。
株の価格は売り手と買い手のバランスで決まるとの話はよく聞くが、市場の価格を意図的に操作することは証券会社に勤める人間にとってさほど難しい話ではなさそうである。しかし、意図的な操作かどうか、あるいはインサイダー取引における重大な影響等の言葉は非常に曖昧な表現で人によって判断の基準には差が生ずるだろう。逆に上手に利用すれば罪に問われることなく実施できる便利な言葉と思われる。
コロナ禍で有名となった持続化給付金でも僅かな制度の不備を利用する輩は大勢いる。不正受給の疑いで国税局職員若手が逮捕されたとのニュースがあったが、 詐欺グループには大手証券会社元社員もいたとのことだから、彼らの専門知識を生かせば、法の目をすり抜けるのは容易であろう。
さて、異次元金融緩和の成果として株高が上げられる。株高は本来、企業の業績が上がった結果としてあるだろうが、金融緩和で市中に溢れたお金が不動産や株に向かっただけとのことだ。
企業は投資資金が十分あるがどこに投資してよいか分からず、内部留保として抱えているだけなのだろう。こう考えると今の株高を手放しで喜んでよいのか考えてしまう。
また株高の原因は、年金積立金管理運用独立行政法人(GPIF)と日本銀行が、東証一部に上場する企業の約半数の980社で、事実上の大株主になっていることにもある。日本の国が大株主であれば、まず潰れることなく投資家は安心して投資できる。GPIFは昨年3月末で約30兆円を運用しているとのことだが、これだけ大きな金を動かすとなると、裏には専門知識を利用して密かに儲けている輩がいるに違いない。
ウクライナ紛争の影響による資源高騰等で、一時3万円を超えていた日経平均株価は2.7万円前後と下がっているが、今後の予想として2022年12月末時点で株価は3万円台に到達していると予想する人もいるが、2万6000~2万9500円と予想する人もおり、予想はばらばらだ。
株を保有している人はこれらの予想を聞いて、一喜一憂しているだろうが、株に縁のない国民には直接の関係は無い。増して、景気に関係のない株価の変動は猶更である。新聞を始めとするマスコミは、毎日大きな紙面、時間を割いて株価の変動を報告しているが、もっと国民に直接関係する有意義な使用法はないだろうか。2022.06.29(犬賀 大好ー826)