今月25日に詐欺の疑いで逮捕されたのは、経産省の若手キャリア官僚、桜井真容疑者と新井雄太郎容疑者で、この二人は去年12月ごろ、ウソの申請を行い国のコロナ対策である「家賃支援給付金」およそ550万円をだまし取った疑いがもたれている。
キャリア官僚とは「国家公務員採用総合職試験」の難関を突破して、幹部候補生として中央省庁に採用された国家公務員の俗称である。東京大学を筆頭に、有名難関大学出身者が大半を占めており、日本のために貢献するとの大志を抱き入社し、末は局長や事務次官にまで出世する可能性もある輝かしい将来が待ち受けている。
ところが、わずか550万円でキャリア官僚を棒に振るとは信じられない。制度を熟知する二人は制度の欠点もよく知っており、発覚するはずがないと高をくくっていたのだろうか。それより、二人の周辺ではこの程度の不正は日常茶飯事に行われており、感覚的にすっかり麻痺しているのではないかと想像する。
政界にしてもお役人にしても、マスコミに登場しないだけでその裏にはかなりの不祥事が行われているのではなかろうか。特に官民癒着の構造は後を絶たない。例えば、菅首相の長男らによる総務省幹部への接待問題で、国家公務員倫理規程で禁じる「利害関係者からの接待」にあたると判断された11人が懲戒などの処分を受けた。また、NTT経営陣と総務省幹部などが会食を行っていたことが、調査対象期間の5年間に29件あったことが報道された。
更に、平井デジタル改革担当大臣が今年4月の内閣官房IT総合戦略室の会議で、同室幹部らにオリパラアプリの事業費削減をめぐり請負先のNECに対して行った脅し発言がマスコミを賑わした。この問題は接待とは異なるが、民間企業に対する国の権限の強さを物語っている。
国の認可を必要とする様々な事業に国は絶対的な権力を有し、民間企業は絶対服従しなくてはならない。しかし、最近の技術の流れは速く、時には国は民間企業の情報を活用する必要に迫られる。このため情報交換が必要となるが、最終的な決定権を有する国の方が立場上有利で、会食等の接待が行われるのだ。
認可を必要とする事業は先述の総務省ばかりでなくあらゆる省庁におよび、特に最近発足したデジタル庁は利権の塊であり、様々な企業が群がってくるだろう。接待問題は古くからあり、その手法は法律、規則に反しないように、また目立たないように工夫されているに違いない。
通産省若手官僚は古手官僚の法律をかいくぐる手法を見聞きし、この程度であれば許されると思い込んだのではないだろうか。
自民党の二階俊博幹事長が、6月1日の記者会見で、”ずいぶん政治とカネの問題はきれいになってきている”と発言したが、官民癒着の構造は簡単にはなくならないだろう。2021.06.30(犬賀 大好-715)