トランプ前大統領は今年7月、フロリダ州の連邦裁判所に対しTwitterやFacebook、Googleとその最高経営責任者を相手に訴訟を起こした。これはトランプ支持者が今年1月に国会議事堂に乱入する事件があったが、その暴動をトランプ氏がSNSを通じて扇動した理由で、フェイスブック等のSNSを利用停止になったことに対し、報道の自由を侵されたとする訴訟であり、ビグテック訴訟と称するのだそうだ。
トランプ氏のSNSを介しての政治活動は巧みであり、上記の事件に関わらず先の大統領選挙で負けたにも関わらず、不正があったために負けたと自己弁護しており、トランプ支持者にこの言をすっかり信じ込ませているのは見事だ。
SNSはその内容の真偽は二の次で誰もが発信することが出来る。しかも匿名で発信することも出来るので、他人への誹謗中傷はやりたい放題となる。トランプ前大統領は、退任後も大集会を開いて政治活動をしているが、SNSを介しての方が安上がりで多くの人の目に晒すことが出来るとその効用を熟知しているのだろう。
トランプ氏は10月21日、TrumpMedia&TechnologyGroupを立ち上げ、TRUTHSocialというSNSアプリをリリースすると発表した。同氏はSNSの威力を熟知している為、SNS発信を停止されているのに耐え切れず、独自のプラットフォームを設立することになったようだ。
このアプリがどの程度広がるかはいかに多くの人が利用するかに関わる。多くのサービスは広告収入で収益を上げるビジネスモデルである。利用者が多いほど有利であるため、この世界は少数のSNSが牛耳っており、トランプ氏のアプリの普及は簡単ではないだろうが、トランプ氏のこと何か手を打ってくるに違いない。
さて、米国コネチカット州の大学が、10月トランプ前大統領への評価などに関する世論調査結果を発表した。それによれば、2024年の大統領選挙にトランプ前大統領の再立候補を望むかという問いに対しては、「望まない」とする割合が58%と、「望む」(35%)を大きく上回ったが、共和党支持者の78%は「望む」と回答したそうで、トランプ人気は相変わらずのようだ。
このような人気を支える社会的な環境は都市部と農村部の分断等、いろいろな要因があるだろうが、SNSの影響が一番大きいのではなかろうか。兎も角、SNSの効果はとてつもなく大きく、社会に与える影響は計りしえない。トランプ前大統領がビッグテック企業を相手に起こした訴訟は、報道の自由を巡りインターネットの性質を変える可能性があるとも言われ、その成り行きが注目される。2021.10.30(犬賀大好ー759)