日々雑感

最近よく寝るが、寝ると言っても熟睡しているわけではない。最近の趣味はその間頭に浮かぶことを文章にまとめることである。

日本の科学技術立国の復活はなるか

2021年03月13日 10時05分44秒 | 日々雑感
 菅首相は第204回国会での施政方針演説の中で、”我が国の長年の課題に答え”と題する項目の中で、デジタル社会やグリーン社会の実現を掲げた。このような社会の到来は世界の大きな流れでもあり、遅きに失した感もするがまずは始めることが肝心だ。

 デジタル社会の実現では新たにデジタル庁を立ち上げ、これまで行政機関が保有する法人などの登録データを整備し、デジタル社会の形成に不可欠なデータ利活用を進めるとしたが、鳴り物入りで始めたマイナンバーカードの普及も覚束なく、世界の先端から一周あるいは二周遅れの感もするが、少しでも遅れを取り戻すべく頑張ってもらいたいものだ。

 ところで、次世代に向けた6G等の通信技術、人工知能(AI)等は、米国のみならず中国も国を挙げて推し進めており、日本も相当の覚悟で進めなければ遅れは大きくなるばかりだ。

 グリーン社会の実現では、2050年温室効果ガス排出実質ゼロを宣言したが具体的手法は全く見えていない。次世代太陽光発電、低コストの蓄電池、カーボンリサイクルの他、水素や、洋上風力等の再生可能エネルギーが項目として挙がっているが、日本は個々の要素技術では世界をリードできる可能性があるが、それらを纏めるシステム化力が弱く他国に先導される恐れは充分にある。

 デジタル社会やグリーン社会は目的がはっきりしており、そこで必要となる技術もほぼ明確になっている。しかし、科学技術立国の底辺にあるのは目的が明確ではない基礎科学である。

 歴代のノーベル賞を受賞した人たちが指摘しているのは、日本の大学の地盤低下である。例えば大学院の博士課程を修了した後、任期付きの職に就いているポスドクと称する研究員は、ポスドクの主な就職先となる大学や研究機関のポストは増えず、このような状況では博士課程に進みたい人間は減る一方であり、当然研究力も低下する。

 菅首相も科学技術立国・日本にとって、20年近くも続く研究力の低迷は、国の将来を左右する深刻な事態であると認識し、今後5年間の目標として、政府の研究開発予算を30兆円、官民の研究開発費の総額を120兆円とし、博士課程学生の支援を拡大し、未来を担う若手研究者を育成するとしているが、具体的な内容は不明だ。

 中国が2008年から始めた”千人計画”は外国で活躍する研究者を国籍を問わず集める国家プロジェクトだそうだ。約10年で中国系を中心に約8千人が対象となったそうで、日本からの参加者もいるそうだが、日本でも同様に世界から人材を集めることが出来るであろうか。

 資源の少ない日本は科学技術立国しか生きる道は無い。中国の科学技術強国政策に立ち向かうためには資金面の充実等、国を挙げて対策を講じなくてはならないが、このためには資金は当然であるが、4月の入学制度等、大学の運営に関することも多々あり、一つ一つ解決していかなくてはならない。2021.03.13(犬賀 大好ー685)

ようやく菅首相もPCR検査の必要性を認識し始めたか

2021年03月10日 09時28分48秒 | 日々雑感
 菅首相は、3日首都圏の1都3県で継続している新型コロナウイルス緊急事態宣言を2週間延長する決定した。経済の疲弊を懸念し早期の解除を目指してきたが、新規感染者の減少ペースが鈍った上、1都3県の知事が解除に慎重な姿勢であることも考慮した結果であろう。延長を2週間とした理由は、解除か延長か決め手が無く、判断するための時間が欲しかったが本音であろう。

 さて、延長された2週間、感染拡大防止の為なすべきことは、飲食店の時間短縮、不要不急の外出の自粛やテレワーク、等これまでとほとんど変わりが無く、テレビを通じて自粛を呼びかける等の工夫はあるものの、感染者が決定的に減少するようには思えない。

 しかし、今回注目すべき新しい施策として、高齢者施設などにおける感染を早期に発見し、クラスターの発生を防ぐため、PCR検査を3月末までに約3万の施設で検査を行うこと、また、市中感染を探知するため、現在栃木県等で実施している無症状者のモニタリング検査を、今後大都市でも規模を拡大して実施する、方針を示したのだ。

 PCR検査の必要性は1年も前から一部の識者が主張していたが、ここに来てようやくその重要性が認識されたようだ。PCR検査が一斉全員検査であっても、一部地域のサンプリング検査であっても、現在の様な医者が必要と認めた人限定よりはるかに多くの情報が得られる。

 現在モニタリング調査は栃木県ばかりでなく広島県でも行われている筈だ。広島県は当初28万人に任意、無料の検査をすると予定していた。しかし、菅首相は、全員を対象とするような大規模検査は、かなりのコストと医療資源が必要になる一方、検査に時間を要するほど、検査で陰性になっても、その後に感染する可能性が高くなってしまうことに留意が必要との見解を示し、PCR検査には消極的であった。

 最近、民間の簡易PCR検査キットが出回り、安く検査できるようになっているようで、無料で何回でも検査できる国もある程だ。政府の新型コロナ対策本部には尾身会長を始め、感染の専門家も何人もいる筈だが、PCR検査の大切さが今頃になってようやく認識されるようになったとは情けない話だ。

 尾身会長も首都圏においては他の地域に比べて、感染、クラスターの源が分からないことが多く、感染源の特定が困難となっているとの認識を示しているが、PCR検査を活用する手が残っている。

 地域を限定したサンプリング調査と結果の統計処理により、比較的安価に無症状者を含めた感染状況が把握できる筈だ。尾身氏自身こんなこと十分分かっている筈だが。

 さて、延長された2週間の緊急事態宣言下で個人的には今更何が出来るであろうか。感染者数が下げ止まりしている原因にコロナ疲れやコロナ慣れがあるが、多くの国民にはコロナが他人事のように思われているのも原因の一つではないか。3月始めコロナの累積感染者数は43.8万人と多いが、日本国民1.3億人の僅か0.3%程度だ。コロナ感染者の個人情報保護が厳し過ぎる為、近隣の話題として全く上がってこない。一方では感染者に対する差別が激しいとの声も聞かれ、個人を特定できる情報の公開は無理であろうが、東京都の場合現在の区あるいは市単位の発表から町単位にまでしたらもっと身近に感じ、緊張感が高まるのでは無いだろうか。2021.03.10(犬賀 大好ー684)

脱炭素化は経済戦争でもある

2021年03月06日 10時36分32秒 | 日々雑感
 菅首相2050年までに温室効果ガス排出実質ゼロ宣言し、バイデン米大統領もパリ協定に復帰し、温室効果ガス排出の実質ゼロを目指す国は日本を含め120カ国・地域を超え、世界は地球温暖化防止に向けて走り出し、これで温暖化対策は万全かと思ったらとんでもないようだ。

 パリ協定は地球温暖化に伴う被害を減らすために気温上昇を産業革命前から2℃未満、出来れば1.5℃に抑えることを掲げる。そのために全ての国が温室効果ガスの削減目標などの対策案を国連に提出し今世紀後半に排出の実質ゼロを目指す枠組みだが、例え2050年に排出実質ゼロが実現できたところで、それまでに自然界に蓄積された効果ガスはゼロにはなっていない。

 更に今年、2月26日国連の気候変動枠組み条約の事務局長が、パリ協定の目標達成は到底覚束ないとの報告書を提出したそうだ。パリ協定では2℃未満達成のために2030年に2010年比約25%減、1.5℃の達成には約45%減が必要とされている。そこで国連が昨年末までに提出・更新された世界75の国・地域の削減目標を積み上げたところ、全体で2010年比1%減の効果にとどまることが分かったと言うのだ。

 最近、何十年ぶりの猛暑や豪雨との異常気象発生の話題が絶えなく、これも地球温暖化のためと説明される。これは人間の営みの結果炭酸ガスを始めとする温室効果ガスが地球を取り囲むためと説明され、様々な研究の結果、多くの人の信ずるところとなっているが、これを解決するのは容易でない。

 それでも世界は脱炭素化の流れとなっているが、この流れは科学論争の域を越えて、経済戦争へと変容しているようだ。すなわち、温室効果ガス削減の為の技術の流れをいち早く主導することに主眼が置かれるようになっているのだ。

 国内で出る二酸化炭素(CO2)の内、乗用車などの運輸部門の排ガスは約2割も占めるそうで、日本政府もガソリン車の新車販売を2030年代半ばに禁止する方向で、電気自動車(EV)などの導入を拡大する制度の最終調整に入ったようだ。

 一方、英政府は、ガソリン車とディーゼル車の新車販売を2030年までに禁止する方針で、しかもガソリンと電気を併用するハイブリッド自動車(HV)の新車販売を2035年に廃止する予定だそうだ。

 化石燃料自動車の販売禁止はすでに世界の大きな流れになっているが、日本の産業の屋台骨を支えるトヨタの主力商品であるHVの扱いが大きな問題となる。欧米各国のHVを禁止する動きは、HVでは日本に技術的に対抗しきれなくなった背景もあるとのことで、脱炭素化に隠れた経済戦争でもあるそうだ。

 また、日本は風力発電の分野では世界の洋上設置型では世界から大きく後れを取った。日本は遠浅の海岸が少ないため洋上浮上式が有利と思われこちらに注力してきたが、世界の流れから外れてしまった。国内産業だけではなく輸出まで考えれば世界の流れに乗る必要があり、脱炭素以前に経済戦争でもある。2021.03.06(犬賀 大好ー683)

風力発電も世界の流れから遅れてしまった

2021年03月03日 09時01分10秒 | 日々雑感
 政府は、2050年地球温暖化効果ガス排出実質ゼロ宣言をしている。その一環として昨年2020年12月、洋上風力を再生可能エネルギーの柱として将来原発45基相当の規模にする目標を決めたが、日本は風力発電の分野では着手に早かったが、いつの間にか欧州や中国勢に後れを取ってしまった。

 日立は2012年に旧富士重工業から風力発電機事業を買収し、主に陸上向けと洋上向け2種類の風力発電機を開発・生産していた。陸上設置型では新規設置の国内シェアは2016年度に約4割を占めていたそうだ。

 ただ、日本市場は、世界に比べて圧倒的に小さい。2017年に世界で稼働を始めた風力発電所の出力は計5250万kW だったのに対し、日本はたったの16.2万kWであり、その翌年も19.2万kWにとどまっていた。価格が高いと言われて国内市場もなかなか育たなかったが、海外に目を向ける努力も怠った。

 2011年に東日本大震災が発生し、原発が一斉に停止したが、そのうちほとぼりが冷めれば原発が回復すると判断したのであろうか、日立製作所は風力発電機の生産から撤退することを2019年1月に決めた。国内の風力発電機メーカーは、三菱重工業と日本製鋼所も事実上生産から手を引いており、日立の撤退で風力発電機を生産する国内企業はなくなってしまった。

 世界の流れは原発から自然エネルギーへと変化しつつあったが、日本ではまだ原発コストが一番安いと信じられていたのであろうか、風力発電は見切りを付けられてしまった。

 更に経産省は2020年12月までに、福島県沖に設置した浮体式洋上風力発電施設を不採算を理由に、来年度に全て撤去すると明らかにした。この施設は東京電力福島第1原発事故からの復興の象徴と位置付け約600億円を投じた事業であったが。

 ところが、同月25日には、改めて洋上風力発電を再生可能エネルギーの本命と位置付けたのだ。洋上と言っても、基礎を海底に固定する着床式から全体を浮かせる浮上式まであるが、今回は浮体式を諦め着床式に方針を変更したのが出直しの根拠であろう。

 日本は、風力発電の着手は世界の中でも早かった方だが、技術の流れの読みの拙さから世界に後れを取ってしまった。日本は山地が多いため土台を築き易い陸上設置型が有利であると判断し、また洋上設置型でも日本は遠浅の海が少ないため浮上式を選択したのであろうが、世界の動向から外れてしまった。

 日本独自の道を進む選択肢もあるが、国内市場は狭く、また技術開発も一企業だけでは限界がある。携帯電話の分野では一時ガラパゴス化との言葉が話題となったが、風力発電の分野でもその二の舞を踏んでしまった。

 経産省と国交省は、昨年政府と民間企業合同の「洋上風力の産業競争力強化に向けた官民協議会」を立ち上げ、洋上風力発電の強化を目論んだが、出遅れを取り戻すことが出来るであろうか。2021.03.03(犬賀 大好ー682)