あまのかは あをき岸辺を すずろゆき 鳥の寝言を 聞く春の月
*今日は短歌です。この作者の歌は好きです。情景描写がうまい。彼はわたしの友達ですが、わたしと比べれば、少しやさしい人です。あまりきついことは言わないし、こんな気のきいたことをいくらでもしてくれる。
天の川の青い岸辺を、春の月がそぞろ歩きながら、鳥の寝言を聞いている。あの人が今見ている夢のようだ。甘やかでかわいらしい。
鳥は夜はあまり騒がないが、時々寝言のような声を上げることがある。それを、月のように美しい人が、川辺を歩きながら聞いている。
いいですね。
歌を詠むには、想像力と愛が肝要です。愛する人のために、美しいことを言ってあげたい。そのためにはまず美しい材料を集める。花や星や鳥や月がよい。風も玉もよい。水を泳ぐ魚や、きれいな虫や、小さな青蛙もいいだろう。
あの人の好きそうな宝物を集めて、きれいに組んで、情景を織りあげて美しくまとめ、ひとくさりの詩にして、ささげる。
楽しいではないですか。
あの人は今眠っていて、何も言わないけれど、喜んでくれる顔を想像するだけでもうれしい。短歌はそんな、愛を表現することに向いている。
あなたがたもやってごらんなさい。技術は結構かんたんですよ。気取らないで、愛を語ればよい。素直な気持ちで、あの人に何をあげたいかを、考えてごらんなさい。
川辺に咲いていた白い菊を見つけたら、それを摘んであの人のところに持って行ってあげたい。そう思うこともあるでしょう。そうすればこう詠めばよい。
川べりの 白菊を摘み かの人の 岩戸を訪はむ ゆふさるまでに 夢詩香
川べりに咲いていた白い菊を摘んで、あのひとの岩戸を訪ねよう。夕方が来るまでに。
難しく考えなくともよい。自分のできる範囲でやってみましょう。コツがわかってくると、おもしろくなってきますよ。