たまきはる 命もしろに こひせむと してもかひなき みづかげの恋
*「たまきはる」は「命」にかかる枕詞ですね。一応こうして作品を上げながら紹介していくと、覚えやすいでしょう。自分の中に自然に入ってくる。このブログは役に立ちますね。やり始めてからかなり経ったが、読者のみなさんのスキルもだいぶあがってきたでしょう。
勉強ができるというのは幸せですよ。いい歌が詠めるようになって、人生が楽しくなってきていませんか。
「しろ(代)」は代金とか、代わりのもの、という意味です。こういう二文字の古語は非常に使いやすいので覚えておきましょう。前にも言いましたが、「かた」とか「ほど」とか「よし」とか「すべ」とか「きは」とか、こういうのは応用がよく効きます。二文字しかないので、定型にもはめやすい。
命も代わりにするほど、恋しようとしても甲斐もない、水に映った恋であることよ。
「みづかげ(水影)」は、水に映った姿のことですが、ここではもちろん、水に映った月を意識しています。水に映った月は、すぐそこにあるようで、手を伸ばせば触れられるような気すらするが、本当の月はそこにはありはしないのだ。手を伸ばしても、水があるだけ。月は空高く澄んでいる。
美しいからと言って、恋をしてはいけませんよ。命も削るほどに、迷ってはいけない。恋する人の気持ちはわかりますが、恋してもせんない相手というのはいるのです。
美しいが、月は人間の女性ではないのだ。人間ほどに、人間に恋してはくれない。静かな光で照らしてはくれても。
恋をするなら、人としなさい。同じ心を持っている、本当の人間としなさい。幸せはそっちにあるのです。
人間が時に月に迷うのは、それがあまりに人間とは違っているからだ。違いすぎるものに、人は時々激しく恋してしまうが、事実上それは、疲れるだけで、何もなりはしないのです。
恋しても、甲斐のある人と恋しなさい。自分というものがわかれば、それもできるはずです。