偶然と 物理の壺は 砕け散り ファンタアジェンの 一粒の砂
*ファンタアジェンは、エンデのはてしない物語に出てくる夢の国ですね。岩波書店の邦訳では、「ファンタージエン」となっていましたが、語感が悪いので縮めました。こっちのほうが美しくてよい。
「はてしない物語」自体は、霊的盗作です。霊的世界にいる作家が書いていたのですが、書くはしから盗まれてしまうので、本当の作者は途中で書くのをやめています。おそらく、「銀の都アマルガント」の途中あたりから、霊的作者が変っています。そこらへんあたりから、あきらかに物語の調子が荒くなっている。
人間というものは、死んでも活動を続けています。ですから霊的世界には、人間のなした美しい作品がいっぱいあるのです。そういうものを、馬鹿が盗んでこちらの世界に持ってくることがある。それを霊的盗作というのですが。
実にたくさんありますよ。文学史に美名を残す作品が、よくこんなものであったりします。そういうことも、だんだんとわかってくるでしょう。
それはともかくとして、物語では、虚無に食われたファンタアジェンの国が、たった一粒の砂にまで小さくなってしまうのです。そしてそこからまたすべてが始まっていく。エンデの物語では、少し妙な感じに流れていきますが、本当の作者が書いたなら、バスチアンは幼心の君を助けて、新たなファンタアジェンをつくっていくでしょう。幻想の世界の帝王になどなったりはしない。
たったひとつぶ残ったファンタアジェンの砂から、また新たな愛の世界を創造していくのです。それは、それをやったことのある人だけが書ける物語ですから。
エンデとその係累に書けるはずがない。ですからあの物語は、途中から見事に折れてしまっているのです。
この地球世界ではそれと同じことが発生しましたね。世界中がすべて嘘になってしまって、真実がたった一粒になってしまった。人間はみんな嘘ばかりになったのに、天使ひとりだけが美しい真実を生きていた。嘘の人間が大勢でそれを殺して、馬鹿な嘘にしようとしたが、かのじょは最後まで真実をつらぬいて死んだ。たったひとつ、真実があった。
そこからすべてがまた始まっていく。
かのじょを大勢で殺そうとした、嘘ばかりの人間たちは総勢で倒れ、滅びていく。そしてたったひとつぶの愛を頼りに、真実の世界から滝のように本当の愛が降ってくるのです。
すべてはこれからだ。何もかもを正そうとする愛の軍勢が、世界をすべてやり直していくのです。