25日付け「毎日新聞」に、潮田道夫氏が不破哲三さんの原発問題の講義(21日ブログで全文紹介)を「わかりやすい」と紹介した同新聞の「近聞遠見」の内容を紹介しています。
その中で「雑誌「世界」6月号で、生命科学者の柳澤桂子さんは人間の遺伝(DNA)を破壊する『光線量の放射性廃棄物を処理する方法がわからない』以上、原発はやめるべきだと主張してる」とも紹介しています。
「赤旗に不破さんが連載した『講義』を読んでみた。明快。」と語っています。
なお、日本共産党の志位和夫委員長が、行った、第2次の大震災・原発災害にあたっての提言は以下のとおりです。
復興への希望がもてる施策、原発からの撤退をもとめる
大震災・原発災害にあたっての提言(第2次)
2011年5月17日 日本共産党幹部会委員長 志位 和夫
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●東日本大震災にあたっての提言(第1次)→
志位委員長の記者会見
1、被災者の生活基盤の回復を国の責任で
未曽有の大災害から2カ月が経過し、被災者と国民に、国がどのような役割と責任を果たすのかが問われている。わが党は、総理にたいして、3月31日に「被災者支援・復興、原子力・エネルギー政策の転換を――東日本大震災にあたっての提言」を行ったが、被災者救援でも、復旧・復興でも、被災地の実態は先の見えない困難が山積しており、政府の取り組みの抜本的な改善・強化が必要である。
一人ひとりの被災者が復興への希望がもてるメッセージ・施策を、国の責任でただちに打ち出す必要がある。以下の諸点について、政府が「国の責任」を果たすべく全力をあげることを提言する。
(1)被災者の救援、二次被害の防止に全力をあげる
――(劣悪な生活環境に置かれている避難所の改善を急ぐ)11万人をこえる被災者が不自由な避難所生活を強いられているが、依然として少なくない避難所で、おにぎりやパンだけなど満足な食事がとれない、週に1回程度しか入浴できない、間仕切りがない、医療や介護のケアがとどかないなど、劣悪な状態がつづいている。避難所生活が2カ月をこえた現時点で、国の責任で実態の把握を行い、二次被害を防止し、生活環境の改善をはかるためのあらゆる努力を行うことを求める。
――(在宅の被災者への救援を抜本的に強化する)被災して半壊状態になっていたり、ライフラインが復旧していない自宅で生活している被災者も多数にのぼっているが、支援の手がとどかず、事実上「放置」されている場合が少なくない。食料、衣料、生活用品をはじめとした生活支援が行き届くように万全の体制をとることが必要である。
――(仮設住宅の早期建設)被災者の生活の安定、二次被害の防止のためにも、希望者全員が入居できる仮設住宅を早期に建設することが必要である。現状では、地域ごとにみると遅れが深刻なところも少なくない。民有地の借り上げ、集落ごとの小規模な用地確保など、必要な土地を確保するために国が責任をもって支援することを求める。市町村や地元の意向を尊重し地域のコミュニティーを重視すること、地元業者に工事を発注していくことなども、仮設住宅の建設を促進するうえで重要である。仮設住宅入居後でも必要に応じて食料などの生活支援物資が円滑に届くようにする。
(2)復興をどうすすめるのか――二つの原則を堅持する
復興にあたっては、国はつぎの二つの原則を堅持してあたることが大切だと考える。
――(被災者が再出発できる生活基盤を回復する)一人ひとりの被災者が、破壊された生活の基盤を回復し、自分の力で再出発できるように支援することこそ、復興の最大の目的である。そしてこの目的を達成するための公的支援を行うことは国の責任である。それは憲法が保障する幸福追求権(13条)、生存権(25条)などにてらしても、当然の国の責務である。
――(住民合意を尊重し、「上からの押し付け」を許さない)復興の進め方については、「計画をつくるのは住民合意で、実施は市町村と県・国が連携して、財政の大半は国の責任で」ということを原則にすべきである。被災地の実情を無視した「上からの青写真の押し付け」を許さないことが必要である。
大震災で破壊された「まち」をどういう形で再建していくかについては、被災した各市町村で検討がはじまっているが、大震災の被害は地域ごとに表れ方も違い、それぞれの地域によって自然的条件、産業・文化・歴史などの社会的条件の違いもあり、「まち」をどういう形で再建していくかの道筋は、地域ごとに多様である。上からの画一的なモデルの押し付けでなく、それぞれの地域の実情にそくした復興プランを住民合意でつくりあげていくことを何よりも尊重し、応援していくことが国の姿勢として重要である。真の復興は、民主主義と住民自治を貫いてこそ可能となる。
(3)“復興への希望”が見える施策を急いで――仕事、雇用、産業の再出発のために
いま、国として、被災地・被災者の方々が、復興にむけた希望がもてるような政治的なメッセージと具体的施策を、急いで打ち出すことが求められている。大災害から2カ月がたち、少なくない被災者から、「先がみえない」「再建の気力がなくなってしまう」「この地域から人がいなくなってしまう」という痛切な声が寄せられている。同時に、「復興への希望が見えるようにしてほしい、そうすればがんばることができる」という強い要望が共通してだされている。こうした思いにこたえ、被災者の生活基盤回復に、国が責任を果たすという政治的なメッセージと具体的施策を打ち出すことを求める。
――(「せめてゼロからのスタートを」――「債務の凍結・免除」を国の責任で)多くの事業者が借入金で設備投資した工場、機械、店舗、船舶などを失った。収入も途絶え、財産も設備も失い、借金だけが残った状態で、「さあ再出発」といっても無理な相談である。「マイナスからではなく、せめてゼロからのスタートを」――これがいま、被災地の商工業者からも、漁業者からも、農業者からも、復興への第一歩を踏み出すために共通して非常に強く要望されていることである。
そのために、国の責任で債務を「凍結・減免」し、債務の重荷を取り除くことがどうしても必要である。たとえば、国が「震災復興支援機構」(仮称)をつくって、債務を金融機関から買い取り、「機構」が買い取った債務は、将来、事業が再生した段階で超長期の展望で返済を行い、被災状況などの実情に応じて債務の減免も行うという方法もある。方法はさまざまあろうが、いま大切なことは、大震災で失った設備や財産にかかる負債を、国の責任で「凍結・減免」するという政治的姿勢をすみやかに打ち出すことである。
――(水産業、農業、商工業、中小企業――各分野で再出発できる基盤回復を)水産業、農業、商工業、中小企業など各分野で、再出発できる基盤を回復するために、現行法の枠組みにとらわれない公的支援を思い切って行う必要がある。
【水産業】多くの漁港や施設が壊滅的被害を受けており、水産業の再出発のためには、生産・加工・流通までをセットで再生する総合的な全面支援が不可欠である。漁船では、激甚災害法で、5トン未満の小型船は3分の2を公費でもつことになっているが、被災地での小型漁船はほぼ壊滅状態であり、中型、大型船にも大きな被害が出ている。激甚災害法の枠組みでは、とても再出発はできない。養殖施設の破損は、90%は公費負担ということになっているが、実際は「減価償却分を差し引く」とされ、昨年のチリ津波にさいしての養殖施設破損への公費負担は半分以下にとどまった。被災した漁業者からは、「船も、養殖も100%公費で」という強い要望が寄せられている。国がこれにこたえる具体的施策をとることを求める。
【農業】広大な農地が津波によるガレキとヘドロなどで埋まっており、国が全面的にのりだすことなしに、この再生は不可能である。JAや農業者からは、破壊された農地をいったん国が買い上げて、塩抜きもして圃場(ほじょう)の整備をしたうえで返還する(払い下げ条件付きの一時的な買い上げと整備)という要望も出されている。国が全面的にのりだして農地を再生させるという姿勢をはっきり打ち出すことを求める。被災地での農業復興にも逆行するTPP(環太平洋連携協定)参加をきっぱり断念すべきである。
【商工業】商工業・中小企業を再生するためには、「債務凍結」とともに、事業を立ち上げるための資金が必要である。無利子融資や利子補給をはじめ制度融資の抜本的な拡充にとどまらず、国の責任で、返済不要の立ち上がり資金を提供する支援金制度を創設することを求める。津波で流された機械のリース代を免除する手だても必要である。貸工場、貸店舗への公的支援の拡充も求められている。
【農漁協等への支援】漁協、農協、商工会議所をはじめ被災地の水産業、農業、商工業関係の諸団体の「復興への思い」を受けとめ、その要望を十分に反映した復興計画、事業にしてこそ、地域のエネルギーを引き出すことができる。そのためにも、震災で被災した漁協、農協、商工会議所の再建を支援することを求める。
――(当面の生活を支える緊急の雇用対策を)本格的な仕事再開までの生活を支えるとともに、緊急の雇用対策を行う必要がある。被災地では、「『仕事がない』状態が続けば、多くの人が仕事を求めて外に出て行かざるをえない、労働力が流出すれば二度と立ち上がれなくなる」という危機感が表明されている。
農業、漁業、中小企業などで休業補償を行うとともに、海や陸のガレキの撤去、泥だし、仮設住宅の建設をはじめとした復旧・復興事業を、地元雇用の創出につなげるために、国の支援を強めることが必要である。
雇用保険の失業給付や雇用調整助成金の大幅延長や対象の拡大も重要である。大企業に下請けや関連会社を含めた雇用を確保する社会的責任を果たさせることが重要になっており、国が強力な要請・指導を行うことを求める。
(4)住宅の再建・保障――支援の抜本的拡充と多様なニーズに即した住宅を
「住まいの再建」は、被災者の生活再建の土台である。「住まいは人権」――負担可能な費用で安全で健康的な住宅に住む権利は、国際的にも確認されたものであり、政府には、被災者の住宅に関する権利を保障する責任がある。国による個人補償、公的支援を拡充しなければならない。
――(被災者生活再建支援法の支援額の抜本的引き上げ、対象拡大)「私有財産の形成は支援しない」などと住宅再建への直接補償を拒否してきた国の姿勢を変えさせて、被災者生活再建支援法改正が実現したが、全壊でも300万円にとどまっている。総理は「引き上げ」を明言したがすみやかな具体化が必要である。支援額の抜本的引き上げとともに、支給対象を、一部損壊、店舗の被害、液状化による被害などにも拡大する。「二重ローン」など過度な負担に被災者の生活が押しつぶされないように、免除や軽減、利子補給などの金融措置をあわせてとることを求める。
――(多様な形態での公営住宅の建設を)「もう一度ローンを組んで家を建てる」ということにはならない被災者も少なくない。被災者が住みなれた土地を離れることなく住める、小規模・分散型なども含めた多様な形態の低家賃の公営住宅を、被災者のニーズや地域の実情にあわせて、それぞれの集落に建設していく必要があり、そのための国の支援を要求する。
(5)被災者の生活を支える“公共”の再建を
――(医療、介護、福祉、教育など、いのちと暮らしを支える基盤を再構築する)被災地は高齢化率も高く、医療、介護のネットワークの再構築は不可欠である。国公立病院、労災病院、社会保険病院、厚生年金病院の統廃合など、公的病院を縮小し、地域医療を壊してきたツケが問われている。公的病院を再建し、存続、充実させるとともに、民間医療機関、民間福祉施設の再建にも必要な支援を行うことを求める。
障害者が必要な情報を得られなかったり、被災して介護者を失うなど、困難を抱えている。障害者施設、団体、患者団体への支援と、“支援の外”にある障害者、難病患者の実態把握を急ぎ、必要な支援を行うことが必要である。
復興のためには、子どもたちの未来が輝く地域に再生していかねばならない。学校と教育条件の整備を急ぐことはもとより、就学援助、給費制奨学金、授業料免除などによって、子どもたちから教育の機会を奪わないようにする。保育所などの子育て支援の体制もととのえることも必要である。
――(地域の交通、商店街など、生活と事業活動が可能になる基盤の再建)住民の「足の確保」は被災地の重要な課題になっている。鉄道やバスなどの公共交通機関の復旧への支援はそのカナメである。第三セクターである三陸鉄道は、会社や自治体の「自力」での復旧は不可能である。国が三陸鉄道の復旧に全面的に乗り出すことを宣言することは、復旧・復興にむけて被災者をはげますものとなり、ただちに決断すべきである。さらに、商店街をはじめ街の公共的機能の回復に必要な支援を行う枠組みが必要である。
――(自治体への人的・財政的支援)自治体も被災者である。自治体職員も多くが犠牲となり、家も家族もなくした職員が、大震災以来、不眠不休の奮闘をしているが、それも限界になっている。「行革」「効率化」「民営化と民間委託」などのかけ声で行われた大規模な人員削減によって、被災自治体でも、職員を派遣する自治体でも「人手不足」が障害になっている。国として、行政スタッフ、医療・介護の専門家など、被災自治体への人的な支援を強化することを求める。また、被災地は、高齢化と過疎化に加え、この間の「地方切り捨て」政治で財政基盤も弱い。国の自治体への財政支援を大幅に拡充することを要求する。
(6)復興財源について――復興を妨げる「復興税」には反対する
すでにわが党は、復興財源について、3月31日の「提言」で、(1)大企業と高額所得者の減税の中止、不要不急の大型公共事業の中止、米軍への「思いやり予算」やグアムの米軍基地建設費の中止、原発の建設・推進経費の削除、政党助成金の廃止など、今年度予算の抜本的な組み替えを行うこと、(2)大企業の内部留保を復興事業に活用するために、「震災復興国債」を発行し、大企業に引き受けることを要請する――という二つの基本方向で確保することを提案している。総理は、3月31日の党首会談で、この提案について「検討する」と答えたが、その真剣な検討・実行を強く求める。
「復興税」を名目にした消費税増税は、被災者にも増税を押し付け苦しみに追い打ちをかけるとともに、国民生活と日本経済の活力を奪うことによって、国をあげての復興にも大きな障害を持ち込むものであり、絶対にやってはならない。わが党は、復興を妨げる「復興税」には、強く反対する。
2、原発災害からの救援、復旧・復興に果たすべき国の責任
福島原発災害は、あらたに「計画的避難区域」が指定され、校庭の土壌も放射能に汚染されるなど、いまなお拡大し続けている。多くの人たちが仕事を奪われ、家から「追い出され」て、不自由な避難生活を強いられている。故郷を汚され、見えない放射能の不安におびえる毎日をすごしている。
いつになったら自宅に帰れるのか、農業ができるのか、事業を再開できるのかなど、「先がまったく見えない」という状態に置かれ、復興の足がかりさえつかめない。政府は、被災者の不安と苦しみにこたえる責任がある。
原発危機の収束にあらゆる力を傾注するとともに、明日への希望と展望を持てるような政治の責任ある姿勢を示すことを求める。
(1)危機収束と故郷に戻れる展望を政府の責任で示す
――(政府として責任のある原発危機収束の展望を)「将来の見通しがたたないことが何よりつらい」。原発被害の被災者の痛切な声である。わが党は、3月31日の党首会談で、総理に「政府として責任をもって原発事故収束の戦略と展望を示すべきだ」と提起した。その後、東京電力が「工程表」を発表した。しかし、この「工程表」は、原子炉とその施設内にどのような事態が起こっているかの全貌をつかまないまま作成されたものであり、掲げられた「収束策」なるものも、それを実行する裏付けも根拠も示されていないものだった。実際、その後、1号機では圧力容器内のほとんどすべての核燃料が、地震翌朝には溶融・落下(メルトダウン)したことが判明するなど、新しい対処が迫られる事態がつぎつぎに起こっている。
東京電力に危機収束の「工程表」づくりを、いわば「丸投げ」して、それを政府が追認するというのは、とうてい責任ある態度とはいえない。政府として、原発危機収束の戦略と展望について、原発事故にかんするあらゆるデータを直接掌握し、裏付けと根拠を示し、責任をもって明らかにすべきである。
――(政府として故郷に戻れる見通しを)この間、総理周辺から「10年、20年は人が住めない」などという無責任な発言が伝えられたこともあり、被災地に行ってみると、「もう二度と戻ることはできない」という声も聞かれる。正確で丁寧な情報発信とともに、おおまかなものであっても故郷に戻れる見通しを示す責任が政府にある。
――(作業員の安全確保の体制を国の責任で整備する)この間、原発危機の収束作業にあたっていた作業員が死亡するという事態が起こった。作業員の「安全確保」のルールや手順がなし崩し的に「緩和」されているという報道があるが、作業員の命を危険にさらす無責任な対応は、絶対に許してはならない。
作業員の放射線からの防護の徹底、作業環境、生活環境の抜本的改善をふくめ、長期戦にたえる作業員の安全確保の体制を、政府の責任で整備することを強く求める。これがなければいかなる「収束計画」も机上の話になる。
(2)国の責任で被害への全面的で迅速な賠償を東京電力に実施させる
福島原発災害は、「安全神話」にどっぷりとつかり、警告を無視して安全対策を怠ってきた東京電力と歴代政府によってもたらされた人災である。賠償責任は、第一義的には東京電力が負うことはもちろんだが、電力業界、金融機関、原発メーカーなどにも責任と負担を求めることが必要である。被災者の苦難を取り除き、すべての被害が賠償されるように、国が責任をもってとりくむことを求める。
――(被害への全面賠償を明確にする)被害については、全面賠償を東京電力に行わせなければならない。全面賠償とは、原発事故がなかったらあったであろう収入と、現実の収入との差をすべて賠償するということである。この原則を明確にして、それを必ず行うことを国として誓約すべきである。勝手な「線引き」をして被害者を切り捨てるようなことがあってはならない。いわゆる風評被害についても同様である。また、避難によって生じたあらゆる被害(たとえば避難中の盗難、家屋・建物の劣化、精神的被害など)も賠償の対象とするのも当然である。
――(産業被害などへの仮払いをただちに)農業、漁業、商工業など産業被害への賠償の仮払いは、いまだに行われていない。東京電力の引き起こした災害によって、事業ができなくなった被害者に、2カ月以上も何の賠償も補償もされず、何の責任もない被害者が苦境に陥っている現状は、法治国家として異常としか言いようがない。すみやかに賠償の仮払いを行う――被害者の手もとに届くようにするとともに、危機収束が長期化しているもとで、仮払いも1回限りとせずに継続的に実施する必要がある。
原発から30キロ圏内の住民の個々の方々には仮払いの手続きがとられているが、30キロ圏外からの避難者は対象外とされている。これらの方々への仮払いもすみやかに行うべきである。
――(債務は国が肩代わりし、東電に負担責任を)中小企業や、農業者、漁業者が抱える債務の問題も深刻である。原発災害で事業ができなくなり、収入が途絶え、借金が返済できなくなっている。東京電力が全面賠償するまでの間、返済猶予をふくめ国が債務を一時的に「肩代わり」する措置をとる必要がある。もちろん、この場合も東京電力に負担責任を求める。
(3)放射能被害への国民の不安に応える措置をとる
――(放射能汚染を正確かつ綿密に計測・把握し、納得のいく説明と万全の措置を)政府は、住民の避難や学校などでの放射能汚染について、いろいろな措置をとっているが、その根拠となる放射能汚染の把握と住民への説明がきわめて不十分である。
いったんは政府が「計画的避難区域」に指定したが、町独自の測定で「避難の基準値」を下回っていることを指摘され、撤回する(川俣町小綱木、大綱木地区)など、政府の責任と姿勢が問われる事態も起きている。
学校の土壌汚染について、政府内部で危険性についての意見の食い違いが表面化していることに、多くの国民が不安をつのらせている。野菜、水産物、飲料水など食料への放射能汚染の不安も大きい。福島市、郡山市などを含めて、放射能汚染の計測を綿密に行い、専門的・科学的知見をふまえた理解と納得のいく説明と、万全の措置をとることを、強く求める。
――(作業員と住民の健康管理と医療保障のための恒久的対策を)作業員と住民にたいして、内部被ばくを含めた厳重な健康管理を行い、国として恒久的・全面的な医療保障を行うことを求める。
(4)被災者の救援、避難住民の実情に応じた柔軟な対応を
――(避難を強いられている住民に安定した生活を)不自由で不便な避難生活が長期化している。政府は、避難生活を強いられているすべてのみなさんに、安定した住宅、生活にかかる費用、医療や教育など当たり前の生活を保障する責任がある。もちろん、それにかかる経費は東京電力が負担すべきものである。
――(住民の要望もふまえ柔軟な対応を)「計画的避難区域」に指定された地域内には、工場も、介護施設もある。住民の安全をしっかり確保することを前提にしながら、実情に即した柔軟な対応をとることが、関係自治体から強く要請されている。「緊急時避難準備区域」についても、地域内への仮設住宅の建設などについて、放射線の実態からみて安全を確保できるなら、コミュニティーを保持することを重視して柔軟な対応をしてほしいという要望も出されている。放射能汚染から住民の健康を守るという責任を果たしながら、それぞれのケースについて丁寧に実情をつかみ、地域の方々の生活や故郷への思いをくみあげた柔軟な対応、心ある対応をとることを求める。
(5)原子力災害から住民のいのちと生活をまもる特別法の制定を
福島県は、前例のない原子力災害に対応するために、国が責任をもって原子力災害の応急対策、復旧対策、復興政策を一元的にすすめる体制の確立、全面的、長期的対策の推進などのために、新たな法整備(特別法)を国に要請している。わが党も、原子力災害にたいする特別法は、必要だと考える。
原子力災害にたいして、全面的な賠償や安定した避難生活の保障をはじめ、現行法のもとでも最大限の対応をすみやかにとることは当然だが、もともとこうした大規模な原子力災害を想定した法体系はなく、現行法ではカバーできない問題が多いことは事実である。広域的な避難における生活支援や自治体機能の確保、地域の再生や住民の健康被害をふくむ恒久的対策などにかかわって、原子力災害から住民のいのちと生活をまもる特別の措置が必要になっている。原子力災害の緊急対策、復旧、復興に、一体的・総合的に対応できる特別法を制定することを要求する。
3、原発からの撤退を決断し、原発をゼロにする期限を切ったプログラムの作成を
福島原発事故は、原発の危険性について、つぎの深刻な問題点を、万人の前に事実をもって明らかにした。
(1)いまの原発技術は、本質的に未完成で危険
第一に、いまの原発技術は、本質的に未完成で危険なものであるということである。原子炉は、莫大(ばくだい)な量の放射性物質=「死の灰」を内部にかかえているが、どんな事態がおこっても、それを内部に閉じ込めておく絶対かつ完全な技術は、存在していないことが明らかになった。冷却水がなくなると炉心が溶け、コントロール不能となり、大災厄をもたらすという、軽水炉のもつ構造上の本質的欠陥が証明された。放射性廃棄物の処理方法がまったく確立していないため、全国の原発に莫大な量の使用済み核燃料が蓄積されていることの危険も明らかになった。
そしてひとたび、大量の放射性物質が外部に放出されれば、もはやそれを抑える手段が存在せず、被害は空間的にどこまでも広がる危険があり、時間的にも将来にわたって危険をおよぼす可能性があり、地域社会全体の存続そのものを危うくする危険をもつものであることが、明らかになった。
(2)世界有数の地震・津波国に集中立地することの危険
第二に、こうした危険をもつものを、世界有数の地震国であり、世界一、二の津波国である日本に集中立地することは、とりわけ危険きわまりないものである。今回の巨大地震は、日本での今後の地震の危険性についての、専門的知見の根底からの見直しを求めており、日本列島のどこにも、大地震と大津波の危険性のない「安全な土地」とよべる場所は存在しない。日本に立地している原発で、大地震・津波にみまわれる危険性がないと断言できる原発は一つもない。
(3)「安全神話」への固執の深刻な結果が明瞭に
第三に、歴代政府が、「日本の原発では重大事故はおこらない」とする「安全神話」にしがみつき、繰り返しの警告をも無視して安全対策をとらなかったことが、どういう深刻な結果をもたらすかが明瞭となった。
いまの原発技術が本質的に未完成で危険なものであるという認識をもたず、それを地震・津波国である日本で大増設することの危険性の認識ももたず、どんな技術にも「絶対安全」は存在せず事故の可能性は排除できないという認識をもたず、「安全神話」にどっぷりつかり、対策を行ってこなかった、歴代政府、電力会社の責任はきわめて重大である。原発をもつ世界の主要な国家の中で、日本のように「安全神話」にしがみつき続けた国は、他に一つもないことを、きびしく指摘しなければならない。
(4)原発推進から撤退への転換を要求する
以上をふまえて、わが党は、原発推進から撤退への転換を要求する。
――(原発からの撤退、原発ゼロへのプログラムの策定を)政府が、原発からの撤退を政治的に決断すること、原発をゼロにする期限を決めたプログラムをつくることを、強く求めるものである。
そのさい、原発の新増設計画を中止すること、浜岡原発を一時停止にとどめず廃炉とすること、福島第1・第2原発を廃炉にすること、老朽化した原発の運転を中止すること、住民合意のない原発の運転を中止すること、放射性廃棄物の再処理施設を閉鎖すること、プルトニウム循環サイクルから撤退すること――これらはすみやかに決断・実行する必要がある。
また、自然エネルギー(再生可能エネルギー)の開発と普及・促進、低エネルギー社会への移行のために、最大限の知恵と力をそそぐことを求める。
――(危険を最小限にする原子力の規制機関を)原発ゼロにいたる期間に、原発事故の危険を最小限のものとするための、考えうるかぎり、可能なかぎりのあらゆる安全対策をとるとともに、そのための強力な権限と体制をもち、推進機関から完全に分離・独立した原子力の規制機関を緊急に確立することを要求する。
原発は、運転停止後も、廃炉までに20年程度かかると言われ、その過程で放射能が外部に流出しないよう最大限の努力が必要である。さらに、使用済み核燃料の処理技術はまったく確立されておらず、その技術を確立し、それにもとづく処理作業が完全に終了するまで、きわめて長い期間、核廃棄物を環境から厳重に隔離し、監視しつづけなければならない。強力な権限と体制をもった規制機関の確立は、そのためにも必要である。
その中で「雑誌「世界」6月号で、生命科学者の柳澤桂子さんは人間の遺伝(DNA)を破壊する『光線量の放射性廃棄物を処理する方法がわからない』以上、原発はやめるべきだと主張してる」とも紹介しています。
「赤旗に不破さんが連載した『講義』を読んでみた。明快。」と語っています。
なお、日本共産党の志位和夫委員長が、行った、第2次の大震災・原発災害にあたっての提言は以下のとおりです。
復興への希望がもてる施策、原発からの撤退をもとめる
大震災・原発災害にあたっての提言(第2次)
2011年5月17日 日本共産党幹部会委員長 志位 和夫
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●東日本大震災にあたっての提言(第1次)→
志位委員長の記者会見
1、被災者の生活基盤の回復を国の責任で
未曽有の大災害から2カ月が経過し、被災者と国民に、国がどのような役割と責任を果たすのかが問われている。わが党は、総理にたいして、3月31日に「被災者支援・復興、原子力・エネルギー政策の転換を――東日本大震災にあたっての提言」を行ったが、被災者救援でも、復旧・復興でも、被災地の実態は先の見えない困難が山積しており、政府の取り組みの抜本的な改善・強化が必要である。
一人ひとりの被災者が復興への希望がもてるメッセージ・施策を、国の責任でただちに打ち出す必要がある。以下の諸点について、政府が「国の責任」を果たすべく全力をあげることを提言する。
(1)被災者の救援、二次被害の防止に全力をあげる
――(劣悪な生活環境に置かれている避難所の改善を急ぐ)11万人をこえる被災者が不自由な避難所生活を強いられているが、依然として少なくない避難所で、おにぎりやパンだけなど満足な食事がとれない、週に1回程度しか入浴できない、間仕切りがない、医療や介護のケアがとどかないなど、劣悪な状態がつづいている。避難所生活が2カ月をこえた現時点で、国の責任で実態の把握を行い、二次被害を防止し、生活環境の改善をはかるためのあらゆる努力を行うことを求める。
――(在宅の被災者への救援を抜本的に強化する)被災して半壊状態になっていたり、ライフラインが復旧していない自宅で生活している被災者も多数にのぼっているが、支援の手がとどかず、事実上「放置」されている場合が少なくない。食料、衣料、生活用品をはじめとした生活支援が行き届くように万全の体制をとることが必要である。
――(仮設住宅の早期建設)被災者の生活の安定、二次被害の防止のためにも、希望者全員が入居できる仮設住宅を早期に建設することが必要である。現状では、地域ごとにみると遅れが深刻なところも少なくない。民有地の借り上げ、集落ごとの小規模な用地確保など、必要な土地を確保するために国が責任をもって支援することを求める。市町村や地元の意向を尊重し地域のコミュニティーを重視すること、地元業者に工事を発注していくことなども、仮設住宅の建設を促進するうえで重要である。仮設住宅入居後でも必要に応じて食料などの生活支援物資が円滑に届くようにする。
(2)復興をどうすすめるのか――二つの原則を堅持する
復興にあたっては、国はつぎの二つの原則を堅持してあたることが大切だと考える。
――(被災者が再出発できる生活基盤を回復する)一人ひとりの被災者が、破壊された生活の基盤を回復し、自分の力で再出発できるように支援することこそ、復興の最大の目的である。そしてこの目的を達成するための公的支援を行うことは国の責任である。それは憲法が保障する幸福追求権(13条)、生存権(25条)などにてらしても、当然の国の責務である。
――(住民合意を尊重し、「上からの押し付け」を許さない)復興の進め方については、「計画をつくるのは住民合意で、実施は市町村と県・国が連携して、財政の大半は国の責任で」ということを原則にすべきである。被災地の実情を無視した「上からの青写真の押し付け」を許さないことが必要である。
大震災で破壊された「まち」をどういう形で再建していくかについては、被災した各市町村で検討がはじまっているが、大震災の被害は地域ごとに表れ方も違い、それぞれの地域によって自然的条件、産業・文化・歴史などの社会的条件の違いもあり、「まち」をどういう形で再建していくかの道筋は、地域ごとに多様である。上からの画一的なモデルの押し付けでなく、それぞれの地域の実情にそくした復興プランを住民合意でつくりあげていくことを何よりも尊重し、応援していくことが国の姿勢として重要である。真の復興は、民主主義と住民自治を貫いてこそ可能となる。
(3)“復興への希望”が見える施策を急いで――仕事、雇用、産業の再出発のために
いま、国として、被災地・被災者の方々が、復興にむけた希望がもてるような政治的なメッセージと具体的施策を、急いで打ち出すことが求められている。大災害から2カ月がたち、少なくない被災者から、「先がみえない」「再建の気力がなくなってしまう」「この地域から人がいなくなってしまう」という痛切な声が寄せられている。同時に、「復興への希望が見えるようにしてほしい、そうすればがんばることができる」という強い要望が共通してだされている。こうした思いにこたえ、被災者の生活基盤回復に、国が責任を果たすという政治的なメッセージと具体的施策を打ち出すことを求める。
――(「せめてゼロからのスタートを」――「債務の凍結・免除」を国の責任で)多くの事業者が借入金で設備投資した工場、機械、店舗、船舶などを失った。収入も途絶え、財産も設備も失い、借金だけが残った状態で、「さあ再出発」といっても無理な相談である。「マイナスからではなく、せめてゼロからのスタートを」――これがいま、被災地の商工業者からも、漁業者からも、農業者からも、復興への第一歩を踏み出すために共通して非常に強く要望されていることである。
そのために、国の責任で債務を「凍結・減免」し、債務の重荷を取り除くことがどうしても必要である。たとえば、国が「震災復興支援機構」(仮称)をつくって、債務を金融機関から買い取り、「機構」が買い取った債務は、将来、事業が再生した段階で超長期の展望で返済を行い、被災状況などの実情に応じて債務の減免も行うという方法もある。方法はさまざまあろうが、いま大切なことは、大震災で失った設備や財産にかかる負債を、国の責任で「凍結・減免」するという政治的姿勢をすみやかに打ち出すことである。
――(水産業、農業、商工業、中小企業――各分野で再出発できる基盤回復を)水産業、農業、商工業、中小企業など各分野で、再出発できる基盤を回復するために、現行法の枠組みにとらわれない公的支援を思い切って行う必要がある。
【水産業】多くの漁港や施設が壊滅的被害を受けており、水産業の再出発のためには、生産・加工・流通までをセットで再生する総合的な全面支援が不可欠である。漁船では、激甚災害法で、5トン未満の小型船は3分の2を公費でもつことになっているが、被災地での小型漁船はほぼ壊滅状態であり、中型、大型船にも大きな被害が出ている。激甚災害法の枠組みでは、とても再出発はできない。養殖施設の破損は、90%は公費負担ということになっているが、実際は「減価償却分を差し引く」とされ、昨年のチリ津波にさいしての養殖施設破損への公費負担は半分以下にとどまった。被災した漁業者からは、「船も、養殖も100%公費で」という強い要望が寄せられている。国がこれにこたえる具体的施策をとることを求める。
【農業】広大な農地が津波によるガレキとヘドロなどで埋まっており、国が全面的にのりだすことなしに、この再生は不可能である。JAや農業者からは、破壊された農地をいったん国が買い上げて、塩抜きもして圃場(ほじょう)の整備をしたうえで返還する(払い下げ条件付きの一時的な買い上げと整備)という要望も出されている。国が全面的にのりだして農地を再生させるという姿勢をはっきり打ち出すことを求める。被災地での農業復興にも逆行するTPP(環太平洋連携協定)参加をきっぱり断念すべきである。
【商工業】商工業・中小企業を再生するためには、「債務凍結」とともに、事業を立ち上げるための資金が必要である。無利子融資や利子補給をはじめ制度融資の抜本的な拡充にとどまらず、国の責任で、返済不要の立ち上がり資金を提供する支援金制度を創設することを求める。津波で流された機械のリース代を免除する手だても必要である。貸工場、貸店舗への公的支援の拡充も求められている。
【農漁協等への支援】漁協、農協、商工会議所をはじめ被災地の水産業、農業、商工業関係の諸団体の「復興への思い」を受けとめ、その要望を十分に反映した復興計画、事業にしてこそ、地域のエネルギーを引き出すことができる。そのためにも、震災で被災した漁協、農協、商工会議所の再建を支援することを求める。
――(当面の生活を支える緊急の雇用対策を)本格的な仕事再開までの生活を支えるとともに、緊急の雇用対策を行う必要がある。被災地では、「『仕事がない』状態が続けば、多くの人が仕事を求めて外に出て行かざるをえない、労働力が流出すれば二度と立ち上がれなくなる」という危機感が表明されている。
農業、漁業、中小企業などで休業補償を行うとともに、海や陸のガレキの撤去、泥だし、仮設住宅の建設をはじめとした復旧・復興事業を、地元雇用の創出につなげるために、国の支援を強めることが必要である。
雇用保険の失業給付や雇用調整助成金の大幅延長や対象の拡大も重要である。大企業に下請けや関連会社を含めた雇用を確保する社会的責任を果たさせることが重要になっており、国が強力な要請・指導を行うことを求める。
(4)住宅の再建・保障――支援の抜本的拡充と多様なニーズに即した住宅を
「住まいの再建」は、被災者の生活再建の土台である。「住まいは人権」――負担可能な費用で安全で健康的な住宅に住む権利は、国際的にも確認されたものであり、政府には、被災者の住宅に関する権利を保障する責任がある。国による個人補償、公的支援を拡充しなければならない。
――(被災者生活再建支援法の支援額の抜本的引き上げ、対象拡大)「私有財産の形成は支援しない」などと住宅再建への直接補償を拒否してきた国の姿勢を変えさせて、被災者生活再建支援法改正が実現したが、全壊でも300万円にとどまっている。総理は「引き上げ」を明言したがすみやかな具体化が必要である。支援額の抜本的引き上げとともに、支給対象を、一部損壊、店舗の被害、液状化による被害などにも拡大する。「二重ローン」など過度な負担に被災者の生活が押しつぶされないように、免除や軽減、利子補給などの金融措置をあわせてとることを求める。
――(多様な形態での公営住宅の建設を)「もう一度ローンを組んで家を建てる」ということにはならない被災者も少なくない。被災者が住みなれた土地を離れることなく住める、小規模・分散型なども含めた多様な形態の低家賃の公営住宅を、被災者のニーズや地域の実情にあわせて、それぞれの集落に建設していく必要があり、そのための国の支援を要求する。
(5)被災者の生活を支える“公共”の再建を
――(医療、介護、福祉、教育など、いのちと暮らしを支える基盤を再構築する)被災地は高齢化率も高く、医療、介護のネットワークの再構築は不可欠である。国公立病院、労災病院、社会保険病院、厚生年金病院の統廃合など、公的病院を縮小し、地域医療を壊してきたツケが問われている。公的病院を再建し、存続、充実させるとともに、民間医療機関、民間福祉施設の再建にも必要な支援を行うことを求める。
障害者が必要な情報を得られなかったり、被災して介護者を失うなど、困難を抱えている。障害者施設、団体、患者団体への支援と、“支援の外”にある障害者、難病患者の実態把握を急ぎ、必要な支援を行うことが必要である。
復興のためには、子どもたちの未来が輝く地域に再生していかねばならない。学校と教育条件の整備を急ぐことはもとより、就学援助、給費制奨学金、授業料免除などによって、子どもたちから教育の機会を奪わないようにする。保育所などの子育て支援の体制もととのえることも必要である。
――(地域の交通、商店街など、生活と事業活動が可能になる基盤の再建)住民の「足の確保」は被災地の重要な課題になっている。鉄道やバスなどの公共交通機関の復旧への支援はそのカナメである。第三セクターである三陸鉄道は、会社や自治体の「自力」での復旧は不可能である。国が三陸鉄道の復旧に全面的に乗り出すことを宣言することは、復旧・復興にむけて被災者をはげますものとなり、ただちに決断すべきである。さらに、商店街をはじめ街の公共的機能の回復に必要な支援を行う枠組みが必要である。
――(自治体への人的・財政的支援)自治体も被災者である。自治体職員も多くが犠牲となり、家も家族もなくした職員が、大震災以来、不眠不休の奮闘をしているが、それも限界になっている。「行革」「効率化」「民営化と民間委託」などのかけ声で行われた大規模な人員削減によって、被災自治体でも、職員を派遣する自治体でも「人手不足」が障害になっている。国として、行政スタッフ、医療・介護の専門家など、被災自治体への人的な支援を強化することを求める。また、被災地は、高齢化と過疎化に加え、この間の「地方切り捨て」政治で財政基盤も弱い。国の自治体への財政支援を大幅に拡充することを要求する。
(6)復興財源について――復興を妨げる「復興税」には反対する
すでにわが党は、復興財源について、3月31日の「提言」で、(1)大企業と高額所得者の減税の中止、不要不急の大型公共事業の中止、米軍への「思いやり予算」やグアムの米軍基地建設費の中止、原発の建設・推進経費の削除、政党助成金の廃止など、今年度予算の抜本的な組み替えを行うこと、(2)大企業の内部留保を復興事業に活用するために、「震災復興国債」を発行し、大企業に引き受けることを要請する――という二つの基本方向で確保することを提案している。総理は、3月31日の党首会談で、この提案について「検討する」と答えたが、その真剣な検討・実行を強く求める。
「復興税」を名目にした消費税増税は、被災者にも増税を押し付け苦しみに追い打ちをかけるとともに、国民生活と日本経済の活力を奪うことによって、国をあげての復興にも大きな障害を持ち込むものであり、絶対にやってはならない。わが党は、復興を妨げる「復興税」には、強く反対する。
2、原発災害からの救援、復旧・復興に果たすべき国の責任
福島原発災害は、あらたに「計画的避難区域」が指定され、校庭の土壌も放射能に汚染されるなど、いまなお拡大し続けている。多くの人たちが仕事を奪われ、家から「追い出され」て、不自由な避難生活を強いられている。故郷を汚され、見えない放射能の不安におびえる毎日をすごしている。
いつになったら自宅に帰れるのか、農業ができるのか、事業を再開できるのかなど、「先がまったく見えない」という状態に置かれ、復興の足がかりさえつかめない。政府は、被災者の不安と苦しみにこたえる責任がある。
原発危機の収束にあらゆる力を傾注するとともに、明日への希望と展望を持てるような政治の責任ある姿勢を示すことを求める。
(1)危機収束と故郷に戻れる展望を政府の責任で示す
――(政府として責任のある原発危機収束の展望を)「将来の見通しがたたないことが何よりつらい」。原発被害の被災者の痛切な声である。わが党は、3月31日の党首会談で、総理に「政府として責任をもって原発事故収束の戦略と展望を示すべきだ」と提起した。その後、東京電力が「工程表」を発表した。しかし、この「工程表」は、原子炉とその施設内にどのような事態が起こっているかの全貌をつかまないまま作成されたものであり、掲げられた「収束策」なるものも、それを実行する裏付けも根拠も示されていないものだった。実際、その後、1号機では圧力容器内のほとんどすべての核燃料が、地震翌朝には溶融・落下(メルトダウン)したことが判明するなど、新しい対処が迫られる事態がつぎつぎに起こっている。
東京電力に危機収束の「工程表」づくりを、いわば「丸投げ」して、それを政府が追認するというのは、とうてい責任ある態度とはいえない。政府として、原発危機収束の戦略と展望について、原発事故にかんするあらゆるデータを直接掌握し、裏付けと根拠を示し、責任をもって明らかにすべきである。
――(政府として故郷に戻れる見通しを)この間、総理周辺から「10年、20年は人が住めない」などという無責任な発言が伝えられたこともあり、被災地に行ってみると、「もう二度と戻ることはできない」という声も聞かれる。正確で丁寧な情報発信とともに、おおまかなものであっても故郷に戻れる見通しを示す責任が政府にある。
――(作業員の安全確保の体制を国の責任で整備する)この間、原発危機の収束作業にあたっていた作業員が死亡するという事態が起こった。作業員の「安全確保」のルールや手順がなし崩し的に「緩和」されているという報道があるが、作業員の命を危険にさらす無責任な対応は、絶対に許してはならない。
作業員の放射線からの防護の徹底、作業環境、生活環境の抜本的改善をふくめ、長期戦にたえる作業員の安全確保の体制を、政府の責任で整備することを強く求める。これがなければいかなる「収束計画」も机上の話になる。
(2)国の責任で被害への全面的で迅速な賠償を東京電力に実施させる
福島原発災害は、「安全神話」にどっぷりとつかり、警告を無視して安全対策を怠ってきた東京電力と歴代政府によってもたらされた人災である。賠償責任は、第一義的には東京電力が負うことはもちろんだが、電力業界、金融機関、原発メーカーなどにも責任と負担を求めることが必要である。被災者の苦難を取り除き、すべての被害が賠償されるように、国が責任をもってとりくむことを求める。
――(被害への全面賠償を明確にする)被害については、全面賠償を東京電力に行わせなければならない。全面賠償とは、原発事故がなかったらあったであろう収入と、現実の収入との差をすべて賠償するということである。この原則を明確にして、それを必ず行うことを国として誓約すべきである。勝手な「線引き」をして被害者を切り捨てるようなことがあってはならない。いわゆる風評被害についても同様である。また、避難によって生じたあらゆる被害(たとえば避難中の盗難、家屋・建物の劣化、精神的被害など)も賠償の対象とするのも当然である。
――(産業被害などへの仮払いをただちに)農業、漁業、商工業など産業被害への賠償の仮払いは、いまだに行われていない。東京電力の引き起こした災害によって、事業ができなくなった被害者に、2カ月以上も何の賠償も補償もされず、何の責任もない被害者が苦境に陥っている現状は、法治国家として異常としか言いようがない。すみやかに賠償の仮払いを行う――被害者の手もとに届くようにするとともに、危機収束が長期化しているもとで、仮払いも1回限りとせずに継続的に実施する必要がある。
原発から30キロ圏内の住民の個々の方々には仮払いの手続きがとられているが、30キロ圏外からの避難者は対象外とされている。これらの方々への仮払いもすみやかに行うべきである。
――(債務は国が肩代わりし、東電に負担責任を)中小企業や、農業者、漁業者が抱える債務の問題も深刻である。原発災害で事業ができなくなり、収入が途絶え、借金が返済できなくなっている。東京電力が全面賠償するまでの間、返済猶予をふくめ国が債務を一時的に「肩代わり」する措置をとる必要がある。もちろん、この場合も東京電力に負担責任を求める。
(3)放射能被害への国民の不安に応える措置をとる
――(放射能汚染を正確かつ綿密に計測・把握し、納得のいく説明と万全の措置を)政府は、住民の避難や学校などでの放射能汚染について、いろいろな措置をとっているが、その根拠となる放射能汚染の把握と住民への説明がきわめて不十分である。
いったんは政府が「計画的避難区域」に指定したが、町独自の測定で「避難の基準値」を下回っていることを指摘され、撤回する(川俣町小綱木、大綱木地区)など、政府の責任と姿勢が問われる事態も起きている。
学校の土壌汚染について、政府内部で危険性についての意見の食い違いが表面化していることに、多くの国民が不安をつのらせている。野菜、水産物、飲料水など食料への放射能汚染の不安も大きい。福島市、郡山市などを含めて、放射能汚染の計測を綿密に行い、専門的・科学的知見をふまえた理解と納得のいく説明と、万全の措置をとることを、強く求める。
――(作業員と住民の健康管理と医療保障のための恒久的対策を)作業員と住民にたいして、内部被ばくを含めた厳重な健康管理を行い、国として恒久的・全面的な医療保障を行うことを求める。
(4)被災者の救援、避難住民の実情に応じた柔軟な対応を
――(避難を強いられている住民に安定した生活を)不自由で不便な避難生活が長期化している。政府は、避難生活を強いられているすべてのみなさんに、安定した住宅、生活にかかる費用、医療や教育など当たり前の生活を保障する責任がある。もちろん、それにかかる経費は東京電力が負担すべきものである。
――(住民の要望もふまえ柔軟な対応を)「計画的避難区域」に指定された地域内には、工場も、介護施設もある。住民の安全をしっかり確保することを前提にしながら、実情に即した柔軟な対応をとることが、関係自治体から強く要請されている。「緊急時避難準備区域」についても、地域内への仮設住宅の建設などについて、放射線の実態からみて安全を確保できるなら、コミュニティーを保持することを重視して柔軟な対応をしてほしいという要望も出されている。放射能汚染から住民の健康を守るという責任を果たしながら、それぞれのケースについて丁寧に実情をつかみ、地域の方々の生活や故郷への思いをくみあげた柔軟な対応、心ある対応をとることを求める。
(5)原子力災害から住民のいのちと生活をまもる特別法の制定を
福島県は、前例のない原子力災害に対応するために、国が責任をもって原子力災害の応急対策、復旧対策、復興政策を一元的にすすめる体制の確立、全面的、長期的対策の推進などのために、新たな法整備(特別法)を国に要請している。わが党も、原子力災害にたいする特別法は、必要だと考える。
原子力災害にたいして、全面的な賠償や安定した避難生活の保障をはじめ、現行法のもとでも最大限の対応をすみやかにとることは当然だが、もともとこうした大規模な原子力災害を想定した法体系はなく、現行法ではカバーできない問題が多いことは事実である。広域的な避難における生活支援や自治体機能の確保、地域の再生や住民の健康被害をふくむ恒久的対策などにかかわって、原子力災害から住民のいのちと生活をまもる特別の措置が必要になっている。原子力災害の緊急対策、復旧、復興に、一体的・総合的に対応できる特別法を制定することを要求する。
3、原発からの撤退を決断し、原発をゼロにする期限を切ったプログラムの作成を
福島原発事故は、原発の危険性について、つぎの深刻な問題点を、万人の前に事実をもって明らかにした。
(1)いまの原発技術は、本質的に未完成で危険
第一に、いまの原発技術は、本質的に未完成で危険なものであるということである。原子炉は、莫大(ばくだい)な量の放射性物質=「死の灰」を内部にかかえているが、どんな事態がおこっても、それを内部に閉じ込めておく絶対かつ完全な技術は、存在していないことが明らかになった。冷却水がなくなると炉心が溶け、コントロール不能となり、大災厄をもたらすという、軽水炉のもつ構造上の本質的欠陥が証明された。放射性廃棄物の処理方法がまったく確立していないため、全国の原発に莫大な量の使用済み核燃料が蓄積されていることの危険も明らかになった。
そしてひとたび、大量の放射性物質が外部に放出されれば、もはやそれを抑える手段が存在せず、被害は空間的にどこまでも広がる危険があり、時間的にも将来にわたって危険をおよぼす可能性があり、地域社会全体の存続そのものを危うくする危険をもつものであることが、明らかになった。
(2)世界有数の地震・津波国に集中立地することの危険
第二に、こうした危険をもつものを、世界有数の地震国であり、世界一、二の津波国である日本に集中立地することは、とりわけ危険きわまりないものである。今回の巨大地震は、日本での今後の地震の危険性についての、専門的知見の根底からの見直しを求めており、日本列島のどこにも、大地震と大津波の危険性のない「安全な土地」とよべる場所は存在しない。日本に立地している原発で、大地震・津波にみまわれる危険性がないと断言できる原発は一つもない。
(3)「安全神話」への固執の深刻な結果が明瞭に
第三に、歴代政府が、「日本の原発では重大事故はおこらない」とする「安全神話」にしがみつき、繰り返しの警告をも無視して安全対策をとらなかったことが、どういう深刻な結果をもたらすかが明瞭となった。
いまの原発技術が本質的に未完成で危険なものであるという認識をもたず、それを地震・津波国である日本で大増設することの危険性の認識ももたず、どんな技術にも「絶対安全」は存在せず事故の可能性は排除できないという認識をもたず、「安全神話」にどっぷりつかり、対策を行ってこなかった、歴代政府、電力会社の責任はきわめて重大である。原発をもつ世界の主要な国家の中で、日本のように「安全神話」にしがみつき続けた国は、他に一つもないことを、きびしく指摘しなければならない。
(4)原発推進から撤退への転換を要求する
以上をふまえて、わが党は、原発推進から撤退への転換を要求する。
――(原発からの撤退、原発ゼロへのプログラムの策定を)政府が、原発からの撤退を政治的に決断すること、原発をゼロにする期限を決めたプログラムをつくることを、強く求めるものである。
そのさい、原発の新増設計画を中止すること、浜岡原発を一時停止にとどめず廃炉とすること、福島第1・第2原発を廃炉にすること、老朽化した原発の運転を中止すること、住民合意のない原発の運転を中止すること、放射性廃棄物の再処理施設を閉鎖すること、プルトニウム循環サイクルから撤退すること――これらはすみやかに決断・実行する必要がある。
また、自然エネルギー(再生可能エネルギー)の開発と普及・促進、低エネルギー社会への移行のために、最大限の知恵と力をそそぐことを求める。
――(危険を最小限にする原子力の規制機関を)原発ゼロにいたる期間に、原発事故の危険を最小限のものとするための、考えうるかぎり、可能なかぎりのあらゆる安全対策をとるとともに、そのための強力な権限と体制をもち、推進機関から完全に分離・独立した原子力の規制機関を緊急に確立することを要求する。
原発は、運転停止後も、廃炉までに20年程度かかると言われ、その過程で放射能が外部に流出しないよう最大限の努力が必要である。さらに、使用済み核燃料の処理技術はまったく確立されておらず、その技術を確立し、それにもとづく処理作業が完全に終了するまで、きわめて長い期間、核廃棄物を環境から厳重に隔離し、監視しつづけなければならない。強力な権限と体制をもった規制機関の確立は、そのためにも必要である。