加藤周一最終講義 かもがわ出版 2000円を読みました。
2000年~2008年までの、大学などでの講演を収録したものです。
2006年仏教大学での講演は、「マルキシズム、仏教、朱子学とその日本化」と題しての講演です。
加藤氏は、特にマルクス主義の全体像を経済学を中心に説明しており、仏教大学での最終講演としての時間的な制約を考えると、まとまった内容と言えます。
ただ、剰余価値と利潤第一主義と資本主義そのものの発展との矛盾という解明がいまいちという感じがしました。
土台と上部構造との関係も、上部構造でのたたかいの重要な役割という視点が十分ではないように思いました。
私が加藤理論の問題意識として、持っている一つは、外国からの輸入思想は必ず日本化されるという視点での、「マルクス主義の日本化の特徴」としてどう考えているのかということで、この本ではずばりこの題目で講演されています。
日本共産党は、マルクス主義そのものの立場から、日本という現実にそくして自主的に、社会変革の道筋を探求してきました。加藤流にいえば、「日本化」させてきていると考えています。そして、そのことが一般的法則性をもつ部分もあると考えています。
しかし、加藤氏は、戦前から1961年の日本共産党綱領確定前後までの、マルクス主義と日本共産党の存在という、日本文学史序説の範囲内にとどまっていると思います。
また、イタリア共産党やフランス共産党の戦後の一時期までの強大な影響力があった時期まで事実をもとにしています。
加藤氏の理論からいっても、日本共産党のマルクス主義(日本共産党は特定の人名を掲げずより厳密に科学的社会主義と称しています)は、氏の立場と合致していると思うのですが、なぜ、触れなかったのか、疑問が残りました。