Toshiが行く

日記や趣味、エッセイなどで描く日々

海道を走る──関あじ、関さば、それに伊勢海老

2021年11月15日 15時21分37秒 | 旅行記


快挙! 個人的にはそう言える。
走った距離は、2日間で約640㌔だ。
数年前、4泊5日の車中泊で山陰、四国を回ったが、
この時の走行距離が1300㌔、1400㌔だった。
今回、1日当たりの走行距離がそれらを上回った。
昨年、2度の入院・手術で心身とも
嫌になるほど衰えを感じていたが、
それを吹き飛ばした感じである。


13日午前9時、1泊2日のドライブ旅行がスタートした。
もちろん夫婦連れ立ってのことで、妻は写真撮影も楽しむ。
まず、目指すは大分県の佐賀関。
言うまでもなく、ここは関あじ、関さばだ。
その味自慢レストラン『関あじ関さば館』にナビを設定した。
福岡から九州自動車道─大分自動車道をひた走ること約200㌔。
シルバーマークを張った爺さんは、平均90㌔ほどの
スピードでしか走らないから約3時間強かかる。



さて、着いた『関あじ関さば館』は、ちょっと名の知れた店で、
おまけに、ちょうど昼食時とあって、ほぼ満席状態。
名前を書いて空くのを待つ。
それでも10分ほどだったろうか。
海を前に見るカウンター席に案内された。



僕はあじ、さば、それにブリの刺身盛り合わせ、
妻はさばだけの関さば定食を、それにもう一品、
あじフライを注文した。
量的には食べきれないほどになったが、
あじフライは1枚を2人で分けて食べ、残り3枚はお持ち帰りとし、
夕食のお供とすることにした。
さばのぷりぷり感、あじの生きの良さをたっぷり堪能。
3時間かけて来た甲斐は十分にあった。


                          (妻撮影の夫婦岩)

店内に夫婦岩の写真が飾ってあった。
店員さんに尋ねると『ビシャゴ岩』だという。
店から10分ほどの黒が浜にあるというので、
ちょっと寄ってみた。
日の出時、太陽がこの夫婦岩の背後に昇って行き、
カメラマンには格好の絵となるそうだ。


さて、佐賀関から佐伯港へ向かう。
港に何か撮影に適したものが見つからないか、と妻が言う。
臼杵、津久見を経由して約1時間。
途中、太平洋セメント大分工場があり、道路脇に車を止め、
鉄の構造物でいかつい表情の工場を撮影した。
いつの間に、暮れかかり佐伯港へ急いだが、
撮影するのに格別なものはなく「日の出時がいいよ」
との情報だけを得て、予約していた近くのホテルへ入った。


さて2日目。5時に起き出し情報に従い佐伯港へ。
だが、車に乗るとフロントガラスにポツポツと雨しずく。
見上げると、雲が覆っているようだ。
日の出は無理かなと思いつつ、一応佐伯港へ向かう。
日の出を待ってみたが、やはり無理だった。
ホテルへ引き返し、朝食にする。


次の行先は大分県南の蒲江だ。
ここに波当津海岸がある。
海水浴場、あるいはキャンプ場として
住民に親しまれているようだが、
写真愛好家には砂紋が撮影ポイントだそうだ。





                     (砂紋の写真は妻撮影)


海から山へ─波当津海岸から藤河内渓谷に向かう。
この渓谷は祖母・傾国定公園に位置し、
巨大な花崗岩の一枚岩をはじめ無数の甌穴群が続く、
四季折々の自然が楽しめるところだ。
今は紅葉シーズン。
楽しみにして向かったが、残念!少し早過ぎたようだ。
一方で無数の甌穴群を流れる透き通った水の素晴らしさに言葉なし。



                     (上2枚は妻撮影)

再び蒲江に戻る。
この旅行の最大の目的である伊勢海老をいただくためだ。
大分県佐伯市─宮崎県延岡市の海道筋は、
毎年伊勢海老漁が解禁になる9月から11月の3カ月間、
「東九州伊勢えび海道」祭りが行われており、
新鮮な伊勢海老が堪能できるのだ。



僕らの行先は蒲江IC近くの蒲江インターパーク。
まず直売所で伊勢海老やサザエ、ヒヨキ貝、
それにサバ寿司を買い、それを焼き小屋に持っていく。
そこで伊勢海老を2つにしてもらうなどして、
屋外で自分で焼くわけだ。
やはり伊勢海老からだ。
まずミソをいただく。そして、ふっくらとした身の部分、
ああ、やっぱり旨い。身をこさげるだけこさぐ。
あと、焼き立ての貝類に移る。これがまた旨い。

   少しばかりの干物など海産物を買って、ICへ車を向けた。
   自宅までおよそ300㌔。
   何度もSA、PAに寄りながら、夕暮れの高速道路を走り続けた。




大自然を走る

2020年11月07日 06時00分00秒 | 旅行記
               久住 久住 久住

    追いもせず、追われもせず、前後に1台の車もいない。
    たまに後ろに迫る者が来れば、左に寄り先にやる。
    天気も気持ちも晴れ晴れと、久住の山道を走る。
    草原をかすめる風に、滝が弾き飛ばす細かな水しぶきに体細胞を洗い、
    そして身が冷えれば温泉が温めてくれる。
    11月3~5日の2泊3日、Go Toトラベルを利用した久住の旅へ──。

大分自動車道・九重ICから紅葉の名所、「十三曲がり」の九酔渓を目指す。
くねくねとカーブが2㌔ほど続き、途中茶屋の駐車場に入る。
ちょうど見頃とあって、たくさんの人たちがカメラ、スマホを手に絶景に見入っている。
              
              茶屋のすぐ側に「天狗の滝」があり、天狗が
              履いた?赤い大きな下駄が飾ってある。

    九酔渓をさらに上っていくと、日本一の吊橋・九重〝夢〟大吊橋だ。
    なんとしたことか。確かにシャッターを押したはずなのに写っていない。
    やむを得ない。ネットから借用する。
               

やまなみハイウェーの要所の一つ、長者原へ。

タデ原湿原越しに三俣山を望む。

広がる湿原のすすきをなびかせながら、やや冷たい風が走る。

久住の日没は、この時期だとだいたい17時20数分。2頭の牛のシルエットが消えていく。

旅の2日目が明ける。

日の出は6時30数分だ。朝日にすすきが輝く。
車には薄く氷が張りつき、車載の温度計は1度だった。

明るさは増し、右手に目をやれば阿蘇五岳がくっきり。空気が澄んでいる。

    この日は同じ大分県竹田市ながら、宿泊施設から車で1時間少々、
    荻町陽目(ひなため)へ。やはり紅葉の名所である陽目渓谷が目指す所だ。

ただ残念、紅葉は見頃にやや早かった。
でも、さすが「大分県百景」の一つ、流れる水の美しさは言うまでもない。

ここにはもう一つ見所がある。駐車場から遊歩道を500㍍ほど上っていくと、
「白水(しらみず)の滝」に行き着く。38㍍の高さから豪快に落下する滝の水が、
小さな小さな飛沫となって周囲を包んでいる。
途中にも「母滝」など小さな滝がいくつもあり、豊の国名水15選の一つだ。    

さて、帰路はどこを巡っていくか。
くじゅう花公園前の交差点を左折し、くじゅう連山を前に見て広域農道の方へ。

ガンジー牧場にちょっと寄り、そのまま道なりに走ると、
くじゅう連山を背景にして草原が広がっている。そこに愛車を止めパチリ。

放牧されている馬たちのかわいいこと。
   
          この道路は男池に続いていた。ここに来たのは5年ぶりになるか。

          
    今年7月の豪雨で痛めつけられたようで、随分荒れているように見える。
    ただ、岩をむんずと掴んだ木は健在、再会を果たすことができた。
  
     往路と同じように、九酔渓を経て九重ICから一路帰路へ。
     442㌔、大自然のオゾンをたっぷり浴びた癒しの旅だった。


鎌倉へ

2020年05月19日 05時24分58秒 | 旅行記
          ひと月もすると紫陽花の候となる。
       しとしとと降る梅雨時に華やぎをもたらしてくれる
        この花は全国いたるところで人々を和ませる。
     鎌倉へ行ったのはいつだったか。PCの中をぐるぐると検索してみた。
        あった。もう7年も前の6月のことだったのか。
           その時の紀行文が残っていた。

            
初めての鎌倉は紫陽花に時折、小雨がパラパラと降りかかる、そんな空模様だった。
ああ、やはり梅雨時を盛りとする紫陽花には雨がよく似合う。
無論、何事にも加減というものがあり、
雨であっても篠突く雨が紫陽花を叩いたのでは風情を失くす。
紫陽花には雨露が花弁に丸く転がるような、そんな小糠雨が程良いのだろう。

    鎌倉には、それぞれに由緒ある神社仏閣が多くある。
    その厳かさの中に、紫陽花が品を漂わせて咲き、しっとりとマッチする。
    それに多くの人が魅かれ、やって来るのである。
    この日の紫陽花は、鎌倉のあちこちでひと際映えていた。

            
                        明月院にて

北鎌倉駅から円覚寺へ、さらに「あじさい寺」と呼ばれる明月院へと巡る。
ここは日本古来の姫アジサイが主で青一色。
院内の重々しい静けさ、それにひっそりと彩りを添える
〝明月院ブルー〟は、さすがの眺めだ。

    建長寺、さらに鶴岡八幡宮へと巡る。鶴岡八幡宮もやはりの人混み。
    さらに鎌倉駅までのメインストリート『小町通り』もまた
    溢れんばかりの人、人である。
    それを縫うようにして江ノ島電鉄で長谷寺へと向かった。
    明月院の紫陽花が青一色だったのに対し、こちらは色とりどり、
    さまざまな種類の紫陽花が見事だ。明月院に引けを取らない。
    見晴らせば、遠く相模湾がたゆたっている。
    源実朝は紫陽花も、この海も、そして人の波さえも、
    きっと美しく詠んでくれよう。


長谷寺にて

           さて、今年はどうであろうか。
   シーズンピークの6月中旬~下旬までにコロナ禍は収束しているか。
           やはり、気にかかる。
                         

幽玄の世界

2020年03月09日 20時26分11秒 | 旅行記
    案外と優雅な怪物の名は「キューロク」。何とも可愛い名だ


 背から射す電柱の光が、僕を黒づくめの巨人にしている。その巨人は、両腕を横に大きく広げ、今にも向かってきそうな怪物を阻むかのように向かい合う。その黒光りのする怪物は、愛称「キューロク」と可愛げだが、全身を鋼で包んだいかつい巨体、 かつての花形蒸気機関車・9600型29612号である。
 決戦の場は、すっかり日の落ちた「豊後森機関庫公園」(大分県玖珠町)。JR九大本線豊後森駅、そのすぐ側にある。ここは、昭和9年から廃止された同46年までの間、九大本線の石炭、水などの補給基地、あるいは機関車の入れ替え作業など重要な役割を担ってきた。直径が20㍍弱の転車台を中心に放射線状に線路が機関庫へと延び、それに従い機関庫は扇型となっている。原形のまま残る機関庫は、九州ではここだけで、国指定の登録有形文化財・近代化産業遺産である。
 80余年もの間、雨風に打たれ続けてきた機関庫は、打ち捨てられたビルのようにコンクリートの壁面は黒ずんだ灰色をさらす。また、ところどころに戦時中米軍機に機銃掃射された痕を残しているのだというが、どれがそうなのか確かめようはない。割れるにまかせた窓ガラスは、もうその役割を放棄し、その破片が窓枠にしがみつく。転車台、そこから機関庫へ延びる線路は、言うまでもなく赤茶けている。そして、機関庫と転車台を後ろに従えるように、あの怪物「キューロク」がいる。
 夜になり、それらノスタルジックな構造物がライトアップされると、幽玄の世界となって浮かび上がってくるのである。それはまた、写真マニアにとり、絶対に見逃せないフォトジェニックな世界ともなる。写真撮影を趣味とする妻が、「そんな姿の機関庫を撮影したい」と言うので、ここへやって来たのである。妻と二人のカメラ仲間は、夢中でシャッターを押しているようだ。
 
 1人置かれた僕は、巨人となって「キューロク」と向かい合っている。77の爺さんの1人遊びである。すると、機関庫の奥の方に、いくつもの小さな光がチカチカと飛び交っている。今はホタルの季節ではない。遠くを行き交う車のライトが、割れた窓ガラスに乱反射しているのか。分からない。幽玄の世界に迷い込んだらしい。

『伊根の舟屋』に佇む

2020年02月29日 09時48分25秒 | 旅行記
 JR天橋立駅の、道を挟んだほぼ真向いに小さなレンタカーの店があった。木造2階建て、出入り口は引き戸になっており、一見すると懐かしい雑貨屋を思わせた。『天橋立レンタカー』との店名、その『立』と『レ』の間に割って入るようにクラシックカーの絵柄をあしらった看板が2階部分に掲げてあり、それで、どうにかそれと分かる。すぐ近くに専用駐車場、と言っても空き地みたいな場所に2台分のスペースがあり、フロントガラスに「すぐにご利用いただけます」との札を下げた軽自動車が1台だけ停めてあった。        
                    
 
 言うまでもなく、ここには陸奥の『松島』、安芸の『宮島』と並ぶ日本三景のひとつ、特別名勝『天橋立』がある。その景観を楽しもうとやって来たのだが、実はもう一つ目的があった。それで「すぐにご利用いただけます」という軽自動車を借りることにしたのだ。
 

 日本海に突き出た丹後半島へと北上する。最近の軽自動車はルーフが高くなっているので、車内は広く感じる。不足はない。1時間足らずで目的地の伊根湾に着いた。日本海側の港には珍しく、波静かな天然の良港とされる。山並みが岸のすぐ後ろまで迫っている。海との間のわずかな地に、海にせり出すように切妻造りの、1階が船の収容庫、2階が住居という、この地区独特の伝統的様式の建物が200軒ほど湾沿いにぐるりと立ち並んでいる。海と、物言わず迫る山並みの静けさ、それに『伊根の舟屋』と呼ばれる、これら建物が穏やかにマッチし、墨で描いた絵を思わせる世界となって多くの人を誘っている。
 佇めば、4時を少し回り陽は沈みかけている。しかも薄曇りであり、海も舟屋も淡いグレーな静けさに溶け込んでいく。舟屋の2階にポツリポツリと灯が見えてきた。わずかなざわめきといえば、湾を巡る遊覧船のエンジン音と、それに紛れて聞こえてくる楽しげな女性の声だけ。目をやると、それは彼から釣りを教わる外国の女性のものであった。静けさの中にある伊根の岸壁で、無邪気に釣りを楽しむ異国の女性の笑い声に心和むのだった。