私が初めて持った腕時計は、毎日一回手でゼンマイを巻くものでした。ゼンマイを巻くのと時刻合わせが必要なのが手間でした。高度成長期の頃、自動巻の腕時計は私にとって憧れの存在でした。時刻合わせはまだ必要でしたが、ゼンマイを巻かなくて良いのですから。やがてクォーツが出て正確性が格段に増し、デジタルとなり、最近はまたアナログに回帰しているのが面白く感じられます。そういえば電波時計も、初めて見たときには衝撃でしたが、最近はごく普通の家庭用置き時計でも電波式が安く売られていますね。デジタルだけではなくてアナログも電波式というのは、思わず笑ってしまいそうになります。しかし、ソーラー電波腕時計になると、時刻合わせも電池交換も不要、ということで、なんだか人間が腕時計に対して無神経になってしまいそうです。
【ただいま読書中】『ぼくの格闘技ロード』合気 著、 新風舎、1998年、1000円(税別)
合気道と居合は初段、空手は六級の著者は、ぶらりと旅に出ます。目的は、韓国でテコンドーを、タイでムエタイを見ること。それと、韓国で偽ロレックスを入手すること。
旅の無計画さと集中力の低さは、まったく大したものです。銀行の閉店時刻は気にしないし、空港には適当に行くから出発時刻に本当にギリギリになってしまうし、宿は現地に着いてから適当に探しているし…… だけど、旅行者保険は死亡時1億円の一番高いのに入っています。えっと、意味がよくわかりません。文の書きぶりから見ると、家庭は持っていない様子です。だったら保険は自分の葬式が出せる分だけで良さそうなんですけどね。
著者がタイで行ったルンピニースタジアムは、私も行ったところだろうと思います(記憶は定かではありませんが、あの時期に観光客がムエタイ見物に行くのはここともう1箇所だけだったはず)。リングサイドから見た「格闘技」の迫力と、後方に金網で仕切られた一般席でのとんでもない狂騒ぶりとに、私は文化的な衝撃を受けましたっけ。著者も刺激を受けて「これからは真面目に練習しよう」と決心して帰国することになります。
若いって良いなあ、と私は呟きます。人生で大きな「無駄」をすることが平気でできますから。いやあ、うらやましいうらやましい。