【ただいま読書中】

おかだ 外郎という乱読家です。mixiに書いている読書日記を、こちらにも出しています。

「謙虚」が必要なのは「謙虚ではない人」

2018-09-16 07:32:43 | Weblog

 自民党の総裁選で「謙虚であらねばならない」という言葉を聞いて私は違和感を感じました。具体的にどんな手法でやってそれでちゃんと今より謙虚になったかどうかの評価をどうするか、それについての言及がなければただの言いっ放しの態度(つまりまったく「謙虚ではない」態度)になるのではないか、と思いましてね。
 いや、すでにとても謙虚な人が「もっと頑張らねば」と言っているのに対して「いや、それ以上謙虚になる必要はないですよ」と言いたくなる、そんな人に対してはこんなことは思わないはずなのですが。

【ただいま読書中】『AWAY(1)(2)』萩尾望都 作、小学館、2014年、545円(税別)

 小松左京の「お召し」を原作として漫画にした作品です。ただし重要な変更点があります。まず、原作では「12歳未満の世界」だったのが、こちらでは「18歳未満」となっています。12歳までだと移動は徒歩か自転車ですが、18歳までだとバイクや自動車も使えるので絵に「動き」が生じます。また、原作では「子供だけとなった世界」だけが舞台でしたが、本作では「子供だけの世界(AWAY)」と「子供がいない世界(HOME)」の両方が描かれます。これがまた強烈。「大人のような子供」と「子供のような子供」が入り混じることによって「AWAY」で混乱が生じるのは当然だと思いますが、「子供のような大人」と「大人のような大人」によって大混乱が生じる「HOME」の姿も実に痛々しい。たしかに「お召し」を読んでいるときには「子供が突然いなくなった世界はどんなものか」は全然描かれませんでしたし、私もあまりそちらについて考えはしませんでしたっけ。しかし「子供が消えたことによって生じる絶望感の重さ」が本書では痛切に訴えられます。
 さらに「18歳」にすることで、人類が滅亡する危険性が減ったのは重要なことです。産院に突然出現する乳児を小学生が世話して育てるのは、非常に無理がありますから。高校生が世話しても、人工ミルクをどう作るのか、が問題にはなりそうですが、「在庫」がある内に研究して製造できたら何とかなるかもしれません。
 さらに重要な変更点は、「なぜこのような世界が生まれたのか」の回答(のようなもの)が追加されていることです。そして、その回答が成立するためにはやはり「12歳」よりは「18歳」の方が望ましい。ただ、読後私はしばらく茫然としてしまいました。「お召し」がこんな“リニューアル"をされてしまうとは、萩尾望都さんはやはりただ者ではありません。


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