【ただいま読書中】

おかだ 外郎という乱読家です。mixiに書いている読書日記を、こちらにも出しています。

墓を掘る

2020-11-11 07:18:05 | Weblog

 「墓を暴く」と「墓の発掘」とは、どこが違うのでしょう? どちらも「死者が存在するところを掘る」行為は同じです。もしかして「もうその墓に参る人がいなくなったかどうか(墓を掘ることに「家族の墓だぞ」と文句を言う人が存在するかどうか)」がその境界線かな?

【ただいま読書中】『応天の門(12)』灰原薬 作、新潮社、2020年、600円(税別)

 貴族の家から家宝の硯を盗んだ、と濡れ衣を着せられた菅原道真はやっとのことで真犯人を突き止めますが、そのために、よりによって藤原基経に「恩」を着せられてしまいます。
 「女しか生まれず、しかもその半分が若くして死ぬ」という山里を調査に行った在原業平は、転落事故で「死者が住む隠れ里」に迷い込んでしまいます。そこからやっと「現世」に戻れたのですが、その「謎」を菅原道真は解くことになってしまいます。いつもの「巻き込まれ型」の探偵役ですが。京しか知らなかった道真は、実際に見る地方の実状に、深く考え込んでしまいます。国司や郡司による税取り立ての不正が横行し、民はそれに対してやはり不正で対抗しています。不正を嫌う道真ですが、単に断罪するだけでは結局何も解決しない、と気づいてしまったのです。さて、「現世」と関わることを嫌って、知的な面で「隠れ里」に籠もろうとしていた道真は、どうしてもこれからはその関りの中で生きなければいけないようです。